海外への渡航を予定されている方や、旅行業・運送事業に携わる方にとって、令和8年度税制改正で決まった国際観光旅客税の税率引き上げは気になるところではないでしょうか。出国1回につき1,000円だった負担が3,000円へと3倍になるため、いつから適用されるのか、誰が対象になるのか、どのような手続きが必要なのかと不安を感じる方も少なくないと思います。ここでは、改正の内容と金額、施行日、対象者や非課税の範囲、そして実務で押さえておきたい点を、公的資料に基づいて丁寧に整理してまいります。
国際観光旅客税の概要
まず、そもそも国際観光旅客税とはどのような税なのかを確認しておきたいと思います。この税は、観光先進国の実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図るための財源を確保する観点から創設されたもので、日本から出国する旅客に対して課税されます。財務省 国際観光旅客税の概要
徴収の仕組み
納税者となるのは出国する旅客ですが、実際の徴収は原則として特別徴収義務者である船舶会社または航空会社が行います。航空券や乗船券の代金に上乗せする方法で旅客から預かり、その事業者がまとめて国へ納付する仕組みです。そのため、多くの旅客の方は税額を個別に意識することなく、チケット代金の一部として負担していることになります。国税庁 No.7195 国際観光旅客税のあらまし
税率引き上げの内容と金額
令和8年度税制改正の最も重要な点は、税率が出国1回につき1,000円から3,000円へ引き上げられることです。負担額はちょうど3倍となります。財務省 令和8年度税制改正の大綱(4/9)
改正前後の比較
改正の前後で税額がどのように変わるのかを、下の表にまとめました。
| 区分 | 出国1回あたりの税額 |
|---|---|
| 改正前 | 1,000円 |
| 改正後 | 3,000円 |
引き上げの背景
今回の引き上げは、オーバーツーリズムへの対応や、出入国・通関環境の整備、日本人旅行者の海外安全対策、訪日プロモーションといった観光施策に必要な財源を確保することを目的としています。増収分はこうした観光関連の取り組みに充てられることが想定されています。
施行日と適用の考え方
いつから新しい税率が適用されるのかは、渡航予定のある方にとって最も気になる点だと思います。改正後の税率は、令和8年7月1日以後の出国について適用されます。
契約時期による経過措置
ここで注意しておきたいのが経過措置です。令和8年7月1日より前に締結された一定の運送契約に基づく同日以後の出国については、引き続き現行の税率である1,000円が適用されます。つまり、出国日そのものが7月1日以後であっても、それ以前に運送契約を結んでいる場合には、旧税率が適用される可能性があるということです。ご自身の航空券や乗船券の契約時期を確認しておくと安心につながると思います。
課税対象者と非課税対象
次に、誰がこの税の対象となり、誰が対象外となるのかを整理してまいります。課税されるのは、船舶または航空機によって日本から出国する旅客です。ここでいう旅客には、観光目的の方だけでなく、ビジネス、公務、就業、留学、医療など、目的を問わず出国するすべての方が含まれます。
非課税となる方
一方で、一定の方には課税されません。具体的には、航空機や船舶の乗員、強制退去者、政府専用機を利用する方、入国後24時間以内に出国する乗継旅客、悪天候などやむを得ない理由で緊急着陸した方、外国に寄港することなく日本へ帰ってきた方、そして2歳未満の方などが非課税の対象とされています。小さなお子さまと一緒に渡航される場合には、この点を知っておくと役立つと思います。
実務上の留意点
旅行業や運送事業に携わる方にとっては、税率改正への実務対応も欠かせません。特別徴収義務者である国際旅客運送事業者は、旅客が乗船または搭乗する時までに国際観光旅客税を徴収し、旅客に代わって国へ納付する必要があります。
料金設定と表示の見直し
税率が3倍になることに伴い、チケット代金への上乗せ額や運賃表示の見直しが求められます。特に、施行日をまたぐ予約や、経過措置により旧税率が適用されるケースが混在する期間は、どちらの税率を適用すべきかを契約時期に基づいて正確に判断する必要があります。予約システムや会計処理の変更にも一定の準備期間を見込んでおくと安心です。
個別に納付が必要な場合
なお、自家用の航空機などを利用して出国する一部の方については、特別徴収によらず、出国する港の税関へ直接納付する取り扱いとなります。ご自身の出国方法によって手続きが異なる点にも注意しておきたいところです。
まとめ
令和8年度税制改正により、国際観光旅客税は出国1回につき1,000円から3,000円へと引き上げられ、令和8年7月1日以後の出国について適用されます。ただし、同日より前に締結された一定の運送契約に基づく出国には旧税率が適用される経過措置が設けられています。課税対象は目的を問わず出国するすべての旅客ですが、2歳未満の方や乗継旅客など一定の方は非課税とされています。渡航予定のある方は契約時期を、事業者の方は徴収・納付や料金表示の見直しを、それぞれ早めに確認しておくことが大切だと思います。
参考文献
お問い合わせはこちら ▸国際観光旅客税のよくある質問まとめ
Q.国際観光旅客税はいくらに引き上げられますか。
A.令和8年度税制改正により、出国1回につき1,000円から3,000円へ引き上げられます。負担額はちょうど3倍となります。
Q.新しい税率はいつから適用されますか。
A.令和8年7月1日以後の出国について適用されます。ただし同日より前に締結された一定の運送契約に基づく出国には経過措置があります。
Q.経過措置とはどのような内容ですか。
A.令和8年7月1日より前に締結された一定の運送契約に基づく同日以後の出国については、現行の税率である1,000円が適用されます。
Q.誰が課税の対象になりますか。
A.船舶または航空機で日本から出国する旅客が対象です。観光のほか、ビジネス、公務、就業、留学、医療など目的を問わず出国する方が含まれます。
Q.非課税になるのはどのような方ですか。
A.航空機や船舶の乗員、強制退去者、政府専用機の利用者、入国後24時間以内に出国する乗継旅客、2歳未満の方などが非課税とされています。
Q.税金はどのように納めるのですか。
A.原則として特別徴収義務者である船舶会社や航空会社がチケット代金に上乗せして徴収し、旅客に代わって国へ納付します。