税理士法人プライムパートナーズ

令和8年度税制改正 診療所用不動産の登録免許税・不動産取得税特例

2026-07-24
目次

医師が都市部に集中し、地方や特定の地域で医師が不足する「医師偏在」は、地域医療を支えるうえで長年の課題とされてきました。令和8年度税制改正の大綱では、こうした地域での診療所の開設や承継を後押しするため、診療所用の不動産を取得する際にかかる登録免許税不動産取得税を軽減する新しい特例措置が創設されました。本記事では、対象となる区域や要件、それぞれの軽減内容、適用時期を、大綱の記載に基づいて整理します。

制度創設の背景と医師偏在対策

この特例は、医師の確保が特に必要とされる地域で診療所を新たに開設したり、既存の診療所を引き継いだりする際の初期負担を和らげ、地域医療の担い手を増やすことを目的としています。不動産を取得する場面では、登記の際にかかる登録免許税と、取得したこと自体にかかる不動産取得税という二つの税負担が生じます。大綱では、令和8年4月1日から令和10年3月31日までの間に、重点的に医師の確保を図る必要がある区域のうち一定の区域内で承継または開設する、一定の要件を満たす診療所の用に供する不動産の取得について、これらの税を軽減するとされています。財務省 令和8年度税制改正の大綱(2/9)

ここで重要なのは、軽減の対象が全国どこでも一律に認められるわけではなく、「重点的に医師の確保を図る必要がある区域のうち一定の区域内」という地域要件が前提になっている点です。医師が不足する地域に診療所の立地を促す、地域を絞った政策的な措置と位置づけられます。

対象となる区域・不動産・取得者の要件

大綱では、軽減の対象を「重点的に医師の確保を図る必要がある区域のうち一定の区域内で承継又は開設する一定の要件を満たす診療所の用に供する不動産」と表現しています。つまり、地域の要件と、診療所の要件の両方を満たす必要があります。

地域に関する要件

対象となるのは、重点的に医師の確保を図る必要がある区域のうち、一定の区域内に限られます。大綱の段階では「一定の区域」とされており、具体的にどの区域が該当するかの詳細は、今後の関係法令や運用で定められる部分が残ります。そのため、検討中の立地が対象になるかどうかは、確定した区域の指定を確認することが欠かせません。

診療所・不動産に関する要件

対象は、その区域内で承継または開設する、一定の要件を満たす診療所の用に供する不動産です。新規の開設だけでなく、既存の診療所を引き継ぐ承継も対象に含まれる点が特徴です。大綱では「一定の要件を満たす」とされており、要件の細目は確定した内容の確認が必要です。

登録免許税の軽減内容

登録免許税は、不動産を取得して所有権を登記する際にかかる国税です。大綱では、対象となる不動産の所有権の保存登記等について、次のとおり税率を軽減するとされています。

登記の種類 軽減後の税率(本則)
所有権の保存登記 1,000分の2(本則1,000分の4)
所有権の移転登記 1,000分の10(本則1,000分の20)

新築した建物などをはじめて登記する所有権の保存登記は本則の半分に、既存の不動産を引き継ぐ場合などの所有権の移転登記も本則の半分に軽減される内容です。承継か開設かによって関係する登記が変わるため、どちらの税率が適用されるかは登記の種類に応じて確認します。

不動産取得税の軽減内容

不動産取得税は、土地や建物を取得したときにかかる地方税です。大綱では、重点的に医師の確保を図る必要がある区域のうち一定の区域内で承継または開設する、一定の要件を満たす診療所の用に供する一定の不動産について、その不動産の価格の2分の1に相当する額を価格から控除する課税標準の特例措置を講じるとされています。

不動産取得税は、原則として不動産の価格(課税標準)に税率を掛けて計算します。今回の特例は、その課税標準となる価格そのものを2分の1に圧縮する仕組みで、結果として税負担が軽くなります。

不動産の価格 − 不動産の価格 × 2分の1 = 特例適用後の課税標準

控除されるのは価格の2分の1に相当する額であり、税額が半分になるのではなく、税額計算のもとになる課税標準が半分に圧縮される点を押さえておくと理解しやすくなります。

適用時期と留意点

適用時期は税目によって示され方が異なります。登録免許税の軽減は、令和8年4月1日から令和10年3月31日までの間に対象となる不動産を取得した場合が対象とされています。不動産取得税の課税標準の特例は、令和10年3月31日までとされています。いずれも期限が定められた措置であり、対象期間内の取得であることが前提です。

なお、大綱は税制改正の方針を示すものであり、実際の適用にあたっては、その後に成立する法令や、区域・要件の具体的な定めを確認する必要があります。大綱の段階では「一定の区域」「一定の要件」とされている部分については、確定した内容を必ず確かめてください。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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まとめ

令和8年度税制改正の大綱では、重点的に医師の確保を図る必要がある区域のうち一定の区域内で、一定の要件を満たす診療所の用に供する不動産を取得する場合に、登録免許税と不動産取得税を軽減する特例が創設されました。登録免許税は所有権の保存登記が1,000分の2、所有権の移転登記が1,000分の10に軽減され、不動産取得税は不動産の価格の2分の1相当額を課税標準から控除するとされています。適用は登録免許税が令和8年4月1日から令和10年3月31日まで、不動産取得税が令和10年3月31日までです。区域や要件の細目は確定した内容の確認が前提となるため、開設・承継を検討する際は最新の情報にあたることが大切です。

参考文献

診療所用不動産の税軽減特例に関するよくある質問まとめ

Q.今回の特例はどの地域で診療所を開設・承継すれば対象になりますか。

A.重点的に医師の確保を図る必要がある区域のうち一定の区域内が対象とされています。全国一律ではなく、対象となる区域が指定される仕組みのため、検討中の立地が該当するかは確定した区域の指定を確認する必要があります。

Q.新規開設だけでなく既存の診療所の承継も対象になりますか。

A.大綱では区域内で承継または開設する一定の要件を満たす診療所の用に供する不動産が対象とされており、新規開設に限らず承継も対象に含まれます。

Q.登録免許税はどの程度軽減されますか。

A.所有権の保存登記が1,000分の2(本則1,000分の4)、所有権の移転登記が1,000分の10(本則1,000分の20)に軽減するとされています。いずれも本則の半分の税率です。

Q.不動産取得税はどのように軽減されますか。

A.不動産の価格の2分の1に相当する額を価格から控除する課税標準の特例とされています。税額が半分になるのではなく、税額計算のもとになる課税標準が半分に圧縮される仕組みです。

Q.いつ取得した不動産が対象になりますか。

A.登録免許税の軽減は令和8年4月1日から令和10年3月31日までの取得が対象とされ、不動産取得税の課税標準の特例は令和10年3月31日までとされています。

Q.大綱の内容はそのまま確定した制度と考えてよいですか。

A.大綱は税制改正の方針を示すもので、実際の適用はその後に成立する法令や区域・要件の具体的な定めによります。一定の区域や一定の要件とされた部分は、確定した内容を確認することが必要です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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