老朽化したマンションの建替えや敷地の売却を検討する際、区分所有者や事業関係者にとって負担となりやすいのが、権利の移転に伴う各種登記と、その登記に課される登録免許税です。こうした費用が重いと建替えの合意形成が進みにくく、結果として老朽マンションの再生が滞る一因になります。この負担を和らげるため、施行者が受ける一定の登記には登録免許税を課さない免税措置が設けられており、令和8年度税制改正の大綱で、その適用期限が延長されるとともに内容が見直されました。本記事では、制度の背景から対象となる登記、免税の内容、令和8年度大綱での変更点、適用時期までを、大綱に明記された範囲で整理します。
制度の背景と老朽マンション建替えの促進
築年数の経過したマンションでは、耐震性や設備の老朽化が課題となり、建替えや敷地売却による再生が求められる場面が増えています。しかし建替えには多数の区分所有者の合意と、権利関係を整理するための多くの登記手続が必要です。
これらの登記に通常どおり登録免許税が課されると、事業の初期段階で費用がかさみ、合意形成の妨げになりかねません。そこで、マンションの建替えや除却を円滑に進めるための事業について、施行者などが受ける登記に登録免許税を課さない免税措置が設けられています。老朽マンションの再生を税制面から後押しする仕組みです。
対象となる登記と施行者
免税措置の対象は、マンション建替事業などの施行者が事業の遂行のために受ける登記です。具体的には、権利変換手続開始の登記、補償金支払手続開始の登記、そして区分所有権または敷地利用権の取得の登記などが対象とされています。財務省 令和8年度税制改正の大綱(2/9)
登録免許税は、本来こうした不動産の登記に対して課される税です。土地の所有権移転登記であれば本則で固定資産税評価額の1000分の20(2パーセント)が課されるなど、登記の種類ごとに税率が定められています。国税庁 No.7191 登録免許税の税額表免税措置は、これらの登記のうち事業の遂行に必要なものについて、施行者の負担を生じさせないための特例です。
登録免許税の免税措置の内容
この措置は税額を一部軽くする軽減ではなく、対象となる登記について登録免許税を課さない免税措置である点が特徴です。事業の各段階で必要となる登記に税負担が生じないため、施行者が事業を進めやすくなります。
対象となる主な登記は次のとおりです。
| 権利変換手続開始の登記 | 権利変換の手続を始める際に受ける登記 |
|---|---|
| 補償金支払手続開始の登記 | 補償金の支払手続を始める際に受ける登記 |
| 区分所有権・敷地利用権の取得の登記 | 施行者などが取得する権利についての登記 |
あわせて、敷地の売買による土地の所有権移転登記などについては、免税ではなく税率を軽くする軽減措置が別に設けられており、こちらも期限が定められた特例として運用されています。免税と軽減は対象となる登記が異なるため、どの登記がどちらの対象になるかを事業の内容に沿って確認することが大切です。
令和8年度大綱での延長・見直し点
令和8年度税制改正の大綱では、この免税措置について適用期限を2年延長するとされました。あわせて、制度の枠組みがマンション建替事業からマンション再生事業へと改められた後も、施行者が受ける登記を引き続き本措置の適用対象とすることが示されています。財務省 令和8年度税制改正の大綱(2/9)
見直しの一つとして、再生後マンション(マンション再生事業により建築等をされるマンション)のうち、単身者等以外の者が入居すべき住戸の床面積要件を40平方メートル以上(現行は50平方メートル以上)に引き下げることが盛り込まれました。より多様な住戸構成のマンションが対象になりやすくなる方向の見直しです。
また、マンション除却組合が受ける補償金支払手続開始の登記や、売渡請求権の行使により取得する区分所有権または敷地利用権の取得の登記も、免税の対象として位置づけられています。さらに、敷地の売買による土地の所有権移転登記などに係る軽減措置は、適用期限を3年延長するとされています。
適用時期
これらの延長・見直しは、令和8年度税制改正の大綱に基づくもので、大綱は令和7年12月26日に閣議決定されています。免税措置の適用期限は2年延長され、延長後の期限は令和10年3月31日までとされています。財務省 令和8年度税制改正の大綱(2/9)
大綱は改正の方針を示すものであり、最終的な要件や適用の細目は、その後に成立する法律や関係する政省令によって定まります。実際に建替えや敷地売却を進める際は、事業の時期が延長後の期限内に含まれるか、また自らの事業がどの区分の登記に当たるかを、公表される法令で確認する必要があります。制度の対象や手続は事業の状況によって判断が分かれるため、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
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マンションの建替えや再生に伴い施行者が受ける権利変換手続開始の登記などには、登録免許税を課さない免税措置が設けられています。令和8年度税制改正の大綱では、この措置の適用期限が2年延長され、延長後の期限は令和10年3月31日までとされました。あわせて、マンション建替事業からマンション再生事業への改正後も対象を引き継ぐこと、再生後マンションの住戸の床面積要件を40平方メートル以上に引き下げること、除却組合が受ける登記を対象とすること、敷地の売買による土地の所有権移転登記の軽減措置を3年延長することなどが示されています。税率など大綱で確定していない細目は、今後成立する法令で確認することが大切です。
参考文献
令和8年度税制改正・マンション建替えの登録免許税に関するよくある質問まとめ
Q.マンション建替えの登録免許税の免税措置とは何ですか。
A.マンション建替事業などの施行者が事業の遂行のために受ける権利変換手続開始の登記などについて、登録免許税を課さない特例です。老朽マンションの建替えや再生を税制面から後押しする仕組みです。
Q.免税措置の対象となる登記は何ですか。
A.権利変換手続開始の登記、補償金支払手続開始の登記、区分所有権または敷地利用権の取得の登記などが対象とされています。
Q.令和8年度税制改正の大綱で何が変わりましたか。
A.免税措置の適用期限が2年延長されました。あわせてマンション再生事業への改正後も対象を引き継ぐこと、再生後マンションの住戸の床面積要件を40平方メートル以上に引き下げることなどが示されています。
Q.床面積要件はどのように見直されましたか。
A.再生後マンションのうち単身者等以外の者が入居すべき住戸の床面積要件が、現行の50平方メートル以上から40平方メートル以上に引き下げられます。
Q.免税措置の適用期限はいつまでですか。
A.2年延長され、延長後の期限は令和10年3月31日までとされています。大綱は令和7年12月26日に閣議決定されています。
Q.敷地の売買の登記も免税になりますか。
A.敷地の売買による土地の所有権移転登記などは免税ではなく、税率を軽くする軽減措置の対象です。この軽減措置は適用期限が3年延長されるとされています。