令和7年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正の大綱では、個人所得課税の柱のひとつとしてNISA(少額投資非課税制度)の大きな見直しが盛り込まれました。これまでNISAのつみたて投資枠は18歳以上でなければ利用できませんでしたが、今回の改正で口座開設可能年齢の下限が撤廃され、0歳から17歳までの未成年者も対象となります。あわせて、未成年者向けの新しい勘定として未成年者特定累積投資勘定が創設されます。
お子さまやお孫さまの将来のために、早いうちから非課税で資産形成を始められる仕組みができるわけです。ただし、未成年者名義の口座に親や祖父母が資金を出す場合には、贈与税との関係を整理しておく必要があります。この点は、生前対策や世代間の資産移転を扱う相続税専門の視点からも見逃せないポイントです。
本記事では、令和8年度税制改正の大綱で示されたNISAの改正内容を、財務省の一次情報に沿って正確に整理したうえで、相続・贈与とのかかわりについても解説します。制度の全体像をつかみ、ご家庭の資産形成にどう活かせるかを考える手がかりにしてください。
令和8年度税制改正におけるNISAの見直し
口座開設可能年齢の下限撤廃
今回の改正の核心は、NISA(非課税口座)の口座開設可能年齢の下限を撤廃する点にあります財務省 令和8年度税制改正の大綱(1/9)。これにより、これまで18歳以上に限られていたNISAのつみたて投資枠が、0歳から17歳までの未成年者にも開放されます財務省 令和8年度税制改正の大綱の概要。
大綱では「次世代の資産形成支援」として位置づけられており、子ども自身の名義で長期にわたる非課税投資を積み立てられるようになります。生まれた年から口座を持てるため、これまで以上に長い時間を味方にした資産形成が可能になります。
未成年者特定累積投資勘定の創設
未成年者がNISAを利用するための新しい枠組みが未成年者特定累積投資勘定です。大綱では、非課税口座に未成年者特定累積投資勘定を設けられることとするとともに、特定非課税管理勘定(成長投資枠に相当する勘定)とは同時に設けられないとされています。つまり未成年者が使えるのは、つみたて投資枠に相当する部分に限られる設計です。
この勘定を設けられるのは、令和9年以後の各年で、その年1月1日において18歳未満である年および出生した日の属する年に限られます。生まれた年から17歳までの間、毎年この勘定を設定できるという建て付けです。
未成年者特定累積投資勘定の仕組み
年間投資枠と非課税保有限度額
未成年者特定累積投資勘定の投資上限は、成人向けのつみたて投資枠より小さく設定されています。口座保有者である子が0歳から17歳である間については、年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円です。大綱の本文でも、取得対価の合計額が60万円を超えないこと、および前年末までに受け入れている残高との合計が600万円を超えないことが要件として示されています。
非課税保有限度額の600万円は、年間60万円を10年間積み立てた場合の金額に相当します。成人になってから利用する通常のNISAの非課税保有限度額とは別枠として整理される点に注意が必要です。
| 改正の内容 | NISA口座開設可能年齢の下限撤廃・未成年者特定累積投資勘定の創設 |
|---|---|
| 対象年齢 | 0歳~17歳(口座保有者である子が18歳未満の間) |
| 利用できる勘定 | 未成年者特定累積投資勘定(つみたて投資枠に相当。成長投資枠に相当する勘定とは同時設定不可) |
| 年間投資枠 | 60万円 |
| 非課税保有限度額 | 600万円 |
| 勘定を設けられる年 | 令和9年以後の各年(1月1日時点で18歳未満の年および出生した年) |
払出しの制限と親権者の同意
未成年者名義の非課税投資であるため、資金の払出しには一定の制限が設けられています。大綱では、子がその年3月31日において12歳である年を境に、払出しが認められる条件が区分されています。
払出しの手続きは親権者等が行うこととされ、特定の事由に基づいて払い出す場合には、その払出しについて子本人の同意を得たことを証する書類の添付が求められます。子どもの意思を尊重しつつ、教育資金など本来の目的に沿って資金が使われるよう配慮された仕組みといえます。
18歳到達時の移行
未成年者特定累積投資勘定は、子が成人年齢に達するまでの制度です。大綱では、非課税口座を開設した子がその年3月31日において18歳である年(基準年)を区切りとして、それまでの間は特定課税未成年者口座において管理することとされています。18歳に達した後は、18歳以上向けの通常のNISA制度へ移行していくことになります。
つまり0歳から積み立てた資産を非課税のまま成人後の枠に引き継いでいけるため、幼少期からの長期投資を途切れさせずに続けられる設計になっています。
相続税専門の視点から見た世代間の資産移転
子のNISAへの資金拠出と贈与税
未成年の子ども自身に十分な収入があることは通常考えにくいため、未成年者特定累積投資勘定への入金は、実際には親や祖父母からの資金拠出(贈与)によって行われるのが一般的です。ここで押さえておきたいのが贈与税との関係です。
贈与税は、その年1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から、暦年課税に係る基礎控除額110万円を差し引いた残額に対してかかります。1年間の贈与合計が110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も不要です国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合。未成年者特定累積投資勘定の年間投資枠60万円は、この110万円の基礎控除の範囲内に収まるため、他に贈与がなければ贈与税の負担なく資金を移すことができます。
ただし、同じ年に他の贈与も受けている場合は、それらを合算して110万円を超えれば贈与税の対象となります。祖父母と親の双方から資金を出すようなケースでは、贈与の合計額に注意してください。
生前対策としての位置づけ
暦年贈与を活用して子や孫へ計画的に資産を移していくことは、相続財産の圧縮につながる生前対策の基本です。未成年者特定累積投資勘定は、移した資金をそのまま子ども名義で非課税運用できる点で、贈与と資産形成を同時に進められる仕組みといえます。
もっとも、名義だけを子どもにして実質的な管理・運用を親が握り続けている場合、いわゆる名義預金・名義財産と同様に、相続時に子ども本人の財産と認められないおそれもあります。贈与の事実を明確にし、資金の出どころや管理の実態を整えておくことが大切です。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
まとめ
令和8年度税制改正の大綱では、NISAの口座開設可能年齢の下限が撤廃され、0歳から17歳までの未成年者が利用できる未成年者特定累積投資勘定が創設されます。年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円で、令和9年以後の各年に設けられます。12歳を境に払出し条件が区分され、子本人の同意書類が求められる点、18歳到達を区切りに通常のNISAへ移行していく点も特徴です。
相続税専門の視点では、子どものNISAへの資金拠出は贈与にあたり、暦年課税の基礎控除110万円との関係を意識することが重要です。年間投資枠60万円は基礎控除の範囲内に収まりますが、名義財産と判断されないよう贈与の実態を整えておく必要があります。世代間の資産移転と資産形成を両立させる手段として、制度を正しく理解して活用してください。
参考文献
NISA未成年者制度のよくある質問まとめ
Q. NISAの口座開設可能年齢の下限撤廃はいつからですか。
A. 令和8年度税制改正の大綱では、未成年者特定累積投資勘定は令和9年以後の各年に設けられるとされています。改正内容は令和7年12月26日に閣議決定された大綱に基づくものです。
Q. 未成年者特定累積投資勘定の年間投資枠と非課税保有限度額はいくらですか。
A. 口座保有者である子が0歳から17歳である間については、年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円です。
Q. 未成年者はNISAの成長投資枠も使えますか。
A. 未成年者が利用できるのは未成年者特定累積投資勘定で、成長投資枠に相当する特定非課税管理勘定とは同時に設けられないとされています。つまり、つみたて投資枠に相当する部分に限られます。
Q. 子どものNISAに親や祖父母がお金を出すと贈与税はかかりますか。
A. 資金の拠出は贈与にあたりますが、暦年課税の基礎控除額は年110万円です。年間投資枠の60万円はこの範囲内に収まるため、他に贈与がなければ贈与税はかかりません。ただし同じ年の贈与を合算して110万円を超えると課税対象になります。
Q. 未成年者特定累積投資勘定から途中で払い出すことはできますか。
A. 払出しには制限があり、子がその年3月31日において12歳である年を境に認められる条件が区分されています。手続きは親権者等が行い、特定の事由による払出しには子本人の同意を証する書類の添付が求められます。
Q. 18歳になったら未成年者特定累積投資勘定はどうなりますか。
A. 18歳に達する年を区切りとして、それまでは特定課税未成年者口座で管理され、その後は18歳以上向けの通常のNISA制度へ移行していきます。積み立てた資産を非課税のまま引き継ぐことができます。
制度の適用や贈与の進め方はご家庭の状況によって異なります。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
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