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土地の無償返還の届出で相続税が変わる?借地権評価のポイント

目次
  1. 土地の無償返還に関する届出書ってどんなもの?
  2. なぜこの届出書を出すの?目的は「認定課税」の回避
  3. 届出を出すための重要な条件
  4. 「賃貸借」と「使用貸借」の違いが評価の分かれ道
  5. 使用貸借とみなされるケース
  6. 賃貸借とみなされるケース
  7. 無償返還の届出がある土地の相続税評価
  8. 土地(貸宅地)の評価は自用地評価額の80%に
  9. 借地権の評価はゼロになる
  10. 【表で比較】届出の有無による評価の違い
  11. 同族会社の株式評価への影響も忘れずに
  12. なぜ株式評価に関係するの?
  13. 株式の純資産価額に20%相当額が加算される
  14. 具体例でシミュレーションしてみましょう
  15. 貸主と会社の株主が別人なら加算されません
  16. 土地と株式で相続する人を分けられるという利点
  17. 無償返還の届出がある土地と小規模宅地等の特例
  18. 賃貸借契約であれば適用できる可能性があります
  19. 併用できれば評価額はさらに下がります
  20. 届出をする際の注意点
  21. 契約書に「無償返還」の文言を必ず入れる
  22. 提出期限は「遅滞なく」
  23. 届出書を提出していなかった場合
  24. まとめ
  25. 参考文献
  26. 土地の無償返還と借地権評価のよくある質問まとめ

ご親族が経営する会社に土地を貸している、というケースは珍しくありません。その際、「土地の無償返還に関する届出書」という書類を税務署に提出していると、相続が発生したときの土地の評価方法が大きく変わることがあります。この届出があるかないかで、借地権の評価や土地そのものの評価額がどう変わるのか、なんだか少し難しそうですよね。ここでは、その仕組みを一つひとつ、わかりやすく解説していきます。

土地の無償返還に関する届出書ってどんなもの?

まず、「土地の無償返還に関する届出書」とは何か、というところからご説明しますね。これは、個人(地主)と法人が土地の貸し借りをする際に、「この土地は、将来契約が終わったら、お金をもらわずにタダで返してもらいますよ」という約束を、貸主と借主の連名で税務署に届け出る書類のことです。特に、社長個人が所有する土地を、ご自身の会社に貸すといった同族間での取引でよく使われます。

なぜこの届出書を出すの?目的は「認定課税」の回避

この届出書を提出する最大の目的は、「権利金の認定課税」を避けるためです。通常、建物を建てる目的で土地を借りる場合、借主は地主に対して「権利金」という一時金を支払う慣習があります。もし、この権利金を支払わずに土地を借りると、税務署は「法人は借地権という価値のある財産をタダでもらった」とみなし、その法人に対して法人税を課税します。これが権利金の認定課税です。しかし、事前に「将来、無償で返します」という届出を出しておけば、借地権の価値は実質的にないとみなされ、この認定課税が行われなくなるのです。

届出を出すための重要な条件

この届出が有効になるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。特に大切なポイントをまとめました。

権利金の授受がないこと 借主から貸主へ、権利金やそれに類する経済的な利益の支払いが一切ないことが前提です。
契約書に無償返還の旨を明記 提出する届出書だけでなく、もとになる土地の賃貸借契約書の中に「契約が終了した際には、土地を無償で返還する」という内容の条項がはっきりと書かれている必要があります。
賃貸借契約であること 地代を全く支払わない「使用貸借」ではなく、きちんと地代の支払いがある「賃貸借」契約であることが、相続税評価でメリットを受けるための重要なポイントになります。

「賃貸借」と「使用貸借」の違いが評価の分かれ道

土地の無償返還の届出を理解する上で、貸し借りの契約が「賃貸借」なのか「使用貸借」なのかという点は、相続税評価に直接影響するとても重要なポイントです。この違いは、支払われている地代の額によって判断されます。

使用貸借とみなされるケース

もし地代が無料であったり、支払われていてもその土地にかかる固定資産税・都市計画税の年額と同程度以下の金額だったりする場合、その契約は「使用貸借」と判断されます。これは「好意でタダで貸しているだけ」という扱いです。この場合、土地の相続税評価は、誰にも貸していない更地の状態と同じ「自用地評価額」として100%評価されることになり、評価額の減額はありません。

賃貸借とみなされるケース

一方、地代がその土地の固定資産税・都市計画税の年額の2倍から3倍程度以上など、客観的に見て相応の対価を受け取っていると判断される場合は「賃貸借」契約とみなされます。土地の無償返還の届出をしている上でこの賃貸借契約に該当すると、相続税評価額を減額できる可能性があります。相続税対策を考えるなら、この状態を目指すことが大切です。

無償返還の届出がある土地の相続税評価

それでは、いよいよ本題です。「土地の無償返還に関する届出書」が提出されていて、かつ地代の授受がある「賃貸借」と認められる場合、土地と借地権の評価はどのようになるのでしょうか。

土地(貸宅地)の評価は自用地評価額の80%に

このケースでは、地主(被相続人)が所有していた土地の評価額は、原則として自用地評価額の80%で計算されます。なぜ100%ではないかというと、その土地の上には借主である法人の建物が建っており、土地の利用に制約がかかっている状態だからです。この利用の制約を考慮して、評価額が20%減額されるのです。例えば、自用地としての評価額が1億円の土地であれば、8,000万円として評価されることになります。

借地権の評価はゼロになる

一方で、借主である法人が持っている権利、つまり「借地権」の価額は、税務上ゼロとして扱われます。これが、この届出の最も特徴的な点です。借地権の価値がゼロだからこそ、法人は権利金の認定課税を受けずに済んだわけです。相続税の計算上も、この借地権は評価されません。
なお、借地権割合を使った一般的な借地権の相続税評価については借地権の相続税評価|借地権割合と評価方法をわかりやすく解説で詳しくご説明していますね。

【表で比較】届出の有無による評価の違い

届出がある場合とない場合で、評価がどれだけ違うのかを表で見てみましょう。(※借地権割合が60%の地域の場合)

状況 土地(貸主側)の評価額
無償返還の届出あり(賃貸借) 自用地評価額 × 80%
届出なし(通常の賃貸借) 自用地評価額 × (100% – 60%) = 自用地評価額 × 40%

このように、土地自体の評価額だけを見ると、届出がない通常の賃貸借の方が低くなります。しかし、話はこれだけでは終わりません。次に解説する「株式評価への影響」がとても重要になります。

同族会社の株式評価への影響も忘れずに

土地の評価額が80%になる一方で、借地権の評価がゼロになる。では、消えた20%分の価値はどこへ行ってしまったのでしょうか。税務上、この価値が完全になくなってしまうことはなく、別の形で評価に反映されます。それが、借主である同族会社の株式評価への影響です。

なぜ株式評価に関係するの?

土地の評価額を80%に減額したまま何もしなければ、財産全体の価値が20%分圧縮されてしまい、課税の公平性が保てなくなってしまいます。そこで、土地の評価で減額された20%分の価値は、借主である法人の側に潜在的な価値として存在している、と考えるのです。

株式の純資産価額に20%相当額が加算される

地主(被相続人)が、土地を貸していた同族会社の株主でもあった場合、その会社の株式を評価する際(純資産価額方式で計算する場合)に、土地の自用地評価額の20%に相当する金額を、「借地権」として会社の資産に加えて計算する必要があります。
つまり、

  • 土地の評価額:自用地評価額 × 80%
  • 株式評価で加算される額:自用地評価額 × 20%

となり、合計すれば財産全体の価値としては100%分がきちんと評価される仕組みになっています。この点は見落としやすいので、注意が必要です。

具体例でシミュレーションしてみましょう

自用地評価額1億円の土地を、Aさんが100%の株式を持つ同族会社に貸しているケースで考えてみますね。「土地の無償返還に関する届出書」を提出済みで、相当の地代を収受する賃貸借契約であることが前提です。

  • 土地(Aさんの相続財産)の評価額:1億円 × 80% = 8,000万円
  • 同族会社の株式評価で純資産価額に加算される借地権:1億円 × 20% = 2,000万円

土地の評価額は2,000万円下がりますが、その分だけ会社の株式の評価額が2,000万円上がります。財産全体で見た評価額は変わらず、「どの財産として評価されるか」が変わる点を押さえておいてくださいね。

貸主と会社の株主が別人なら加算されません

例えば、土地の貸主がご主人で、会社の株主が奥様というように、貸主と株主が異なる場合はどうでしょうか。このケースでは、原則として会社の純資産価額に借地権20%相当額を算入する必要はありません。土地の評価は80%に下がり、株価への上乗せもないため、結果として評価額の圧縮効果は大きくなります。ただし同族関係者間の取引ですので、地代の水準や契約の実態は税務署から厳しく見られます。専門家と相談しながら進めるのが安心です。

土地と株式で相続する人を分けられるという利点

「土地の評価が20%下がっても株式が20%上がるなら、結局は同じでは?」と感じるかもしれませんね。財産の総額だけを見ればそのとおりです。ただ、土地は配偶者が、株式は事業を継ぐお子様が相続するというように、財産の種類ごとに引き継ぐ人を分けられるという利点があります。配偶者の税額軽減をどの財産に効かせるかを設計できるため、遺産分割の自由度が高まるのです。有利・不利は状況によって変わりますので、事前のシミュレーションが大切になります。

無償返還の届出がある土地と小規模宅地等の特例

相続税対策の切り札ともいえる「小規模宅地等の特例」ですが、無償返還の届出をしている土地でも使えるのか、気になるところですよね。

賃貸借契約であれば適用できる可能性があります

結論から言うと、要件を満たせば適用できる可能性があります。無償返還の届出をしている土地は、その利用状況から「貸付事業用宅地等」や「特定同族会社事業用宅地等」に該当することが多いためです。いずれも「対価を得て継続的に貸し付けていること」が前提になりますので、先ほどご説明した適正な地代を受け取る賃貸借契約であることが鍵になります。反対に使用貸借とみなされる場合は貸付事業とはいえず、この特例は使えません。

併用できれば評価額はさらに下がります

  • 貸付事業用宅地等:200㎡までの部分について評価額を50%減額
  • 特定同族会社事業用宅地等:400㎡までの部分について評価額を80%減額

例えば自用地評価額1億円・200㎡の土地で、貸付事業用宅地等の特例が使えるケースでは、まず無償返還の届出により8,000万円(1億円 × 80%)となり、そこからさらに50%減額されて4,000万円になります。もとの評価額から60%の減額ですね。適用要件は細かく定められていますので、実際に使えるかどうかは必ず個別に確認してください。

届出をする際の注意点

この制度を正しく利用し、相続時に適切な評価を受けるためには、手続き上の注意点を守ることが大切です。

契約書に「無償返還」の文言を必ず入れる

繰り返しになりますが、税務署に届出書を提出するだけでなく、当事者間で交わす土地の賃貸借契約書の中に、「契約終了時には借主は貸主に対価を求めず無償で土地を返還するものとする」といった趣旨の条項を必ず記載してください。これがなければ、届出の前提が崩れてしまいます。

提出期限は「遅滞なく」

届出書の提出期限は「契約後、遅滞なく」とされており、明確な日付が定められているわけではありません。しかし、実務上は、賃貸借契約を締結した事業年度の法人税の確定申告書の提出期限までに行うのが一般的です。もし忘れてしまった場合でも、後から提出が認められることもありますが、速やかに行動することが望ましいです。

届出書を提出していなかった場合

もし届出書を提出しておらず、権利金の授受もないまま土地を貸している場合、法人側で「権利金の認定課税」の問題が生じている可能性があります。この状態では法人に借地権が存在する(またはそうみなされる)ことになりますので、土地の評価も株価の評価も、ここまでご説明した取り扱いとは全く異なってきます。届出書の提出状況が分からないときは、まず被相続人やご関係の会社が保管している控えを探し、見つからなければ土地の所在地を管轄する税務署に問い合わせて確認してみてくださいね。

まとめ

「土地の無償返還に関する届出書」は、同族会社への土地の貸し付けにおける法人税の認定課税を回避するための重要な手続きです。この届出を行った上で、適切な地代を収受する「賃貸借契約」であれば、相続発生時に土地の評価額を自用地評価額の80%に抑えることができます。
ただし、地主がその会社の株主でもある場合には、会社の株式評価において自用地評価額の20%相当額が資産として加算されるため、財産全体の評価額が大きく減るわけではありません。しかし、土地と株式という個別の財産の評価額が変わることで、遺産分割や小規模宅地等の特例の適用などに影響を与える可能性があります。
地代の設定や契約書の作成など、専門的な知識が必要な場面も多いため、不安な点があれば税理士などの専門家にご相談されることをお勧めします。

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参考文献

土地の無償返還と借地権評価のよくある質問まとめ

Q.土地の無償返還の届出をすると、借地権の評価はどうなりますか?

A.届出を提出すると、税務上、借地権の価額はゼロとして扱われます。これにより、将来の相続税や贈与税の負担を軽減できる可能性があります。

Q.なぜ「土地の無償返還に関する届出書」を提出する必要があるのですか?

A.この届出書を提出しないと、権利金の授受がなくても借地権の認定課税が行われる可能性があります。届出によって、借地権の価額がゼロであることを税務署に明確に示すことができます。

Q.無償返還の届出にデメリットはありますか?

A.借地人(法人)側から見ると、将来土地を返還する際に借地権を地主(個人)に売却して利益を得ることができなくなります。また、地主側の土地は自用地評価額の80%評価となり、借地権割合を差し引ける通常の貸宅地(借地権割合60%なら40%評価)に比べると、相続税評価額は高くなります。

Q.届出はいつでも提出できますか?

A.土地の貸借を開始した後、遅滞なく所轄の税務署長に提出する必要があります。タイミングを逃すと認められない場合があるため注意が必要です。

Q.届出をすれば、地代は無償でも良いのですか?

A.いいえ、無償返還の届出をしても、通常(相当)の地代の授受は必要です。地代が低すぎると、差額分が地主から借地人への贈与とみなされ、課税される可能性があります。

Q.無償返還の届出をしている土地に小規模宅地等の特例は使えますか?

A.適正な地代を受け取る賃貸借契約であれば、貸付事業用宅地等(200㎡まで50%減額)や特定同族会社事業用宅地等(400㎡まで80%減額)として適用できる可能性があります。使用貸借の場合は貸付事業に当たらないため適用できません。

Q.貸主と同族会社の株主が別人の場合も株価に20%が加算されますか?

A.いいえ。貸主と株主が別人であれば、原則として会社の純資産価額に借地権20%相当額を算入する必要はありません。土地は80%評価のままとなります。

Q.この届出は個人間でも利用できますか?

A.いいえ、この届出は原則として、地主が個人で借地人が法人の場合や、地主・借地人ともに法人の場合に適用されます。個人間の土地の貸し借り(使用貸借)では、この届出は適用されません。

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