相続税の延滞税は、「追加で納める相続税(本税)×延滞税の割合×遅れた日数÷365日」で計算します。割合は年ごとに決まっていて、令和8年は年2.8%(納期限の翌日から2か月以内)と年9.1%(2か月経過後)、令和4年から令和7年までは年2.4%と年8.7%です。修正申告や期限後申告では、延滞税とは別に過少申告加算税・無申告加算税がかかることもあります。この記事では、相続税の延滞税がいくらになるのかを計算例でお示ししたうえで、加算税を含めたペナルティ全体と、負担を小さくするポイントをご説明しますね。
相続税の延滞税・加算税の早見表
まず、相続税の申告や納付が遅れたり、申告額が少なかったりしたときにかかるペナルティを一覧にします。延滞税は「納付が遅れたこと」への利息、加算税は「申告が正しくなかったこと・遅れたこと」への行政上のペナルティで、性質が異なります。
| ペナルティ | かかる場面 | 割合の目安 |
|---|---|---|
| 延滞税 | 期限までに納付しなかった/修正申告・期限後申告で追加の税額がある | 令和8年:年2.8%・年9.1%(日割り) |
| 過少申告加算税 | 期限内に申告したが、税額が少なかった(修正申告・更正) | 調査通知前の自主修正は0%/調査通知後5%〜/調査後10%〜 |
| 無申告加算税 | 申告期限までに申告しなかった(期限後申告・決定) | 調査通知前の自主申告は5%/それ以外10%〜30% |
| 重加算税 | 財産を隠す・仮装するなどして申告した(しなかった) | 35%(無申告の場合は40%) |
延滞税は本税だけを対象に計算し、加算税に対しては延滞税はかかりません。それぞれの中身を順にご説明しますね。
相続税の延滞税とは?かかる場面と法定納期限
延滞税は、税金が定められた期限までに納付されないときに、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて自動的に課される利息に相当する税金です。相続税では、次のような場合に延滞税がかかります国税庁 No.9205 延滞税について。
- 期限内に申告したが、相続税を法定納期限までに納めなかったとき
- 期限後申告書や修正申告書を提出し、納める税額があるとき
- 税務署から更正や決定を受け、納める税額があるとき
相続税の申告期限と納付期限は同じで、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です。期限が土日・祝日にあたるときは、その翌日が期限になります国税庁 No.4205 相続税の申告と納税。修正申告で追加の税額が見つかった場合も、延滞税は修正申告をした日からではなく、当初の法定納期限の翌日から数え始める点にご注意ください。
延滞税の割合(令和8年は年2.8%・9.1%)
延滞税の割合は、本来は年7.3%・年14.6%ですが、令和3年以降は「延滞税特例基準割合」を使った低い割合が適用されています。延滞税特例基準割合は、銀行の短期貸出金利の平均をもとに財務大臣が毎年告示する割合に年1%を加えたものです。
実際の割合は、次のとおりです。延滞期間が年をまたぐときは、それぞれの年の割合で日数を分けて計算します。
| 期間 | 納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 2か月を経過した日以後 |
|---|---|---|
| 令和8年1月1日〜令和8年12月31日 | 年2.8% | 年9.1% |
| 令和4年1月1日〜令和7年12月31日 | 年2.4% | 年8.7% |
| 令和3年1月1日〜令和3年12月31日 | 年2.5% | 年8.8% |
令和9年以降の割合は、前年の11月30日までに告示される割合で決まります。計算する時点で国税庁の最新の割合を確認してくださいね。
相続税の延滞税の計算方法
延滞税は、法定納期限の翌日から完納する日までの日数を、低い割合の期間と高い割合の期間に分けて計算し、合計します国税庁 延滞税の計算方法。
低い割合と高い割合の境目は「納期限」で決まる
高い割合に切り替わるのは「納期限の翌日から2か月を経過した日」からです。この納期限は、申告の種類によって次のように変わります。
| 申告の種類 | 納期限 |
|---|---|
| 期限内申告 | 法定納期限(申告期限と同じ日) |
| 期限後申告・修正申告 | 申告書を提出した日 |
| 更正・決定 | 更正通知書を発した日から1か月後の日 |
つまり、修正申告や期限後申告をした場合は、法定納期限の翌日から「申告書を提出した日の2か月後」までが低い割合で、それを過ぎても納付していない日数だけが高い割合になります。申告と同時に納付すれば、高い割合の期間は生じません。
端数の処理と「延滞税がかからない」ケース
延滞税の計算には、次のような端数のルールがありますe-Gov法令検索 国税通則法。
- 計算の基礎となる本税に1万円未満の端数があるときは、切り捨てて計算する
- 計算した延滞税に100円未満の端数があるときは、切り捨てる
- 延滞税の全額が1,000円未満のときは、納める必要がない
追加の税額が小さく、すぐに納付した場合は、延滞税がかからないこともあります。
計算例1:自主的に修正申告し、同じ日に納付した場合
次のケースで計算してみますね(割合は上の表の令和7年・令和8年の割合を使います)。
- 相続開始:令和7年2月10日(申告期限・法定納期限は令和7年12月10日)
- 期限内に申告・納付済み。その後、申告漏れの預金に気づいた
- 令和8年4月10日に修正申告書を提出し、追加の相続税300万円を同じ日に納付
延滞税の対象期間は令和7年12月11日から令和8年4月10日までです。修正申告と同じ日に納付しているので、全期間が低い割合になります。
税務署の調査通知より前に自主的に修正申告しているので、このケースでは過少申告加算税はかかりません(後ほどご説明します)。
計算例2:修正申告だけ先に出し、3か月後に納付した場合
計算例1と同じ条件で、修正申告は令和8年4月10日に提出し、納付だけ令和8年7月10日になった場合です。納期限(4月10日)の翌日から2か月を経過する日は6月10日なので、6月11日以後は高い割合になります。
納付が3か月遅れただけで、延滞税は計算例1の2倍以上になりました。高い割合の期間は、わずか30日でも負担が大きく増えます。申告と納付のタイミングの考え方は、次の記事でくわしくご説明しています。
関連コラム相続税の修正申告、延滞税はいつ納めるかで変わる?申告と納付の順番を解説▸
延滞税の計算期間の特例(1年を超える部分は除外)
修正申告が申告期限から長く経ってからになった場合、延滞税が際限なく増えないように、計算期間を短くする特例があります。期限内申告をしていて、法定申告期限から1年を経過してから修正申告(または更正)があったときは、「法定申告期限から1年を経過する日の翌日」から「修正申告書を提出した日」までの期間は延滞税の計算に含めません。
期限後申告をしていた場合も同じように、期限後申告書の提出から1年を経過してから修正申告(または更正)があったときは、その1年経過後から修正申告書の提出日までの期間が除かれます。
ただし、偽りその他不正の行為により税金を免れていた場合(重加算税が課される場合など)は、この特例は使えません。この場合は、法定納期限の翌日から納付の日までの全期間に延滞税がかかります。
修正申告でかかる過少申告加算税の割合
過少申告加算税は、期限内に提出した申告の税額が少なかったために、修正申告や更正で追加の税額が出たときにかかります。割合は、修正申告をしたタイミングで次のように変わります。
| 修正申告のタイミング | 割合 |
|---|---|
| 税務署の調査通知より前に自主的に修正申告 | かからない |
| 調査通知の後、調査による更正を予知する前に修正申告 | 5%(下の基準額を超える部分は10%) |
| 調査を受けた後の修正申告・更正 | 10%(下の基準額を超える部分は15%) |
「基準額」は、期限内申告で納めた税額と50万円のいずれか多い金額です。追加の税額のうち、この基準額を超える部分だけ割合が5%上がります。
過少申告加算税の計算例
当初の申告で納めた相続税が400万円で、税務調査を受けて追加の相続税600万円を修正申告で納める場合です。基準額は400万円(400万円と50万円の多いほう)なので、600万円のうち400万円を超える200万円に15%がかかります。
これに延滞税が加わります。同じ誤りでも、調査通知より前に自主的に修正申告していれば、この70万円はかかりませんでした。
なお、調査の現場では、実地調査に入る前の「日時の連絡」の段階で修正申告書を出した場合は、原則として調査による更正を予知したものには当たらないとされています。一方、臨場調査や申告内容の指摘によって調査があったことを知った後の修正申告は、原則として「予知してされたもの」に当たります国税庁 相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)。
期限後申告でかかる無申告加算税の割合
申告期限までに相続税の申告をしなかった場合は、期限後申告や税務署の決定によって無申告加算税がかかります。令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する相続税では、割合は次のとおりです。
| 期限後申告のタイミング | 50万円以下の部分 | 50万円超300万円以下の部分 | 300万円超の部分 |
|---|---|---|---|
| 調査通知より前に自主的に期限後申告 | 一律5% | ||
| 調査通知の後、決定を予知する前に期限後申告 | 10% | 15% | 25% |
| 調査を受けた後の期限後申告・決定 | 15% | 20% | 30% |
たとえば、調査を受けた後に期限後申告をして、納める相続税が500万円だった場合の無申告加算税は次のとおりです。
また、過去5年以内に相続税で無申告加算税(調査を受けた後のもの)や重加算税を課されたことがある場合などには、さらに10%が加算されます。
申告期限から1か月以内なら無申告加算税がかからない場合も
うっかり期限を過ぎてしまっても、次のすべてにあてはまれば、無申告加算税はかかりませんe-Gov法令検索 国税通則法施行令。
- 法定申告期限から1か月を経過する日までに期限後申告をした
- 調査による決定を予知して出した申告ではない
- 期限後申告で納める税額の全額を、法定納期限までに納付していた
- 過去5年以内に相続税で無申告加算税・重加算税を課されておらず、この取扱いも受けていない
この場合も、遅れた日数分の延滞税は別に計算されます。
遺産分割がまとまらないことは「正当な理由」にならない
期限内に申告しなかったことに正当な理由があれば無申告加算税はかかりませんが、相続人の間で争いがあって財産の全容がわからなかった、遺産分割協議ができなかったという理由は、正当な理由に当たらないとされています。分割がまとまらないときも、法定相続分などで期限内にいったん申告しておくことが大切です。
関連コラム相続税の未分割申告|法定相続分で期限内に申告する手順▸
財産を隠した場合の重加算税
財産を意図的に隠したり、書類を偽ったりして、そのとおりに申告(または無申告)をしていた場合は、過少申告加算税や無申告加算税に代えて重加算税が課されます。割合は、過少申告加算税に代わる場合は35%、無申告加算税に代わる場合は40%です。過去5年以内に相続税で無申告加算税や重加算税を課されたことがある場合は、さらに10%が加算されます。
重加算税が課されるようなケースでは、先ほどの延滞税の計算期間の特例も使えないため、延滞税・加算税ともに大きな負担になります。
延滞税と利子税の違い
似た言葉に「利子税」があります。利子税は、相続税を一度に金銭で納めることが難しいときに、担保を提供して年払いで納める延納の許可を受けた場合に、延納期間中にかかる税金です国税庁 No.4211 相続税の延納。
延納は相続税額が10万円を超えることなどが要件で、修正申告や期限後申告で追加になった税額も、申告書を提出する日までに延納申請書を出せば延納の対象にできます。延納の許可を受けずに納付が遅れた部分には、利子税ではなく延滞税がかかります。
相続税のペナルティを小さくするポイント
誤りに気づいたら、調査通知より前に修正申告する
過少申告加算税は、税務署の調査通知より前に自主的に修正申告すればかかりません。延滞税も日割りで増えていくので、申告漏れに気づいたら1日でも早く修正申告することが、負担を減らすいちばんの近道です。
修正申告と納付は同じ日に済ませる
計算例2のとおり、申告書を出した日の2か月後を過ぎると延滞税の割合が上がります。修正申告書を出すときは、追加の税額もあわせて納付するのが基本です。すぐに一括で用意できない場合は、延納の要件にあてはまるかを申告前に確認し、難しい場合は早めに税務署へ相談してくださいね。
分割がまとまらなくても期限内に申告する
無申告加算税は、自主的な期限後申告でも5%かかり、調査後には最大30%になります。遺産分割が終わっていなくても、まず期限内に申告しておけば、無申告加算税の心配はなくなります。
実務では、相続税の修正申告が必要になるきっかけとして、名義預金や生前贈与の加算漏れ、土地の評価の見直しなどが多く見られます。追加の税額や延滞税の見込みを早めに把握しておくと、納付資金の準備もしやすくなります。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
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まとめ
相続税の延滞税は、追加で納める本税に、年ごとの割合(令和8年は年2.8%・年9.1%)と遅れた日数をかけて計算します。修正申告や期限後申告では、延滞税は当初の法定納期限の翌日から数え始め、申告書を出した日の2か月後を過ぎると高い割合に変わります。
延滞税とは別に、修正申告では過少申告加算税(調査通知前の自主修正なら0%)、期限後申告では無申告加算税(5%〜30%)、財産を隠した場合は重加算税(35%・40%)がかかります。誤りに気づいたら調査通知より前に、申告と納付を同じ日に済ませることが、ペナルティをいちばん小さくする方法です。
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参考文献
- 国税庁 No.9205 延滞税について
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 延滞税の計算方法
- e-Gov法令検索 国税通則法
- 国税庁 相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)
- e-Gov法令検索 国税通則法施行令
- 国税庁 No.4211 相続税の延納
相続税の延滞税に関するよくある質問
Q. 相続税の修正申告をしたら、必ずペナルティがかかりますか?
A. 税務署の調査通知より前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。ただし、追加で納める税額がある場合は、当初の法定納期限の翌日から納付の日までの延滞税がかかります(全額が1,000円未満なら納める必要はありません)。
Q. 令和8年の延滞税の割合はいくらですか?
A. 令和8年1月1日から12月31日までの期間は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です。令和4年から令和7年までの期間は年2.4%・年8.7%でした。
Q. 修正申告の延滞税はいつから計算されますか?
A. 修正申告をした日からではなく、当初の相続税の法定納期限(申告期限)の翌日から計算します。ただし、期限内申告から1年を超えて修正申告をした場合は、1年を経過した日の翌日から修正申告の日までの期間は除かれます(不正があった場合を除きます)。
Q. 相続税の申告期限を過ぎてしまいました。どうすればよいですか?
A. できるだけ早く期限後申告と納付をしてください。調査通知より前の自主的な期限後申告なら無申告加算税は5%で、法定申告期限から1か月以内で一定の要件を満たせばかからないこともあります。延滞税は遅れた日数分かかります。
Q. 延滞税と利子税の違いは何ですか?
A. 延滞税は、納付が期限より遅れたことに対する利息に相当する税金です。利子税は、延納の許可を受けて分割で納める期間にかかる税金です。修正申告で追加になった税額も、要件を満たせば延納を申請できます。
Q. 重加算税はどんな場合に課されますか?
A. 財産を意図的に隠したり、事実を仮装したりして申告していた場合に、過少申告加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%の重加算税が課されます。この場合は延滞税の計算期間の特例も使えません。


