最初の相続の遺産分割協議や相続登記が終わらないうちに相続人がさらに亡くなり、次の相続が重なった状態を数次相続と呼びます。この場合に問題となるのが、途中の相続(中間の相続)の登記を省略して、まとめて1回の申請で最終の取得者へ名義を移せるかどうかです。令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化され、放置による過料のリスクも生じているため、数次相続における登記の進め方を正しく理解しておく必要があります。この記事では、数次相続の相続登記を1回でまとめられるケースと、中間の登記を省略できないケースの要件を、登記手続きの実務の角度から解説します。
数次相続で相続登記が問題になる場面
数次相続とは、被相続人が亡くなって相続が開始した後、その相続について遺産分割や相続登記が完了しないうちに、相続人の1人がさらに死亡して次の相続が発生した状態を指します。たとえば、父が亡くなり、その相続登記をしないうちに相続人である長男が亡くなった場合、父の相続(一次相続)と長男の相続(二次相続)が連続して発生します。
本来であれば、一次相続で不動産をいったん相続人名義に登記し、次に二次相続でその名義をさらに移すという二段階の登記が必要になります。しかし、途中の名義人がすでに亡くなっている以上、中間の登記に実益が乏しい場面もあります。そこで登記実務では、一定の要件を満たす場合に限り、中間の相続の登記を省略して最終の取得者名義へ直接移す中間省略登記が認められています。数次相続の基本的な考え方については、以下の記事もあわせてご確認ください。
遺産分割協議中に相続人が死亡!手続きと数次相続をわかりやすく解説
相続登記をまとめて1回でできるケース
数次相続において中間の相続の登記を省略し、まとめて1回の申請で最終の取得者名義へ移せるのは、中間の相続が単独相続であった場合です。ここでいう単独相続とは、中間の時点で不動産を取得する相続人が1人に確定していた状態を指します。
中間の相続人が1人だけの場合
一次相続の相続人がもともと1人しかいなかった場合は、その1人が不動産を取得することが当然に確定しているため、中間の登記を省略できます。被相続人から最終の取得者へ、所有権を直接移す1件の相続登記が可能です。
遺産分割協議によって中間の取得者が1人に確定した場合
一次相続の相続人が複数いた場合でも、遺産分割協議や相続放棄などによって、結果として中間の時点で不動産を取得する相続人が1人に確定していれば、中間の相続は単独相続として扱われます。この場合も中間の登記を省略し、まとめて1件で申請できます。法務局は数次相続に対応した申請書様式として「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)」を用意しており、数次にわたる相続を1件の申請でまとめる書式が示されています[不動産登記の申請書様式について:法務局]。
まとめて申請できる場合の登記の考え方を整理すると、次のとおりです。
| 登記の名義が動く方向 | 被相続人から最終の取得者へ直接(中間の名義を省略) |
| 申請の件数 | 1件(登録免許税も原則1件分) |
| 登記原因 | 中間と最終の相続日を連記した「相続」 |
相続のご質問、まずは無料相談
税理士法人プライムパートナーズ
無料相談はこちら▸
中間の登記を省略できないケース
中間の相続が単独相続でない場合、すなわち中間の時点で不動産を複数の相続人が共有する状態になっていた場合は、中間の登記を省略できません。この場合は、いったん共有名義とする一次相続の登記を行い、その後に二次相続の登記を行うという二段階の申請が必要になります。
中間の相続人が複数のまま共有していた場合
一次相続の段階で遺産分割が行われず、複数の相続人が法定相続分どおりに不動産を共有していた状態のまま次の相続が発生した場合は、中間の共有関係が登記上に反映されるべき権利変動として存在します。そのため中間省略はできず、2件の登記が必要です。
まとめて申請できるかどうかの判断基準
数次相続の相続登記を1件でまとめられるかどうかは、中間の相続が単独相続に整理できるかという一点にかかります。判断の目安は次のとおりです。
| 中間の相続の状態 | 登記のまとめ方 |
|---|---|
| 中間の取得者が1人に確定 | 1件でまとめて申請可(中間省略可) |
| 中間で複数人が共有 | 2件に分けて申請(中間省略不可) |
なお、遺産分割協議の当事者となるのは、数次相続では一次相続の相続人の地位を承継した二次相続以降の相続人です。関係者が増え、必要な戸籍も多くなるため、戸籍謄本などの束を一度提出すれば繰り返しの提出が不要になる法定相続情報証明制度を活用すると、手続きの負担を軽減できます[「法定相続情報証明制度」について:法務局]。
相続登記義務化と数次相続の期限
令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。相続(遺言も含みます)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。また、遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければなりません。正当な理由なくこの義務に違反した場合は10万円以下の過料の適用対象となります[相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地 !~:東京法務局]。
令和6年4月1日より前に相続が開始している場合も、3年の猶予期間が設けられたうえで義務化の対象となります[相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地 !~:東京法務局]。数次相続では過去の相続をそのまま放置している例が少なくないため、義務化の期限との関係に注意が必要です。過去の相続と義務化の関係については、以下の記事で詳しく解説しています。
申請書様式と手続きの確認先
数次相続の相続登記を自分で進める場合は、法務局が公開している登記手続きの案内と申請書様式を確認したうえで進めると確実です。相続人向けの手続きの流れは登記手続ハンドブックにまとめられています[相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック):法務局]。中間省略の可否や登記原因の書き方は、事案によって判断が分かれることがあるため、迷う場合は専門家への相談をおすすめします。
まとめ
数次相続で相続登記をまとめて1回の申請にできるかどうかは、中間の相続が単独相続に整理できるかで決まります。中間の取得者が1人に確定していれば中間省略登記が可能で、被相続人から最終の取得者へ直接名義を移す1件の申請で完了します。一方、中間で複数の相続人が共有する状態になっていた場合は中間省略ができず、2件に分けて登記する必要があります。令和6年4月1日からの相続登記義務化により、取得を知った日や遺産分割の成立日から3年以内の申請が求められ、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となります。過去の相続を含めて放置している場合は、早めに登記の要件を確認し、必要に応じて専門家の力を借りて手続きを進めることが大切です。
相続登記や数次相続の手続き、相続税申告に不安がある場合は、相続税申告と生前対策を専門とする税理士法人プライムパートナーズにご相談ください。なお、本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の事案への適用や具体的な判断については専門家にご確認ください。
参考文献
- 東京法務局 相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)
- 法務局 不動産登記の申請書様式について
- 法務局 相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック)
- 法務局 「法定相続情報証明制度」について
数次相続と相続登記のまとめ方に関するよくある質問まとめ
Q. 数次相続の相続登記は1回でまとめられますか。
A. 中間の相続が単独相続であった場合は、中間の登記を省略して1件の申請でまとめられます。中間の取得者が相続人1人に確定していることが要件です。
Q. 中間省略登記ができないのはどのような場合ですか。
A. 中間の時点で複数の相続人が不動産を共有していた場合は中間省略ができません。いったん共有名義の登記をしたうえで、次の相続の登記を行う2件の申請が必要です。
Q. 一次相続の相続人が複数いても1件にまとめられますか。
A. 遺産分割協議や相続放棄などによって、中間の時点で不動産を取得する相続人が1人に確定していれば、単独相続として扱われ1件にまとめられます。
Q. 数次相続でも相続登記の義務化の対象になりますか。
A. 対象になります。令和6年4月1日より前に開始した相続も、3年の猶予期間が設けられたうえで義務化の対象です。取得を知った日や遺産分割の成立日から3年以内の申請が求められます。
Q. 相続登記を怠るとどうなりますか。
A. 正当な理由なく申請義務に違反した場合は、10万円以下の過料の適用対象となります。過料は行政上のペナルティです。
Q. 数次相続の申請書様式はどこで確認できますか。
A. 法務局のホームページに「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)」の様式と記載例が掲載されています。相続人向けの登記手続ハンドブックとあわせて確認できます。