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二世帯住宅と小規模宅地の特例|区分所有登記で決まる80%減額

2026-07-03
目次

親御様と同じ建物で暮らす二世帯住宅は、相続税の負担を大きく軽くできる可能性を秘めています。自宅の土地の評価額を最大80%も引き下げられる小規模宅地等の特例が使えるかどうかで、納める税額が数百万円単位で変わることも珍しくありません。ところが、同じ二世帯住宅でも「使える家」と「使えない家」に分かれてしまう分岐点があります。それが区分所有登記の有無です。内部で行き来できない完全分離型でも、登記の仕方次第で結論が正反対になるという実務の肝を、判断の順序に沿って整理します。

二世帯住宅と小規模宅地等の特例の結論

はじめに結論からお伝えします。二世帯住宅で小規模宅地等の特例が使えるかどうかは、建物の内部が繋がっているかどうかではなく、建物が区分所有登記されているかで判断します。ひとつの建物として登記(共有登記や単独登記)されていれば、玄関も内部も完全に分かれた完全分離型であっても、子世帯の敷地部分まで含めて特例の対象にできます。反対に、親世帯と子世帯を別々の住戸として登記する区分所有登記がされていると、原則として子世帯の居住部分には特例が使えなくなります。

この取扱いは平成25年度の税制改正で整理されたもので、それ以降は建物の構造ではなく登記形態が判断の中心になりました。まずは特例そのものの内容を確認したうえで、二世帯住宅への当てはめを見ていきます。

小規模宅地等の特例の概要

小規模宅地等の特例とは、被相続人(亡くなった方)が住んでいた、または事業に使っていた宅地等について、一定の面積までその評価額を減額できる制度です。二世帯住宅の自宅敷地は、このうち特定居住用宅地等に当たります。

限度面積330㎡と減額割合80%

特定居住用宅地等に該当する場合、限度面積330㎡までの部分について、評価額を80%減額できます[国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)]。たとえば評価額5,000万円・面積300㎡の自宅敷地であれば、次のように減額されます。

5,000万円 × 80% = 4,000万円(減額される額)
5,000万円 − 4,000万円 = 1,000万円(特例適用後の評価額)

この例では課税対象となる土地の評価額が1,000万円まで下がります。減額の効果が非常に大きいため、二世帯住宅では特例が使えるかどうかが相続税額を左右します。特例の基本要件は、次の関連記事でも詳しく整理しています。

小規模宅地の特例で自宅の要件は?330㎡80%減額を解説

特定居住用宅地等の主な要件

特定居住用宅地等として特例を受けるには、その宅地等を取得する人ごとに要件が定められています。二世帯住宅で問題になりやすいのは、被相続人と同じ建物に住んでいた親族が取得するケースです。この場合、相続開始の直前からその家屋に住み、かつ相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、その宅地等を相続税の申告期限まで保有していることが求められます[国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)]

なお、被相続人と生計を一にしていた親族の居住用宅地等についても、申告期限まで引き続き居住し、その宅地等を申告期限まで保有していれば特例の対象となります[国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)]。二世帯住宅では、この「同じ建物に住む親族」「生計を一にする親族」という考え方の当てはめが、登記形態によって変わってくる点に注意が必要です。

二世帯住宅と区分所有登記の関係

ここが本記事の中心となる論点です。国税庁の取扱いでは、被相続人が住んでいた一棟の建物について、その敷地のうち被相続人の親族が住んでいた部分も特例の対象に含めることができます。ただし、その建物が建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物である場合は、この取扱いから除かれます[国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)]。この「同法第1条に該当する建物」というのが、住戸ごとに登記を分ける区分所有登記がされた建物を指します。

共有登記・単独登記の場合の取扱い

建物全体をひとつの登記としている場合、つまり親子の共有登記や被相続人の単独登記の場合は、区分所有登記に該当しません。この場合、被相続人が住んでいた一棟の建物に子世帯も同居していたものとして扱われ、親世帯の居住部分だけでなく子世帯の居住部分に対応する敷地まで含めて特定居住用宅地等の対象にできます。玄関が別々で内部を行き来できない完全分離型であっても、この結論は変わりません。

区分所有登記の場合の取扱い

一方、親世帯の住戸と子世帯の住戸を別々の区分建物として登記している場合は、それぞれが独立した建物として扱われます。すると、子世帯は「被相続人が住んでいた建物」に住んでいたことにならず、生計を一にしていないかぎり、子世帯の居住部分の敷地には原則として特例を使えません。同じ建物に見えても、登記だけが理由で子世帯部分が対象外になってしまうのです。この点を、構造ではなく登記で判断するという軸で押さえておくことが大切です。

登記形態による適用可否

登記の形態 子世帯部分への
特例の適否
共有登記・単独登記
(一棟の建物)
完全分離型でも対象に含められる
区分所有登記
(住戸ごとに別登記)
原則として対象外(生計一の場合を除く)

このように、判断の出発点はあくまで登記です。ご自宅の建物がどちらに当たるか分からない場合は、登記事項証明書で「区分建物」の記載があるかどうかを確認するのが第一歩になります。

二世帯住宅で特例を受けるための整理

ここまでの内容を、実際に相続が起きたときの確認順序として整理します。

確認の順序

まず登記事項証明書を取得し、建物が区分所有登記されているかを確認します。区分所有登記がなければ、完全分離型であっても子世帯部分を含めて特例を検討できます。区分所有登記がある場合は、子世帯が生計を一にしていたかどうか、また親世帯の居住部分だけで特例を受けられないかを検討します。いずれの場合も、取得者ごとに申告期限までの居住・保有の継続という要件を満たす必要があります。

建築前・生前の検討事項

これから二世帯住宅を建てる、あるいは登記を見直せる段階であれば、将来の相続を見据えて区分所有登記を避けるという選択が特例の適用余地を広げます。すでに区分所有登記がされている場合でも、生前に登記を一棟の建物へまとめ直す方法が考えられます。ただし登記の変更には費用や他の税務上の影響も伴うため、実行の前に検討が必要です。共有名義での取得と特例の関係については、次の記事も参考になります。

共有相続の土地は小規模宅地の特例の減額分を配分できる?

特例全体の活用の考え方は、次の記事でも確認できます。

相続税が80%減額?自宅・事業用地の小規模宅地等特例の活用法

まとめ

二世帯住宅で小規模宅地等の特例が使えるかどうかは、建物の構造ではなく区分所有登記の有無で決まります。共有登記や単独登記であれば、完全分離型でも子世帯部分を含めて限度面積330㎡・減額80%の対象にでき、区分所有登記があると生計を一にする場合を除いて原則として対象外になります。相続開始後は登記事項証明書での確認と、申告期限までの居住・保有の継続がポイントになります。判断が難しい登記形態や、生前の登記見直しの可否など、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

二世帯住宅と小規模宅地の特例のよくある質問まとめ

Q.完全分離型の二世帯住宅でも小規模宅地等の特例は使えますか。

A.区分所有登記がされていなければ使えます。内部で行き来できない完全分離型でも、共有登記や単独登記であれば、子世帯の居住部分に対応する敷地まで含めて特定居住用宅地等の対象にできます。

Q.区分所有登記があると小規模宅地等の特例は一切使えないのですか。

A.子世帯の居住部分については原則として使えません。ただし被相続人と生計を一にしていた場合や、親世帯の居住部分については要件を満たせば適用の余地があります。

Q.特定居住用宅地等の限度面積と減額割合はどれくらいですか。

A.限度面積は330㎡で、その面積までの部分について評価額を80%減額できます。二世帯住宅の自宅敷地はこの特定居住用宅地等に当たります。

Q.区分所有登記かどうかはどこで確認できますか。

A.建物の登記事項証明書で確認します。住戸ごとに区分建物として登記されている場合は区分所有登記に当たり、一棟の建物として登記されていれば区分所有登記ではありません。

Q.すでに区分所有登記されている場合の対策はありますか。

A.生前に登記を一棟の建物へまとめ直す方法が考えられます。ただし費用や他の税務上の影響も伴うため、実行前に専門家への相談が必要です。

Q.特例を受けるために相続後に必要な条件はありますか。

A.取得した親族が相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、その宅地等を申告期限まで保有していることが求められます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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