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暦年贈与と相続時精算課税はどっちが得?2026年の選び方

2026-07-15
目次

生前贈与を考え始めると、多くの方が「暦年贈与相続時精算課税のどちらを選べば得なのか」という疑問に突き当たります。贈与税には暦年課税と相続時精算課税という2つの計算方法があり、どちらを使うかで相続まで含めた税負担が大きく変わります。国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合

とりわけ2024年(令和6年)1月1日の改正で、両制度のルールが大きく見直されました。「以前は暦年贈与が有利と聞いていたのに、ルールがどう変わったのか分からない」と不安に感じる方も多いはずです。改正によって損得の分岐点そのものが動いたため、これまでの常識だけで判断すると思わぬ税負担につながりかねません。

この記事では、2つの制度の基本的な仕組みから、2024年改正で変わった点、数字を使った具体的な比較、相続が始まる時期による有利・不利、そしてケース別の選び方までを順にご説明します。読み終えるころには、ご自身の状況でどちらを選ぶべきかを判断する軸が見えてくるはずです。

2つの贈与制度の基本と選択制という大前提

まず押さえておきたいのが、暦年課税と相続時精算課税はどちらか一方を選ぶ選択制だという点です。同じ贈与者からの贈与について、両方を同時に使うことはできません。さらに、相続が始まる前の一定期間内に行われた贈与は相続財産に加算されるという共通の仕組みもあります。政府広報オンライン 相続税はいくらから?基礎控除とは?相続税の基本を確認!

暦年課税の仕組み

暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与の合計額に対して贈与税を計算する方法です。1年あたり110万円の基礎控除があり、受け取った財産の合計が110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も不要です。国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合

110万円を超えた場合は、1年間の贈与の合計額から基礎控除110万円を差し引き、残った金額に税率を掛けて贈与税を求めます。税率は、誰から誰への贈与かによって一般税率と特例税率の2種類に分かれ、18歳以上の方が父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合は税負担が軽い特例税率が使えます。いずれも金額が大きくなるほど税率が上がり、最高で55%です。国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

関連コラム暦年贈与は2026年もまだ使える?改正後の注意点と早期開始のメリット

相続時精算課税の仕組み

相続時精算課税とは、原則として60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与について選べる制度です。この制度を使うかどうかは、贈与者(財産をあげる人)ごとに決められます。国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

この制度では、累計で2,500万円までの特別控除があり、贈与額がこの枠に収まる間は贈与税がかかりません。2,500万円を超えた部分については、金額にかかわらず一律20%の贈与税がかかります。暦年課税のように金額が増えるほど税率が上がる仕組みではないため、まとまった財産を早めに渡したい場合に向いています。国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

一度選ぶと戻れない不可逆ルール

相続時精算課税で特に注意したいのが、一度選ぶと暦年課税には戻せないという点です。ある贈与者からの贈与についてこの制度を選ぶと、その贈与者からのその後の贈与はすべて相続時精算課税で計算され、暦年課税に戻すことはできません。国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

つまり「今年だけ精算課税を使い、来年はまた暦年課税に戻す」という使い分けはできません。暦年課税の年110万円の基礎控除を今後いっさい使えなくなるため、この選択は慎重に判断する必要があります。制度の変更を検討している方は、次のコラムもあわせてご確認ください。

関連コラム相続時精算課税をやめたい方へ|暦年課税へ変更できるか解説

2024年改正で変わった点

2024年(令和6年)1月1日以後の贈与について、両制度のルールが大きく変わりました。改正の方向性は、暦年課税の相続財産への加算を強化する一方、相続時精算課税には新たな非課税枠を設けるというものです。これによって従来の損得の分岐点が動いているため、ここでは変更点を3つに分けてご説明します。

暦年課税の加算期間3年から7年への延長

暦年課税には、相続が始まる前の一定期間内に受けた贈与を相続財産に加算する生前贈与加算という仕組みがあります。加算された贈与財産には相続税がかかるため、亡くなる直前の駆け込み贈与では節税効果が薄くなります。

従来この加算期間は相続開始前3年以内でしたが、2024年(令和6年)1月1日以後の贈与からは7年以内へと延長されました。加算期間が長くなったことで、暦年贈与で相続財産を減らす効果を十分に得るには、より早い時期から計画的に贈与を始めることが重要になっています。国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

延長4年分の総額100万円控除

加算期間が一気に7年へ延びると負担が大きくなりすぎるため、緩和措置が設けられています。延長された4年分(相続開始前3年より前から7年以内まで)に受けた贈与については、その合計額から総額100万円までを加算しないことになっています。国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

この100万円は各年ごとではなく、延長された4年分の合計に対する控除である点に注意が必要です。直近3年分の贈与にはこの100万円控除は使えず、原則として全額が加算の対象になります。

相続時精算課税の年110万円基礎控除の新設

2024年(令和6年)1月1日以後の贈与からは、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が新たに設けられました。これは従来の2,500万円の特別控除とは別枠の控除で、令和5年12月31日以前の贈与には適用されません。この新設により、相続時精算課税を選んでも年110万円以下の贈与であれば贈与税の申告が不要になりました。国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

さらに大きいのが、この年110万円以下の部分は相続時に相続財産へ加算されないという点です。暦年課税では加算期間内の110万円以下の贈与も加算の対象になるのに対し、精算課税の年110万円は加算されずに残るため、改正後は精算課税の使い勝手が大きく向上したといえます。国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

関連コラム相続時精算課税110万円のデメリット|暦年課税に戻せない落とし穴

数字で見る比較

ここまでの内容を、暦年課税と相続時精算課税の2つの制度で対比しながら整理します。下の表は2024年(令和6年)改正後のルールにもとづく比較です。

暦年課税 相続時精算課税
年110万円の基礎控除がある 年110万円の基礎控除がある(2024年新設)
まとまった非課税枠はなく毎年110万円まで 累計2,500万円までの特別控除がある
超過累進で最高55%の税率 2,500万円を超えた部分に一律20%
贈与する人・受け取る人に制限なし 原則60歳以上の父母・祖父母から
18歳以上の子・孫へ
相続開始前7年以内の贈与を
贈与時の価額で加算
選択後の贈与を贈与時の価額で
固定して加算
延長4年分は総額100万円まで加算しない 年110万円以下の部分は加算しない
いつでも使え届出は不要 一度選ぶと戻せず選択届出書が必要
年110万円以下は申告不要 特別控除を使う年は税額0でも申告が必要

加算対象の違い

両制度の損得を分けるのが、相続のときに何がどれだけ相続財産に加算されるかという違いです。暦年課税では、相続開始前7年以内の贈与が加算の対象になり、この期間内であれば110万円以下の贈与や、亡くなった年に行われた贈与も加算されます。延長された4年分について総額100万円までが除かれるものの、直近の贈与はほぼそのまま持ち戻される点に注意が必要です。国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

一方、相続時精算課税では、選択後に贈与した財産を相続財産に加算しますが、加算されるのは年110万円の基礎控除を差し引いた後の金額です。言い換えると、毎年110万円以下でおさめた贈与は相続財産に加算されず、着実に財産を移せます。国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

贈与税額の計算例

具体的な数字で比べてみます。まず暦年課税で1年間に200万円の贈与を受けた場合です。基礎控除110万円を差し引いた90万円に、直系尊属からの贈与に使える特例税率10%を掛けて計算します。

(200万円 − 110万円) × 10% = 9万円

この場合の贈与税は9万円です。国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)次に相続時精算課税で2,500万円をまとめて贈与した場合を見てみます。まず課税価格から年110万円の基礎控除を差し引き、残った金額に特別控除をあてはめます。

課税価格2,500万円 − 基礎控除110万円 = 2,390万円
2,390万円 − 特別控除2,390万円 = 0円

基礎控除と特別控除を差し引くと課税対象が0円になり、この年の贈与税はかかりません。使った特別控除は2,390万円で、累計2,500万円の枠のうち110万円が翌年以降に残ります。なお、特別控除を適用するには、贈与を受けた翌年の申告期限内に贈与税の申告をすることが要件です。国税庁 No.4409 贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)

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相続開始時期で変わる有利・不利

暦年課税の加算期間が7年に延びるといっても、いきなり全員に7年加算が適用されるわけではありません。改正には経過措置が設けられており、相続が始まる時期によって実際に加算される期間が変わります。ここが2026年時点での判断で見落としやすいポイントです。

令和8年まで・令和9年から12年・令和13年以降の3区分

加算される期間は、相続の開始時期によって次の3つに分かれます。

相続開始の時期 加算される贈与の期間
令和8年12月31日まで 相続開始前3年以内
令和9年1月1日から
令和12年12月31日まで
令和6年1月1日から死亡日まで
令和13年1月1日以降 相続開始前7年以内(フル7年)

このように、令和8年までに相続が始まる場合は従来どおり3年以内の加算にとどまります。令和9年から少しずつ加算期間が延び、令和13年1月1日以降にようやく7年フルの加算が完成します。国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

フル7年加算完成時代の備え

令和13年以降はフル7年の加算が当たり前になるため、暦年贈与で相続財産を減らす効果を得るには、これまで以上に早い時期からの取り組みが欠かせません。亡くなる直前の数年間に贈与しても、その多くが相続財産に戻されてしまうためです。

逆にいえば、若く健康なうちから長い年数をかけて暦年贈与を続けられる方にとっては、7年加算があっても十分に効果を発揮できます。相続までに時間を確保できるかどうかが、暦年課税を選ぶ際の大きな判断材料になります。

ケース別の選び方

ここまでの内容をふまえ、どのような状況でどちらの制度が向いているのかを、代表的なケースごとに整理します。実際の判断はご家族の状況によって変わりますが、考え方の目安としてご覧ください。

相続が近い高齢の場合と長期贈与できる場合

ご高齢で相続までにあまり時間がないと見込まれる場合は、相続時精算課税が有利になりやすい傾向があります。暦年課税では直前の贈与が7年以内の加算対象になりやすい一方、精算課税なら年110万円までの贈与は相続財産に加算されずに残せるためです。国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

反対に、若く健康で長い年数をかけて贈与できる場合は、暦年課税で毎年110万円ずつコツコツ移していく方法にも十分な効果があります。加算期間の7年を差し引いても、それより前の贈与は相続財産に加算されないため、時間を味方につけられる方に向いています。

値上がり資産・収益不動産の場合

将来値上がりが見込まれる株式や、家賃収入を生む収益不動産をお持ちの場合は、相続時精算課税が力を発揮します。精算課税で贈与した財産は、相続のときに贈与した時点の価額で相続財産に加算されるためです。国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

贈与後に価額が上がっても、加算されるのは贈与時の低い価額のままなので、値上がりした分に相続税がかかりにくくなります。また、収益不動産を早めに贈与すれば、その後の家賃収入を受贈者側に移すことができ、財産の増加を抑える効果も期待できます。

孫など加算対象外の相手への贈与

贈与する相手を誰にするかも、制度選びと同じくらい大切な視点です。生前贈与加算は相続財産に贈与を戻す仕組みであるため、贈与先を工夫することで加算の影響を抑えられる場合があります。とくにへの贈与は、相続の状況によっては加算の対象から外れるケースがあり、暦年課税の110万円の基礎控除を家族全体で活用する方法として検討されています。

ただし、孫が遺言で財産を受け取る場合や生命保険金を受け取る場合など、加算の対象になることもあります。誰にどの制度で贈与するのが有利かは個別の事情によって変わるため、詳しくは次のコラムもあわせてご確認ください。

関連コラム生前贈与で孫はいくらまで非課税?加算対象外のメリット

手続きと注意点

相続時精算課税を使うには、暦年課税にはない手続きが必要です。この制度を選ぶ最初の年に、相続時精算課税選択届出書を提出しなければなりません。提出期限は、最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までで、戸籍謄本などの必要書類を添付して税務署へ提出します。国税庁 No.4304 相続時精算課税選択届出書に添付する書類

いったんこの届出書を提出すると、その贈与者からの贈与は以後すべて相続時精算課税で計算され、暦年課税に戻すことはできません。将来にわたって暦年課税の年110万円の基礎控除を使えなくなるため、提出の前に長期的な見通しを立てておくことが大切です。国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

申告の要否も押さえておきましょう。暦年課税でも相続時精算課税でも、年110万円以下の贈与であれば贈与税の申告は不要です。ただし、相続時精算課税で特別控除2,500万円を使う年は、納める税額が0円でも期限内の申告が必要になる点に注意してください。

まとめ

暦年贈与と相続時精算課税は、2024年(令和6年)の改正によって損得の分岐点が動きました。暦年課税は加算期間が7年に延びた一方、相続時精算課税には年110万円の基礎控除が新設され、少額を着実に移したい方には使いやすくなっています。

2026年時点では、経過措置によって実際の加算期間が相続の時期で変わるため、相続までに確保できる年数、値上がりが見込まれる資産の有無、贈与する相手という3つの視点で考えると選びやすくなります。相続まで時間を取りにくい場合や値上がり資産がある場合は精算課税、長期間かけて贈与できる場合は暦年課税が候補になりやすい、というのが大きな方向性です。

ただし、相続時精算課税は一度選ぶと暦年課税に戻せないため、目先の税額だけでなく長期的な見通しをふまえた判断が欠かせません。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

暦年贈与と相続時精算課税のよくある質問まとめ

Q. 暦年贈与と相続時精算課税は併用できますか?

A. 同じ贈与者からの贈与では併用できません。どちらか一方を選ぶ選択制で、相続時精算課税を選ぶと暦年課税には戻せません。ただし贈与者ごとに選べるため、父からは精算課税、母からは暦年課税という使い分けは可能です。

Q. 2024年の改正で何が変わりましたか?

A. 暦年課税の生前贈与加算が相続開始前3年以内から7年以内に延長され、延長4年分は総額100万円まで加算されません。相続時精算課税には年110万円の基礎控除が新設されました。

Q. 暦年贈与と相続時精算課税はどちらが得ですか?

A. 状況によって異なります。相続まで時間を取りにくい方や値上がり資産をお持ちの方は相続時精算課税、長期間かけて贈与できる方は暦年課税が候補になりやすい傾向です。

Q. 相続時精算課税の年110万円は相続財産に加算されますか?

A. 加算されません。年110万円の基礎控除以下の部分は贈与税の申告も不要で、相続時に相続財産へ加算されずに残せます。

Q. 相続時精算課税を選ぶと税務署への手続きは必要ですか?

A. 必要です。最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、戸籍謄本などを添付して相続時精算課税選択届出書を提出します。

Q. 暦年課税で年110万円以下の贈与は申告が必要ですか?

A. 必要ありません。1年間に受け取った贈与の合計が110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も不要です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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