相続税の申告をご自身で進めようとして、まず「申告書の用紙はどこで手に入るのだろう」と手が止まってしまう方は少なくありません。結論から申し上げますと、相続税の申告書は国税庁ホームページから誰でも無料でダウンロードできます。用紙代も申請手続も必要なく、必要な表だけを選んで印刷することが可能です。
ただし、ひとつだけ注意していただきたい点があります。相続税の申告書には年分ごとの様式があり、亡くなられた日がいつかによって使うべきページが変わります。ここを間違えると、せっかく作成した申告書を作り直すことにもなりかねません。
この記事では、相続税申告書のダウンロード先、年分別の様式一覧ページの選び方、第1表から第15表までのうちご自身に必要な表の見極め方、そして完成した申告書の提出方法までを、順を追ってご説明します。
相続税申告書のダウンロード先と入手方法
相続税の申告書を手に入れる方法は、大きく2つあります。国税庁ホームページからのダウンロードと、税務署窓口での受け取りです。どちらも費用はかかりません。
国税庁ホームページからの無料ダウンロード
最も手軽なのは、国税庁ホームページに掲載されている「相続税の申告書等の様式一覧」のページから、必要な表をPDFでダウンロードする方法です。第1表から第15表まで、また各種の付表まで、すべての様式が表番号ごとに並んでいます。国税庁 相続税の申告書等の様式一覧(令和7年分用)
PDFはご自宅のプリンターで印刷して、そのまま手書きで記入していただけます。用紙は白色のA4普通紙で問題ありません。表番号ごとにファイルが分かれていますので、必要な表だけを選んで印刷すれば、無駄な出力を抑えられます。
なお、令和8年分用の様式一覧ページには、使用頻度の高い様式をまとめた一括印刷用PDFも用意されています。どれを印刷すればよいか判断がつかない段階では、こちらをまとめて出力して、実際に目を通しながら取捨選択する進め方も現実的です。国税庁 相続税の申告書等の様式一覧(令和8年分用)
税務署窓口での用紙の入手
ご自宅にプリンターがない場合や、印刷したPDFの体裁に不安がある場合は、税務署の窓口で用紙を受け取ることもできます。税務署の開庁時間は8時30分から17時までで、土曜日・日曜日・祝日等の閉庁日は窓口の受付を行っていません。国税庁 B1-2 相続税の申告手続
窓口へ足を運ぶ利点は、用紙が手に入るだけではありません。どの表が必要になりそうかを職員の方に尋ねられる点も大きいといえます。ただし相続税は申告件数の多い税目ではなく、混雑する時期もありますので、時間に余裕をもってお出かけになることをおすすめします。
年分別の様式一覧ページの選び方
相続税申告書のダウンロードで最もつまずきやすいのが、どの年分の様式を使うかという点です。ここは「申告する年」ではなく「亡くなられた年」で判断します。
死亡した年による様式の使い分け
たとえば令和7年分用として掲載されている申告書等は、令和7年1月1日から令和7年12月31日までの間に亡くなられた人に係る相続税の申告に使用するものです。相続税の申告期限は10か月先ですので、申告書を作成する時期と亡くなられた年がずれるケースは珍しくありません。
申告書の提出が翌年になったとしても、使うべき様式は亡くなられた年分のものです。この対応関係を整理すると、次のようになります。
| 令和8年中に 亡くなられた場合 |
令和8年分用の様式一覧ページ |
|---|---|
| 令和7年中に 亡くなられた場合 |
令和7年分用の様式一覧ページ |
| 令和6年以前に 亡くなられた場合 |
その死亡年に対応する年分用のページ |
過去の年分の様式一覧ページは、国税庁の相続税の申告手続の案内ページにまとめてリンクが並んでいます。平成22年分用までさかのぼって掲載されていますので、少し前の相続について申告される場合も、そこから該当する年分をたどっていただけます。
令和8年分用における様式の変更
令和8年分用からは様式そのものが変更されています。国税庁も、令和8年分の相続税の申告には令和8年分用のページに掲載されている様式を使用し、令和7年分以前の申告については令和7年分用以前のページに掲載されている様式を使用するよう案内しています。
インターネットで「相続税 申告書」と検索すると、古い年分のPDFに直接たどり着いてしまうことがあります。ダウンロードの前に、開いているページの見出しが目的の年分になっているかを必ずご確認ください。
申告書の様式構成と必要な表の見極め
様式一覧を開くと表の数の多さに驚かれるかもしれませんが、すべての方が全部を提出するわけではありません。ご自身の状況に応じて、必要な表だけを選べば足ります。
一般用の表と該当者のみが使う表
様式一覧の各行には「一般用」という欄があり、そこに丸印が付いている申告書が、一般の場合に使用する申告書です。ここでいう一般の場合とは、相続時精算課税適用者または相続税の納税猶予等の特例の適用を受ける人がいない場合を指します。
逆に言えば、丸印の付いていない第8の2表以降の納税猶予関係の表や、農地・山林・美術品に関する表は、その特例を使う方だけが作成するものです。ほとんどのご家庭では、これらの表に手をつける必要はありません。
主な表と記載内容の対応
一般的な相続で登場することが多い表と、その内容は次のとおりです。表番号は連番で埋めていくものではなく、該当する財産や控除がある場合にだけ使うとお考えください。
| 第1表 | 相続税の申告書 |
|---|---|
| 第2表 | 相続税の総額の計算書 |
| 第4表の2 | 暦年課税分の贈与税額控除額の計算書 |
| 第5表 | 配偶者の税額軽減額の計算書 |
| 第6表 | 未成年者控除額・障害者控除額の計算書 |
| 第9表 | 生命保険金などの明細書 |
| 第10表 | 退職手当金などの明細書 |
| 第11表 | 相続税がかかる財産の合計表 |
| 第11・11の2表 の付表1 |
小規模宅地等についての課税価格の計算明細書 |
| 第13表 | 債務及び葬式費用の明細書 |
| 第15表 | 相続財産の種類別価額表 |
どの欄に何を書くかで迷われた場合は、国税庁が公表している手引に記載例が収録されています。令和7年分については「相続税の申告のしかた」の75ページからの部分に、申告書の記載例等がまとめられています。国税庁 相続税の申告のしかた(令和7年分用)
各表の具体的な書き方や記入の順序については、別の記事で詳しくご説明しています。
関連コラム相続税申告書の書き方|第1表から書くと必ず行き詰まる理由▸
申告そのものが必要かどうかの確認
用紙をそろえる前に、そもそも相続税の申告が必要かどうかを確かめておくと、無駄な作業を避けられます。相続税は、正味の遺産額が遺産に係る基礎控除額を超える場合に課税され、超えなければ申告も納税も必要ありません。国税庁 No.4102 相続税がかかる場合
基礎控除額は、次の算式で計算します。国税庁 No.4152 相続税の計算
法定相続人が3人であれば4,800万円が基礎控除額となります。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになる場合は、特例を適用するために申告書の提出が必要です。「税額がゼロだから提出しなくてよい」とは限らない点にご注意ください。
関連コラム相続税申告の必要書類一覧|共通書類と特例別の追加書類▸
自分で作成する場合の難所と税理士への依頼を検討すべきケース
申告書のダウンロード自体は数分で終わります。難しいのはその先、各欄に入れる金額を確定させる作業です。ここで時間を大きく取られる方がほとんどです。
とくに次のような事情があるご家庭では、ご自身だけで完結させるのは負担が大きくなりがちです。
- 土地を複数お持ちで、路線価や補正の判断が必要な場合
- 小規模宅地等の特例を使いたい場合
- 非上場株式など評価の難しい財産がある場合
- 生前の贈与が複数年にわたっている場合
- 相続人の人数が多く、遺産分割の話し合いが長引いている場合
財産の評価額を誤ったまま提出すると、後から修正申告や税務調査につながることがあります。申告期限までに申告をしなかった場合や、実際に取得した財産の額より少ない額で申告をした場合には、本来の税金のほかに加算税や延滞税がかかる場合があります。国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
反対に、財産が預貯金と自宅のみで相続人も少ないといったシンプルなケースであれば、手引を読みながらご自身で作成される方もいらっしゃいます。まずは財産の内容を一覧にしてみて、判断に迷う財産があるかどうかを確かめるところから始めていただくとよいでしょう。
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ダウンロードした申告書の提出方法と期限
申告書が完成したら、期限内に所轄の税務署へ提出します。ここでも押さえておきたい点がいくつかあります。
提出期限と提出先
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。この期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、これらの日の翌日が期限とみなされます。
提出先は、被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合、被相続人の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地を所轄する税務署ではありませんので、ここは間違えやすいところです。相続人が全国に散らばっている場合でも、提出先はひとつにまとまります。
e-Taxによる提出と書面での提出
相続税の申告書は、e-Taxで提出する方法のほか、郵便や信書便による送付、または税務署の時間外収受箱へ投函する方法により提出することができます。閉庁日でも、送付または時間外収受箱への投函により提出は可能です。
e-Taxを利用する場合は、パソコンからe-Taxソフトをダウンロードして申告書等を作成・提出します。ただし申告の内容によってはe-Taxを利用できない場合があり、その場合は書面で申告書等を作成のうえ、持参または送付により提出することとされています。
e-Taxによる相続税申告のメリットや、利用に必要となる利用者識別番号の確認方法、イメージデータで提出できる添付書類などは、国税庁の特設サイトにまとめられています。国税庁 相続税e-Tax特設サイト
提出までの全体像や、10か月のスケジュールの組み立て方については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
関連コラム相続税申告の流れ|10ヶ月のスケジュールと手続きの順序▸
まとめ
相続税申告書のダウンロードについて、要点を整理します。
- 申告書は国税庁ホームページの様式一覧から無料でダウンロードできる
- 使う様式は「申告する年」ではなく「亡くなられた年」で決まる
- 令和8年分用からは様式が変更されており、年分の取り違えに注意が必要
- 一般用に丸印の付いた表が基本で、納税猶予等の表は該当者のみが使う
- 提出先は被相続人の住所地を所轄する税務署で、期限は10か月以内
- 提出はe-Taxのほか、郵送や時間外収受箱への投函も可能
用紙の入手までは難しくありませんが、財産の評価と各表への振り分けは専門的な判断を伴います。土地や非上場株式をお持ちの場合、特例の適用を検討されている場合など、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。期限が迫ってからでは選べる方法も限られますので、早めに見通しを立てておくと安心です。
お問い合わせはこちら ▸参考文献
- 国税庁 相続税の申告書等の様式一覧(令和7年分用)
- 国税庁 相続税の申告書等の様式一覧(令和8年分用)
- 国税庁 B1-2 相続税の申告手続
- 国税庁 相続税の申告のしかた(令和7年分用)
- 国税庁 No.4102 相続税がかかる場合
- 国税庁 No.4152 相続税の計算
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 相続税e-Tax特設サイト
相続税申告書のダウンロードのよくある質問まとめ
Q. 相続税の申告書はどこでダウンロードできますか。
A. 国税庁ホームページの「相続税の申告書等の様式一覧」のページから、第1表から第15表までの様式をPDFで無料でダウンロードできます。税務署の窓口で用紙を受け取ることもできます。
Q. どの年分の様式をダウンロードすればよいですか。
A. 申告する年ではなく、亡くなられた年に対応する年分の様式を使用します。たとえば令和7年分用の申告書等は、令和7年1月1日から令和7年12月31日までの間に亡くなられた人に係る相続税の申告に使用するものです。
Q. 第1表から第15表まですべて提出する必要がありますか。
A. すべてを提出する必要はありません。様式一覧の「一般用」に丸印が付いている申告書が一般の場合に使用するもので、納税猶予等の特例を適用する方だけが使う表も多く含まれています。
Q. ダウンロードした申告書は普通紙に印刷しても大丈夫ですか。
A. 国税庁ホームページで公開されているPDFをA4サイズの白色普通紙に印刷して使用できます。プリンターがない場合は税務署の窓口で用紙を受け取ることもできます。
Q. 相続税の申告書はe-Taxで提出できますか。
A. e-Taxで提出できます。パソコンからe-Taxソフトをダウンロードして申告書等を作成・提出します。ただし申告の内容によってはe-Taxを利用できない場合があり、その場合は書面で作成のうえ持参または送付により提出します。
Q. 相続税申告書の提出先と期限を教えてください。
A. 提出先は、被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合、被相続人の住所地を所轄する税務署です。期限は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内で、期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときはこれらの日の翌日が期限とみなされます。