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税務調査 確率|法人と個人の実調率を国税庁の最新統計で税理士が解説

2026-08-31
目次

この記事は、法人の経営者・経理担当者・個人事業主に向けて、税務調査が来る確率と、調査対象に選ばれやすい事業者の特徴を整理したものです。結論から申し上げると、国税庁が公表した令和6事務年度(令和6年7月から令和7年6月まで)の実績をもとに試算すると、法人が実地調査を受ける確率は年間およそ1.7パーセント、所得税の確定申告をした個人が実地調査を受ける確率はおよそ0.2パーセントです。ただし、この数字の低さは「調査されない」という意味ではありません。個人については、電話や文書による「簡易な接触」まで含めると接触率は約3パーセントに上がり、しかも1件あたりの追徴税額は年々増えています。以下では、確率の根拠、狙われやすい申告の特徴、銀行口座がどこまで見られるのか、通知が来たときの動き方までを順に解説します。

税務調査の確率の実数

税務調査の確率は「実調率」と呼ばれ、実地調査の件数を申告件数で割って求めます。国税庁は実地調査の件数を公表していますが、実調率そのものを毎年公表しているわけではないため、ここでは公表された実数から計算します。数値はいずれも令和6事務年度(令和7年12月公表)のものです。

法人の実地調査件数と実調率

令和6事務年度に法人税等の実地調査が行われた件数は5万4千件で、前事務年度から7.4パーセント減少しました。一方で、追徴税額(法人税・消費税)の総額は3,407億円と直近10年で最高となり、調査1件あたりの追徴税額も6,342千円まで上昇しています。国税庁 令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要

実地調査件数 5万4千件(前年比92.6パーセント)
申告漏れ所得金額 8,198億円(前年比84.2パーセント)
追徴税額
(法人税・消費税)
3,407億円(前年比106.6パーセント)
調査1件あたりの
追徴税額
6,342千円(前年比115.4パーセント)

分母となる法人税の申告件数は、令和6年度で322万件です。国税庁 令和6事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要この2つの数字から実調率を計算すると、次のようになります。

54,000件 ÷ 3,220,000件 = 約0.017(約1.7パーセント)

単純に平均すれば、法人はおよそ60年に1回の頻度で実地調査を受ける計算になります。ただし、これはあくまで全法人を均した平均値です。後述するとおり、調査先は無作為に選ばれるわけではないため、実際の確率は事業規模や業種によって大きく変わります。

個人事業主の実地調査と簡易な接触

個人については、所得税の実地調査の件数が4万7千件、文書や電話、来署依頼による「簡易な接触」が68万9千件で、両者を合わせた「調査等」の合計は73万6千件でした。追徴税額の合計は1,431億円と過去最高です。国税庁 令和6事務年度における所得税及び消費税調査等の状況

分母となる所得税等の確定申告書の申告人員は、令和6年分で2,339万人です。国税庁 令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(報道発表資料)実地調査に限った確率と、簡易な接触まで含めた確率を分けて計算します。

47,000件 ÷ 23,390,000人 = 約0.002(約0.2パーセント)
736,000件 ÷ 23,390,000人 = 約0.031(約3.1パーセント)

民間の記事では「個人事業主の税務調査は1パーセント前後」と書かれることが多いのですが、その多くは分母や年度の取り方が曖昧です。実際には、調査官が事業所に来る「実地調査」は0.2パーセント、税務署から何らかの接触がある確率は3パーセントと、性質の違う2つの数字を分けて捉えるほうが実態に近くなります。なお、上記の分母には給与所得者の還付申告なども含まれるため、事業所得のある方に限れば実感としての確率はこれより高くなります。

確率の低さが安全を意味しない理由

実調率が下がっている一方で、1件あたりの追徴税額は上昇を続けています。法人の1件あたり追徴税額は前年比15.4パーセント増、所得税の実地調査でも1件あたり241万円と前年の224万円から増えました。これは、国税庁が調査件数を絞り込む代わりに、非違(申告の誤りや漏れ)が見込まれる先に集中して人員を投入していることを示しています。

実務では、この傾向をはっきり感じます。以前は「一通り帳簿を見て何もなければ終わり」という調査もありましたが、近年は事前に論点を絞り込んだうえで臨場し、特定の勘定科目や特定の取引先だけを深く掘るケースが増えています。確率は下がっても、当たったときの負担は重くなっている、という理解が実態に合います。

調査対象になりやすい申告の特徴

調査先の選定は無作為ではありません。国税庁は、AIを活用した予測モデルで調査必要度の高い法人を抽出し、想定される不正パターンを判定したうえで、申告書や資料情報を調査官が分析して最終判断していると公表しています。つまり、申告書に表れる数値の不自然さが、そのまま選定の入口になっているということです。

業種による申告漏れの傾向

国税庁は、事業所得を有する個人について、1件あたりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種を毎年公表しています。令和6事務年度の結果は次のとおりです。

業種目 1件あたりの申告漏れ所得金額
キャバクラ 4,164万円
眼科医 3,894万円
ホステス、ホスト 2,968万円
経営コンサルタント 2,734万円
太陽光発電 2,142万円
バー 1,968万円
コンテンツ配信 1,936万円
ブリーダー 1,876万円
スナック 1,873万円
システムエンジニア 1,631万円

現金商売と、外部から売上を把握しづらい業態が上位に並びます。ただし、この一覧は「調査した結果、申告漏れが大きかった業種」であって、この業種だから必ず調査が来るという意味ではありません。共通しているのは、売上の記録が事業者側の帳簿にしか残らない構造を持っている点です。

無申告・売上の不自然な変動

無申告は、確率という観点では例外的に危険度が高い領域です。令和6事務年度の所得税無申告者に対する実地調査(特別・一般)は4,812件で、1件あたりの追徴税額は524万円と、所得税の実地調査全体の299万円の1.8倍に達しています。国税庁はこの分野を重点課題として明示しており、件数を絞る中でも無申告への対応は緩めていません。

また、実務でよく見られる選定材料としては、次のような点が挙げられます。いずれも申告書と決算書だけで判定できるため、機械的な抽出になじみます。

  • 売上が消費税の課税事業者の判定基準である1,000万円のすぐ下に何期も張り付いている
  • 売上は横ばいなのに外注費や原価だけが数年にわたって伸びている
  • 粗利率が同業他社と比べて継続的に低い、または期によって大きく振れている
  • 役員報酬や貸付金・仮払金の残高が事業規模と釣り合っていない
  • 前回の調査で重加算税が課され、その後の申告内容に改善が見られない

なお、事業を休止したまま申告をしていない法人にも、税務署から書面での照会が届くことがあります。休眠中の法人の扱いについては、次の記事で整理しています。

関連コラム休眠会社に税務署からお尋ねが!法人税・消費税の申告、どうする?

銀行口座・通帳の確認範囲

「税務調査で銀行口座はどこまで見られるのか」は、経営者から最も多く受ける質問のひとつです。結論として、事業に関連すると判断されれば、代表者個人名義の預金通帳も確認の対象になります

代表者個人名義の預金の扱い

国税庁は、法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合に通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれると明示しています。国税庁 税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)また、帳簿書類等の提示・提出の求めに正当な理由なく応じない場合には罰則が科されることがあるとされており、単に「私物なので見せません」と拒み続けることは想定されていません。

実務では、法人の売上入金と代表者個人口座の入金時期が近い、あるいは会社の経費で支払われた費目が個人口座からも重複して出ている、といった場面で個人通帳の提示を求められます。逆に言えば、会社のお金と個人のお金の出入りが完全に分かれていれば、個人口座を細かく見る必要性そのものが薄くなります。役員貸付金や仮払金を長年放置している法人ほど、個人資金の流れに踏み込まれやすくなる、というのが現場の感覚です。

取引先への反面調査と銀行照会

納税者本人の資料だけでは事実の把握が困難と認められる場合、税務当局は取引先など第三者に対していわゆる反面調査を実施することがあります。反面調査については事前通知に関する法令上の規定はありませんが、運用上は原則としてあらかじめ対象者へ連絡を行うこととされています。金融機関に対する照会も、この質問検査権の枠組みの中で行われます。

取引先に調査が及ぶと、事業上の信用に影響しかねません。実務では、本人の帳簿と資料で説明が完結するかどうかが反面調査の要否を分けます。請求書・契約書・入出金の記録が揃っており、担当者が経緯を説明できる状態であれば、取引先まで確認に行く必要性は下がります。

法定調書による取引の把握

税務署は、調査の前段階から相当量の情報を持っています。所得税法や相続税法などの規定により税務署への提出が義務づけられている「法定調書」は、現在63種類あります。国税庁 No.7401 法定調書の種類給与所得の源泉徴収票、報酬・料金の支払調書、不動産の使用料等の支払調書などがこれにあたります。

つまり、支払った側から提出される資料と、受け取った側の申告内容が突き合わせられる仕組みが常時動いています。相手方が支払調書を提出している収入を申告から落とすと、調査を待たずに照会が届くと考えたほうが実態に合います。

新築・不動産取得と税務調査の関係

「自宅を新築すると税務調査が来る」という話を耳にすることがありますが、国税庁の公表資料に、新築や不動産取得を理由に調査対象とする、といった基準は示されていません。一方で、不動産の取得や譲渡が税務署に把握されやすいこと自体は事実です。

法人および不動産業者である個人が不動産等を譲り受けた場合、同一人に対するその年中の支払金額の合計が100万円を超えるときは「不動産等の譲受けの対価の支払調書」を提出する義務があります。国税庁 No.7442 「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の提出範囲等また、譲渡所得については令和6事務年度に16,402件の調査等が行われ、うち土地建物等が12,124件、非違割合は80.4パーセントに達しています。売却した側の申告内容は、高い確率で確認されているということです。

実務で注意すべきなのは、新築そのものではなく購入資金の出どころです。事業主が高額な住宅を取得した場合、その原資が申告済みの所得・借入金・自己資金のいずれで賄われたのかを説明できないと、簿外の売上や役員賞与の疑いを招きます。建築請負契約書、住宅ローンの契約書、頭金を出した口座の履歴を一式で保管しておけば、質問が来ても短時間で説明が終わります。

事前通知から調査終了までの流れ

「税務調査はやばい」と身構える方が多いのですが、手続の流れは法令と国税庁の通達で明確に定められています。全体像を知っておくだけで、対応の負担はかなり軽くなります。

事前通知の内容と日程調整

実地の調査を行う場合、原則として調査開始前に相当の時間的余裕を置いて、電話等により、実地の調査を行う旨、調査を開始する日時・場所、調査の対象となる税目・課税期間、調査の目的などが通知されます。通知の方法は法令上規定されておらず、原則として電話による口頭で行われ、納税者からの要望に応じて書面が交付されることはありません。何日前に通知するかについても一律の定めはありません。

調査開始日時は調整可能です。事前通知の際にあらかじめ都合が尋ねられますし、通知後であっても、一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情などがあれば、申し出れば変更が協議されます。申出の方法は法令に定めがないため、口頭で差し支えありません。繁忙期と重なる場合は、遠慮せずに日程調整を申し出るのが実務の基本です。

なお、申告内容や過去の調査結果、事業内容などから、事前通知をすると正確な課税標準等の把握が困難になるおそれがあると判断された場合には、事前通知が行われないこともあります。現金商売で無予告調査が行われやすいのは、この規定によるものです。

当日に求められる対応

調査当日は、帳簿書類等の提示・提出を求められます。法人は、帳簿と取引等に関して作成または受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません(青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度などは10年間)。国税庁 No.5930 帳簿書類等の保存期間電磁的記録の場合は、画面上で確認できる状態にして示すか、プリントアウトや記録媒体への保存などの方法で提出します。

帳簿書類等を税務署に預ける「留置き」を求められることもありますが、これは納税者の承諾を得て行うものであり、承諾なく強制的に留め置かれることはありません。留め置く必要がなくなったときは遅滞なく返還すべきこととされています。

実務での取り扱いとしては、質問に対してその場で断定的に答えず、確認して後日回答するという姿勢が有効です。記憶に頼った説明が帳簿の記載と食い違うと、その食い違い自体が新たな論点になります。曖昧な点は「確認します」と留保し、資料で裏づけてから回答するほうが、結果として調査は早く終わります。

修正申告の勧奨と加算税

調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、その内容が説明され、原則として修正申告(または期限後申告)が勧奨されます。勧奨に応じるかどうかは納税者の任意の判断であり、応じない場合は更正等の処分が行われますが、応じなかったことを理由に不利な取扱いを受けることは基本的にありません。ただし、修正申告をすると原則としてその内容について不服申立てができなくなるため、争点がある場合は判断を慎重に行う必要があります。

無申告だった場合の無申告加算税は、調査の事前通知前に自主的に期限後申告をすれば5パーセントで済みますが、事前通知後で決定を予知する前は10パーセント(50万円超300万円までの部分は15パーセント、300万円を超える部分は25パーセント)、調査を受けた後では15パーセント(同じく20パーセント、30パーセント)へと段階的に重くなります。国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき誤りに気づいた時点でどれだけ早く動くかが、そのまま負担額の差になります。

関連コラム修正申告の延滞税|計算方法と加算税の関係を税理士が解説

加算税に加えて延滞税もかかります。延滞税は納付が遅れた期間に応じて日割りで計算されるため、修正申告の対象年度が古いほど負担が膨らみます。

関連コラム延滞税 税率|割合・計算方法と免除されるケースを税理士が解説

確率を下げるための平時の備え

調査対象の選定が申告書の分析に基づく以上、平時の申告と記帳の精度が、そのまま調査確率と調査の重さに直結します。実務で効果が大きいのは、次の4点です。

  • 会社と個人の資金を分ける。役員貸付金・仮払金を決算ごとに精算し、残高を持ち越さない
  • 売上の網羅性を担保する。現金売上は日次で記録し、レジデータや予約台帳など帳簿以外の一次記録も保存する
  • 大きな増減に説明を残す。外注費や原価が跳ねた期は、契約書と稟議の記録をセットで保管する
  • 異常値を決算前に把握する。粗利率や人件費率を前期・同業と比較し、説明できない差を残さない

これらは調査を避けるためというより、調査が来ても短期間で終わらせるための準備です。実際、資料が整理されている法人では、臨場が1日で終わり、指摘も軽微な期ずれ程度にとどまることが少なくありません。

もっとも、どこまで備えれば十分かは、業種・規模・過去の調査歴によって変わります。判断に迷う論点がある場合や、すでに事前通知を受けている場合は、具体的なケースに即して税理士へご相談されることをおすすめします。

まとめ

令和6事務年度の実績から試算すると、法人が実地調査を受ける確率は年間約1.7パーセント、所得税の申告者が実地調査を受ける確率は約0.2パーセント、簡易な接触まで含めた接触率は約3.1パーセントです。件数は減少傾向にある一方で、1件あたりの追徴税額は法人で6,342千円、所得税の実地調査で241万円と上昇しており、調査は「広く浅く」から「狭く深く」へ移っています。

調査先はAIと調査官の分析によって選定されるため、確率を左右するのは運ではなく申告内容です。銀行口座については、事業関連性が疑われれば代表者個人名義の通帳も質問検査等の範囲に含まれます。新築や不動産取得それ自体が調査の理由になるわけではありませんが、資金の出どころを説明できる資料は必ず残しておくべきです。事前通知を受けたら日程は調整でき、当日の回答も確認のうえ後日で構いません。個別の事情に応じた対応が必要になりますので、まずは税理士にご相談ください。

参考文献

税務調査の確率のよくある質問まとめ

Q. 税務調査が来る確率は何パーセントですか。

A. 令和6事務年度の国税庁公表値から試算すると、法人の実地調査は約1.7パーセント、所得税の申告者の実地調査は約0.2パーセントです。簡易な接触まで含めると、個人への接触率は約3.1パーセントになります。

Q. 税務調査は何年に一度の頻度で来ますか。

A. 全法人を平均すると約60年に1回の計算です。ただし調査先は申告内容の分析で選定されるため、実際の頻度は業種や規模、過去の調査歴によって大きく変わります。

Q. 税務調査で銀行口座や通帳は調べられますか。

A. 調べられます。法人の代表者名義の個人預金についても、事業関連性が疑われる場合の通帳の提示・提出は質問検査等の範囲に含まれるとされています。取引先への反面調査が行われることもあります。

Q. 自宅を新築すると税務調査が来やすくなりますか。

A. 新築を理由に調査対象とする基準は公表されていません。ただし不動産の取得や譲渡は把握されやすいため、購入資金の出どころを示す契約書や口座履歴を保管しておくことをおすすめします。

Q. 税務調査の日程は変更できますか。

A. 変更できます。入院や葬儀、業務上やむを得ない事情があれば、申し出により変更が協議されます。申出の方法に法令上の定めはなく、口頭で差し支えありません。

Q. 無申告のまま調査を受けるとどうなりますか。

A. 無申告加算税は事前通知前の自主的な期限後申告なら5パーセントですが、調査後は15パーセント、金額に応じて20パーセントや30パーセントまで上がります。延滞税も加わるため、早く申告するほど負担は軽くなります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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