この記事は、固定資産税の課税内容に誤りが見つかった事業者・経営者・経理担当の方に向けた内容です。結論から申し上げると、土地・家屋の固定資産税に納税者が行う「修正申告」という手続は存在せず、誤りは市町村への審査の申出や価格の修正、還付という別のルートで処理します。一方で、機械装置や器具備品などの償却資産は納税者が申告する仕組みのため、内容が誤っていれば市町村へ訂正の申告を出すことになります。さらに、固定資産税が増減すると法人税・所得税の損金や必要経費も動くため、国税側での修正申告や更正の請求まで含めて考える必要があります。
固定資産税に修正申告が必要かどうかの結論
固定資産税は、市町村が税額を計算して納税通知書で知らせる賦課課税方式の税です。所得税や法人税のように納税者が税額を計算して申告する仕組みではないため、土地・家屋について納税者側から税額を訂正する「修正申告」という制度自体がありません。誤りに気づいた場合は、市町村や固定資産評価審査委員会への手続によって価格や賦課額を直してもらう流れになります。
ただし例外が償却資産です。事業用の機械装置・工具器具備品・構築物などの償却資産については、所有者が毎年1月1日現在の資産の状況を1月31日までに所在地の市町村長へ申告しなければならないと地方税法に定められています。e-Gov法令検索 地方税法この申告に誤りがあれば、実務では「修正申告」と呼ばれる訂正の申告を市町村へ提出して直します。
| 対象 | 誤りが判明したときの手続 |
|---|---|
| 土地・家屋 | 市町村への申出や固定資産評価審査委員会への審査の申出により、価格の修正と賦課額の更正、過納分の還付を受ける |
| 償却資産 | 市町村へ訂正の申告(実務上の修正申告)を提出し、増額なら追加の納付、減額なら還付を受ける |
土地・家屋の課税誤りが判明したときの対応
土地・家屋は市町村が固定資産課税台帳に登録した価格に基づいて課税されます。床面積や構造、非課税・軽減の適用漏れといった事実関係の誤りが疑われる場合は、まず課税明細書と現況を突き合わせ、市町村の資産税担当課へ内容を照会するのが出発点です。台帳の価格そのものに不服がある場合の争い方は、法律で期間と窓口が決められています。
固定資産評価審査委員会への審査の申出
固定資産課税台帳に登録された価格に不服がある納税者は、原則として納税通知書の交付を受けた日後3か月を経過する日までに、文書で固定資産評価審査委員会へ審査の申出をすることができます。この期間を過ぎると価格そのものを争うことは難しくなるため、通知書が届いた段階で内容を確認する運用が欠かせません。委員会の決定によって価格が修正されれば、市町村は既に決定した賦課額を更正します。
課税誤りによる還付と遡れる期間
登録価格に重大な錯誤があることが判明した場合、市町村長は価格を修正して台帳に登録し、納税義務者へ通知します。固定資産税の賦課決定は法定納期限の翌日から起算して5年を経過した日以後はできないと定められているため、過大に納めていた税額の還付も、実務上はおおむね直近5年分が上限になります。誤りが長期にわたっているほど時効で取り戻せない部分が生じるため、気づいた時点で早く動くことが金額に直結します。
償却資産の申告誤りの訂正手続
償却資産は申告制のため、申告漏れや取得価額・耐用年数の誤りは納税者側の訂正で直します。市町村ごとに様式の運用は異なりますが、申告書に修正である旨と対象年度、訂正内容を明示して提出する取り扱いが一般的です。増額訂正であれば追加の税額が賦課され、減額訂正であれば過納分の還付が行われます。
償却資産の税額計算と訂正の影響額
償却資産の固定資産税は、償却資産課税台帳に登録された価格を課税標準として計算します。標準税率は1.4%で、同一市町村内の償却資産の課税標準額の合計が150万円未満であれば課税されません。訂正によって課税標準額が動くと、税額は次のように変わります。
たとえば申告漏れとなっていた機械の課税標準額が300万円であった場合、1年あたりの追加税額は次のとおりです。
これが5年分さかのぼって課税されると、負担は次の金額になります。
申告漏れを放置した場合のリスク
償却資産の申告は法律上の義務であり、正当な理由なく申告しなかった場合には市町村の条例で過料を科す旨の規定を設けることができるとされています。虚偽の申告については罰則も定められています。金額の大小にかかわらず、資産を保有していながら申告書を提出していない状態は放置しないことが基本です。
実務では、建物附属設備の区分誤りが最も多い誤りの一つです。家屋として市町村が評価している部分と、償却資産として申告すべき部分の切り分けが曖昧なまま、内装工事や電気設備の一式を償却資産として申告してしまい、家屋との二重課税が生じているケースがあります。工事請負契約書と内訳書をさかのぼって確認し、家屋評価に含まれている部分を除いて訂正の申告を出すことで、還付につながることがあります。
固定資産税の増減が法人税・所得税に与える影響
固定資産税が追加で課税された、または還付された場合、国税側の処理も併せて検討します。ここを整理しないまま地方税だけを直すと、法人税・所得税の申告内容と帳簿が食い違ったままになります。
損金算入時期は賦課決定のあった事業年度
固定資産税や都市計画税などの賦課課税方式による租税は、賦課決定のあった事業年度の損金の額に算入します。国税庁 No.5300 損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期ただし、納期の開始の日の属する事業年度、または実際に納付した日の属する事業年度において損金経理をした場合には、その事業年度の損金とすることも認められています。国税庁 第1款 租税
この取り扱いから、過年度分の固定資産税を追加で賦課された場合でも、原則としてさかのぼって過去の事業年度の損金にするのではなく、追加の賦課決定があった事業年度の損金として処理することになります。過去分の追徴だからといって、直ちに法人税の修正申告が必要になるわけではない点が実務上の要点です。
個人事業者の場合も考え方は同様で、その年12月31日までに賦課決定等により納付すべきことが具体的に確定した金額を必要経費に算入します。納期が分割して定められているものは、各納期の開始の日の属する年分または実際に納付した日の属する年分の必要経費とすることもできます。国税庁 No.2215 固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合
還付を受けた場合の益金・収入の扱い
過大に納付していた固定資産税の還付を受けた場合、法人税法で益金不算入とされている還付金は法人税や住民税の本税など損金に算入されなかったものに限られています。e-Gov法令検索 法人税法固定資産税は損金に算入される租税ですから、その還付金は益金に算入する処理になります。個人事業者であれば、必要経費に算入していた金額の還付は収入として取り込みます。
国税側で修正申告・更正の請求が必要になる場面
固定資産税の増減が判明したことをきっかけに、法人税・所得税の申告そのものに誤りが見つかることがあります。税額を少なく申告していたときは修正申告を行い、正しい税額に直します。調査を受けた後で修正申告をしたり更正を受けたりすると、新たに納める税額のほかに、その税額の10%の過少申告加算税または35%の重加算税がかかります。国税庁 【申告が間違っていた場合】
逆に税額を多く申告していたときは、更正の請求により減額を求めます。法人税および地方法人税の更正の請求は、原則として請求の基になる申告の法定申告期限から5年以内に提出します。国税庁 C1-12、H1-2 法人税及び地方法人税の確定申告に係る税額等についての更正の請求地方税と国税で期間の数え方も窓口も異なるため、どちらの手続をどの順番で進めるかを最初に決めておくと手戻りがありません。
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建物の減価償却と固定資産税評価の違い
固定資産税の話で最も混同が起きるのが、建物の減価償却との関係です。法人税・所得税の減価償却は、取得に要した金額を法定耐用年数にわたって費用配分する手続で、法定耐用年数は財務省令の別表に定められています。国税庁 No.2100 減価償却のあらまし一方、家屋の固定資産税評価額は市町村が評価基準に基づいて算定するもので、帳簿上の減価償却後の簿価とは連動しません。
| 決める主体 | 家屋の評価額は市町村が決定し、減価償却費は納税者が計算します。 |
|---|---|
| 基礎となる金額 | 固定資産税は市町村が評価した価格、減価償却は実際の取得価額です。 |
| 用いる年数 | 固定資産税は市町村の評価基準、減価償却は財務省令の法定耐用年数です。 |
| 誤りの直し方 | 固定資産税は市町村への申出や訂正の申告、法人税・所得税は修正申告や更正の請求です。 |
したがって、帳簿上の建物が減価償却後にほとんど残っていない状態でも、固定資産税は市町村の評価額に基づいて課税され続けます。減価償却が進んだことを理由に固定資産税の減額を求めることはできません。
税務調査で固定資産税まわりが問われる場面
法人税の税務調査では、固定資産に関連する論点として、資本的支出と修繕費の区分、除却した資産の処理、そして償却資産の申告状況が見られることがあります。とくに帳簿上は除却済みなのに現場に資産が残っている、あるいは逆に稼働している資産が固定資産台帳に載っていないといった不一致は、法人税と固定資産税の双方に影響します。
実務では、調査の指摘を受けて固定資産台帳を整理した結果、償却資産の申告漏れと過大申告が同時に見つかることが少なくありません。この場合、市町村への訂正の申告は増減を同じ年度でまとめて出し、国税側は損金算入時期のルールに沿って追加賦課があった事業年度で処理する、という二本立ての整理になります。順序を誤ると二重に費用計上したり、還付金の益金計上が漏れたりするため、判断は慎重に行う必要があります。
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固定資産税の誤りは、金額の大きさよりも、地方税と国税のどちらをどの年度で直すかという整理の難しさに問題があります。自社の事情に即した判断が必要な場合は、まずは税理士にご相談ください。
まとめ
土地・家屋の固定資産税に納税者が行う修正申告という制度はなく、誤りは市町村への申出や固定資産評価審査委員会への審査の申出で正します。償却資産だけは申告制のため、誤りがあれば訂正の申告を市町村へ提出します。国税側では、追加の賦課は賦課決定のあった事業年度の損金、還付は益金として処理し、法人税・所得税の申告自体に誤りがあれば修正申告または更正の請求で対応します。地方税と国税で期間制限も窓口も異なるため、気づいた時点で全体の手順を決めてから動くことが、負担と手戻りを抑える近道です。
参考文献
- e-Gov法令検索 地方税法
- e-Gov法令検索 法人税法
- 国税庁 No.5300 損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期
- 国税庁 第1款 租税
- 国税庁 No.2215 固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合
- 国税庁 【申告が間違っていた場合】
- 国税庁 C1-12、H1-2 法人税及び地方法人税の確定申告に係る税額等についての更正の請求
- 国税庁 No.2100 減価償却のあらまし
固定資産税の修正申告のよくある質問まとめ
Q.固定資産税に修正申告という手続はありますか。
A.土地・家屋の固定資産税は市町村が税額を決める賦課課税方式のため、納税者が行う修正申告はありません。誤りは市町村への申出や固定資産評価審査委員会への審査の申出で正します。償却資産だけは申告制のため、訂正の申告を市町村へ提出します。
Q.償却資産の申告に誤りがあった場合はどうすればよいですか。
A.所在地の市町村へ訂正の申告を提出します。実務では申告書に修正である旨と対象年度、訂正内容を明示して提出する取り扱いが一般的です。増額訂正なら追加の税額が賦課され、減額訂正なら過納分の還付を受けられます。
Q.過大に納めた固定資産税は何年分さかのぼって還付されますか。
A.固定資産税の賦課決定は法定納期限の翌日から起算して5年を経過した日以後はできないと定められているため、還付も実務上はおおむね直近5年分が上限になります。気づいた時点で早く手続を進めることが金額に直結します。
Q.固定資産税を追加で課税されたら法人税の修正申告も必要ですか。
A.追加の固定資産税は賦課決定のあった事業年度の損金に算入するのが原則のため、過年度分の追徴であっても直ちに法人税の修正申告が必要になるわけではありません。ただし固定資産の計上漏れなど法人税の申告自体に誤りがある場合は、修正申告や更正の請求が必要です。
Q.固定資産税の還付を受けたときの経理処理はどうなりますか。
A.固定資産税は損金に算入される租税のため、その還付金は益金不算入の対象にあたらず、益金に算入します。個人事業者の場合も、必要経費に算入していた金額の還付は収入として取り込みます。
Q.建物の減価償却が進めば固定資産税も下がりますか。
A.下がりません。家屋の固定資産税評価額は市町村が評価基準に基づいて算定するもので、法人税・所得税の減価償却後の簿価とは連動しません。帳簿上の建物がほとんど償却済みでも、固定資産税は市町村の評価額に基づいて課税されます。