本記事は、法人の経理担当者・経営者・個人事業主の方に向けて、利子税と延滞税の違いを整理したものです。結論から申し上げます。利子税は延納や申告期限の延長といった認められた猶予に対する利息であり、ペナルティではないため法人税の計算上、損金に算入できます。一方の延滞税は納付が遅れたことに対する遅延利息であり、損金に算入できません。
両者は名称も計算方法も似ていますが、性質・割合・損金性の3点で明確に異なります。以下、国税庁の公表資料にもとづき、令和7年・令和8年の実際の割合を示しながら解説します。
利子税と延滞税の違い
まず全体像を押さえます。利子税は「待ってもらう約束を取り付けたうえで払う利息」、延滞税は「約束を守れずに払う利息」と整理すると理解しやすくなります。この性質の違いが、そのまま法人税での損金算入の可否に反映されます。
利子税の位置づけ
| 性質 | 法律で認められた納付の猶予に対する利息。制裁としての性格を持ちません。 |
|---|---|
| 主な発生場面 | 法人税の確定申告書の提出期限の延長、所得税の延納、相続税の延納など。 |
| 令和7年の割合 | 年0.9パーセント |
| 令和8年の割合 | 年1.3パーセント |
| 法人税での 損金算入 |
算入できます。納付した事業年度の損金となります。 |
延滞税の位置づけ
| 性質 | 法定納期限までに完納しなかった場合に自動的に課される遅延利息。 |
|---|---|
| 主な発生場面 | 期限までに納付しないとき、期限後申告・修正申告で納付税額が生じたとき、更正・決定を受けたとき。 |
| 令和7年の割合 | 納期限の翌日から2か月以内は年2.4パーセント、2か月経過後は年8.7パーセント |
| 令和8年の割合 | 納期限の翌日から2か月以内は年2.8パーセント、2か月経過後は年9.1パーセント |
| 法人税での 損金算入 |
算入できません。加算税・過怠税と同じ扱いです。 |
割合の差は歴然としています。令和8年でみると、2か月を超えて延滞した場合の年9.1パーセントは、利子税の年1.3パーセントの約7倍です。手続きを踏んで猶予を得るか、無手当で遅れるかで、資金負担がこれだけ変わります。
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利子税の仕組み
利子税がかかる場面
利子税は、納税者が申請や届出を行い、税務署長がそれを認めたことで納付期限が後ろにずれる場合に発生します。事業者が実際に接する場面は、主に次の3つです。
- 法人税の確定申告書の提出期限の延長。定款の定め等により事業年度終了の日の翌日から2か月以内に定時総会が招集されない常況にある法人は、申請により提出期限を延長できます国税庁 C1-17 定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請。会計監査人を置いている法人は、さらに長い月数の指定を受けることもできます。
- 所得税の延納。確定申告により納付する税金の2分の1以上を令和8年3月16日までに納付すれば、残額を同年6月1日まで延納でき、その期間は年7.3パーセントと利子税特例基準割合のいずれか低い割合で利子税がかかります国税庁 手順5 延納の届出。
- 相続税の延納。相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由がある場合に、担保を提供して年賦で納付する制度で、延納期間中は利子税の納付が必要です国税庁 No.4211 相続税の延納。延納税額が100万円以下でかつ延納期間が3年以下であれば、担保の提供は不要です。
法人税で押さえておきたいのは、申告期限が延長されると納付期限も延長されるという点です。そのうえで、延長された期間の日数に応じて利子税が課されます国税庁 通算法人の確定申告書に係る法人税の納付期限の延長。つまり、延長の特例を受けている法人にとって利子税は「制度を使えば必ず生じるコスト」であり、想定外の出費ではありません。
利子税の割合
利子税の割合は、年7.3パーセントと利子税特例基準割合のいずれか低い方が適用されます。利子税特例基準割合は、財務大臣が告示する銀行の新規の短期貸出約定平均金利にもとづく割合に年0.5パーセントを加算したもので、毎年見直されます国税庁 延滞税の割合。
| 令和7年1月1日~ 令和7年12月31日 |
年0.9パーセント |
|---|---|
| 令和8年1月1日~ 令和8年12月31日 |
年1.3パーセント |
令和8年は前年から0.4ポイント上昇しています。金利上昇局面では毎年変動しますので、決算ごとに最新の割合を確認する必要があります。
なお、延納に係る国税について繰上請求をした場合であっても、利子税の計算の終期は当初の延納の期限によることとされています国税庁 第64条関係 利子税。
延滞税の仕組み
2段階の割合
延滞税は、税金が定められた期限までに納付されない場合に、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて自動的に課されます国税庁 No.9205 延滞税について。税務署からの通知や処分を待つまでもなく発生する点が、加算税との大きな違いです。
割合は2段階です。納期限までの期間および納期限の翌日から2か月を経過する日までは、年7.3パーセントと延滞税特例基準割合に年1パーセントを加えた割合のいずれか低い方。2か月を経過した日以後は、年14.6パーセントと延滞税特例基準割合に年7.3パーセントを加えた割合のいずれか低い方が適用されます。
| 令和7年1月1日~ 令和7年12月31日 |
2か月以内は年2.4パーセント、2か月経過後は年8.7パーセント |
|---|---|
| 令和8年1月1日~ 令和8年12月31日 |
2か月以内は年2.8パーセント、2か月経過後は年9.1パーセント |
ここでいう納期限は、期限内に申告された場合は法定納期限、期限後申告または修正申告の場合は申告書を提出した日、更正・決定の場合は更正決定等通知書を発した日から1か月後の日を指します。修正申告のケースでは、申告書を提出した日から2か月が低い割合の適用期間となるため、修正申告書の提出と納付を同時に済ませれば高い割合に踏み込まずに終えられます。
計算方法
延滞税の額は、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じて、2つの期間ごとに計算した金額の合計額となります国税庁 延滞税の計算方法。本税1,000,000円を令和8年中に365日延滞し、うち最初の60日が2か月以内の期間にあたる場合の計算は次のとおりです。
60日は納期限の翌日から2か月を経過する日までの日数、305日は365日から60日を差し引いた残りの日数です。1年間放置すると本税の8パーセント超が上乗せされる計算になります。なお、延滞税は本税だけを対象として課されるものであり、加算税などに対しては課されません。
参考までに、同じ資金を利子税でまかなった場合と比べます。法人税5,000,000円について申告期限を1か月延長し、令和8年中に31日分の利子税が生じたケースです。
同じ31日を延滞税の低い方の割合で計算すると11,890円となり、さらに損金算入もできません。手続きを踏むかどうかの差が、税引後の負担としてはさらに開きます。
計算期間の特例
偽りその他不正の行為により国税を免れた場合等を除き、次の場合には一定の期間を延滞税の計算期間に含めない特例があります。長期間経過後の是正で延滞税が青天井にならないようにする趣旨です。
- 期限内申告書が提出されていて、法定申告期限後1年を経過してから修正申告または更正があったとき。
- 期限後申告書が提出されていて、その申告書提出後1年を経過してから修正申告または更正があったとき。
- 確定申告書を提出した後に減額更正がされ、その後さらに修正申告または更正があったとき。平成29年1月1日以後に法定納期限が到来する国税について適用されます。
ただし重加算税が課された場合、この控除は適用されません。過年度の誤りを自主的に是正する場面では、この特例の有無が延滞税額を大きく左右します。
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法人税実務での損金算入の取り扱い
損金不算入となる租税公課
法人が納付する租税公課等は原則として損金の額に算入されますが、次のものは損金に算入されません国税庁 No.5300 損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期。
| 本税 | 法人税、地方法人税、都道府県民税および市町村民税の本税 |
|---|---|
| 附帯税 | 各種加算税および各種加算金、延滞税および延滞金、過怠税。ただし地方税の納期限の延長に係る延滞金は除かれます。 |
| 制裁金 | 罰金および科料、過料 |
一方、国税の利子税や地方税の納期限の延長に係る延滞金は、納付した事業年度の損金となります。同じ「遅れた分の利息」に見えても、制度上の猶予を得ているかどうかで扱いが正反対になる点が実務上の要点です。
別表調整の実務
会計上は、延滞税も利子税も租税公課として費用処理されるのが通常です。そのため法人税申告では、延滞税・加算税に相当する金額を別表四で加算し、社外流出として処理する調整が必要になります。この調整を落とすと、そのまま所得の過少計上となります。
実務で最も多い誤りが、延滞税と利子税を租税公課勘定にまとめて計上し、申告調整を忘れるケースです。納付書や領収証書では両者が並んで印字されることも多く、金額が小さいと決算作業の中で埋もれてしまいます。私どもが関与を引き継いだ法人でも、過年度の別表四に延滞税の加算が漏れていた例を複数確認しています。
対策はシンプルです。租税公課の補助科目を「損金算入分」と「損金不算入分」に分けておき、納付の都度どちらかに振り分けます。決算時には補助科目の残高をそのまま別表四の加算額として転記できるため、調整漏れが構造的に起こらなくなります。延長の特例を受けている法人であれば、利子税は毎期必ず発生しますので、この仕組みを一度作っておく価値は高いといえます。
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負担を抑えるための対応
申告期限を延長している法人の見込納付
利子税は、延長された期間の日数に応じて、その期間に未納となっている法人税を対象に課されます。裏を返せば、本来の申告期限までに税額の見込額を納付しておけば、利子税の計算対象となる金額そのものを圧縮できます。これがいわゆる見込納付です。
会計監査人設置会社のように決算確定が構造的に遅れる法人では、申告期限の延長はほぼ必須です。その一方で、決算がおおむね固まった段階で税額の概算を出し、本来の期限までに納付してしまう運用を取っている法人は少なくありません。確定額との差額は後日精算しますので、実務上は概算がやや多めになるよう見積もるのが一般的です。多く納めすぎた分は還付されます。
納付が難しい場合の選択肢
資金繰りの都合で一時に納付できない場合、放置して延滞税を積み上げるのは最も不利な選択です。国税を一時に納付することが困難な理由がある場合には、税務署に申請することにより換価の猶予や納税の猶予が認められる場合があり、猶予が認められれば猶予期間中の延滞税が免除または軽減されます国税庁 No.9206 国税を期限内に納付できないとき。
換価の猶予は、納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていることなどが要件です。この6か月という期限を過ぎると申請そのものができなくなりますので、資金不足が見えた時点で早めに動く判断が重要になります。
判断の目安
- 決算確定が2か月以内に間に合わない常況にあるなら、申告期限の延長の特例を申請したうえで見込納付を組み合わせる。
- 修正申告を行う場合は、申告書の提出と納付を同日に揃え、高い方の割合に踏み込まない。
- 一時に納付できないと判明したら、納期限から6か月以内に猶予の申請を検討する。
- 租税公課の補助科目を分け、別表四の調整を機械的に行える状態にしておく。
どの選択肢が有利かは、法人の決算スケジュール、資金繰り、過去の申告状況によって変わります。具体的なケースの判断に迷われたときは、まずは税理士にご相談ください。
まとめ
利子税と延滞税は、いずれも本税に上乗せされる利息ですが、性質がまったく異なります。利子税は申告期限の延長や延納という認められた猶予の対価であり、令和8年は年1.3パーセント、法人税の計算上は納付した事業年度の損金に算入できます。延滞税は納付遅延に対して自動的に課されるもので、令和8年は2か月以内が年2.8パーセント、2か月経過後は年9.1パーセント、そして損金には算入できません。
実務上の要点は2つです。1つは、決算確定が遅れる法人は延長の特例と見込納付を組み合わせ、高い延滞税を避けること。もう1つは、延滞税・加算税を租税公課に紛れ込ませず、別表四での加算を確実に行う社内の仕組みを持つことです。この2点を押さえるだけで、無用な負担と申告誤りの双方を防げます。
参考文献
- 国税庁 延滞税の割合
- 国税庁 No.9205 延滞税について
- 国税庁 延滞税の計算方法
- 国税庁 No.5300 損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期
- 国税庁 C1-17 定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請
- 国税庁 通算法人の確定申告書に係る法人税の納付期限の延長
- 国税庁 No.4211 相続税の延納
- 国税庁 手順5 延納の届出
- 国税庁 第64条関係 利子税
- 国税庁 No.9206 国税を期限内に納付できないとき
利子税と延滞税のよくある質問まとめ
Q.利子税と延滞税はどちらが高いですか。
A.延滞税の方が高くなります。令和8年の利子税は年1.3パーセント、延滞税は納期限の翌日から2か月以内が年2.8パーセント、2か月経過後は年9.1パーセントです。
Q.利子税は法人税の計算で損金に算入できますか。
A.算入できます。国税の利子税や地方税の納期限の延長に係る延滞金は、原則として納付した事業年度の損金の額に算入されます。
Q.延滞税を損金に算入できないのはなぜですか。
A.延滞税は各種加算税や過怠税と同じく損金不算入とされる租税公課に含まれるためです。会計上費用処理した場合は別表四で加算する調整が必要です。
Q.申告期限を延長すると必ず利子税がかかりますか。
A.延長された期間に未納の法人税があれば、その期間の日数に応じて利子税が課されます。本来の期限までに見込額を納付しておけば、計算の対象となる金額を圧縮できます。
Q.延滞税は加算税にも課されますか。
A.課されません。延滞税は本税だけを対象として課されるものであり、加算税などに対しては課されません。
Q.納付が遅れそうなときはどうすればよいですか。
A.一時に納付することが困難な理由がある場合は、税務署への申請により換価の猶予や納税の猶予が認められることがあります。換価の猶予は納期限から6か月以内の申請が要件です。