e-Taxで申告や納税をしようとしたときに、最初につまずきやすいのが利用者識別番号です。「そもそも何の番号なのか」「マイナンバーとは違うのか」「以前取得したはずだが、どこを見れば分かるのか」と迷われる方は少なくありません。とくに相続税申告や準確定申告は一生に何度も経験する手続ではないため、番号の存在自体を忘れてしまっているケースが目立ちます。
この記事では、e-Taxの利用者識別番号について、定義・取得方法・確認方法・分からなくなったときの対処を国税庁の公表情報にもとづいて整理します。あわせて、相続税申告や準確定申告で番号がどう使われるのかも解説します。読み終えた時点で、ご自身が次に何をすればよいかが分かる構成にしています。
利用者識別番号とは
利用者識別番号とは、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用するために国税庁から付与される半角16桁の番号です。e-Taxでは、この番号がご自身を特定するアカウントIDの役割を果たします。国税庁 ご利用の流れ
e-Taxへのログインは、原則として利用者識別番号(数字16桁)とパスワードの入力によって行います。マイナンバーカードを事前に登録しておけば、利用者証明用電子証明書の暗証番号(数字4桁)の入力だけでログインできる仕組みも用意されています。国税庁 マイナンバーカード方式について
マイナンバーとの違い
混同されやすいのですが、利用者識別番号とマイナンバー(個人番号)はまったく別の番号です。マイナンバーは行政手続全般で個人を識別する12桁の番号であるのに対し、利用者識別番号はe-Taxというシステムの中だけで使われる16桁の番号です。桁数も発行主体も用途も異なるため、申告書に記載する場面を取り違えないよう注意してください。
暗証番号・納税用確認番号との違い
e-Taxでは、利用者識別番号のほかにいくつかの番号やパスワードを扱います。役割を混同すると手続が進まなくなるため、次の表で整理しておきます。
| 利用者識別番号 | e-Taxを利用する方に付与される半角16桁の番号。アカウントIDにあたるもの。 |
|---|---|
| 暗証番号 (パスワード) |
利用者識別番号とセットでe-Taxにログインするために使う番号。 |
| 納税用確認番号 | 電子納税で利用者識別番号とともに本人確認に用いる6桁の数字。開始届出書の提出時に自分で決めて登録する。 |
| マイナンバー (個人番号) |
行政手続で個人を識別する12桁の番号。e-Taxのログインに使う番号ではない。 |
納税用確認番号は、インターネットバンキングやATMの画面で「確認番号」欄に入力する番号であり、暗証番号と同じ機能を果たすものとされています。国税庁 開始届出書を新規で作成する際、「納税用確認番号」が必須入力となっていますが、納税用確認番号とは何ですか。
利用者識別番号の取得方法
利用者識別番号は、e-Taxを利用する前に取得しておく必要があります。取得のルートは大きく分けて、マイナンバーカードを使ってWEBで登録する方法と、開始届出書を提出する方法の2つです。
| 取得方法 | 必要なもの・特徴 |
|---|---|
| WEBからマイナンバーカードを使ってアカウントを登録する | マイナンバーカードと、読み取りに対応したスマートフォンまたはICカードリーダライタが必要。登録と同時に利用者識別番号が発行される。 |
| e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーから開始届出書を送信する | 推奨環境を満たしたパソコンまたはスマートフォン・タブレットがあれば手続できる。メッセージボックスに「利用者識別番号等の通知」が格納される。 |
| マイナポータルの「外部サイトとの連携」機能からe-Taxを利用する | 利用者識別番号を持っていない場合は利用者情報の登録画面へ進み、そこで取得できる。 |
いずれの方法でも、取得できる利用者識別番号は同じ16桁の番号です。国税庁 作成・送信する開始(変更等)届出書の選択から、個人用・法人用・税理士等用の届出書を選んで作成できます。
書面で届出書を提出する場合
e-Taxの利用開始は、書面の「電子申告・納税等開始(変更等)届出書」を納税地の所轄税務署長へ提出する方法でも行えます。この場合、後日、税務署から郵送等で通知書が送付されます。通知書等の送付には時間がかかるため、申告期限に余裕をもって提出することが案内されています。国税庁 H3-1 電子申告・納税等開始(変更等)の届出
ID・パスワード方式の取扱い
かつて広く案内されていたID・パスワード方式は、「確定申告書等作成コーナー」でのみ利用できる送信方式で、税務署で対面の本人確認を受けるなどの手続により利用者識別番号を取得できるものでした。ただし、この方式で使うID・パスワードの新規発行はすでに停止されています。国税庁 ID・パスワードの新規発行停止について
また、ID・パスワード方式そのものについても、令和9年分確定申告からは利用できなくなる予定であることが公表されています。これから利用者識別番号を取得する方は、マイナンバーカード方式を前提に準備を進めるのが確実です。国税庁 ID・パスワード方式について
利用者識別番号の確認方法
すでに利用者識別番号を取得している場合、次の3つのいずれかで確認できることが多いです。心当たりのある順に確認してみてください。
通知書・利用者識別番号等の通知
WEBから開始届出書を送信して取得した場合は、e-Taxのメッセージボックスに「利用者識別番号等の通知」が格納されます。書面で届出書を提出した場合や、後述する変更等届出書を提出した場合は、税務署から郵送で通知書が届きます。過去の申告資料と一緒に保管されていないか、まず探してみてください。
マイページから確認
マイナンバーカード方式でログインした場合、利用者識別番号は「マイページ」の「基本情報」メニューから確認できます。パスワードは「マイページ」の「その他の登録情報」メニューから確認できるとされています。番号を控えていなくても、マイナンバーカードさえ手元にあれば確認できる点が大きな利点です。国税庁 マイページ
メッセージボックスから確認
メッセージボックスは、e-Taxソフト(WEB版)から確認できます。ただし、個人の利用者がマイナンバーカードによる認証を行わずにログインした場合、一部のメッセージを閲覧できません。すべてのメッセージの詳細を確認するには、マイナンバーカード等の電子証明書による認証が必要です。国税庁 メッセージボックスについて
なお、各メッセージは格納された日から1,900日間(約5年間)を経過すると、既読・未読にかかわらず削除されます。数年前の通知を探すつもりでいると、すでに残っていない可能性がある点にご注意ください。
利用者識別番号がわからない・忘れた場合の対処
通知書もマイページも確認できず、利用者識別番号が分からなくなった場合の正しい対処は、変更等届出書を提出することです。開始届出書を出し直すことではありません。国税庁 利用者識別番号を忘れた場合はどうすればいいですか。
変更等届出書を提出する
変更等届出書を正常に送信しても、送信結果の画面に利用者識別番号は表示されません。後日、届出書を受け付けた税務署から郵送により書面で通知されます。この場合、利用者識別番号自体は変更されませんが、暗証番号が初期化され、事前登録した電子証明書が消去されます。新たに通知された暗証番号でログインしてパスワードを変更し、電子証明書を登録し直す必要があります。国税庁 利用者識別番号等を失念し、変更等届出書を送信した場合、利用者識別番号等は即時に通知されますか。
郵送での通知となるため、手元に届くまでに日数がかかります。申告期限が迫っている場合は、早めに手続を始めてください。
再取得(開始届出書の出し直し)の注意点
もっとも避けたいのが、番号が分からないからといって開始届出書を提出し直してしまうことです。すでに利用者識別番号を取得している方が再度開始届出書を提出すると、これまでe-Taxで提出した申告等の内容を確認できなくなることがあります。
また、新たに利用者識別番号を取得すると、それまで利用していた利用者識別番号は利用できなくなり、新しい番号には「メッセージボックス」などの内容が引き継がれません。過去の受信通知や納税の履歴をたどれなくなるため、必ず変更等届出書の手続を選んでください。
税理士に依頼している方は、関与税理士から開始届出書が提出されていないかも併せて確認する必要があります。ご自身と税理士の双方が届出を出してしまうと、番号が二重に発行される原因になります。
関連コラム相続税申告はe-Taxでできる?メリット・デメリットとやり方を解説▸
相続税申告・準確定申告での利用者識別番号
相続の場面では、利用者識別番号が必要になるタイミングが2つあります。準確定申告と相続税申告です。どちらも期限が短いため、番号の準備が遅れると電子申告そのものを断念することになりかねません。
準確定申告での使いどころ
準確定申告は、年の中途で死亡した方について、相続人等が1月1日から死亡した日までの所得金額および税額を計算し、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税を行う手続です。国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
e-Taxで送信する場合、申告するのは相続人等であるため、必要になるのは亡くなった方の番号ではなく、申告する相続人ご自身の利用者識別番号です。被相続人の番号を探して時間を使ってしまうケースがあるため、ここは取り違えないようにしてください。
相続税申告での使いどころ
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うこととされています。国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
相続税申告はe-Taxの利用可能手続に含まれており、パソコンのe-Taxソフトから提出できます。国税庁 利用可能手続一覧
ここでも申告する各相続人が利用者識別番号を持っている必要があり、番号を取得していない相続人がいると電子申告の準備が止まってしまいます。相続人が遠方にお住まいの場合や高齢の場合は、番号の取得だけで日数がかかることもあるため、早めに声をかけておくと安心です。
税理士に依頼する場合
税理士に相続税申告を依頼する場合、税理士が代理送信する形になりますが、その場合でも各相続人の利用者識別番号は必要です。開始届出書は税理士が関与先の分をまとめて提出する方法もあるため、ご自身で手続する前に、依頼先の税理士に取得状況を確認しておくと二重取得を防げます。
関連コラム相続税申告書のダウンロード方法|年分別の様式選びと必要な表▸
関連コラム更正の請求のやり方|書き方と記入例・e-Tax手順を税理士が解説▸
まとめ
利用者識別番号は、e-Taxを使うために付与される半角16桁の番号で、ログインの入口となるアカウントIDです。取得はマイナンバーカードを使ったWEB登録か開始届出書の提出で行い、確認はマイページ、メッセージボックス、税務署からの通知書のいずれかで行います。
分からなくなったときにもっとも重要なのは、開始届出書を出し直さず、変更等届出書を提出することです。安易に再取得すると、過去の申告内容やメッセージボックスの履歴を確認できなくなります。相続税申告や準確定申告は期限が短いため、番号の確認は着手直後に済ませておくことをおすすめします。
相続人が複数いる場合の番号の準備や、税理士への依頼と自分での手続の切り分けなど、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
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- 国税庁 ご利用の流れ
- 国税庁 マイナンバーカード方式について
- 国税庁 開始届出書を新規で作成する際、「納税用確認番号」が必須入力となっていますが、納税用確認番号とは何ですか。
- 国税庁 作成・送信する開始(変更等)届出書の選択
- 国税庁 H3-1 電子申告・納税等開始(変更等)の届出
- 国税庁 ID・パスワードの新規発行停止について
- 国税庁 ID・パスワード方式について
- 国税庁 マイページ
- 国税庁 メッセージボックスについて
- 国税庁 利用者識別番号を忘れた場合はどうすればいいですか。
- 国税庁 利用者識別番号等を失念し、変更等届出書を送信した場合、利用者識別番号等は即時に通知されますか。
- 国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 利用可能手続一覧
利用者識別番号のよくある質問まとめ
Q.利用者識別番号とは何ですか。
A.e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用するために付与される半角16桁の番号です。e-Taxへのログインの際に、パスワードとあわせて入力するアカウントIDにあたるものです。
Q.利用者識別番号とマイナンバーは同じものですか。
A.別のものです。マイナンバーは行政手続全般で個人を識別する12桁の番号で、利用者識別番号はe-Taxの中だけで使われる16桁の番号です。桁数も用途も異なります。
Q.利用者識別番号はどこで確認できますか。
A.マイナンバーカード方式でログインした場合はマイページの基本情報メニューから確認できます。ほかに、e-Taxのメッセージボックスに格納された利用者識別番号等の通知や、税務署から郵送された通知書でも確認できます。
Q.利用者識別番号を忘れた場合はどうすればよいですか。
A.変更等届出書を提出してください。後日、税務署から郵送により書面で利用者識別番号等が通知されます。この場合、利用者識別番号自体は変更されませんが、暗証番号が初期化され、事前登録した電子証明書が消去されます。
Q.開始届出書を出し直して番号を取り直しても問題ありませんか。
A.おすすめできません。すでに利用者識別番号を取得している方が再度開始届出書を提出すると、これまでe-Taxで提出した申告等の内容を確認できなくなることがあります。新しい番号にはメッセージボックスの内容も引き継がれません。
Q.相続税申告や準確定申告では誰の利用者識別番号が必要ですか。
A.申告するのは相続人等であるため、申告する相続人ご自身の利用者識別番号が必要です。相続人が複数いる場合は、それぞれが番号を持っている必要があります。税理士が代理送信する場合も同様です。