この記事は、確定申告や法人税の申告を終えた後で「税金を多く納めすぎていた」と気付いた事業者・経営者・経理担当者、および確定申告をした個人の方に向けて、更正の請求のやり方を実務手順に沿って解説するものです。
結論として、更正の請求は「更正の請求書を作成し、理由を証拠書類とひも付けて具体的に書き、e-Taxまたは書面で所轄税務署長に提出する」という流れで完結します。手続そのものは難しくありませんが、審査で結果が分かれるのは「更正の請求をする理由」欄の書き方です。
本記事は、請求書の記載事項・理由欄の記入例・e-Taxでの操作手順に絞って説明します。制度の概要や期限の考え方、添付書類のケース別一覧は、それぞれ別記事で詳しく扱っていますので、該当箇所で案内するコラムをあわせてご覧ください。
更正の請求の全体手順
更正の請求とは、申告等をした税額が実際より多かった場合に、正しい額への訂正を求める手続です。所得税では、計算誤り等による場合は法定申告期限から5年以内に提出する必要があります国税庁 A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続。まずは作業の全体像を押さえてください。
| 手順1 誤りの特定 |
どの年分・どの事業年度の、どの項目がいくら誤っていたかを金額まで確定させます。 |
|---|---|
| 手順2 証拠書類の収集 |
領収書・帳簿・控除証明書など、請求の理由の基礎となる事実を証明する書類をそろえます。 |
| 手順3 請求書の作成 |
更正の請求書に、対象となる申告の種類・理由・請求額の計算・還付金の受取口座を記載します。 |
| 手順4 提出 |
e-Taxまたは書面で、納税地を所轄する税務署長へ提出します。 |
期限の起算日
起算点となる法定申告期限は税目ごとに異なります。所得税及び復興特別所得税は各年の翌年3月15日、個人事業者の消費税及び地方消費税は各年の翌年3月31日が原則です国税庁 確定申告が間違っていたとき・確定申告を忘れていたとき。判決の確定などの後発的理由による場合は、その事実が生じた日の翌日から2月以内と、期間が大きく短くなる点に注意が必要です。
なお、確定申告の必要がない方が還付を受けるための申告をしていた場合は、その提出した日から5年以内が請求可能な期間となります。期限や適用要件の詳細は次の記事で整理しています。
関連コラム所得税の更正の請求とは|5年の期限と手続きの流れを税理士が解説▸
更正の請求書の記載事項
所得税の更正の請求書は1枚の様式で、上段が請求の対象を特定する欄、中段が理由と添付書類の欄、下段が請求額の計算書と還付金の受取場所の欄という構成です。以下、記入の際に迷いやすい欄を順に見ていきます。
請求の目的となった申告又は処分の種類
この欄には、訂正を求める対象そのものを書きます。通常の確定申告を訂正する場合は「令和○○年分確定申告」、無申告により税務署長から決定を受けていた場合は「令和○○年分決定通知」のように記載します。ここが空欄または曖昧だと、税務署側でどの申告に対する請求か特定できません。
申告書を提出した日等の記載
「申告書を提出した日、処分の通知を受けた日又は請求の目的となった事実が生じた日」欄には、上段で特定した申告の申告年月日、または処分の通知を受けた日を記載します。後発的理由に基づく請求の場合のみ、その理由となった事実が生じた日を記載します。2月以内という短い期間の起算点となる日付ですので、判決日や和解成立日を書面で確認したうえで転記してください。
請求額の計算書
請求額の計算書は、左側に「申告し又は処分の通知を受けた額」、右側に「請求額」を並べ、所得金額・所得控除・税額を上から順に記入する形式です。誤りのあった項目だけでなく、当初申告と正しい計算の両方を全項目にわたって記載する点が確定申告書との違いです。還付を受ける金額は、次の関係で算出されます。
変動所得や臨時所得がある方、土地建物等・株式等の譲渡所得がある方などは、平均課税の計算書や譲渡所得の内訳書といった計算明細書を付表として使用し、請求書に添付します。
還付される税金の受取場所
還付金の振込先は、原則として請求者本人名義の預貯金口座に限られます。銀行等の口座を指定する場合は金融機関名・預金の種類・口座番号を、ゆうちょ銀行の場合は貯金総合通帳の記号番号を記載します。マイナンバー制度で登録済みの公金受取口座を使う場合は、その旨を記載すれば金融機関名や口座番号の記載は不要です。
「更正の請求をする理由」欄の書き方
更正の請求書で最も重要なのが、この理由欄です。国税庁の記載要領でも、更正の請求をする理由と請求をするに至った事情の詳細をできるだけ詳しく記載し、書ききれない場合は別紙に記載して添付するよう求められています。審査は提出された書面と添付書類だけで進むため、ここで説明が尽くされているかどうかが処理速度に直結します。
理由欄の基本構成
理由欄は、次の4要素を1文から2文にまとめる形が実務上扱いやすい構成です。要素が1つでも欠けると、税務署から追加の照会が入る原因になります。
| 1. 対象項目 | どの所得区分・どの控除・どの経費科目に誤りがあったのかを特定します。 |
|---|---|
| 2. 誤りの内容 | 計上漏れ・記載漏れ・計算誤りなど、誤りの種類を明示します。 |
| 3. 金額 | 誤っていた金額を具体的な数字で書きます。「一部」「若干」等の表現は避けます。 |
| 4. 結果 | その誤りによって所得が過大になった、控除額が過少になった、という帰結で結びます。 |
ケース別の記入例
国税庁の記載要領には、代表的なケースごとの記載例が示されています。自身のケースに近い型を選び、金額と固有名詞を置き換えるのが最も確実な進め方です。
| 事業所得の 経費計上漏れ |
事業所得の必要経費(地代家賃:事務所の賃借料)について12月分(200,000円)の経費計上漏れがあり、事業所得の金額が過大となっていたため。 |
|---|---|
| 医療費控除の 記載漏れ |
令和×年×月×日に長男が虫歯の治療を行った際に、□□病院へ支払った医療費(○○○円)について記載漏れがあり、医療費控除額が過少となっていたため。 |
| 社会保険料控除の 記載漏れ |
令和×年中に支払った国民年金保険料について記載漏れがあり、社会保険料控除額が過少となっていたため。 |
| 扶養控除の 区分誤り |
特定扶養親族に該当する子について一般の控除対象扶養親族としており、扶養控除額が過少となっていたため。 |
| 住宅借入金等 特別控除の誤り |
□□銀行からの借入金について控除額の計算に含めておらず、住宅借入金等特別控除額が過少となっていたため。 |
いずれの例も、対象項目・誤りの内容・金額・結果という順序で書かれています。「添付した書類」欄には、この理由を裏付ける書類名を対応させて記載します。上記の経費計上漏れの例であれば、決算書または収支内訳書、帳簿書類の地代家賃部分、12月分の賃借料を支払った領収書が該当します。
実務上の留意点
実務では、理由欄に書いた金額と添付書類の金額が1円単位で一致しているかどうかで、その後の展開が変わります。あるクライアントの事例では、外注費の計上漏れについて理由欄に月別の内訳と各請求書の番号まで書き添え、同じ順序で証憑の写しをそろえて提出したところ、税務署からの追加照会なしで減額更正の通知が届きました。
反対に、「経費の計上漏れがあったため」とだけ書いて総額の領収書束を添付した事例では、どの領収書がどの金額に対応するのかが読み取れず、税務署から内訳を示すよう照会が入り、処理が数週間延びています。理由欄は「読んだ人が添付書類を1枚ずつ突き合わせられる粒度」で書くのが実務上の要点です。
なお、一定期間の取引に関する事実に基づく請求では、その取引の記録等に基づいて理由の基礎となる事実を証明する書類が必要になります。ケースごとにどの書類をそろえるべきかは、次の記事で整理しています。
関連コラム更正の請求の添付書類|ケース別の必要書類と提出方法を税理士が解説▸
e-Taxによる提出手順
更正の請求書は電子申告で提出でき、その場合は本人確認書類の提示または添付が不要になります。使用するシステムは個人と法人で異なりますので、以下で分けて説明します。
個人(所得税)の場合
所得税及び復興特別所得税の更正の請求は、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」内にある「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」で請求書を作成し、e-Taxにより提出する方法が案内されています国税庁 【申告が間違っていた場合】。操作は次の順序で進みます。
- 確定申告書等作成コーナーにアクセスし、「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」を選択します。
- マイナンバーカード方式またはID・パスワード方式で、e-Taxへの接続方法を選びます。
- 訂正の対象となる年分を選択し、「更正の請求書」を作成する旨を指定します。
- 当初申告の内容を入力または読み込み、正しい金額へ修正します。税額は自動計算されます。
- 更正の請求をする理由と、添付した書類の名称を入力します。
- 還付される税金の受取口座を入力し、内容を確認して送信します。
当初申告をe-Taxで行っていた場合は、申告データを読み込むことで当初の金額欄の入力を省略でき、入力誤りのリスクを減らせます。証拠書類はイメージデータ(PDF)で送信するか、別途書面で提出します。
法人の場合
法人税及び地方法人税の更正の請求は、e-Taxソフトで更正の請求書を作成・提出する方法が案内されています国税庁 C1-12、H1-2 法人税及び地方法人税の確定申告に係る税額等についての更正の請求。個人向けの作成コーナーとは別のソフトを使う点にご注意ください。e-Taxを初めて利用する場合は、事前に利用者識別番号を取得する必要があります。
法人の場合、納付すべき税額が過大であるときのほか、翌期へ繰り越す欠損金額が過少であるとき、または欠損金額を記載しなかったときも請求の対象になります。この欠損金額に関する更正の請求は、平成30年4月1日以後に開始した事業年度に係るものについて10年以内と、通常の5年より長い期間が設けられています。移転価格税制に関する一定の請求では7年以内とされています。
書面で提出する場合
e-Taxを利用しない場合は、更正の請求書を書面で作成し、納税地を所轄する税務署長へ持参または送付します。税務署の開庁時間は8時30分から17時までで、閉庁日は受付を行っていませんが、送付または時間外収受箱への投函により提出できます。書面でマイナンバーを記載した請求書を提出する際は、本人確認書類の提示または写しの添付が必要です。
提出後の流れと修正申告との違い
更正の請求書を提出すると、税務署が請求に係る税額等について調査し、請求が適正であるかを審査します。請求内容が正当と認められたときは減額更正が行われ、その内容が請求者へ通知されたうえで、納めすぎた税金が還付されます。請求どおりに認められなかった場合、処分の通知を受けた日の翌日から起算して3月以内に、処分をした税務署長への再調査の請求、または国税不服審判所長への審査請求ができます。
修正申告との使い分け
納める税金が多すぎた場合や還付される税金が少なすぎた場合は更正の請求、納める税金が少なすぎた場合や還付される税金が多すぎた場合は修正申告と、方向によって手続が分かれます国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき。
| 更正の請求 | 修正申告 |
|---|---|
| 税額が過大、または還付額が過少だったときに用います。 | 税額が過少、または還付額が過大だったときに用います。 |
| 税務署の審査を経て減額更正が行われ、税金が還付されます。 | 提出により税額が確定し、提出日までに納付します。 |
| 原則として法定申告期限から5年以内に限られます。 | 税務署長から更正を受けるまではいつでも提出できます。 |
修正申告では、新たに納付することとなった税額について延滞税がかかり、場合によっては加算税も課されます。負担額の計算方法は次の記事で解説しています。
関連コラム修正申告の延滞税|計算方法と加算税の関係を税理士が解説▸
更正の請求は、書式の記入そのものよりも、誤りの内容をどう説明し、どの書類で裏付けるかという組み立てが結果を左右します。取引の期間が長い場合や、複数年分にまたがる場合、金額の根拠が複雑な場合など、具体的なケースについては、まずは税理士にご相談ください。
まとめ
更正の請求のやり方は、誤りの特定、証拠書類の収集、請求書の作成、提出という4つの手順に整理できます。請求書では、請求の目的となった申告の種類、請求額の計算書、還付金の受取場所を正確に記入したうえで、理由欄に「対象項目・誤りの内容・金額・結果」の4要素を書き切ることが要点です。
提出はe-Taxが基本で、個人は確定申告書等作成コーナーの更正の請求書・修正申告書作成コーナー、法人はe-Taxソフトを使用します。期限は原則として法定申告期限から5年以内、後発的理由による場合は事実が生じた日の翌日から2月以内です。期限を過ぎると請求そのものができなくなりますので、誤りに気付いた時点で早めに着手してください。
参考文献
- 国税庁 A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続
- 国税庁 確定申告が間違っていたとき・確定申告を忘れていたとき
- 国税庁 【申告が間違っていた場合】
- 国税庁 C1-12、H1-2 法人税及び地方法人税の確定申告に係る税額等についての更正の請求
- 国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき
更正の請求のよくある質問まとめ
Q. 更正の請求書はどこで入手できますか。
A. 国税庁ホームページの「所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」のページに、年分別の様式と記載要領がPDFで掲載されています。確定申告書等作成コーナーの「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」で作成することもできます。
Q. 更正の請求をする理由は、どの程度詳しく書く必要がありますか。
A. 対象項目、誤りの内容、金額、その結果という4要素を具体的に書きます。国税庁の記載要領でも、理由と事情の詳細をできるだけ詳しく記載し、書ききれない場合は別紙に記載して添付するよう求められています。
Q. 更正の請求の期限はいつまでですか。
A. 法令の規定に従っていなかった場合や計算に誤りがあった場合は、原則として法定申告期限から5年以内です。判決の確定などの後発的理由による場合は、その事実が生じた日の翌日から2月以内となります。
Q. 更正の請求はe-Taxで提出できますか。
A. 提出できます。個人の所得税は確定申告書等作成コーナーの「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」で作成して送信し、法人税はe-Taxソフトで作成・提出します。e-Taxで提出する場合、本人確認書類の提示または添付は不要です。
Q. 更正の請求書を提出すると必ず還付されますか。
A. 必ず還付されるわけではありません。税務署が請求に係る税額等を調査し、請求が適正であるかを審査したうえで、正当と認められたときに減額更正が行われて還付されます。認められなかった場合は、通知を受けた日の翌日から起算して3月以内に再調査の請求または審査請求ができます。
Q. 法人が欠損金額の記載漏れに気付いた場合も更正の請求ができますか。
A. できます。翌期へ繰り越す欠損金額が過少であるときや、欠損金額を記載しなかったときも更正の請求の対象です。この場合、平成30年4月1日以後に開始した事業年度に係るものは10年以内と、通常より長い期間が設けられています。