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所得税の更正の請求とは|5年の期限と手続きの流れを税理士が解説

2026-08-30
目次

確定申告のあとで「経費の計上が漏れていた」「控除の記載を間違えていた」と気づき、納めすぎた所得税を取り戻したい——このページは、そうした事業者・経営者・経理ご担当の方、および確定申告をされた個人の方に向けた記事です。

結論から申し上げます。納める税金が多過ぎた(または還付される税金が少な過ぎた)ときの訂正手続は「更正の請求」で、原則として法定申告期限から5年以内に行います。逆に納める税金が少な過ぎたときは「修正申告」であり、両者は別の手続です。この記事では、更正の請求の全体像を、期限・手続きの流れ・提出方法・認められるケースと認められないケース・提出後の実務まで、国税庁の一次情報にもとづいて整理します。

所得税の更正の請求とは(先に結論)

更正の請求とは、すでに提出した確定申告書の税額等が実際より多かった場合に、正しい額へ訂正するよう税務署長に求める手続です。更正の請求書を税務署長に提出すると、税務署がその内容を検討し、納め過ぎの税金がある等と認めた場合には減額更正が行われ、税金が還付されます国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき

ここで押さえておきたいのは、更正の請求は「申告のやり直し」ではなく「減額してほしいという請求」だという点です。提出すれば自動的に税額が下がるわけではなく、税務署が請求内容を調査・審査したうえで、認めるかどうかを判断します国税庁 A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続。この性格を理解しているかどうかで、書類の作り込み方が変わります。

手続の名称 所得税及び復興特別所得税の更正の請求
使う場面 納める税金が多過ぎた/還付される税金が少な過ぎた/純損失等の金額が少な過ぎた
提出先 納税地を所轄する税務署長
原則の期限 法定申告期限から5年以内
結果 税務署の審査を経て、認められれば減額更正・還付

修正申告との違い(どちらを使うかの分岐)

実務で最初につまずきやすいのが、更正の請求と修正申告の使い分けです。判断軸はひとつで、「当初の申告と比べて税額が減るのか、増えるのか」だけを見ます。

更正の請求 修正申告
納める税金が多過ぎた/還付が少な過ぎたとき 納める税金が少な過ぎた/還付が多過ぎたとき
税務署長へ「請求」する(審査あり) 納税者が自ら申告をやり直す(審査を待たない)
原則として法定申告期限から5年以内 誤りに気づいたらできるだけ早く
認められれば還付 差額の納付が必要

修正申告のほうは、提出する日が新たに納める税金の納期限となり、納付の日までの延滞税を併せて納める必要があります国税庁 No.9205 延滞税について。また、税務署の調査の事前通知の前に自主的に修正申告をした場合であれば過少申告加算税はかかりませんが、事前通知の後や調査を受けた後では加算税が生じます。「気づいた時点でどちらに転ぶか」を早く見極めることが、そのままコスト差になります。

関連コラム修正申告の延滞税|計算方法と加算税の関係を税理士が解説

更正の請求の期限|原則5年と後発的事由の特例

原則:法定申告期限から5年以内

国税に関する法律の規定に従っていなかった場合、またはその計算に誤りがあった場合の更正の請求は、法定申告期限から5年以内に提出します。ただし、確定申告の必要がない方が還付を受けるための申告をしている場合は、その申告書を提出した日から5年以内が期限となります。提出期限が土曜日・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限です。

なお、そもそも確定申告義務がなく、まだ申告書自体を出していないのであれば、更正の請求ではなく還付申告を行います。還付申告書は、確定申告期間とは関係なくその年の翌年1月1日から5年間提出することができます国税庁 No.2030 還付申告。「申告済みなら更正の請求」「未申告なら還付申告」と整理すると迷いません。

特例:後発的理由があるときは2か月以内

申告時点では正しかった内容が、あとから起きた事実によって覆ることがあります。国税庁は後発的理由を、申告・更正・決定の際に課税標準等の計算の基礎とした事実が、その事実に係る判決またはこれと同一の効力を有する和解により、申告等の計算の基礎としたところと異なることが確定したこと等と説明しています。この場合や、前年分の税額等について更正等があった場合等は、それらの事実が生じた日の翌日から2か月以内に提出します。手続の根拠は国税通則法第23条に置かれていますe-Gov法令検索 国税通則法第23条

実務上、この2か月は非常に短く感じられます。判決や和解が確定した日、あるいは前年分の更正通知を受け取った日を起点に、社内で誰が気づき誰が動くのかを決めておかないと、期限だけが過ぎてしまいます。訴訟・調停・取引先との係争を抱えている法人ほど、判決日と税務上の期限をセットで管理しておく価値があります。

ケース 期限の起算点 期限
計算誤り・法令の適用誤りなど通常のケース 法定申告期限 5年以内
申告義務がない方が還付のため申告していたケース その申告書を提出した日 5年以内
判決・和解の確定など後発的理由があるケース その事実が生じた日の翌日 2か月以内

認められるケースと認められないケース

認められやすいのは「客観的な誤り」

更正の請求が通りやすいのは、帳簿・証憑によって「本来こうだった」と客観的に示せる誤りです。典型的には次のようなものです。

  • 必要経費の計上漏れ(12月分の地代家賃を落としていた、など)
  • 所得控除の記載漏れ(国民年金保険料の社会保険料控除が抜けていた、など)
  • 売上の二重計上・金額の転記誤り
  • 減価償却費の計算誤り

認められないケース

一方で、次のような場合は更正の請求ができません。所得金額の増減や所得控除の追加があっても、最終的な税額または純損失の金額に異動がない場合は、更正の請求はできないとされています。「間違いがあったこと」ではなく「税額が過大だったこと」が要件だからです。

認められないケース 理由
訂正しても最終的な税額・純損失の金額が変わらない 減額すべき税額が生じないため
納める税金が増える方向の訂正 この場合は修正申告で対応する
期限(原則5年/後発的理由は2か月)を過ぎている 請求できる期間を過ぎているため
単なる見解の相違で、事実を証明する書類が用意できない 請求の理由の基礎となる事実を証明できないため

実務での取り扱い:私たちが実際に扱った例

実務でよくあるのが、決算・申告のあとに支払いの計上漏れが判明する類型です。ある個人事業の方の申告では、事務所の賃借料のうち12月分が翌年の支払処理となっていたために計上から抜け落ちており、事業所得が過大になっていました。この場合、青色申告決算書(または収支内訳書)、帳簿書類のうち地代家賃部分の写し、賃借料を支払った領収書の写しなどを添えて更正の請求を行うのが、国税庁が示す進め方です。

私たちが実務で重視しているのは、「請求書の記載」よりも「添付した資料だけで第三者が誤りを追体験できるか」です。帳簿の該当箇所、支払の事実、当初申告での取り扱い——この3点が一続きに読み取れる形にしておくと、税務署からの追加の照会が減り、結果的に還付までの期間も短くなる傾向があります。逆に、金額の根拠が請求者の説明文だけに依存していると、審査は長引きます。

手続きの流れと提出方法(窓口・郵送・e-Tax)

手続きの流れ

  1. 誤りの内容と、正しい税額との差額を確定させる(税額が減るのか増えるのかを確認)
  2. 期限内かどうかを確認する(原則5年/後発的理由は2か月)
  3. 更正の請求書を作成し、請求の理由の基礎となる事実を証明する書類をそろえる
  4. 納税地を所轄する税務署長へ提出する
  5. 税務署の審査を受ける(請求に係る税額等について調査し、請求が適正であるか等を審査されます)
  6. 認められれば減額更正の通知を受け、還付を受ける

提出方法は3つ

国税庁は、確定申告書等作成コーナーの「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」で更正の請求書等を作成のうえ、e-Taxにより提出する方法を案内しています。書面で作成して持参または送付により提出することもできます。

提出方法 特徴 実務上の留意点
e-Tax 国税庁が案内する方法。作成コーナーで税額が自動計算される e-Taxで提出する場合、本人確認書類の提示または添付は不要
税務署の窓口へ持参 その場で受付印を受けられる 開庁時間は8時30分から17時まで。閉庁日(土・日曜日・祝日等)は受付を行っていない
郵送等で送付 閉庁日でも提出できる 税務署の時間外収受箱への投函でも提出可能

「税務署の更正の請求の窓口はどこか」というご質問をよくいただきますが、専用の窓口があるわけではなく、提出先は納税地を所轄する税務署長です。書面でマイナンバー(個人番号)を記載した申請書等を提出する際は、その都度、申請をする方の本人確認書類の提示または写しの添付が必要になります。

添付書類は「請求の理由を証明する書類」

添付書類は、更正の請求の理由が一定期間の取引に関する事実に基づくものである場合はその取引の記録等に基づき請求の理由の基礎となる事実を証明する書類、それ以外の場合は請求の理由の基礎となる事実を証明する書類を添付します。具体的に何を付けるかはケースごとに異なるため、国税庁が公表している更正の請求書の「記載要領」を必ず確認してください。

提出後の流れ|審査・還付・税務署からの連絡

審査を経て減額更正・還付へ

提出後は、請求に係る税額等について調査が行われ、請求が適正であるかどうかが審査されます。納め過ぎの税金がある等と認められた場合には減額更正が行われ、その内容が請求をした人に通知されます。処理までの期間は内容の複雑さと資料の充実度に大きく左右されます。単純な計上漏れで証憑がそろっていれば比較的短く済むこともありますが、金額が大きい場合や事実関係の確認が必要な場合は、数か月を見ておくのが実務感覚です。

税務署から連絡が来たときの実務

更正の請求を出したあとに、税務署から電話や書面で照会が入ることは珍しくありません。これは「疑われている」というより、審査に必要な事実確認であることがほとんどです。慌てず、次の順に対応します。

  1. 照会の対象となっている年分・項目・金額を正確に特定する
  2. 手元の帳簿・証憑と突き合わせ、事実として説明できる範囲を確定する
  3. 推測で答えず、確認が必要な点は「確認して回答します」と伝えて持ち帰る
  4. 回答は、口頭だけで済ませず書面・データで残す

なお、請求内容が認められず「更正をすべき理由がない旨」の通知を受けた場合も、そこで終わりではありません。処分の通知を受けた日の翌日から起算して3か月以内に、その処分をした税務署長に対して再調査の請求、または国税不服審判所長に対して審査請求をすることができます。この期限も短いため、通知を受け取った時点で対応方針を決める必要があります。

税理士に依頼している場合は、税務代理権限証書を提出しておくことで、税務署からの連絡窓口を税理士に一本化できます。日常業務を止めずに対応を進めたい法人にとっては、実務上の効果が大きい選択です。

関連コラム税務代理権限証書とは?税理士法第30条で定められた重要書類を解説

譲渡所得の更正の請求で多いケース

不動産を売却した年の申告は、金額が大きいぶん、誤りがそのまま税負担の差になります。譲渡所得で更正の請求につながりやすいのが、取得費の把握です。

土地建物の取得費が分からない場合には、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます(概算取得費)。また、実際の取得費が売った金額の5パーセント相当額を下回る場合も、5パーセント相当額を取得費とすることができます国税庁 No.3258 取得費が分からないとき。申告時には資料が見つからず概算取得費で申告したものの、あとから当時の売買契約書が出てきた、というケースが典型です。

たとえば3,000万円で売却し、売却時の諸経費が100万円だったとします。概算取得費で申告していた場合の譲渡所得は次のとおりです。

譲渡代金3,000万円 − 概算取得費150万円 − 売却時の諸経費100万円 = 譲渡所得2,750万円

その後、当時の売買契約書が見つかり、実際の取得費が1,800万円と確認できた場合は次のようになります。

譲渡代金3,000万円 − 取得費1,800万円 − 売却時の諸経費100万円 = 譲渡所得1,100万円

この差額に対応する税額が過大になっていたのであれば、更正の請求の対象になり得ます。ポイントは、契約書・領収書など「取得費の額を証明する書類」を添えられるかどうかです。記憶や推定だけでは請求の理由の基礎となる事実を証明できず、認められません。逆に、当初申告と比べて税額が変わらないのであれば、そもそも更正の請求はできない点にも注意が必要です。

関連コラム延滞税 税率|割合・計算方法と免除されるケースを税理士が解説

まとめ

  • 納める税金が多過ぎた・還付される税金が少な過ぎたときの訂正手続が更正の請求。納める税金が少な過ぎたときは修正申告で、両者は別の手続です。
  • 期限は原則として法定申告期限から5年以内。申告義務がない方が還付のために申告していた場合はその提出日から5年以内、後発的理由があるときはその事実が生じた日の翌日から2か月以内です。
  • 提出方法はe-Tax・窓口への持参・送付の3つ。提出先は納税地を所轄する税務署長で、専用窓口があるわけではありません。
  • 更正の請求は「請求」であり、税務署の審査を経て減額更正・還付に至ります。請求の理由の基礎となる事実を証明する書類が要になります。
  • 訂正しても最終的な税額・純損失の金額に異動がなければ、更正の請求はできません。
  • 更正をすべき理由がない旨の通知を受けた場合、通知を受けた日の翌日から起算して3か月以内に再調査の請求または審査請求ができます。

更正の請求は、期限の判定・証明資料の組み立て・税務署とのやり取りまで含めて、個別性の高い手続です。ご自身のケースで「そもそも更正の請求の対象になるのか」「どの資料をそろえるべきか」を判断するには、申告内容と帳簿を突き合わせた確認が欠かせません。判断に迷われたら、期限を過ぎてしまう前に、まずは税理士にご相談ください。

参考文献

よくある質問

更正の請求はいつまでにすればよいですか。

国税に関する法律の規定に従っていなかった場合やその計算に誤りがあった場合は、法定申告期限から5年以内です。確定申告の必要がない方が還付を受けるための申告をしていた場合は、その申告書を提出した日から5年以内となります。後発的理由により所得の金額等に異動が生じた場合や、前年分の税額等について更正等があった場合等は、それらの事実が生じた日の翌日から2か月以内です。

更正の請求はどこに提出しますか。専用の窓口はありますか。

専用の窓口があるわけではなく、納税地を所轄する税務署長に提出します。窓口へ持参する場合の開庁時間は8時30分から17時までで、土曜日・日曜日・祝日等の閉庁日は受付を行っていません。ただし、送付または税務署の時間外収受箱へ投函することにより提出できます。

更正の請求を出せば必ず税金が戻りますか。

いいえ。更正の請求は税務署長に減額を求める手続で、請求に係る税額等について調査され、請求が適正であるかどうかが審査されます。認められた場合に減額更正が行われ、その内容が通知されます。なお、所得金額の増減や所得控除の追加があっても、最終的な税額または純損失の金額に異動がない場合は更正の請求はできません。

更正の請求が認められなかったときはどうなりますか。

更正をすべき理由がない旨の処分の通知を受けた日の翌日から起算して3か月以内に、その処分をした税務署長に対して再調査の請求、または国税不服審判所長に対して審査請求をすることができます。期限が短いため、通知を受け取った時点で方針を決めることが大切です。

修正申告と更正の請求は同時にできますか。

ひとつの誤りについてはどちらか一方です。訂正の結果として納める税金が減るなら更正の請求、増えるなら修正申告になります。複数の誤りがあり、増える項目と減る項目が混在する場合は、最終的な税額がどちらに動くかで判断します。判断が難しいケースでは、税理士にご相談いただくのが確実です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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