税理士法人プライムパートナーズ

外貨預金の相続税評価|TTBレートでの換算方法と手続きを解説

2026-07-16
目次

外貨預金を相続したとき、その相続税評価額は、相続開始日(課税時期)の対顧客直物電信買相場(TTB)で円に換算して求めるのが原則です。これは財産評価基本通達4-3で定められたルールで、預けている銀行が公表するその日のTTBを使います。この記事では、税理士法人プライムパートナーズが、外貨預金の相続税評価の具体的な計算方法、TTB・TTS・TTMの違い、外貨定期預金の既経過利子、相続後に円へ払い戻したときの為替差益、名義変更や残高証明書の実務まで、順を追ってご説明します。

外貨預金の相続税評価は「相続開始日のTTB」で円換算します

結論から申し上げると、米ドルやユーロなどの外貨預金は、相続開始日(被相続人が亡くなった日)時点の外貨建て残高を、その日のTTB(対顧客直物電信買相場)で円に換算した金額が相続税評価額になります。TTBは、預金者が外貨を円に替える(銀行が外貨を買い取る)ときのレートのことです。

使うレートは、その外貨預金を預けている取引金融機関が公表するものです。たとえばA銀行の米ドル預金であればA銀行のTTBを、B銀行の預金であればB銀行のTTBを使います。外貨預金は取引金融機関がはっきり特定できるため迷うことは少ないのですが、複数の銀行に外貨預金がある場合は、それぞれの銀行のレートを使う点にご注意ください。

外貨預金の残高そのものは外貨(ドルやユーロ)で把握し、これに後述する既経過利子を加えたうえで、最後にTTBで一度だけ円換算します。まずは「相続開始日・取引金融機関・TTB」という3つの軸を押さえておきましょう。

外貨建て財産の邦貨換算ルール(財産評価基本通達4-3)

外貨建ての財産を円に換算する根拠は、国税庁の財産評価基本通達4-3(邦貨換算)です。ここでは、原則として「納税義務者の取引金融機関が公表する課税時期における最終の対顧客直物電信買相場(TTB)またはこれに準ずる相場による」と定められています。国税庁 財産評価基本通達 第1章 総則(4-3 邦貨換算)相続の場合の課税時期は、被相続人が亡くなった日(相続開始日)です。

相続開始日の「最終のTTB」を使う

使うのは、相続開始日におけるその日の最終のTTBです。1日のなかでレートは動きますが、評価にはその日に公表された最終値を用います。銀行のウェブサイトや窓口で、相続開始日付のTTBを確認できます。円換算は最後にまとめて1回だけ行うのがポイントです。

相続開始日に為替相場がないとき(土日・祝日)

相続開始日が土曜・日曜・祝日などで為替相場が公表されていない場合は、財産評価基本通達4-3により課税時期の前で最も近い日の相場を使います。たとえば相続開始日が日曜日であれば、直前の金曜日のTTBを用いる、という考え方です。「相場がないから翌営業日」ではなく「直前の営業日」をさかのぼって使う点に気をつけましょう。

先物外国為替契約があるときの例外

被相続人が先物外国為替契約(為替予約)を結んでいて、その財産についての為替相場がすでに確定している場合は、例外としてその契約で確定しているレートで換算します(財産評価基本通達4-3なお書き)。一般的な外貨預金では該当しないことが多いのですが、為替予約が付いた商品を保有していた場合は確認が必要です。

TTB・TTS・TTMの違い|買相場と売相場を混同しない

外貨の相続税評価でつまずきやすいのが、TTB・TTS・TTMというよく似た3つのレートの違いです。相続税評価で使うのはTTB(買相場)だけですが、実務では売相場のTTSと取り違える方が少なくありません。まずは次の表で違いを整理しましょう。

レートの種類 意味と使いどころ
TTB(対顧客直物電信買相場) 銀行が顧客から外貨を買い取る(顧客が外貨を円に替える)ときのレート。外貨建て財産の相続税評価はこのTTBを使います。
TTS(対顧客直物電信売相場) 銀行が顧客へ外貨を売る(顧客が円を外貨に替える)ときのレート。相続税では外貨建ての債務(外貨建てローンなど)を換算するときに使います。
TTM(電信売買相場の仲値) TTBとTTSの中間のレート。所得税で外貨建取引を円換算するときの原則レートです(所得税基本通達57の3-2)。

3つのレートは、通常「TTB<TTM<TTS」の関係にあります。同じ外貨・同じ日でも、TTSはTTBより円換算額が大きくなります。財産の評価は必ずTTBを使うのに、うっかり円を外貨に替えるときのTTSで評価してしまうと、評価額が実際より大きくなり過大申告につながります。

なお、外貨建ての債務(借入金など)を差し引くときは、財産評価基本通達4-3の注書きにより「対顧客直物電信買相場」を「対顧客直物電信売相場(TTS)」と読み替えて換算します。つまりプラスの財産はTTB、マイナスの債務はTTSと覚えておくと混乱しません。国税庁 No.4665 外貨(現金)の邦貨換算

計算例で確認しましょう(レートはすべて説明用の架空の数値です)。相続開始日にA銀行の米ドル普通預金が10,000米ドルあり、同日のA銀行のTTBが1ドル=150円だったとします。このとき評価額は次のようになります。

10,000ドル × 150円 = 150万円

もし誤って同日のTTS(仮に1ドル=152円)で計算すると152万円となり、2万円分だけ過大に評価してしまいます。

外貨定期預金は既経過利子も加えて評価します(財産評価基本通達203)

外貨「定期」預金の場合は、残高だけでなく既経過利子も評価に含めます。財産評価基本通達203では、預貯金の価額は「課税時期における預入高」と「相続開始日に解約したと仮定した場合に受け取れる既経過利子の額から、その利子にかかる源泉所得税を差し引いた金額」との合計で評価すると定められています。国税庁 財産評価基本通達 第8章 その他の財産(203 預貯金の評価)

普通預金のように既経過利子がごくわずかな預貯金は、預入高だけで評価してよいとされています。一方で定期預金・定期郵便貯金・定額郵便貯金は、金額の大小にかかわらず既経過利子を必ず加算します。外貨定期預金も同じ考え方で、既経過利子を外貨で計算します。

計算の順序は、まず外貨建ての預入高と既経過利子(源泉所得税控除後)を外貨で合計し、次にその合計額をTTBで円換算する、という流れです。たとえば米ドル定期預金10,000ドルに、源泉所得税控除後の既経過利子が20ドルあり、TTBが1ドル=150円(架空のレート)なら、評価額は次のようになります。

(10,000ドル + 20ドル) × 150円 = 1,503,000円

外貨預金の評価は、TTSとTTBの取り違えや、定期預金の既経過利子の加算漏れが起こりやすいところです。評価額を実際より低くしてしまうと申告漏れ、高くしてしまうと過大申告となり、いずれも後から修正の手間が生じます。判断に迷うときは、早めに専門家へご相談ください。

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相続後に円へ払い戻したときの為替差益(雑所得)と準確定申告

外貨預金は「相続したこと」と「その後に円へ換えたこと」で、かかる税金が変わります。相続で取得して外貨のまま保有している間は、相続税の対象になるだけで、所得税はかかりません。

その後、相続人が外貨預金を円に払い戻したり、外貨で別の資産を購入したりすると、その時点で為替差損益が実現し、原則として雑所得(総合課税)として所得税の対象になります。国税庁の質疑応答事例でも、預け入れていた外貨建預貯金を払い出して別の資産に換えた場合は、その時点で為替差損益を所得として認識するとされています。国税庁 外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い(質疑応答事例)反対に、払い戻した元本をそのまま同じ金融機関に同じ外国通貨で預け替えるだけであれば、外貨建取引に該当せず為替差益は認識しません(所得税法施行令第167条の6第2項)。

ここで注意したいのが、為替差益を計算するときの「取得時のレート」です。為替差益は「払い戻したときの円換算額」と「その外貨を取得したときのレートで換算した金額」との差額で計算します。相続で取得した資産は、所得税の計算上、被相続人の取得時期・取得価額を引き継ぐ扱いになるため(所得税法第60条)、相続税評価で使った相続開始日のTTBが、そのまま所得税の取得価額になるわけではありません。e-Gov法令検索 所得税法(第60条 贈与等により取得した資産の取得費等)相続税と所得税で基準が異なる点は、実務でも混乱しやすいところです。

また、被相続人が亡くなった年に生前、外貨預金を円に換えて為替差益が出ていたような場合は、その為替差益は被相続人の所得です。相続人が被相続人に代わって、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に準確定申告を行う必要があります。国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)一方、相続人自身が相続後に円転して得た為替差益は、相続人自身の通常の確定申告で申告します。

外貨預金の相続手続き|名義変更・解約と必要書類

外貨預金の相続手続きの流れは、円預金とおおむね同じです。まず金融機関に相続が発生したことを連絡すると口座が凍結され、その後に金融機関所定の相続手続書類を提出して、名義変更(相続人への引き継ぎ)または解約(払い戻し)を行います。解約時は、外貨のまま受け取るか、その日のレートで円に替えて受け取るかを選べる金融機関が多いです。

一般的に必要になる書類は、次のようなものです。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍)謄本、相続人全員の戸籍謄抄本と印鑑証明書、遺産分割協議書または遺言書、そして金融機関所定の相続手続依頼書です。法務局の法定相続情報証明制度を使って「法定相続情報一覧図の写し」を取得しておくと、各金融機関に戸籍一式を何度も出し直す手間を省けます。

預金の相続手続きの全体像や、放置した場合の期限のリスクについては、預金の名義変更の手続きの記事で詳しくご説明しています。外貨預金でも基本的な流れは共通なので、あわせてご確認ください。

関連コラム預金の名義変更|相続の手続きの流れと期限のリスク

残高証明書は「相続開始日・外貨建て」で取るのが実務のコツ

相続税評価では相続開始日時点の外貨残高が必要になるため、金融機関に残高証明書を請求するときは相続開始日を基準日に指定します。さらに、外貨預金は外貨建ての残高(定期預金なら既経過利子も)が分かる形で発行してもらうのが実務のポイントです。銀行が独自に円換算した金額だけの証明書だと、換算の基準日やレートが評価ルールとずれてしまうことがあるためです。

複数の銀行に外貨預金がある場合は、それぞれの銀行で相続開始日基準の残高証明書を取り、各行が公表するその日のTTBで換算します。外貨預金以外にも上場株式や投資信託をお持ちの場合は、金融資産ごとに評価方法が異なります。上場株式の相続税評価や投資信託の相続税評価もあわせて確認しておくと、金融資産全体の評価をもれなく進められます。

関連コラム上場株式の相続税評価|4つの価額で最も低い株価を選ぶ方法
関連コラム投資信託の相続税評価|基準価額と日々決算型の計算方法

外貨預金の相続のよくある質問まとめ

Q. 外貨預金の評価には、どの銀行のレートを使いますか?

A. その外貨預金を預けている取引金融機関が公表する、相続開始日の最終のTTB(対顧客直物電信買相場)を使います。複数の銀行に外貨預金がある場合は、それぞれの銀行のTTBで換算します。

Q. 相続開始日が土日で為替相場がないときはどうしますか?

A. 課税時期の前で最も近い日の相場を使います。たとえば相続開始日が日曜日であれば、直前の金曜日のTTBで換算します(財産評価基本通達4-3)。

Q. 外貨のまま相続すると、為替差益にも税金がかかりますか?

A. 外貨のまま保有している間は相続税の対象になるだけで、所得税はかかりません。相続後に円へ払い戻すなどして為替差益が実現した時点で、原則として雑所得(総合課税)として所得税の対象になります。

Q. 評価はTTSとTTBのどちらを使いますか?

A. 財産の評価はTTB(買相場)です。円を外貨に替えるときのTTS(売相場)はTTBより高くなるため、TTSで評価すると過大申告になりやすい点にご注意ください。

外貨預金の評価は一見シンプルに見えますが、レートの種類・基準日・既経過利子・相続後の為替差益まで含めると、判断に迷う場面が多いものです。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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