被相続人が経営していた会社の株式が上場していない場合、その株式は取引相場のない株式(非上場株式)として相続財産に含まれます。上場株式のように市場価格が存在しないため、相続税の計算では財産評価基本通達に定められた方法で評価額を算定します。本記事では、非上場株式の相続税評価の全体像を、同族株主か少数株主かで評価方式が変わる仕組みと、会社規模区分による評価方式の違いを中心に整理します。
非上場株式が相続税評価で特別な扱いを受ける理由
非上場株式は、証券取引所で売買される上場株式と異なり、日々の市場価格がありません。そのため相続税の計算にあたっては、会社の資産状況や利益、配当などの内部情報をもとに一株当たりの価額を計算する必要があります。国税庁のタックスアンサーでは、この株式を取引相場のない株式と呼び、評価の考え方を整理しています[国税庁No.4638 取引相場のない株式の評価]。
評価方式は、株式を取得した相続人が会社の経営を支配する立場にあるかどうかによって大きく二つに分かれます。具体的には、同族株主等か、それ以外の株主かの区分により、原則的評価方式または特例的な評価方式である配当還元方式のいずれかを適用します[国税庁No.4638 取引相場のない株式の評価]。
同族株主か少数株主かによる評価方式の区分
非上場株式の評価で最初に確認すべき点は、株式を取得した人が同族株主等に該当するかどうかです。同じ会社の株式であっても、取得者の立場によって適用される評価方式が変わり、結果として評価額も異なります。
原則的評価方式が適用される場合
会社の経営を支配する立場にある同族株主等が取得した株式には、原則的評価方式が適用されます。原則的評価方式は、後述する会社規模区分に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式、またはこれらの併用方式のいずれかで評価する方法です。会社の実態に即して株式の価額を算定するため、一般に評価額は配当還元方式より高くなる傾向があります。
特例的評価方式(配当還元方式)が適用される場合
会社の経営に対する影響力が小さい少数株主が取得した株式には、特例的な評価方式である配当還元方式が適用されます。国税庁は、同族株主以外の株主が取得した株式については、その株式の発行会社の規模にかかわらず原則的評価方式に代えて配当還元方式で評価すると示しています[国税庁No.4638 取引相場のない株式の評価]。
配当還元方式は、その株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を、一定の利率(10パーセント)で還元して元本である株式の価額を評価する方法です[国税庁No.4638 取引相場のない株式の評価]。少数株主にとっては配当を受け取ること以外の実益が乏しいため、配当を基準とした簡便な評価が認められています。
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会社規模区分による原則的評価方式の違い
原則的評価方式が適用される場合、次に確認するのが評価対象会社の規模です。国税庁は、評価する会社を大会社・中会社・小会社に区分し、それぞれ異なる評価方式を用いると定めています。区分は、総資産価額、従業員数および直前期末以前一年間における取引金額により判定します[国税庁No.4638 取引相場のない株式の評価]。
会社規模区分の判定要素
会社規模は、次の要素を組み合わせて判定します。事業の業種(卸売業、小売・サービス業、それ以外)によっても基準となる金額が異なります。
| 判定要素 | 内容 |
|---|---|
| 従業員数 | 直前期末以前一年間継続して 勤務していた従業員の数などをもとに算定 |
| 総資産価額 | 帳簿価額によって計算した金額 |
| 取引金額 | 直前期末以前一年間における 売上高などの取引金額 |
これらの要素のうち、従業員数が一定数以上の会社は大会社に区分されます。それ以外の会社は総資産価額と取引金額を業種ごとの基準にあてはめて、大会社・中会社・小会社のいずれかに区分します。会社規模区分の具体的な数値基準は改正されることがあるため、判定にあたっては国税庁の最新の基準を確認してください。
会社規模区分ごとの評価方式
原則的評価方式では、会社規模区分に応じて用いる方式が次のように異なります。
| 会社規模区分 | 原則的な評価方式 |
|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準方式 |
| 中会社 | 類似業種比準方式と 純資産価額方式の併用方式 |
| 小会社 | 純資産価額方式 |
大会社は原則として類似業種比準方式により評価し、小会社は原則として純資産価額方式によって評価します。中会社はこの二つの方式を併用して評価します[国税庁No.4638 取引相場のない株式の評価]。
原則的評価方式の三つの計算方法
原則的評価方式を構成する三つの方法について、それぞれの考え方を整理します。
類似業種比準方式
類似業種比準方式は、類似業種の株価を基に、評価する会社の一株当たりの配当金額、利益金額および純資産価額(簿価)の三つで比準して評価する方法です[国税庁No.4638 取引相場のない株式の評価]。上場している同業種の会社の株価水準を参考にするため、主に事業規模の大きい大会社の評価に用いられます。
純資産価額方式
純資産価額方式は、会社の総資産や負債を相続税評価に洗い替えて算出する方法です[国税庁No.4638 取引相場のない株式の評価]。会社を清算したと仮定した場合に株主に帰属する正味財産を基準とする考え方で、主に小会社の評価に用いられます。
併用方式
併用方式は、類似業種比準方式と純資産価額方式を一定の割合で組み合わせて評価する方法で、中会社に適用されます。会社規模のなかで大会社と小会社の中間に位置する会社の実態を反映するための方法です。
非上場株式の評価に関連する応用論点
非上場株式の評価では、会社の状況によってさらに検討すべき論点があります。たとえば、比準要素の計算では過去の決算数値の取り扱いが問題になる場面があり、合併があった場合の直前期・直前々期の数値の考え方については別の記事で整理しています。
関連する内部リンクとして、比準要素の計算に関する合併時の比準要素計算!直前期や直前々期の数値は合算する?、会社区分の判定に関わる特定同族会社と同族会社との違いとは?判定基準や税金対策を解説をご確認ください。また、事業を後継者へ引き継ぐ際の税制については事業承継税制の特例措置と2026年の期限|提出期限を解説で解説しています。
まとめ
非上場株式(取引相場のない株式)の相続税評価では、まず株式を取得した人が同族株主等か少数株主かを確認し、同族株主等には原則的評価方式、少数株主には特例的な配当還元方式を適用します。原則的評価方式が適用される場合は、さらに会社を大会社・中会社・小会社に区分し、それぞれ類似業種比準方式、併用方式、純資産価額方式で評価します。会社規模区分の数値基準は改正される場合があるため、実際の評価では国税庁の最新の基準を確認したうえで、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の申告にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。
参考文献
非上場株式の相続税評価に関するよくある質問まとめ
Q. 非上場株式とは相続税評価でどのような株式を指しますか
A. 証券取引所に上場しておらず市場価格が存在しない株式で、相続税では取引相場のない株式と呼びます。市場価格がないため財産評価基本通達に定められた方法で評価額を算定します。
Q. 同族株主か少数株主かで評価方式はどう変わりますか
A. 会社の経営を支配する立場の同族株主等には原則的評価方式が適用され、影響力の小さい少数株主には特例的な評価方式である配当還元方式が適用されます。
Q. 原則的評価方式にはどのような方法がありますか
A. 類似業種比準方式、純資産価額方式、およびこれらの併用方式があります。会社規模区分に応じてどの方式を用いるかが決まります。
Q. 会社規模区分はどのように判定しますか
A. 総資産価額、従業員数、および直前期末以前一年間における取引金額をもとに、大会社・中会社・小会社のいずれかに区分します。業種によって基準となる金額が異なります。
Q. 配当還元方式とはどのような評価方法ですか
A. その株式を所有することで受け取る一年間の配当金額を一定の利率10パーセントで還元して株式の価額を評価する方法です。主に少数株主が取得した株式に適用されます。
Q. 会社規模区分の数値基準は変わることがありますか
A. 従業員数や総資産価額、取引金額の基準は改正される場合があります。判定にあたっては国税庁の最新の基準を確認することが重要です。