非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予及び免除の特例(法人版事業承継税制の特例措置)は、平成30年1月1日から令和9年12月31日までの10年間に限って設けられた時限的な制度です。特例措置の適用を受けるためには、その前提として特例承継計画を期限までに提出する必要があり、この提出期限が令和8年(2026年)3月31日に迫っています。本記事では、国税庁が公表する情報にもとづき、特例措置の期限、一般措置との違い、納税猶予の仕組みを整理します。
法人版事業承継税制の特例措置とは
法人版事業承継税制とは、後継者が円滑化法の認定を受けている会社の非上場株式等を先代経営者などから相続・遺贈または贈与により取得した場合に、一定の要件のもとで、その非上場株式等にかかる相続税・贈与税の納税が猶予され、後継者の死亡等により猶予されている税額の納付が免除される制度です[国税庁No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)]。
この制度には特例措置と一般措置の2つがあります。特例措置は、事前に特例承継計画を提出することを前提として、対象となる株式数や納税猶予割合について一般措置よりも有利な取扱いを認めるものです。特例措置は平成30年1月1日から令和9年(2027年)12月31日までの10年間の相続等・贈与を対象とする時限措置です[国税庁No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)]。
特例措置と一般措置の主な違い
特例措置と一般措置では、事前計画の要否、対象となる株式数、納税猶予割合などが異なります。特例措置は対象株式について総株式数の上限がなく全株式が対象となり、納税猶予割合も相続税・贈与税ともに100パーセントとされている点が大きな特徴です。
| 項目 | 特例措置と一般措置の違い |
|---|---|
| 事前の計画提出 | 特例措置は特例承継計画の 提出が必要。一般措置は不要 |
| 対象となる株式数 | 特例措置は全株式。一般措置は 総株式数の最大3分の2まで |
| 納税猶予割合 | 特例措置は100パーセント。一般措置は 贈与100パーセント・相続80パーセント |
| 適用期間 | 特例措置は令和9年12月31日までの 相続等・贈与が対象。一般措置は期限なし |
上記の対象株式数・納税猶予割合・適用期間などの取扱いは、国税庁が公表する制度概要にもとづくものです[国税庁No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)]。
特例措置に関する2つの重要な期限
特例措置の適用を検討する際に特に重要となるのが、次の2つの期限です。いずれか一方でも過ぎてしまうと特例措置の適用を受けられなくなるため、順序と時期を正確に把握しておく必要があります。
特例承継計画の提出期限(令和8年3月31日まで)
特例措置の適用を受けるためには、まず特例承継計画を都道府県知事に提出し、その確認を受ける必要があります。特例承継計画は、後継者や承継時までの経営見通し等を記載した計画です。この計画の提出期間は平成30年4月1日から令和8年(2026年)3月31日までとされています[国税庁No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)]。
令和8年3月末が提出期限であるため、特例措置の活用を考えている経営者にとっては、まさに今が計画提出を判断すべき時期にあたります。計画の提出が期限に間に合わない場合、その後に相続や贈与が発生しても特例措置は適用できず、より要件の厳しい一般措置しか選択できなくなります。
相続・贈与の実行期限(令和9年12月31日まで)
特例承継計画を提出したうえで、実際に特例措置の適用を受けられるのは、令和9年(2027年)12月31日までに行われた相続・遺贈または贈与に限られます[国税庁No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)]。
相続はいつ発生するか予測できないという性質があるため、特例措置を確実に活用したい場合には、生前贈与によって計画的に承継を進める方法が検討されます。特例承継計画の提出期限と相続・贈与の実行期限は別のものであり、計画を出したからといって自動的に納税猶予が受けられるわけではない点に注意が必要です。
事業承継の株式承継は、贈与のタイミングや後継者の選定など生前からの検討が不可欠です。関連する論点は事業承継にIPOは有効?親族内承継やM&Aとの違いを徹底解説もあわせてご確認ください。
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納税猶予の仕組みと継続要件
特例措置による納税猶予は、税額が最終的に消えてなくなることが当初から確定しているものではありません。制度の適用後も一定の要件を満たし続ける必要があり、要件を満たさなくなった場合には猶予されていた税額を納付しなければならないことがあります。
納税猶予の対象と免除の考え方
特例措置では、後継者が取得した非上場株式等にかかる相続税・贈与税の全額(100パーセント)が納税猶予の対象となります。猶予されている税額は、後継者の死亡など一定の事由が生じた場合に免除されます[国税庁No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)]。制度を活用すれば、承継時における多額の相続税・贈与税の負担を大きく軽減できる可能性があります。
継続届出書の提出
納税猶予の適用を継続して受けるためには、引き続き要件を満たしていることを明らかにするための継続届出書を、所轄の税務署へ定期的に提出する必要があります[国税庁No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)]。届出を怠ると納税猶予が打ち切られる場合があるため、適用後も継続的な管理が欠かせません。
非上場株式を含む法人の相続では、株式の承継以外にも役員変更や事業の引継ぎなど多くの手続きが伴います。詳しくは法人の相続手続き、突然の事態に慌てない!事業承継のポイント解説で解説しています。
特例措置の活用にあたっての留意点
特例措置は納税負担を大きく軽減できる一方で、適用要件が細かく定められており、適用後も継続的な要件充足と届出が求められます。特例承継計画の提出期限である令和8年3月末が近づいているため、活用を検討している場合は早めに要件を確認し、専門家に相談したうえで計画的に進めることが重要です。
また、事業承継は税制だけでなく、後継者への株式集中や遺留分への配慮など、相続全体を見据えた対策が必要になります。制度改正や円滑化法との関係については遺留分制度改正と経営承継円滑化法!中小企業を守る事業承継の特例もご参照ください。
まとめ
法人版事業承継税制の特例措置は、非上場株式等にかかる相続税・贈与税の全額を納税猶予できる有利な制度ですが、平成30年1月1日から令和9年12月31日までの10年間に限られた時限措置です。特例措置の適用には特例承継計画の提出が前提となり、その提出期限は令和8年3月31日までとされています。相続・贈与の実行期限である令和9年12月31日と混同せず、まず計画の提出期限を意識して準備を進めることが重要です。適用要件は複雑で、適用後の継続管理も必要となるため、早めに専門家へ相談し、自社の状況に合った承継計画を検討することをおすすめします。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては、必ず所轄の税務署または税理士等の専門家にご確認ください。
参考文献
- 国税庁 No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)
- 国税庁 No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)
事業承継税制の特例に関するよくある質問まとめ
Q. 事業承継税制の特例措置とは何ですか。
A. 後継者が円滑化法の認定を受けた会社の非上場株式等を相続・遺贈または贈与により取得した場合に、一定の要件のもとで相続税・贈与税の納税が猶予され、後継者の死亡等により免除される制度のうち、特例承継計画の提出を前提として株式数や納税猶予割合が有利になる時限的な措置です。
Q. 特例承継計画の提出期限はいつまでですか。
A. 特例承継計画の提出期間は平成30年4月1日から令和8年3月31日までとされています。この期限までに都道府県知事へ提出し確認を受けなければ、特例措置の適用を受けられません。
Q. 特例措置の適用を受けられる相続・贈与の期限はいつまでですか。
A. 特例措置は平成30年1月1日から令和9年12月31日までに行われた相続・遺贈または贈与を対象とする時限措置です。この期間内の相続等・贈与でなければ特例措置は適用できません。
Q. 特例措置と一般措置はどのように異なりますか。
A. 特例措置は特例承継計画の提出を前提に、対象となる株式が全株式となり、納税猶予割合が相続税・贈与税ともに100パーセントとなります。一方の一般措置は事前計画が不要ですが、対象株式は総株式数の最大3分の2まで、相続税の納税猶予割合は80パーセントとされています。
Q. 特例措置の納税猶予割合はどのくらいですか。
A. 特例措置では、後継者が取得した非上場株式等にかかる相続税・贈与税の全額である100パーセントが納税猶予の対象となります。
Q. 納税猶予の適用後に必要な手続きはありますか。
A. 納税猶予を継続して受けるためには、引き続き要件を満たしていることを明らかにするための継続届出書を所轄の税務署へ定期的に提出する必要があります。届出を怠ると納税猶予が打ち切られる場合があります。