亡くなった親に借金があるかもしれないと感じても、通帳や郵便物だけでは全体像がつかめず、不安を抱えたままの方は少なくありません。相続では、プラスの財産だけでなく、借金や保証債務、滞納した税金といったマイナスの財産(負債)も引き継ぐことになります。そのため、負債の有無と金額を正確に確認することが、相続放棄をすべきかどうかの判断につながります。
この記事では、故人の借金や負債を調べる具体的な方法と、負債が判明した場合の相続放棄の期限との関係を整理します。落ち着いて順番に確認すれば、限られた期間内でも判断材料をそろえることができます。
相続で負債の確認が欠かせない理由
相続では、被相続人(亡くなった方)の財産に属した一切の権利義務を、原則としてそのまま引き継ぎます。ここには預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も含まれます。
相続の対象となる負債の範囲
相続で引き継ぐ可能性がある主な負債は、次のとおりです。金融機関からの借入れだけでなく、他人の借金を肩代わりする保証債務や、故人が滞納していた税金なども含まれる点に注意が必要です。
| 金融機関からの借入れ | 住宅ローン、カードローン、事業資金の借入れなど |
|---|---|
| クレジット・割賦 | クレジットカードの未払残高、分割払いの残債など |
| 保証債務・連帯保証 | 他人の借入れの保証人・連帯保証人となっていた債務 |
| 税金・公租公課 | 所得税・住民税・固定資産税などの滞納分 |
| その他の未払金 | 医療費、家賃、事業上の買掛金など |
被相続人が滞納していた国税は、相続開始の時において相続人に承継されます。相続税を引き継ぐ場合だけでなく、故人自身が納めるべきだった税金の滞納分も、相続人が負う可能性があります[国税庁 No.6602 相続で事業を引き継いだ場合の納税義務について]。
他人の借金の保証人になっていた場合の保証債務も、原則として相続の対象です。保証債務は契約書が手元にないと気づきにくいため、書類の確認が特に重要になります。詳しくは故人の保証債務は相続される?引き継がれる権利義務と対処法もあわせてご確認ください。
自宅でできる負債の調べ方
費用をかけずにまず取り組めるのが、故人の自宅に残された書類や郵便物の確認です。借入先の手がかりの多くは、身近な書類の中に残されています。
督促状・契約書・郵便物の確認
次のような書類は、借入先や残高を知る重要な手がかりになります。日付の新しいものから順に確認すると、現在も残っている債務を把握しやすくなります。
- 金融機関やカード会社からの督促状・請求書・利用明細
- 金銭消費貸借契約書、ローン契約書、保証契約書
- クレジットカード本体や会員規約の書類
- 借入先からの郵便物やメール、SMSの通知
通帳・引き落とし履歴の確認
預貯金の通帳やキャッシュカードの明細も、負債を洗い出す手がかりになります。毎月一定額が同じ相手に引き落とされている場合、ローンやクレジットの返済である可能性があります。引き落とし先の名称を控え、心当たりのない相手があれば個別に照会します。
ネット銀行やネット専業のカード会社は紙の通知が届かないこともあるため、メールや端末に残るアプリの通知も確認しておくと安心です。
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信用情報機関への開示請求
自宅の書類だけでは把握しきれない借入れは、信用情報機関への情報開示請求で確認できます。信用情報機関は、個人のローンやクレジットの契約・返済の履歴を管理している機関で、相続人は所定の手続きで故人の情報の開示を受けられます。
三つの信用情報機関と扱う情報
日本の主な信用情報機関は次の三つです。取り扱う情報の中心が異なるため、借入れの見落としを防ぐには、原則として三機関すべてに開示請求することが望まれます。
| 信用情報機関 | 主に扱う情報 |
|---|---|
| JICC(日本信用情報機構) | 消費者金融・信販会社などの貸金業に関する情報 |
| CIC | クレジットカード・割賦販売など信販系の情報 |
| KSC(全国銀行個人信用情報センター) | 銀行・信用金庫などの融資に関する情報 |
開示請求に必要な書類と手数料の目安
相続人が故人の信用情報の開示を求める場合、故人が亡くなった事実と、請求者が相続人であることを証明する書類が必要になります。一般的には次のような書類を準備します。
- 故人の死亡が確認できる戸籍(除籍)謄本
- 請求者が相続人であることが分かる戸籍謄本
- 請求者本人の運転免許証などの本人確認書類
開示にあたっては、各機関の定める手数料(数百円から千円程度)がかかるのが一般的です。必要書類や手数料、申込方法は機関ごとに異なり、内容も見直されることがあるため、請求前に各機関の最新の案内を確認してください。
負債が判明した場合の相続放棄と期限
調査の結果、明らかに負債がプラスの財産を上回るとわかった場合には、相続放棄という選択肢があります。相続放棄をすると、その相続に関して初めから相続人ではなかったものとみなされ、借金などの負債を引き継がずに済みます。
熟慮期間は原則3ヶ月
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述する必要があります[裁判所 相続の放棄の申述]。この3ヶ月の期間は熟慮期間と呼ばれ、この間に単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選ぶことになります[e-Gov法令検索 民法第915条]。
負債の調査には時間がかかるため、この期限を意識して早めに動くことが大切です。相続放棄の手続きの流れは相続放棄のやり方と3ヶ月の期限|必要書類と申述手続きで詳しく解説しています。
調査が間に合わない場合の期間の伸長
3ヶ月の熟慮期間内に相続財産の状況を調査しても、なお承認か放棄かを決められない場合には、家庭裁判所への申立てにより、この期間を伸長できる場合があります[裁判所 相続の承認又は放棄の期間の伸長]。信用情報の開示に時間がかかりそうなときは、期限を過ぎる前に伸長の申立てを検討します。
なお、期限を過ぎてしまった場合でも、事情によっては相続放棄が認められることがあります。すでに3ヶ月を過ぎている場合の対応は相続放棄の期限が過ぎたらどうなる|救済されるケースと対処法をご確認ください。
具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
まとめ
故人の負債を調べるには、まず自宅の督促状・契約書・通帳を確認し、把握しきれない借入れは信用情報機関(JICC・CIC・KSC)への開示請求で洗い出すのが基本の流れです。借金だけでなく、保証債務や滞納税金も相続の対象となる点に注意してください。
負債が財産を上回るとわかった場合は、相続放棄という選択肢があります。相続放棄には原則3ヶ月の熟慮期間があるため、調査と判断は期限を意識して進めることが重要です。判断に迷うときは、早めに専門家へ相談してください。
参考文献
相続と借金のよくある質問まとめ
Q.親に借金があるか分からない場合、まず何から調べればよいですか?
A.まずは自宅に残された督促状や契約書、通帳の引き落とし履歴を確認します。そのうえで、把握しきれない借入れは信用情報機関への開示請求で確認するのが基本の流れです。
Q.信用情報機関はどこに請求すればよいですか?
A.主な機関はJICC・CIC・KSC(全国銀行個人信用情報センター)の三つです。扱う情報の中心が異なるため、借入れの見落としを防ぐには三機関すべてに開示請求するのが安心です。
Q.信用情報の開示にはどのような書類が必要ですか?
A.一般的に、故人の死亡が確認できる戸籍謄本、請求者が相続人であることが分かる戸籍謄本、請求者本人の本人確認書類が必要です。詳細は各機関の最新の案内をご確認ください。
Q.保証債務や滞納税金も相続の対象になりますか?
A.はい。他人の借金の保証人となっていた保証債務や、故人が滞納していた税金も相続の対象となる可能性があります。契約書や納税に関する書類も確認してください。
Q.負債が多い場合はどうすればよいですか?
A.負債が財産を上回る場合は、相続放棄という選択肢があります。相続放棄をすると、その相続について初めから相続人でなかったものとみなされ、負債を引き継がずに済みます。
Q.調査が3ヶ月以内に終わりそうにない場合はどうなりますか?
A.3ヶ月の熟慮期間内に判断できない場合は、家庭裁判所への申立てによりこの期間を伸長できることがあります。期限を過ぎる前に申立てを検討してください。