税理士法人プライムパートナーズ

実家を相続して売却したときの税金はいくら?計算方法を解説

2026-06-24
目次

相続した実家を売却すると、売却益に対して譲渡所得税住民税がかかります。特に相続した実家は購入時期が古く取得費が分からないケースが多いため、税額が想定より大きくなりがちです。本記事では、税額の計算方法を具体的な金額例で示したうえで、取得費が不明な場合の概算取得費(売却価格の5%)相続税の取得費加算の特例空き家の3,000万円特別控除の使い分けまでを解説します。

相続した実家の売却でかかる税金の全体像

相続した実家を売却したときにかかる主な税金は、売却益(譲渡所得)に対する所得税(譲渡所得税)住民税です。給与所得など他の所得とは合算せず、単独で税額を計算する分離課税の対象となります。

譲渡所得は、売却によって受け取った金額から、その不動産を取得するためにかかった費用(取得費)と売却時にかかった費用(譲渡費用)を差し引いて計算します[国税庁No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)]

課税譲渡所得金額 = 譲渡価額 − (取得費 + 譲渡費用) − 特別控除額

ここで算出した課税譲渡所得金額に一定の税率を掛けたものが、納める税額となります。相続した実家の売却では、この計算過程で「取得費が分からない」「相続税を払っている」「空き家を売る」といった相続特有の論点が加わる点が特徴です。

譲渡価額に含まれるもの

譲渡価額とは、土地・建物の売却代金です。売買契約で買主から受け取る金額そのものを指します。固定資産税の精算金を受け取った場合は、その金額も譲渡価額に含めて計算します。

譲渡費用となるもの

譲渡費用は、不動産を売るために直接かかった費用です。具体的には、売却時の仲介手数料、売買契約書に貼付する印紙税のうち売主負担分、貸家を売るために支払った立退料、土地を売るために建物を取り壊した場合の取壊し費用などが該当します[国税庁No.3255 譲渡費用となるもの]。修繕費や固定資産税など、不動産の維持・管理のためにかかった費用は譲渡費用には含まれません。

譲渡所得税・住民税の税率と所有期間

譲渡所得にかかる税率は、その不動産の所有期間によって大きく異なります。所有期間が譲渡した年の1月1日時点で5年を超えるものを長期譲渡所得、5年以下のものを短期譲渡所得といいます[国税庁No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)]

長期譲渡所得の税率は所得税15%・住民税5%です[国税庁No.3208 長期譲渡所得の税額の計算]。短期譲渡所得の税率は所得税30%・住民税9%で、長期の約2倍となります[国税庁No.3211 短期譲渡所得の税額の計算]。いずれの場合も、令和19年(2037年)までは所得税額に対して2.1%の復興特別所得税が上乗せされます。

区分 税率(所得税+住民税)
長期譲渡所得
(所有期間5年超)
20%(所得税15%+住民税5%)
短期譲渡所得
(所有期間5年以下)
39%(所得税30%+住民税9%)

相続した実家は所有期間を引き継ぐ

相続した実家の場合、所有期間は相続した日からではなく、被相続人(亡くなった方)がその不動産を取得した日から計算します。相続によって被相続人の取得時期がそのまま引き継がれるためです[国税庁No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期]。長年住んでいた実家であれば、相続後すぐに売却しても被相続人の所有期間が5年を超えていることがほとんどで、その場合は税率の低い長期譲渡所得が適用されます。

取得費が分からないときの概算取得費

相続した実家の売却で最も問題になりやすいのが取得費です。取得費とは、その不動産の購入代金や購入時の仲介手数料などの合計額をいい、相続した不動産では被相続人が取得したときの金額を引き継ぎます[国税庁No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期]

しかし、先祖代々の土地や購入が古い実家では、購入時の契約書や領収書が残っておらず取得費が分からないことが少なくありません。このような場合には、売った金額の5%相当額を取得費とすることができます。これを概算取得費といいます[国税庁No.3258 取得費が分からないとき]

概算取得費 = 譲渡価額 × 5%

実際の取得費が判明していても、それが売却価格の5%より少ない場合には概算取得費(5%)を使うことができます。逆に、取得費が分からず概算取得費を使う場合、取得費が売却価格の5%しか認められないため、売却益が大きくふくらみ税額も高くなる点に注意が必要です。

具体例で見る税額シミュレーション

取得費が不明な実家を3,000万円で売却し、譲渡費用(仲介手数料など)が100万円、所有期間は5年超(長期)だったケースで税額を計算します。特別控除は適用しない前提です。

概算取得費 = 3,000万円 × 5% = 150万円
課税譲渡所得金額 = 3,000万円 − 150万円 − 100万円 = 2,750万円
所得税 = 2,750万円 × 15% = 412万5,000円
住民税 = 2,750万円 × 5% = 137万5,000円

このケースでは、所得税と住民税を合わせて約550万円(復興特別所得税を除く)の税負担が発生します。取得費が売却価格の5%しか計上できないため、税負担が大きくなることが分かります。だからこそ、次に説明する各種特例の活用が重要になります。

税理士法人プライムパートナーズ オフィス 相続のご質問、まずは無料相談 税理士法人プライムパートナーズ 無料相談はこちら

相続税の取得費加算の特例

相続した実家について相続税を納めている場合には、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算の特例)を使える可能性があります。これは、支払った相続税のうち一定額を取得費に加算できる制度で、売却益を圧縮して譲渡所得税・住民税を軽減する効果があります。

この特例の適用を受けるには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります[国税庁No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例]

要件1 相続や遺贈により財産を取得した者であること
要件2 その財産を取得した人に相続税が課税されていること
要件3 相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること

取得費に加算できる相続税額は、次の算式で計算します[国税庁No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例]

加算する相続税額 = その者の相続税額 × 譲渡した財産の相続税評価額 ÷ その者が取得した財産の合計額

ただし、この算式で計算した金額が、その財産を譲渡したことによる譲渡益を超える場合には、譲渡益に相当する金額が上限となります。要件3のとおり期限が定められているため、相続税を納めた実家を売却する予定がある場合は、申告期限から3年以内の売却を意識することが重要です。

空き家の3,000万円特別控除との使い分け

相続した実家が被相続人の居住用家屋であり、相続後に空き家となっている場合には、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例により、譲渡所得の金額から最高3,000万円を控除できる可能性があります[国税庁No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例]

なお、令和6年1月1日以後に行う譲渡で、被相続人居住用家屋およびその敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合には、控除額の上限は1人あたり2,000万円までとなります[国税庁No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例]。適用には昭和56年5月31日以前の建築であることや一定の耐震基準を満たすことなど細かな要件があるため、詳しくは関連記事をご確認ください。適用要件と令和5年改正の内容は、相続空き家の3000万円控除とは?適用要件と令和5年改正を解説で解説しています。

3,000万円特別控除を適用した場合の税額

先ほどの例(売却価格3,000万円、譲渡費用100万円、概算取得費150万円、長期)に、空き家の3,000万円特別控除を適用すると、次のようになります。

特別控除前の譲渡所得 = 3,000万円 − 150万円 − 100万円 = 2,750万円
課税譲渡所得金額 = 2,750万円 − 2,750万円(特別控除) = 0円

この例では特別控除額(最高3,000万円)が譲渡所得を上回るため、控除できるのは譲渡所得と同額の2,750万円までとなり、課税譲渡所得金額は0円となります。その結果、譲渡所得税・住民税はかかりません。3,000万円特別控除の効果が非常に大きいことが分かります。

取得費加算の特例と空き家特例は併用できない

相続税の取得費加算の特例と、空き家の3,000万円特別控除は、同一の不動産について併用できません。どちらか一方を選択することになります。一般に、相続税を多く納めていない場合や譲渡益が大きい場合は控除額の大きい空き家特例が有利になりやすく、空き家特例の建物要件を満たさない場合は取得費加算の特例を検討することになります。どちらが有利かは相続税額・売却価格・建物の状況によって変わるため、売却前に税理士へ相談することをおすすめします。

まとめ

相続した実家を売却すると、売却益に対して長期譲渡所得なら所得税15%・住民税5%、短期譲渡所得なら所得税30%・住民税9%の税金がかかります。所有期間は被相続人の取得日から引き継ぐため、多くのケースで長期譲渡所得が適用されます。取得費が分からない場合は売却価格の5%(概算取得費)しか計上できず税負担が大きくなるため、相続税の取得費加算の特例空き家の3,000万円特別控除の活用が鍵となります。ただし両特例は併用できず、期限や要件も細かいため、実際の税額計算と有利判定は専門家への相談が確実です。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の申告にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。

税理士法人プライムパートナーズへのお問い合わせはこちら

参考文献

実家の相続と売却時の税金に関するよくある質問まとめ

Q. 相続した実家を売却するとどのような税金がかかりますか。

A. 売却益(譲渡所得)に対して所得税(譲渡所得税)と住民税がかかります。給与など他の所得とは合算しない分離課税で、課税譲渡所得金額は譲渡価額から取得費と譲渡費用、特別控除額を差し引いて計算します。

Q. 譲渡所得税と住民税の税率は何%ですか。

A. 所有期間が譲渡した年の1月1日時点で5年を超える長期譲渡所得は所得税15%・住民税5%、5年以下の短期譲渡所得は所得税30%・住民税9%です。加えて令和19年まで所得税額に2.1%の復興特別所得税が上乗せされます。

Q. 相続した実家の所有期間はいつから数えますか。

A. 相続した日ではなく、被相続人がその不動産を取得した日から数えます。相続により被相続人の取得時期が引き継がれるため、長年住んでいた実家であれば相続後すぐの売却でも長期譲渡所得となることが多いです。

Q. 実家の取得費が分からない場合はどうなりますか。

A. 購入時の契約書などがなく取得費が分からない場合は、売った金額の5%相当額を取得費とすることができます。これを概算取得費といいます。実際の取得費が売却価格の5%より少ない場合も5%を使えます。

Q. 相続税を払った実家を売ると税金は安くなりますか。

A. 相続税を納めており一定の要件を満たす場合、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例により、支払った相続税の一定額を取得費に加算できます。相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡することが要件の一つです。

Q. 空き家の3000万円特別控除と取得費加算の特例は併用できますか。

A. 同一の不動産について両方を併用することはできず、どちらか一方を選択します。控除額の大きい空き家特例が有利になりやすいですが、建物要件を満たさない場合は取得費加算の特例を検討します。有利判定は税理士への相談が確実です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /
相続税申告でお困りの方へ
土日無料相談会 受付中!
相続税申告実務 経験者待遇あり
スタッフ積極採用中!
士業の先生向け専門家AI
士業AI【税務】