マイカーで遠距離を通勤している方や、勤務先近くの駐車場を借りて通勤している方にとって、毎月の通勤手当がどこまで非課税になるのかは気になるところです。令和8年度税制改正では、この通勤手当の非課税限度額について、片道65km以上の遠距離通勤者を対象とした引き上げと、駐車場料金を加算できる新たな取扱いが設けられました。この記事では、給与を受け取る方と給与計算に携わる実務担当者の双方に向けて、改正の内容、現行との違い、適用開始時期、実務での注意点を順に整理します。
令和8年度税制改正における通勤手当非課税限度額の見直し
改正の全体像
令和8年度税制改正では、通勤のため自動車その他の交通用具を使用することを常例とする方が受ける通勤手当について、二つの見直しが行われました。財務省 令和8年度税制改正の大綱(1/9)
一つ目は、通勤距離が片道65km以上の方の1か月当たりの非課税限度額の引き上げです。二つ目は、一定の要件を満たす駐車場等を利用し、その料金を負担することを常例とする方について、通勤距離の区分に応じた非課税限度額に、1か月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算できることとされた点です。国税庁 通勤手当の非課税限度額の改正について
見直しの背景
現行制度では、交通用具を使用する方の非課税限度額は片道55km以上が一律38,700円で頭打ちとなっており、それを超える遠距離通勤の実態が金額に反映されにくい構造でした。また、勤務先周辺で負担する駐車場料金は非課税の対象に含まれていませんでした。今回の改正は、こうした遠距離通勤者の負担や駐車場費用の実態に配慮したものです。
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現行と改正後の非課税限度額
交通用具利用者の距離区分別限度額
自動車や自転車などの交通用具を使用する方に支給する通勤手当について、改正後の1か月当たりの非課税限度額は次のとおりです。片道2km未満は全額が課税対象となります。国税庁 通勤手当の非課税限度額の改正に関するQ&A
| 片道2km未満 | 全額課税 |
|---|---|
| 片道2km以上10km未満 | 4,200円 |
| 片道10km以上15km未満 | 7,300円 |
| 片道15km以上25km未満 | 13,500円 |
| 片道25km以上35km未満 | 19,700円 |
| 片道35km以上45km未満 | 25,900円 |
| 片道45km以上55km未満 | 32,300円 |
| 片道55km以上65km未満 | 38,700円 |
| 片道65km以上75km未満 | 45,700円 |
| 片道75km以上85km未満 | 52,700円 |
| 片道85km以上95km未満 | 59,600円 |
| 片道95km以上 | 66,400円 |
片道65km以上区分の引き上げ内容
今回の引き上げで実際に金額が変わるのは、片道65km以上の区分です。現行では片道55km以上が一律38,700円でしたが、改正後は65km以上が距離に応じて四つの区分に分かれ、限度額が引き上げられます。片道55km以上65km未満は38,700円で据え置きです。
| 現行の非課税限度額 | 改正後の非課税限度額 |
|---|---|
| 片道55km以上は 一律38,700円 |
片道55km以上65km未満 38,700円 |
| (区分なし) | 片道65km以上75km未満 45,700円 |
| (区分なし) | 片道75km以上85km未満 52,700円 |
| (区分なし) | 片道85km以上95km未満 59,600円 |
| (区分なし) | 片道95km以上 66,400円 |
電車・バス通勤者の取扱い
電車やバスなどの交通機関を利用する方の通勤手当は、1か月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度15万円)が非課税となる取扱いに変更はありません。今回引き上げの対象となるのは、あくまで交通用具を使用する方の距離区分に応じた限度額です。国税庁 No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
駐車場等の料金相当額の加算
加算の対象となる駐車場等
加算の対象となる「一定の要件を満たす駐車場等」とは、通勤のために使用する交通用具を駐車する施設のうち、勤務先の周辺、または通勤で利用する交通機関の駅や停留所などの周辺にあるものを指します。自転車やバイクの駐輪場も含まれます。一方で、自宅付近の駐車場等は対象外です。また、通勤距離が片道2km未満の方は加算の対象から除かれます。国税庁 No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当
加算額の計算と上限
駐車場等を利用する方の非課税限度額は、距離区分に応じた限度額に、1か月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算した金額となります。たとえば片道50kmで、勤務先近くの駐車場(月額8,000円)を利用している場合の非課税限度額は次のように計算します。駐車場料金は5,000円が上限のため、8,000円ではなく5,000円で計算します。
この場合、通勤手当として距離分32,300円と駐車場分8,000円の合計40,300円が支給されると、非課税限度額37,300円を超える3,000円が課税対象となります。なお、料金が月単位で定められていない場合は、月額換算した金額を料金相当額とします。会社が従業員に代わって駐車場を契約し料金を負担している場合も、実態として駐車場相当額の通勤手当を支給したものとして同様に計算します。
適用時期と実務上の注意点
適用開始時期
改正後の非課税限度額は、令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用されます。支給日が契約や慣習で定められている場合はその支給日が、定められていない場合は実際に支給を受けた日が判定の基準となります。ただし、同日前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するものには、改正後の限度額は適用されません。国税庁 通勤手当の非課税限度額の改正に関するQ&A
給与計算・源泉徴収での注意点
非課税限度額を超えて支給された通勤手当は、超えた部分が給与として課税され、源泉徴収の対象となります。改正により片道65km以上の限度額が引き上げられたため、該当する遠距離通勤者がいる場合は、令和8年4月1日以後の支給分から新しい限度額で課税・非課税の区分を見直す必要があります。
駐車場料金の確認方法
駐車場等の料金相当額を非課税として扱う際、契約書や領収書の提示を受けることは法令上の義務ではありません。ただし、料金相当額を算出するために必要な金額の確認は求められます。確認は支給の都度行う必要はありませんが、料金の変更があった場合には従業員からの申し出を受けて金額を確認することが必要です。
まとめ
令和8年度税制改正による通勤手当の非課税限度額の見直しは、片道65km以上の遠距離通勤者の限度額引き上げと、勤務先周辺の駐車場等の料金相当額(上限5,000円)の加算という二つが柱です。いずれも令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から適用されます。片道55km未満の区分や電車・バス通勤の取扱いに変更はないため、まずは自社に片道65km以上の通勤者や駐車場を負担する通勤者がいるかを確認し、該当する場合に給与計算の設定を見直すとよいでしょう。判断に迷う点や個別の事情がある場合など、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
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- 財務省 令和8年度税制改正の大綱(1/9)
- 国税庁 通勤手当の非課税限度額の改正について
- 国税庁 通勤手当の非課税限度額の改正に関するQ&A
- 国税庁 No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当
- 国税庁 No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
通勤手当の非課税限度額改正のよくある質問まとめ
Q.令和8年度税制改正で通勤手当の非課税限度額は何が変わりますか。
A.通勤距離が片道65km以上の交通用具利用者の非課税限度額が引き上げられ、片道65km以上が距離に応じて四つの区分に細分化されました。あわせて、一定の要件を満たす駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を距離区分の限度額に加算できることとされました。
Q.改正はいつから適用されますか。
A.令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用されます。ただし、同日前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するものには適用されません。
Q.片道60kmで通勤している場合、限度額は上がりますか。
A.上がりません。引き上げの対象は片道65km以上の区分です。片道55km以上65km未満は現行と同じ38,700円で据え置きとなります。
Q.駐車場料金はいくらまで非課税に加算できますか。
A.1か月当たりの駐車場等の料金相当額のうち5,000円が上限です。距離区分に応じた限度額にこの金額を加算した額が非課税限度額となります。
Q.自宅近くの駐車場の料金も加算の対象になりますか。
A.対象になりません。加算の対象は勤務先の周辺、または通勤で利用する交通機関の駅や停留所などの周辺にある駐車場等に限られます。自宅付近の駐車場等は該当しません。
Q.電車通勤の非課税限度額も変わりますか。
A.変わりません。交通機関を利用する方の通勤手当は、1か月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度15万円)が非課税となる取扱いのままです。今回の引き上げは交通用具を使用する方の距離区分が対象です。