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生命保険の相続税非課税枠500万円の仕組みと注意点

2026-06-29
目次

被相続人が保険料を負担していた生命保険金(死亡保険金)は、受取人固有の財産でありながら、相続税の課税対象となる「みなし相続財産」に含まれます。しかし、死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」で計算する非課税枠が設けられており、受け取った保険金の全額に相続税がかかるわけではありません。この非課税枠は現金や預貯金にはない生命保険特有の制度であり、生前の相続税対策として大きな意味を持ちます。

一方で、この非課税枠には見落とされやすい落とし穴があります。非課税枠を使えるのは相続人が死亡保険金を受け取った場合に限られ、相続放棄をした人や相続人以外の人が受け取った保険金には適用されません。本記事では、死亡保険金の非課税枠の仕組みと計算方法、適用できるケースとできないケース、そして生前対策としての生命保険の活用メリットを、国税庁の情報にもとづき解説します。

死亡保険金が相続税の課税対象となる仕組み

被相続人が保険料を負担し、被相続人の死亡によって受取人が取得した死亡保険金は、民法上は受取人固有の財産となり遺産分割の対象にはなりません。しかし相続税の計算上は、被相続人の財産から生じた利益とみなされ、相続税の課税対象となる「みなし相続財産」として扱われます。[国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金]

ここで課税対象となるのは、あくまで被相続人が保険料を負担していた死亡保険金です。契約者・被保険者・受取人の関係によっては、所得税や贈与税の対象となる場合もあり、課税される税金の種類が変わります。相続税の対象となるのは、被保険者と保険料負担者がいずれも被相続人であるケースです。

相続税の対象となる保険契約の関係

死亡保険金にかかる税金の種類は、保険料を誰が負担していたかによって次のように区分されます。相続税の非課税枠が使えるのは、下表のうち相続税が課される契約形態に限られます。

契約の関係
(保険料負担者・被保険者・受取人)
かかる税金
被相続人・被相続人・相続人 相続税
(非課税枠あり)
受取人本人・被相続人・受取人本人 所得税
第三者・被相続人・受取人 贈与税

死亡保険金の非課税枠「500万円×法定相続人の数」

相続人が受け取った死亡保険金には、一定額まで相続税がかからない非課税枠が設けられています。非課税限度額は次の計算式で求めます。[国税庁 No.4108 相続税がかからない財産]

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

たとえば法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人である場合、非課税限度額は次のとおりです。

500万円 × 3人 = 1,500万円

この例では、受け取った死亡保険金の合計が1,500万円までであれば相続税はかからず、それを超えた部分だけが課税対象となります。仮に死亡保険金が2,000万円であれば、非課税枠1,500万円を差し引いた500万円が相続税の課税価格に加算されます。

複数の相続人が保険金を受け取った場合の按分

非課税限度額は相続人全体で共有する枠です。複数の相続人が死亡保険金を受け取った場合、各相続人が受け取った保険金の割合に応じて非課税枠を按分します。特定の相続人が非課税枠を独占するわけではなく、受取額の多い相続人ほど非課税となる金額も大きくなります。

法定相続人の数の数え方

非課税限度額を計算する際の「法定相続人の数」には、次のルールがあります。[国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金]

相続放棄があった場合 放棄がなかったものとした場合の相続人の数で計算する
養子がいる場合(実子あり) 法定相続人に含められる養子は1人まで
養子がいる場合(実子なし) 法定相続人に含められる養子は2人まで

この「法定相続人の数」は、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を計算する際の人数と同じ考え方です。[国税庁 No.4152 相続税の計算]

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非課税枠が使えないケースに注意

死亡保険金の非課税枠は、すべての受取人が使えるわけではありません。非課税の適用を受けられるのは、死亡保険金を受け取った人が相続人である場合に限られます。相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません。[国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金]

相続放棄をした人が受け取る場合

相続放棄をした人は、はじめから相続人ではなかったものとして扱われます。そのため、相続放棄をした人が受取人として死亡保険金を受け取ること自体は可能ですが、その保険金には非課税枠を適用できません。死亡保険金は受取人固有の財産であるため、相続放棄をしても保険金は受け取れますが、非課税の恩恵は受けられない点に注意が必要です。

なお、前述のとおり、非課税限度額を計算する際の「法定相続人の数」には相続放棄をした人も含めて数えます。数える人数には含めるものの、その放棄した本人が受け取った保険金は非課税の対象外となるという違いを整理して理解しておくことが重要です。

相続人以外の人が受け取る場合

孫や内縁の配偶者など、相続人にあたらない人を死亡保険金の受取人に指定することもできます。しかしこの場合も、受取人が相続人でない以上、死亡保険金の非課税枠は使えません。さらに、相続人以外の人が遺贈などにより財産を取得した場合、相続税額が2割加算される制度の対象となることもあり、税負担が重くなる可能性があります。受取人を誰にするかは、非課税枠の適用可否や税負担を踏まえて慎重に決める必要があります。

生前対策として生命保険を活用するメリット

死亡保険金の非課税枠は、生前の相続税対策として有効に活用できます。現金や預貯金のまま相続財産として残す場合と比べ、生命保険を活用することには複数のメリットがあります。

非課税枠による相続税の圧縮

現金や預貯金には非課税枠がなく、そのまま相続財産として課税価格に算入されます。一方、同じ資金を生命保険の保険料として払い込み、死亡保険金として相続人が受け取れば、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を使えます。たとえば法定相続人が3人であれば、1,500万円分の資産を非課税で次世代へ引き継ぐことが可能になり、その分だけ相続税の課税対象を圧縮できます。

納税資金・遺産分割資金の確保

相続税は原則として現金一括納付です。相続財産の多くが不動産などの換金しにくい資産である場合、納税資金の確保が課題となります。死亡保険金は受取人の請求により比較的早期に現金で受け取れるため、納税資金や当面の生活資金の確保に役立ちます。また、特定の相続人を受取人に指定しておくことで、遺産分割で他の相続人へ代償金を支払う原資としても活用できます。

受取人を指定できる財産承継

死亡保険金は受取人固有の財産であり、遺産分割協議を経ずに指定した受取人へ直接渡せます。特定の人に確実に資金を残したい場合に有効な手段です。ただし、特定の相続人に偏った多額の保険金は、他の相続人との公平性の観点から争いのもととなる場合もあるため、遺留分などにも配慮した設計が求められます。生命保険を含む生前対策は、家族構成や資産状況に応じて総合的に検討することが大切です。

関連する相続税対策として、死亡退職金にも同様の非課税枠があります。あわせて確認したい方は、死亡退職金は一時金と年金どっちがお得?相続時の税金と選び方もご覧ください。

まとめ

被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は相続税の課税対象となりますが、相続人が受け取る場合には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を使えます。この非課税枠が適用されるのは相続人が受け取る場合に限られ、相続放棄をした人や相続人以外の人が受け取った保険金には適用されない点に注意が必要です。生命保険は非課税枠による相続税の圧縮に加え、納税資金の確保や受取人を指定した財産承継にも役立つため、生前対策として有効に活用できます。ご自身の家族構成や資産状況に応じた最適な保険活用を検討したい場合は、相続税の専門家へ相談することをおすすめします。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。具体的な取り扱いについては、税理士等の専門家にご相談ください。

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参考文献

生命保険の相続税非課税枠に関するよくある質問まとめ

Q. 死亡保険金の非課税枠はいくらですか。

A. 相続人が受け取った死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」で計算した非課税枠があります。法定相続人が3人であれば1,500万円までが非課税となり、これを超えた部分が相続税の課税対象となります。

Q. 死亡保険金には必ず相続税がかかりますか。

A. 被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は相続税の課税対象ですが、相続人が受け取る場合は非課税枠を差し引いた金額のみが課税されます。非課税枠の範囲内であれば相続税はかかりません。

Q. 相続放棄をした人でも死亡保険金の非課税枠を使えますか。

A. 使えません。相続放棄をした人は相続人ではなくなるため、受け取った死亡保険金に非課税枠は適用されません。ただし保険金自体は受取人固有の財産として受け取ることができます。

Q. 孫を受取人にした場合も非課税枠は使えますか。

A. 孫が相続人でない場合は非課税枠を使えません。相続人以外の人が受け取った死亡保険金には非課税の適用がなく、相続税額の2割加算の対象となる場合もあります。

Q. 非課税枠を計算する法定相続人の数に相続放棄をした人は含めますか。

A. 含めます。非課税限度額を計算する際の法定相続人の数は、相続放棄がなかったものとした場合の人数で数えます。一方で、放棄した本人が受け取った保険金には非課税枠を適用できない点に注意が必要です。

Q. 生命保険を相続税対策に使うメリットは何ですか。

A. 現金や預貯金にはない非課税枠により相続税を圧縮できるほか、死亡保険金を納税資金や遺産分割の代償金の原資として確保できます。受取人を指定して特定の人へ確実に資産を残せる点もメリットです。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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