相続税の申告に間違いや遅れがあると、本来の税金に加えて「加算税」や「延滞税」といったペナルティの税金がかかることがあります。「申告漏れが見つかったらいくら上乗せされるのだろう」「今から直せば軽くなるのだろうか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、加算税4種類と延滞税について、それぞれの税率と計算のしかた、令和6年以降に見直された無申告加算税のルール、そして税務調査の前に自分から申告することで負担を抑える方法まで、専門事務所の実務の視点でやさしく整理してお伝えします。
相続税にかかるペナルティ税の全体像
相続税で本来の税額(本税)に上乗せされるペナルティの税金は、大きく「加算税」と「延滞税」に分かれます。加算税は申告の誤りや遅れという行為そのものに対して課される税金で、延滞税は納付が遅れた期間に応じてかかる利息のような税金です。まずは、それぞれがどのような場面で発生するのかを押さえておきましょう。
加算税の4つの種類
加算税には、内容に応じて次の4種類があります。相続税の申告そのものをしていなかったか、していたけれど金額が少なかったか、そして仮装・隠ぺいがあったかによって、どれが課されるかが変わります。
| 加算税の種類 | 課される場面 |
|---|---|
| 無申告加算税 | 申告期限までに申告しなかった場合 |
| 過少申告加算税 | 申告はしたが税額が少なかった場合 |
| 重加算税 | 事実の仮装・隠ぺいがあった場合 |
| 不納付加算税 | 源泉所得税の納付が遅れた場合 (相続税では通常課されません) |
相続税の場面で問題になるのは、主に無申告加算税・過少申告加算税・重加算税の3つです。不納付加算税は源泉徴収に関するもので、相続税には基本的に関係しません。
延滞税の位置づけ
延滞税は、法定納期限の翌日から実際に納付する日までの日数に応じて自動的に課される、利息にあたる税金です。相続税の法定納期限は申告期限と同じで、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です[国税庁No.4205 相続税の申告と納税]。なお延滞税は本税だけを対象として課され、加算税に対しては課されません[国税庁No.9205 延滞税について]。
無申告加算税の税率と令和6年以降の見直し
申告期限までに相続税の申告をしなかった場合には、無申告加算税がかかります。税率は、いつの段階で申告したかによって大きく変わります。
申告のタイミング別の税率
税務調査の事前通知を受ける前に自分から期限後申告をすれば、無申告加算税は5%に軽減されます。通知を受けた後、調査で更正・決定が予知される前の申告では税率が上がり、調査を受けてからの申告ではさらに重くなります[国税庁No.2024 確定申告を忘れたとき]。
| 申告のタイミング | 無申告加算税の税率 |
|---|---|
| 調査の事前通知前に自主的に期限後申告 | 5% |
| 事前通知後・調査による決定を 予知する前 |
10%(50万円超は15%、 300万円超は25%) |
| 調査を受けた後 | 15%(50万円超は20%、 300万円超は30%) |
令和6年1月1日以降の加重措置
令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する相続税から、無申告加算税のルールが見直されました。ポイントは次の2つです[国税庁No.2024 確定申告を忘れたとき]。
1つ目は、納付すべき税額のうち300万円を超える部分について税率が加重され、調査後の申告では最大30%が適用される点です。2つ目は、前年・前々年にも無申告加算税や重加算税を課されているなど、短期間に繰り返し無申告があった場合に、さらに10%が上乗せされる点です。過去に無申告を繰り返していると、負担が一段と重くなる仕組みになっています。
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過少申告加算税の税率
相続税の申告はしたものの、後から財産の申告漏れなどで税額が少なかったと分かった場合には、過少申告加算税がかかります。こちらも、申告した(修正申告した)タイミングによって税率が変わります。
修正のタイミング別の税率
税務調査の事前通知を受ける前に自分から修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません(0%)。通知後・調査後になると税率が発生します[国税庁No.2026 確定申告を間違えたとき]。
| 修正申告のタイミング | 過少申告加算税の税率 |
|---|---|
| 調査の事前通知前に自主的に修正申告 | 0% |
| 事前通知後・調査による更正を 予知する前 |
5%(一定額超は10%) |
| 調査を受けた後 | 10%(一定額超は15%) |
ここでいう「一定額」とは、当初の申告税額と50万円のいずれか多い方の金額です。この金額を超える部分について、加重された税率が適用されます[国税庁No.2026 確定申告を間違えたとき]。
重加算税の税率
財産を意図的に隠したり、事実を仮装したりして申告した(あるいは申告しなかった)場合には、加算税のなかでもっとも重い重加算税が課されます。単なる計算間違いや見落としではなく、悪質と判断されたケースが対象です。
重加算税の税率は、過少申告に代えて課される場合が35%、無申告に代えて課される場合が40%です[国税庁No.2024 確定申告を忘れたとき]。さらに、過去に無申告加算税や重加算税を課されたことがある場合には10%が上乗せされることがあり、実際の負担はより大きくなります。名義預金の申告漏れなどが仮装・隠ぺいと認定されると重加算税につながることもあるため、注意が必要です。加算税の根拠は国税通則法に定められています[e-Gov法令検索 国税通則法第68条]。
延滞税の割合と計算例
延滞税は、納期限までに税金を納めなかった場合に、遅れた日数に応じてかかります。割合は納期限の翌日から2か月を境に二段階に分かれており、2か月を超えると高くなる仕組みです。
延滞税の割合(年度別)
延滞税の割合は市場金利に連動して毎年見直されます。国税庁が公表している令和4年から令和7年、および令和8年の割合は次のとおりです[国税庁No.9205 延滞税について]。
| 期間 | 延滞税の割合(2月以内/2月超) |
|---|---|
| 令和4年~令和7年 | 年2.4%/年8.7% |
| 令和8年(1月~12月) | 年2.8%/年9.1% |
これは、本来の割合(2月以内は年7.3%、2月超は年14.6%)と、市場金利をもとにした特例割合のいずれか低い方が適用されるためです[国税庁 延滞税の計算方法]。
延滞税の計算例
たとえば、本税300万円を令和7年中に納期限から120日遅れて納付した場合を考えます。納期限の翌日から2か月(60日)以内は年2.4%、それを超える60日は年8.7%が適用されます。
このように、遅れる期間が長いほど、また2か月を超えるほど延滞税は膨らみます(実際の計算では本税や延滞税額の端数処理が行われます)。相続税を一括で納められない場合には、延納や物納といった制度の検討も選択肢になります。
税務調査の前に自主申告して負担を抑える方法
ここまで見てきたとおり、加算税の税率はいずれも「税務調査の事前通知を受ける前に、自分から申告・修正したか」で大きく変わります。無申告加算税は調査後の15%以上に対し自主申告なら5%、過少申告加算税は調査後の10%以上に対し自主申告なら0%です[国税庁No.2026 確定申告を間違えたとき]。
つまり、申告漏れや誤りに気づいたら、税務署から連絡が来る前に一日でも早く期限後申告や修正申告を行うことが、ペナルティを最小限に抑える最大のポイントです。延滞税も遅れた日数に応じてかかるため、早く納めるほど負担は軽くなります。ご自身のケースで加算税がかかるかどうか、いくらになるかの判断は複雑ですので、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
まとめ
相続税のペナルティには、申告の誤りや遅れに対する加算税(無申告・過少申告・重加算税)と、納付の遅れに対する延滞税があります。無申告加算税は令和6年以降に見直され、300万円超部分の加重や繰り返し無申告への10%上乗せが導入されました。延滞税の割合は毎年見直され、令和4年~令和7年は2月以内が年2.4%、2月超が年8.7%です。いずれの加算税も、税務調査の事前通知前に自分から申告・修正すれば大幅に軽減されます。申告漏れに気づいたら、できるだけ早く動くことが負担を抑える鍵になります。
参考文献
関連する内容は次の記事でも解説しています。あわせてご覧ください。
相続税の加算税・延滞税のよくある質問まとめ
Q.相続税の加算税と延滞税は何が違いますか
A.加算税は申告の誤りや遅れという行為に対して課される税金で、無申告加算税・過少申告加算税・重加算税があります。延滞税は納付が遅れた期間に応じてかかる利息にあたる税金です。延滞税は本税だけを対象とし、加算税には課されません。
Q.無申告加算税の税率はいくらですか
A.税務調査の事前通知前に自主的に期限後申告をすれば5%です。通知後は10%(50万円超15%、300万円超25%)、調査を受けた後は15%(50万円超20%、300万円超30%)となります。
Q.令和6年から無申告加算税はどう変わりましたか
A.令和6年1月1日以後に申告期限が到来する分から、納付すべき税額のうち300万円を超える部分の税率が加重され、調査後は最大30%になりました。また前年・前々年にも無申告加算税や重加算税があった場合など、繰り返し無申告があると10%が上乗せされます。
Q.過少申告加算税がかからない場合はありますか
A.税務調査の事前通知を受ける前に、自分から修正申告をした場合は過少申告加算税はかかりません(0%)。通知後は5%、調査後は10%が基本となり、一定額を超える部分は税率が加重されます。
Q.延滞税の割合は何%ですか
A.延滞税は市場金利に連動して毎年見直されます。令和4年から令和7年は、納期限の翌日から2か月以内が年2.4%、2か月を超えると年8.7%です。令和8年は2か月以内が年2.8%、2か月超が年9.1%です。
Q.重加算税はどんなときに課されますか
A.財産を意図的に隠したり事実を仮装したりして申告した、または申告しなかった悪質なケースに課されます。税率は過少申告に代えて課される場合が35%、無申告に代えて課される場合が40%で、加算税のなかでもっとも重い税金です。