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相続税申告の税理士費用は誰が払う?負担者の決め方と債務控除の可否

2026-08-30
目次

相続税の申告を税理士に頼もうと決めたとき、多くのご家族が最後に立ち止まるのが「この費用は結局、誰が払うのか」という問題です。長男が窓口になっているから長男が全額負担するのか、相続人全員で分けるのか、それとも亡くなった方の預金から出してよいのか。金額が数十万円単位になるだけに、後から不公平感が残ると関係がこじれかねません。

結論から申し上げると、法律上の支払義務があるのは、税理士と契約を結んだ相続人です。ただし実務では、そのまま契約者ひとりが負担し続けるケースはむしろ少なく、相続分に応じて分け合う形が広く採られています。相続税の申告と納税の期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内と決まっており国税庁 No.4205 相続税の申告と納税、費用負担でもめている時間的な余裕はありません。

この記事では、支払義務の考え方、実務で選ばれている負担パターン、そして見落とされがちな税理士報酬は債務控除の対象にならないという論点まで、順を追って整理します。

相続税申告の税理士費用の支払義務者

税理士報酬は、相続そのものから自動的に発生する費用ではありません。相続人が税理士に業務を依頼し、契約を結んだことによって初めて生じる費用です。したがって、支払義務を負うのは契約の当事者、つまり依頼した相続人ということになります。

契約当事者としての支払義務

相続人のうち一人だけが税理士事務所に連絡し、その方の名前で契約書を交わした場合、税理士事務所に対して報酬を支払う責任を負うのはその方だけです。他の相続人は契約の当事者ではないため、事務所から直接請求を受ける立場にはありません。

ここで注意したいのは、これはあくまで「税理士事務所との関係」に限った話だという点です。相続人どうしの間で費用をどう分け合うかは、別の合意で決められます。契約者が全額を立て替えたうえで、後から他の相続人に精算を求めることは何ら問題ありません。

相続人全員で依頼する場合の契約形態

相続人全員が申告の必要な当事者である以上、契約書に相続人全員が名を連ねる形も一般的です。この形にしておくと、誰がいくら負担するのかという議論が契約の段階で自然に俎上に載るため、後の食い違いが起きにくくなります。

一方で、遠方に住む相続人がいる、高齢で手続きが難しい相続人がいるといった事情から、代表者一人が契約するケースも多く見られます。実務では、代表者契約であっても事前に他の相続人へ報酬額と負担方法を共有しておくやり方が一般的です。

実務で選ばれる負担パターン

「誰が払うか」を実務の目線で見ると、大きく三つのパターンに分かれます。どれが正解というものはなく、遺産の内訳や相続人の関係性によって選び分けられています。

負担方法 特徴
代表相続人の立替と按分 代表者がいったん全額を支払い、後日それぞれの相続分に応じて精算する
各相続人の個別負担 税理士事務所からの請求を分割し、各人がそれぞれ自分の分を支払う
遺産からの支払い 被相続人の預金や換価した資金から支払い、遺産分割協議でその扱いを明記する

代表相続人の立替と相続分での按分

最も多いのが、窓口を担う代表相続人がまとめて支払い、後で分け合う方法です。税理士事務所とのやり取りが一本化されるため手続きが速く、期限の迫った申告では実務的な利点があります。

按分の基準として使われることが多いのが、法定相続分です。法定相続分は、配偶者と子が相続人であれば配偶者2分の1・子2分の1(子が複数ならその中で均等)と定められています国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分。たとえば税理士報酬が80万円で、相続人が配偶者と子2人の場合、それぞれの負担額は次のように計算します。

80万円 × 1/2 = 40万円(配偶者)
80万円 × 1/2 × 1/2 = 20万円(子1人目)
80万円 × 1/2 × 1/2 = 20万円(子2人目)

実際の取得割合が法定相続分と異なる場合には、法定相続分ではなく実際に取得した財産の割合で按分する考え方もあります。多く受け取った人が多く負担するという整理で、納得感を得やすい方法です。

各相続人の個別負担

相続人どうしの関係が疎遠な場合や、立替を避けたい事情がある場合には、税理士事務所に請求を分けてもらう方法があります。各人が自分の分だけを直接支払うため、精算のやり取りが発生しません。

ただし、誰か一人の入金が遅れると業務全体が止まりかねない点には注意が必要です。分割請求に対応できるかどうかは事務所によって異なるため、依頼前の確認をおすすめします。

遺産からの支払いと遺産分割協議での取り決め

被相続人が遺した預貯金から税理士費用を支払う方法もあります。相続人全員が納得しているのであれば、この扱い自体に問題はありません。実質的には、遺産を分ける前に共通経費を差し引いてから分割する形になります。

この方法を採る場合は、遺産分割協議書に費用の負担方法を明記しておくことが重要です。記載がないまま預金から引き出すと、後から「勝手に使った」という疑念を招く原因になります。協議書の作り方は次の記事で詳しく解説しています。

関連コラム遺産分割協議書を自分で作成する手順|書き方と相続税申告の注意点

なお、遺産分割が終わっていない段階の預貯金は相続人全員の共有財産です。相続人の一人の判断だけで引き出すと、金融機関の手続き上も、相続人間の信頼関係の上でもトラブルになりやすいため、全員の合意を先に取っておくのが安全です。

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税理士報酬と債務控除の関係

費用負担を考えるうえで、多くの方が期待するのが「税理士費用は相続税の計算で差し引けるのではないか」という点です。しかし結論として、相続税申告のための税理士報酬は債務控除の対象になりません

債務控除の対象となる債務の範囲

遺産総額から差し引ける債務は、被相続人が死亡したときに現に存在した債務で、確実と認められるものに限られます国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務。具体的には、借入金や未払金、被相続人が納めるべきだった税金などが該当します。

相続税申告の税理士報酬は、被相続人が亡くなった後に、相続人が自らの必要から契約して生じる費用です。被相続人の債務ではないため、この枠には入りません。同じ理由で、遺産分割のために依頼した弁護士費用や、相続登記の司法書士費用も債務控除の対象外と整理されます。

葬式費用との違い

「葬儀費用は差し引けると聞いたのに、なぜ税理士費用は駄目なのか」と感じる方は少なくありません。葬式費用も相続開始後に発生する支出ですが、こちらは債務控除とは別枠で、相続税法上あえて控除が認められているものです。

控除できる葬式費用には、火葬や埋葬・納骨のための費用、遺体や遺骨の回送費用、通夜など葬式の前後に生じる通常必要な費用、読経料などのお礼が含まれます国税庁 No.4129 相続財産から控除できる葬式費用。一方で、香典返しの費用、墓地の購入費用、法要にかかった費用は控除できません。

つまり葬式費用は「特別に認められた例外」であり、相続開始後の支出が一般に差し引けるわけではない、という理解が正確です。税理士報酬はこの例外に含まれていません。

準確定申告の税理士費用の扱い

相続の場面では、相続税申告とは別に準確定申告が必要になることがあります。被相続人に事業所得や不動産所得があった場合などで、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税を行います国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)

ここで区別しておきたいのが、準確定申告で算出された所得税そのものと、準確定申告を依頼した税理士費用です。前者は被相続人が負うべきだった税金であり、死亡時に確定していなくても債務として遺産総額から差し引けます。後者は相続人が相続開始後に契約して生じた費用であるため、相続税申告の報酬と同じく債務控除の対象にはなりません。

なお、被相続人が生前に依頼していた顧問税理士への報酬で、死亡時点で未払いになっていた分は、被相続人の債務として扱える余地があります。契約の時期と債務が確定した時期によって判断が変わるため、迷う場合は個別に確認することをおすすめします。

費用負担で揉めないための取り決め

相続の現場で費用負担が争点になるのは、金額そのものより「聞いていなかった」という感情が原因であることがほとんどです。取り決めのタイミングを前倒しするだけで、多くの摩擦は防げます。

依頼前に合意しておく事項

税理士事務所に正式に依頼する前の段階で、次の3点を相続人間で共有しておくと安心です。

  • 報酬の総額と、加算報酬が発生し得る条件(土地の筆数、非上場株式の有無など)
  • 誰が契約者となり、誰がいつ支払うのか
  • 最終的な負担割合の基準(法定相続分か、実際の取得割合か)

見積書を全員に転送し、金額を全員が目にした状態にしておくことが、最も簡単で効果的な予防策です。

遺産分割協議書への記載

遺産から支払う場合や、負担割合が法定相続分と異なる場合は、遺産分割協議書にその旨を一行入れておきます。「相続税申告に係る税理士報酬は、相続人が取得した財産の割合に応じて負担する」といった形の記載です。

協議書に残しておけば、後日の記憶違いや相続人以外の親族からの指摘があっても、合意内容を示すことができます。相続手続き全体の流れを確認したい方は、次の記事もあわせてご覧ください。

関連コラム相続は何から始める?死亡直後から10ヶ月までの手続きと期限の全体像

報酬の目安と費用を抑える視点

負担方法を決める前提として、そもそもいくらかかるのかを把握しておく必要があります。相続税の税理士報酬は遺産総額に応じた基本報酬と、土地や非上場株式などに応じた加算報酬で構成されるのが一般的です。

具体的な金額の目安や加算報酬の内訳は、次の記事で遺産総額別に整理しています。負担割合を話し合う際の資料としてもお使いいただけます。

関連コラム相続税の税理士報酬の相場|遺産総額別の目安と加算報酬の内訳を解説

当法人の料金についても、あらかじめ公開しています。

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まとめ

相続税申告の税理士費用を支払う義務があるのは、税理士と契約を結んだ相続人です。ただし相続人間での負担方法は自由に決められ、実務では代表相続人が立て替えて相続分や実際の取得割合で按分する形が広く採られています。遺産から支払う方法も、全員の合意と遺産分割協議書への記載があれば問題ありません。

一方で、相続税申告の税理士報酬は債務控除の対象にならない点は押さえておく必要があります。控除できるのは被相続人が死亡したときに現に存在した債務と、例外的に認められた葬式費用に限られます。準確定申告についても、所得税そのものは債務控除の対象になりますが、その申告を依頼した税理士費用は対象外です。

費用負担でつまずかないための鍵は、依頼前に金額と負担方法を全員で共有しておくことに尽きます。相続税の申告期限は10か月と限られており、話し合いに時間を割きすぎると申告そのものが後手に回ります。ご家族の事情に合った負担方法や、報酬額の妥当性など、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

相続税申告の税理士費用の負担に関するよくある質問まとめ

Q.相続税申告の税理士費用は誰が払う義務がありますか。

A.税理士事務所に対して支払義務を負うのは、税理士と契約を結んだ相続人です。相続人の一人が代表して契約した場合、事務所からの請求先はその方になります。ただし相続人どうしで費用をどう分け合うかは別の合意で自由に決められ、契約者が立て替えて後から精算する形が広く採られています。

Q.税理士費用は相続税の債務控除の対象になりますか。

A.対象になりません。遺産総額から差し引ける債務は、被相続人が死亡したときに現に存在した確実と認められる債務に限られます。相続税申告の税理士報酬は相続開始後に相続人が契約して生じる費用であるため、この枠に入りません。弁護士費用や相続登記の司法書士費用も同様に対象外です。

Q.葬式費用は控除できるのに税理士費用が控除できない理由は何ですか。

A.葬式費用は債務控除とは別枠で、相続税の計算上あえて控除が認められている例外だからです。火葬や埋葬・納骨の費用、遺体や遺骨の回送費用、通夜など通常必要な費用、読経料などが対象になります。相続開始後の支出が一般に差し引けるわけではなく、税理士費用はこの例外に含まれていません。

Q.税理士費用を亡くなった人の預金から支払ってもよいですか。

A.相続人全員が合意していれば問題ありません。実質的には遺産を分ける前に共通経費を差し引く形になります。ただし遺産分割前の預貯金は相続人全員の共有財産にあたるため、一人の判断で引き出すとトラブルの原因になります。支払う前に全員の合意を取り、遺産分割協議書に負担方法を記載しておくことをおすすめします。

Q.負担割合は法定相続分と実際の取得割合のどちらで決めるべきですか。

A.どちらでも構いません。手続きが簡単なのは法定相続分での按分ですが、実際の取得割合が法定相続分と大きく異なる場合は、多く受け取った方が多く負担する形のほうが納得を得やすい傾向があります。重要なのは基準を先に決め、相続人全員が同じ理解を持った状態にしておくことです。

Q.準確定申告の税理士費用も債務控除の対象外ですか。

A.対象外です。準確定申告で算出された所得税そのものは、被相続人が負うべきだった税金として遺産総額から差し引けますが、その申告を依頼した税理士費用は相続開始後に相続人が契約した費用のため控除できません。なお被相続人が生前に依頼し死亡時点で未払いだった顧問報酬は、扱いが異なる場合があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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