相続税の申告では、亡くなった方が所有していた土地を金額に置き換えて評価する必要があります。市街地にある宅地の多くは路線価方式で評価し、その基礎となるのが国税庁が毎年公表する路線価です。路線価は国税庁のウェブサイトで誰でも無料で調べられますが、路線価図の見方や、路線価が設定されていない地域の扱いを知らないと、正しい評価額にたどり着けません。本記事では、はじめて自分で土地の評価額を試算したい方に向けて、路線価の調べ方と路線価図の見方を具体的な手順で解説します。
相続した土地の評価方法の全体像
相続や遺贈によって取得した土地は、地目(宅地、田、畑、山林など)ごとに評価します。宅地の評価方法には路線価方式と倍率方式の2種類があり、その土地がどちらの地域にあるかによって使う方法が決まります [国税庁No.4602 土地家屋の評価]。
路線価方式と倍率方式の使い分け
どちらの方式を使うかは自分で選べるものではなく、土地の所在地によって国税庁が定めています。まずは評価したい土地が路線価地域と倍率地域のどちらに属するかを、後述する国税庁のサイトで確認します。
| 評価方式 | 適用される地域と 評価額の計算の基礎 |
|---|---|
| 路線価方式 | 路線価が定められている地域で用います。道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額(路線価)を基礎に評価します。 |
| 倍率方式 | 路線価が定められていない地域で用います。その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価します。 |
市街地の宅地は路線価方式、郊外や農村部の宅地は倍率方式となることが多い傾向にあります。いずれの方式で評価するかは、次章で説明する路線価図と評価倍率表を見れば判別できます。
路線価の調べ方の手順
路線価は、国税庁が運営する財産評価基準書のウェブサイトで閲覧できます。過去数年分が公開されており、無料で誰でも利用できます [財産評価基準書]。
閲覧サイトでの検索手順
相続税の土地評価では、被相続人が亡くなった年(相続開始年)の路線価を使います。以下の手順で目的の路線価図にたどり着きます。
| 手順1 | 財産評価基準書のトップページを開き、評価したい土地の年分を選びます。相続の場合は相続開始年を選択します。 |
| 手順2 | 日本地図または一覧から、土地が所在する都道府県を選びます。 |
| 手順3 | 「路線価図」を選び、市区町村、地区・町名の順に絞り込みます。 |
| 手順4 | 該当する路線価図のページ番号を選び、評価したい土地が面する道路上の数字を確認します。 |
手順3で地域を選んだ際に、その地域が路線価図ではなく評価倍率表のみで表示される場合は、その土地は倍率地域です。倍率地域の評価方法は後の章で説明します。
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路線価図の見方
路線価図では、道路(路線)ごとに数字とアルファベットが表示されています。この数字とアルファベットの意味を理解することが、路線価図を読み解く鍵となります [路線価図の説明]。
数字が示す1平方メートル当たりの価額
道路に付された数字は、その道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額を表し、単位は千円です [国税庁No.4604 路線価方式による宅地の評価]。たとえば道路上に「300」と表示されていれば、その道路に面する宅地の路線価は1平方メートル当たり30万円という意味になります。数字を千倍した金額が実際の路線価である点を必ず押さえてください。
アルファベットが示す借地権割合
数字の右隣に付されたアルファベットは、その地域の借地権割合を示す記号です。借地権割合は、土地を借りて建物を建てている場合の借地権や、他人に貸している土地(貸宅地)などの評価で用います。記号とパーセントの対応は次のとおりです [路線価図の説明]。
| 記号 | 借地権割合 |
|---|---|
| A | 90% |
| B | 80% |
| C | 70% |
| D | 60% |
| E | 50% |
| F | 40% |
| G | 30% |
自分が所有し自分で使っている宅地(自用地)を評価するだけであれば、借地権割合を使う場面はありません。まずは数字(路線価)を正しく読み取ることが基本となります。
路線価による評価額の試算
路線価を読み取れたら、実際に評価額を試算してみます。路線価方式では、路線価に土地の形状などに応じた各種の補正率を乗じ、さらに地積(面積)を乗じて評価額を計算します [国税庁No.4604 路線価方式による宅地の評価]。
基本の計算式
補正を考えない最も単純な形は、路線価に地積を乗じるだけの計算です。まずはこの形で概算をつかみます。
たとえば路線価図に「300」(1平方メートル当たり30万円)と表示された道路に面する、地積200平方メートルの宅地であれば、次のように試算します。
補正率による調整
実際の評価では、土地の奥行や間口、形状に応じて奥行価格補正率などの各種補正率を乗じ、評価額を調整します。角地や不整形地、間口が狭い土地などは補正の影響が大きく、上記の単純計算とは金額が変わります。正確な評価には土地及び土地の上に存する権利の評価明細書を用いた計算が必要となるため、上記の試算はあくまで概算の目安として扱ってください。
路線価が設定されていない倍率地域の評価
路線価が定められていない地域の土地は、倍率方式で評価します。倍率方式では、その土地の固定資産税評価額に、国税局長が地域ごとに定める一定の倍率を乗じて評価額を計算します [国税庁No.4606 倍率方式による土地の評価]。
倍率方式の計算式
倍率は、財産評価基準書の評価倍率表で確認します。固定資産税評価額は、市区町村から送られる固定資産税の課税明細書や、名寄帳などで確認できます。
倍率地域では路線価図に数字が表示されないため、路線価を探しても見つかりません。地域を選んだ際に評価倍率表が表示された場合は、この倍率方式で計算します。
自分で試算する際の注意点
路線価図と評価倍率表を使えば、土地の評価額のおおよその目安を自分で把握できます。ただし、実際の相続税申告では、土地の形状補正や、複数の道路に面する場合の調整、小規模宅地等の特例による減額など、専門的な判断が必要になる場面が多くあります。とくに小規模宅地等の特例は要件を満たせば宅地の評価額を大きく減額できる制度で、適用の可否によって相続税額が大きく変わります。自宅の宅地に関する要件は、小規模宅地の特例で自宅の要件は?330㎡80%減額を解説で詳しく解説しています。
自分で試算した金額はあくまで概算であり、最終的な評価額や相続税額の判断には専門家の確認が欠かせません。
まとめ
相続した土地のうち市街地の宅地は路線価方式で評価し、路線価は国税庁の財産評価基準書のウェブサイトで年分・都道府県・市区町村の順に絞り込んで調べます。路線価図の数字は1平方メートル当たりの価額(千円単位)を、右隣のアルファベットは借地権割合(Aが90%、Gが30%)を示します。路線価が設定されていない倍率地域では、固定資産税評価額に倍率を乗じる倍率方式で評価します。単純な路線価×地積の試算は概算把握に役立ちますが、形状補正や小規模宅地等の特例など専門的な判断が絡む場面では、正確な評価のために税理士へ相談することをおすすめします。
参考文献
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の相続税申告にあたっては税理士等の専門家にご確認ください。
相続不動産の路線価調べ方に関するよくある質問まとめ
Q. 路線価はどこで調べられますか。
A. 国税庁が運営する財産評価基準書のウェブサイトで無料で調べられます。年分、都道府県、市区町村、地区・町名の順に絞り込み、路線価図で該当する道路上の数字を確認します。
Q. 路線価図の数字は何を意味しますか。
A. 道路に付された数字は、その道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額を千円単位で表します。300と表示されていれば1平方メートル当たり30万円という意味です。
Q. 路線価の数字の右隣にあるアルファベットは何ですか。
A. その地域の借地権割合を示す記号です。Aが90%、Bが80%、Cが70%、Dが60%、Eが50%、Fが40%、Gが30%に対応します。自用地の評価では使いません。
Q. どの年分の路線価を使えばよいですか。
A. 相続税の土地評価では、被相続人が亡くなった年(相続開始年)の路線価を使います。財産評価基準書のウェブサイトで該当する年分を選択します。
Q. 路線価が見つからない土地はどう評価しますか。
A. 路線価が定められていない倍率地域の土地は倍率方式で評価します。土地の固定資産税評価額に、評価倍率表で確認した一定の倍率を乗じて評価額を計算します。
Q. 路線価に地積を掛けるだけで正確な評価額になりますか。
A. なりません。実際の評価では土地の奥行や形状に応じた各種補正率を乗じます。路線価×地積は概算の目安であり、正確な評価額は評価明細書による計算や専門家の確認が必要です。