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タンス預金は相続でバレる?税務署が把握する仕組みとペナルティ

2026-09-08
目次

ご家族が亡くなったあとに自宅の金庫やタンスから多額の現金が出てきて、「これも相続税の申告に入れるのだろうか」「黙っていても分からないのではないか」と迷われる方は少なくありません。結論から申し上げますと、自宅で保管されていた現金(いわゆるタンス預金)も相続財産に含まれ、相続税の申告が必要です。金融機関に預けていないというだけで、扱いが変わることはありません。

そして「申告しなければ分からないのではないか」という点についても、税務署は預金口座の過去の入出金や各種の資料情報から、手元に残っているはずの現金をかなりの精度で推定しています。この記事では、税務署がタンス預金を把握する仕組み、申告しなかった場合に課されるペナルティの具体的な税率、生前に現金を整理しておく方法、そして見つかった現金を正しく申告する手順までを、相続税を専門とする税理士の実務目線で順にご説明します。

タンス預金と相続税の基本

まずは前提として、タンス預金がどのような財産として扱われるのかを整理します。ここを誤解したまま申告を進めてしまうと、あとから修正申告や加算税といった負担が生じることになります。

相続財産としての手許現金の扱い

相続税の対象となる財産は、被相続人が亡くなった時点で所有していた、金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものです。現金、預貯金、有価証券、土地、家屋などがこれにあたり、現金は預貯金とは別に、独立した相続財産として明記されています国税庁 No.4105 相続税がかかる財産

したがって、自宅の金庫、仏壇の引き出し、貸金庫などに保管されていた現金は、保管場所を問わずすべて申告の対象になります。実務では、亡くなった日の時点で手元にあった現金を「手許現金」として財産目録に計上します。硬貨や小額の生活費まで一円単位で拾う必要はありませんが、まとまった金額の現金を意図的に除外することは認められません。

相続税の申告期限と納付期限

相続税の申告と納税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。申告書の提出期限と現金で納付する期限は同じ日であり、この期限までに申告しなかったり、実際より少ない金額で申告したりすると、本来の税金に加えて加算税や延滞税といった負担が生じます国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

申告期限 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内
納付期限 申告書の提出期限と同じ日
手許現金の
計上時点
被相続人が亡くなった日の時点で保管されていた金額

申告漏れが起こりやすい理由

タンス預金の申告漏れは、必ずしも意図的な隠ぺいばかりではありません。実務でよくあるのは、ご家族が現金の存在そのものを知らなかったケース、葬儀費用に充てるために亡くなる直前に引き出した現金を計上し忘れたケース、そして「通帳に載っていないものは財産ではない」と思い込んでいたケースです。

特に注意が必要なのは、亡くなる直前に医療費や葬儀費用のために口座から引き出した現金です。引き出した時点で預金は減っていますが、使い切れずに残っていた分は手許現金として相続財産になります。通帳の残高だけを見て申告すると、この部分がそのまま漏れてしまいます。

税務署がタンス預金を把握する仕組み

「現金は記録が残らないから分からないはずだ」と考えられる方は多いのですが、実際には税務署は現金そのものを直接見なくても、その存在を高い精度で推定できる手段を持っています。ここでは実務で実際に行われている調べ方をご説明します。

過去の預金口座の入出金照会

相続税の調査で最初に行われるのが、被相続人と家族名義の預金口座の入出金履歴の確認です。税務署は金融機関に対して取引履歴の照会を行うことができ、数年分にわたって資金の流れを確認します。現金は姿を消しても、口座から出ていった記録は金融機関に残り続けます

そのうえで、生活費や医療費として想定される支出額と、実際の出金額との差額が検討されます。年金収入や不動産収入に対して生活費の支出が明らかに少ない場合も、「使われていないお金がどこかにあるはずだ」という推定につながります。このように、現金の存在は入出金の記録と生活実態の差から逆算して把握されるのが実務です。

関連コラム税務署は銀行口座をどこまで調べられる?調査の範囲と実務を税理士が解説

資料情報の収集と国税総合管理システム

税務署は個々の調査だけでなく、日常的に幅広い資料情報を集めています。国税庁の公表によると、令和6事務年度に収集された資料情報は法定資料が62,531万枚、その他の資料が33,473万枚にのぼり、これらが調査や行政指導に活用されています国税庁 国税庁レポート2026

また、全国の国税局と税務署はネットワークで結ばれ、地域や税目を越えて情報を一元的に管理する国税総合管理(KSK)システムによって事務処理が行われています。これは「タンス預金を見つけ出す装置」ではなく、あくまで申告や納税、資料情報を横断して管理するための基幹システムです。ただし、過去の申告内容や収入の状況が一元的に参照できることは、相続税の調査対象を選ぶ際の判断材料になります。

税務調査における質問検査権

実地の税務調査では、税務署の職員に法律上の権限が与えられています。相続税の調査については、納税義務がある方だけでなく、被相続人と債権債務の関係があった方や、財産を保管していたと認められる方に対しても質問し、帳簿書類などを検査することが認められていますe-Gov法令検索 国税通則法第74条の3

そのため調査当日は、自宅の金庫や引き出し、預金通帳の保管場所などについて質問を受けることがあります。実際に、相続人の自宅の金庫内から多額の現金が発見された事例が国税庁から公表されています。「見つからないだろう」という前提は、実務上かなり危うい前提です

相続税の税務調査の実態

では、実際にどの程度の調査が行われ、どのような財産の申告漏れが多いのでしょうか。ここは推測ではなく、国税庁が毎年公表している数字で確認しておきましょう。

調査件数と非違割合

令和6事務年度に行われた相続税の実地調査は9,512件で、そのうち申告内容に誤りなどが見つかった非違件数は7,826件、割合にして82.3%でした。追徴税額は合計824億円、1件当たりでは867万円となっています国税庁 令和6事務年度における相続税の調査等の状況

実地調査件数 9,512件
非違件数 7,826件(非違割合82.3%)
追徴税額 合計824億円(1件当たり867万円)
重加算税の
賦課件数
1,065件(賦課割合13.6%)

調査に入られた場合、8割を超える割合で何らかの誤りが指摘されているという事実は、知っておいていただきたい点です。また、そもそも申告書を提出していない無申告事案に対する実地調査も650件行われており、1件当たりの追徴税額は2,187万円と、通常の調査より大幅に高い水準になっています。

申告漏れ財産に占める現金・預貯金等

同じ資料では、申告漏れとされた相続財産の総額は2,879億円でした。その内訳を財産の区分ごとに見ると、現金・預貯金等が837億円(29.1%)で、土地や有価証券、家屋といった区分の中で最も大きな金額となっています。

財産の区分 申告漏れ金額
現金・預貯金等 837億円(29.1%)
有価証券 393億円(13.6%)
土地 353億円(12.3%)
家屋 50億円(1.7%)

土地や建物のように登記で存在が明らかな財産よりも、現金や預貯金のほうが申告漏れの金額が大きいという結果です。裏を返せば、税務署も現金・預貯金は重点的に確認すべき財産だと認識しているということになります。

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申告しなかった場合のペナルティ

タンス預金を申告しなかった場合、あとから指摘を受けると本来の相続税に加えて加算税と延滞税が課されます。金額の感覚をつかんでいただくために、税率を具体的に確認しておきましょう。

過少申告加算税

期限内に申告したものの、税額が少なかった場合に課されるのが過少申告加算税です。税率は原則として新たに納めることになった税金の10%で、その新たに納める税金が「期限内申告で納めた税額」と「50万円」のいずれか多い額を超えている場合は、その超える部分について15%となります国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき

なお、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合には、過少申告加算税はかかりません。あとから現金の存在に気づいたときに、早く動くほど負担が軽くなる仕組みになっています。事前通知を受けたあと、調査による更正を予知する前の修正申告であれば5%(超える部分は10%)に軽減されます。

無申告加算税

そもそも期限までに申告書を提出しなかった場合には、無申告加算税が課されます。令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについては、調査を受けたあとの期限後申告では次の税率になります国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき

納付税額の
うち50万円まで
15%
50万円超
300万円以下の部分
20%
300万円を
超える部分
30%

調査の事前通知を受けたあと、決定を予知する前に自主的に申告した場合は10%・15%・25%に、調査の通知を受ける前に自主的に申告した場合は5%に軽減されます。さらに、法定申告期限から1か月以内に自主的に期限後申告を行い、一定の要件を満たす場合には無申告加算税が課されないこともあります。

重加算税

最も重いのが重加算税です。事実を隠ぺいしたり仮装したりして申告した場合、過少申告加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%が課されます。タンス預金の存在を知りながら意図的に財産目録から外していた、あるいは調査で問われて隠したといったケースは、この重加算税の対象になり得ます。

さらに、過去5年以内に無申告加算税や重加算税を課されたことがあるなど、繰り返しが認められる場合には10%が加算されます。前述のとおり令和6事務年度には1,065件、調査全体の13.6%で重加算税が課されており、決して例外的な処分ではありません。

加算税の種類 税率
過少申告加算税 10%(一定額を超える部分は15%)
無申告加算税 15%・20%・30%の3段階
重加算税(過少申告に代えて) 35%
重加算税(無申告に代えて) 40%

延滞税

加算税とは別に、納付が遅れた期間に応じて延滞税がかかります。延滞税の割合は年ごとに見直され、令和8年は納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、2か月を経過した日の翌日以後は年9.1%です国税庁 延滞税の割合。参考までに令和7年は年2.4%と年8.7%でした。

たとえば、あとから判明したタンス預金によって相続税が1,000万円増え、その納付が納期限から30日遅れた場合の延滞税は次のように計算します。

本税1,000万円 × 年2.8% × 30日 ÷ 365日 = 23,013円
23,013円 → 100円未満切捨て = 延滞税23,000円

2か月を過ぎると割合が年9.1%に跳ね上がるため、指摘を受けてから長く放置するほど負担は大きくなります。なお、延滞税がかかるのは本税に対してのみで、加算税に対して延滞税がかかることはありません。また、期限後申告や修正申告の場合の納期限は、申告書を提出した日となります国税庁 No.9205 延滞税について

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生前にタンス預金を整理する方法

ここまでは相続が起きたあとの話でしたが、ご本人がお元気なうちに整理しておけば、ご家族の負担は大きく減らせます。ここでは実務でおすすめしている進め方をご紹介します。

現金の棚卸しと保管場所の共有

まず行っていただきたいのが、自宅にある現金の棚卸しです。金庫、タンス、仏壇、貸金庫など保管場所ごとに金額を書き出し、日付とともに記録しておきます。ご家族が保管場所を把握していれば、相続の際に「あるはずの現金が見つからない」という事態を避けられます。

あわせて、預金通帳や証券口座、貸金庫の鍵の所在も一覧にしておくと、財産の全体像が把握しやすくなります。相続税の申告で最も時間がかかるのは財産の洗い出しの工程ですので、この一覧があるだけで手続きは大きく前に進みます。

預金口座への入金と使途の記録

次に検討したいのが、まとまった現金を金融機関の口座に戻すことです。口座に入れておけば残高証明書で金額が明確になり、相続人が財産を把握しやすくなります。多額の現金を自宅に置いたままにしておくと、盗難や災害のリスクに加えて、相続時に金額の裏付けが取りにくいという問題も生じます。

ただし、入金の際は名義に注意が必要です。ご本人の現金をご家族名義の口座に入れると、贈与とみなされたり、逆に実質はご本人の財産である名義預金として相続財産に含められたりする可能性があります。入金するのはご本人名義の口座とし、大きな出金があった場合は使途をメモに残しておくことをおすすめします。

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生前贈与を行う場合の注意点

タンス預金をご家族へ生前贈与する方法もありますが、相続税の負担を減らす効果は限定的です。相続や遺贈で財産を取得した方が被相続人から生前に受けた贈与は、相続開始前の一定期間内のものが相続財産に加算されるためです。加算の対象となる期間は、相続開始日が令和8年12月31日以前であれば相続開始前3年以内、令和13年1月1日以後は7年以内へと段階的に延長されます国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

また、現金を手渡しで贈与すると、そもそも贈与があった事実を証明しにくくなります。贈与を行うのであれば、贈与契約書を作成し、ご本人名義の口座から受贈者名義の口座へ振り込む形にして、記録が残るようにしておくことが大切です。

見つかった現金の正しい申告方法

相続が始まってから現金が見つかった場合、どのように申告すればよいのでしょうか。手順そのものは難しくありません。

相続開始日時点の金額での計上

申告書には、被相続人が亡くなった日の時点で保管されていた金額を手許現金として計上します。亡くなったあとに葬儀費用として使ってしまった分も、亡くなった時点で存在していた以上は相続財産です。使ってしまったから申告しなくてよい、ということにはなりません。

金額を確定する際は、金庫や引き出しごとに現金を数え、日付と立会人を記録しておくと、あとから説明が必要になった場合に役立ちます。相続人が複数いる場合は、できるだけ全員が立ち会って確認することで、遺産分割をめぐるトラブルの予防にもなります。

申告後に判明した場合の対応

すでに相続税の申告を済ませたあとで現金が見つかった場合は、速やかに修正申告を行います。前述のとおり、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税は課されません。判明した時点で動くことが、結果として最も負担の少ない選択になります。

期限内に申告書を提出していなかった場合も同様で、調査の通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は5%にとどまります。放置している間に延滞税だけが積み上がっていくことになりますので、迷っている時間そのものがコストになるとお考えください。

まとめ

タンス預金は、保管場所が自宅であるというだけで、預貯金と同じく相続税の課税対象となる財産です。税務署は預金口座の入出金履歴や幅広い資料情報から手元に残る現金を推定しており、実地調査では8割を超える割合で申告内容の誤りが見つかっています。申告漏れの財産としても現金・預貯金等が最も大きな金額を占めています。

申告しなかった場合には、過少申告加算税10%や無申告加算税15%から30%、隠ぺいや仮装があれば重加算税35%または40%が課され、これに延滞税が加わります。一方で、調査の通知を受ける前に自主的に申告すれば加算税は大きく軽減されます。生前であれば現金の棚卸しと口座への入金、相続後であれば速やかな計上と修正申告が、いずれも負担を小さくする現実的な方法です。

ご家庭ごとに現金の経緯や金額の裏付けは異なり、名義預金や生前贈与の判断が絡むこともあります。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

タンス預金と相続税のよくある質問まとめ

Q.タンス預金は相続税の申告に含める必要がありますか。

A.含める必要があります。現金は預貯金とは別に相続税の課税対象となる財産として定められており、自宅の金庫やタンスで保管していた現金も、亡くなった日の時点の金額を手許現金として申告します。

Q.税務署はどのようにタンス預金を把握するのですか。

A.預金口座の過去の入出金履歴を金融機関に照会し、生活費や医療費として想定される支出額との差額から手元に残る現金を推定します。あわせて日常的に収集している資料情報も調査に活用されます。

Q.タンス預金を申告しないとどのようなペナルティがありますか。

A.過少申告加算税は原則10%、無申告加算税は15%から30%が課されます。隠ぺいや仮装があった場合は重加算税として35%または40%となり、さらに納付が遅れた期間に応じて延滞税がかかります。

Q.申告したあとにタンス預金が見つかった場合はどうすればよいですか。

A.速やかに修正申告を行ってください。税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をすれば過少申告加算税は課されません。放置すると延滞税が増えていくため早めの対応が有利です。

Q.生前にタンス預金を預金口座へ入れても問題ありませんか。

A.ご本人名義の口座に入金する分には問題ありません。ただしご家族名義の口座に入れると贈与や名義預金と判断される可能性があるため、名義には注意が必要です。

Q.タンス預金を生前贈与すれば相続税を減らせますか。

A.効果は限定的です。相続や遺贈で財産を取得した方が受けた生前贈与は、相続開始前の一定期間内のものが相続財産に加算されます。贈与する場合は契約書を作成し口座振込で記録を残してください。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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