大切な方が亡くなられた後、様々な手続きに追われる中で「準確定申告」という言葉を耳にした方も多いのではないでしょうか。「期限が4ヶ月と聞いたけど、もう過ぎてしまった」「そもそも申告が必要だと知らなかった」という方もいらっしゃると思います。
結論からお伝えしますね。準確定申告の期限を過ぎてしまっても、税務署から指摘される前にご自身で速やかに申告すれば、ペナルティは大きく軽くなります。無申告加算税は税務調査の事前通知を受ける前の自主的な申告なら5%で済みますし、法定申告期限から1か月以内の自主的な申告で一定の要件を満たせば、無申告加算税そのものがかかりません国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき。逆に、放置している間も延滞税は日ごとに積み上がっていきます。
この記事では、期限を過ぎた場合・知らなかった場合に何が起こるのか、そして今日から何をすればよいのかを、国税庁の情報をもとに分かりやすくご説明しますね。
準確定申告の基本|期限は「4ヶ月以内」です
まず、基本となる準確定申告の期限について確認しておきましょう。準確定申告は、亡くなられた方(被相続人)の所得税の申告手続きのことで、相続人が代わりに行います。この申告と納税の期限は、非常に重要なのでしっかり押さえておきましょう。
具体的な期限の計算方法
準確定申告の期限は、「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」と定められています国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)。例えば、6月10日に亡くなったことを知った場合、その翌日の6月11日から数えて4ヶ月後の10月10日が申告と納税の期限となります。
もし、申告期限の日が土曜日、日曜日、祝日にあたる場合は、その次の平日が期限日となります。例えば、10月10日が土曜日であれば、期限は10月12日(月曜日)になります。
「相続の開始があったことを知った日」っていつのこと?
「相続の開始があったことを知った日」というのは、多くの場合、故人が亡くなられた「死亡日」を指します。ご家族がすぐに亡くなったことを知るのが一般的だからですね。
しかし、故人と疎遠であったり、孤独死などで後から死亡の事実を知った場合は、その「死亡の事実を知った日」が基準となります。この場合は、死亡日から4ヶ月ではないので注意が必要です。
前年分の確定申告も期限は同じ4ヶ月です
もし故人が、1月1日から3月15日までの間に亡くなられた場合、前年分の確定申告を終えていない可能性があります。通常の確定申告期間は翌年の2月16日から3月15日までだからです。
このようなケースでは、相続人は「亡くなった年の所得(準確定申告)」と「前年分の所得(確定申告)」の2年分の申告を行う必要があります。そして、この2つの申告期限は、どちらも同じく「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」となりますので、忘れないようにしましょう国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)。
準確定申告の期限に間に合わないとどうなる?2つのペナルティ
もし準確定申告の期限に間に合わなかった場合、残念ながらペナルティとして追加の税金が課せられてしまう可能性があります。本来支払う必要のないお金を納めることにならないよう、どのようなペナルティがあるのかを具体的に見ていきましょう。
無申告加算税|申告しなかったことへのペナルティ
無申告加算税は、正当な理由なく期限内に申告をしなかった場合に課されるペナルティです。納付すべき税額に対して、申告のタイミングによって異なる税率がかけられます。税務署から指摘される前に自主的に申告することで、税率を低く抑えることができます。
税率は令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの(令和5年分以降)について見直され、納付すべき税金が300万円を超える部分の割合が引き上げられています国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき。
| 申告のタイミング | 納付すべき税額 | 税 率 |
| 税務調査の事前通知前に自主的に申告した場合 | 金額を問わず | 5% |
| 税務調査の事前通知後、調査による決定を予知する前に申告した場合 | 50万円までの部分 | 10% |
| 50万円超〜300万円までの部分 | 15% | |
| 300万円を超える部分 | 25% | |
| 税務調査を受けた後に申告した場合・税務署から決定を受けた場合 | 50万円までの部分 | 15% |
| 50万円超〜300万円までの部分 | 20% | |
| 300万円を超える部分 | 30% |
※過去に無申告加算税や重加算税を課されたことがある場合などには、さらに10%が加算されることがあります。
期限から1か月以内なら無申告加算税がかからないことも
ここはぜひ知っておいていただきたいところです。期限後の申告であっても、次の要件をすべて満たす場合には、無申告加算税はかかりません国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき。
- その期限後申告が、法定申告期限から1か月以内に自主的に行われていること
- その期限後申告で納付すべき税金の全額を法定納期限までに納付していること(口座振替納付の手続をした場合は期限後申告書を提出した日まで)
- 期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、この不適用を受けていないこと
「期限を過ぎてしまった」と気づいた時点でまだ1か月以内であれば、大急ぎで申告と納税を済ませる価値が十分にある、ということですね。
延滞税|納税が遅れたことへのペナルティ
延滞税は、納税が期限に遅れたことに対する利息のようなペナルティです。法定納期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて計算されます国税庁 No.9205 延滞税について。こちらも1日でも早く納付することが大切です。
計算の考え方はシンプルで、次のようになります。
割合は毎年見直されており、令和8年中の期間については次のとおりです国税庁 No.9205 延滞税について。
| 期 間 | 令和8年1月1日〜 令和8年12月31日 |
令和4年1月1日〜 令和7年12月31日 |
| 納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 年2.8% | 年2.4% |
| 納期限の翌日から2か月を経過した日以後 | 年9.1% | 年8.7% |
※延滞税の割合は、その時々の金利の状況によって毎年変動します。
ひとつ注意点があります。ここでいう「納期限」は、期限後申告の場合は「申告書を提出した日」になります国税庁 No.9205 延滞税について。つまり、申告書を出したその日に納税まで済ませてしまえば、高い方の割合(年9.1%)に乗ってしまうことは避けられます。申告と納税はセットで動くのがおすすめです。
なお、延滞税は本税だけを対象に課されるもので、加算税に対しては課されません国税庁 No.9205 延滞税について。
準確定申告が必要だと知らなかった場合はどうなる?
「そもそも準確定申告という制度自体を知らなかった」というご相談は、実はとても多いです。ご家族を亡くされた直後に、所得税の申告のことまで気が回る方はそう多くありません。
「知らなかった」は正当な理由になりません
残念ながら、制度を知らなかったことは、期限内に申告しなかった「正当な理由」とは認められません。無申告加算税や延滞税は、知っていたかどうかに関わらず課される仕組みになっています。
ただし、悲観しすぎる必要もありません。知らなかったからこそ、税務署から指摘を受ける前の「自主的な申告」に該当しやすいという面があります。この場合の無申告加算税は5%にとどまりますし、気づいた時点がまだ法定申告期限から1か月以内であれば、無申告加算税がかからない可能性もあります。
そもそも準確定申告が必要ない場合もあります
慌てる前に、まず「本当に申告が必要なのか」を確認してみましょう。準確定申告は、亡くなられた方が確定申告をしなければならない立場だった場合に必要になるものです。国税庁は、次のいずれにも当てはまる給与所得者は確定申告をしなくてよいとしています国税庁 No.2020 確定申告。
- 給与の収入金額が2,000万円以下
- 給与を1か所から受けていて、その全部について源泉徴収されている
- 給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下
公的年金等を受けていた方についても、次のいずれにも該当する場合は確定申告が不要とされています国税庁 No.2020 確定申告。
- その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下
- その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となっている
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
逆に、事業所得や不動産所得があった、複数の勤務先から給与を受けていた、といった場合は申告が必要になります。ご自身のケースがどちらか判断に迷うときは、税務署や税理士に確認してみてくださいね。
何年前まで遡って課されるの?
税務署が更正や決定を行える期間は、原則として法定申告期限から5年と定められていますe-Gov法令検索 国税通則法第70条。ただし、偽りその他不正の行為により税額を免れた場合には7年まで遡って行うことができますe-Gov法令検索 国税通則法第70条。
「もうずいぶん前のことだから大丈夫だろう」と考えるのは危険です。税務署は支払調書や源泉徴収票など様々な資料から所得を把握していますので、気づいた時点で自主的に申告するのが、結果的にいちばん負担が軽くなります。
期限がギリギリ!今すぐできる対処法
「もう期限まで時間がない!」と焦っている方もいらっしゃるかもしれません。ですが、諦めないでください。期限ギリギリでもできることがあります。
まずは概算で期限内に申告する
完璧な書類が揃っていなくても、まずは概算の金額で期限内に申告書を提出することを強くおすすめします。無申告になってしまうと、先ほどご説明した無申告加算税が課せられてしまいます。申告さえしておけば、このペナルティを避けることができるのです。
少し乱暴に聞こえるかもしれませんが、無申告のリスクを考えれば、まずは申告するというアクションが何よりも重要です。
後から「修正申告」で正しい内容に訂正する
概算で申告した後は、できるだけ早く正しい所得や税額を計算し直し、「修正申告」という手続きを行いましょう。修正申告をすることで、正しい税額に訂正することができます。もし、最初に納めた税額が多すぎた場合は還付され、少なかった場合は追加で納付することになります。
すでに期限を過ぎてしまった場合の手順【5ステップ】
もし、うっかりしていて準確定申告の期限を過ぎてしまった場合でも、決して放置してはいけません。ペナルティを最小限に抑えるために、次の順番で進めていきましょう。
ステップ1|「知った日」から何日経っているかを数える
まず、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月後が本来の期限です。そこから今日まで何日経過しているかを確認してください。1か月以内であれば、無申告加算税がかからない可能性がありますので、最優先で手続きを進める価値があります。
ステップ2|相続人全員と資料を揃える
準確定申告書には、各相続人の氏名・住所・被相続人との続柄などを記入した付表を添付します国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)。相続人が2人以上いる場合は連署で提出するのが原則です(他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出することもできますが、その場合は申告内容を他の相続人に通知する必要があります)。
あわせて、亡くなられた方の源泉徴収票・年金の支払通知書・医療費の領収書などを集めておきましょう。
ステップ3|被相続人の納税地の税務署へ提出する
提出先は、被相続人の死亡当時の納税地を所轄する税務署長です国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)。相続人ご自身のお住まいの税務署ではない点にご注意ください。
ステップ4|申告書を出したその日に納税まで済ませる
期限後申告の場合、申告書を提出した日が納期限になります。同じ日に納付まで終わらせておけば、延滞税が高い割合(納期限の翌日から2か月経過後の年9.1%)に切り替わる事態を避けられます。1日でも早く行動することが、余計な負担を減らす一番の方法です。
ステップ5|相続税の申告期限(10ヶ月)も同時に確認する
準確定申告で納めた所得税は、相続税の計算上債務として控除できます。逆に還付を受けた場合、その還付金は相続財産に含まれます。準確定申告の内容は相続税申告に直結しますので、相続税の申告が必要なご家庭では、10ヶ月の期限から逆算して早めに片付けておくのが得策です。
準確定申告の期限に関するよくある質問
最後に、準確定申告の期限に関してよくいただくご質問にお答えします。
Q. 期限を過ぎたら還付申告もできなくなりますか?
A. いいえ、そんなことはありません。医療費控除の適用などで税金が戻ってくる「還付申告」の場合は、準確定申告の期限である4ヶ月を過ぎても申告できます。還付申告書は、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます国税庁 No.2030 還付申告。
ただし、還付されたお金は相続財産の一部と見なされます。そのため、相続税の申告(期限は10ヶ月以内)が必要な場合は、それに間に合うように早めに準確定申告を済ませておくことをおすすめします。
Q. 準確定申告の期限は延長できますか?
A. 原則として、準確定申告の期限を延長することはできません。「書類集めに時間がかかった」「仕事が忙しかった」といった個人的な理由では延長は認められないのです。
ただし、災害などのやむを得ない特別な理由がある場合に限り、期限が延長される制度があります。これはあくまで例外的な措置となりますので、該当しそうな場合は所轄の税務署にご相談ください。
Q. 亡くなった後に払った医療費は控除できますか?
A. いいえ、できません。準確定申告で医療費控除の対象になるのは、死亡の日までに被相続人が支払った医療費に限られます。死亡後に相続人の方が支払ったものを準確定申告の医療費控除に含めることはできません国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)。
まとめ
今回は、準確定申告の期限を過ぎた場合・知らなかった場合のペナルティと対処法について解説しました。
大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- 準確定申告の期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」
- 期限に遅れると「無申告加算税」や「延滞税」といったペナルティがある
- 「知らなかった」は正当な理由にならないが、指摘前の自主申告なら無申告加算税は5%で済む
- 法定申告期限から1か月以内の自主的な申告で一定の要件を満たせば、無申告加算税はかからない
- 期限ギリギリなら、まずは概算で申告し、後から修正申告をする
- 期限後申告は提出した日が納期限。申告と納税は同じ日に済ませる
ご家族が亡くなられた直後は、精神的にも時間的にも余裕がないことと思います。しかし、準確定申告は必ず行わなければならない大切な手続きです。もしご自身での対応が難しいと感じたら、まずは税理士にご相談くださいね。この記事が、皆さまの不安を少しでも和らげるお役に立てれば幸いです。
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参考文献
- 国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
- 国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
- 国税庁 No.9205 延滞税について
- 国税庁 No.2030 還付申告
- 国税庁 No.2020 確定申告
- e-Gov法令検索 国税通則法第70条
準確定申告の期限を過ぎた場合のよくある質問
Q.準確定申告が必要だと知らなかった場合はどうなりますか?
A.制度を知らなかったことは、期限内に申告しなかった正当な理由とは認められず、無申告加算税や延滞税の対象になります。ただし、税務署からの調査の事前通知を受ける前に自主的に申告すれば無申告加算税は5%にとどまり、法定申告期限から1か月以内の自主的な申告で一定の要件を満たす場合には無申告加算税はかかりません。
Q.準確定申告の期限(相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月)を過ぎたらどうなりますか?
A.期限後申告として取り扱われ、無申告加算税と延滞税が課される可能性があります。無申告加算税は調査の事前通知前の自主的な申告なら5%、事前通知後は納付税額50万円までが10%・50万円超300万円までが15%・300万円超が25%、調査後は15%・20%・30%となります。
Q.無申告加算税がかからないケースはありますか?
A.あります。期限後申告が法定申告期限から1か月以内に自主的に行われ、納付すべき税金の全額を法定納期限までに納付しており、かつ提出日の前日から起算して5年前までの間に無申告加算税や重加算税を課されたことがない等の要件をすべて満たす場合には、無申告加算税はかかりません。
Q.延滞税は何年前まで遡って課されますか?
A.延滞税は法定納期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて課されます。また所得税の無申告について税務署が課税できる期間は原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為により税を免れた場合は7年です。放置するほど延滞税は積み上がります。
Q.期限を過ぎた場合、延滞税の割合はどのくらいですか?
A.令和8年1月1日から令和8年12月31日までの期間は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です。令和4年1月1日から令和7年12月31日までの期間はそれぞれ年2.4%・年8.7%でした。期限後申告では申告書を提出した日が納期限になります。
Q.期限を過ぎたら還付申告もできなくなりますか?
A.いいえ。税金が戻ってくる還付申告であれば、4ヶ月の期限を過ぎても手続きできます。還付申告書はその年の翌年1月1日から5年間提出することができます。ただし還付金は相続財産に含まれるため、相続税申告が必要な場合は10ヶ月の期限に間に合うよう早めに済ませましょう。
Q.準確定申告の期限を延長することはできますか?
A.原則として期限の延長は認められていません。書類集めに時間がかかった、忙しかったといった個人的な理由では延長できません。災害などやむを得ない理由がある場合に限り、例外的に延長が認められるケースがあります。
Q.準確定申告と相続税申告の期限の違いは何ですか?
A.準確定申告は亡くなった方の所得税の申告で、期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内です。一方、相続税申告は相続財産にかかる税金の申告で、期限は10ヶ月以内と定められています。


