故人がゴルフを趣味にしていた場合、遺産の中にゴルフ会員権が含まれていることがありますよね。ゴルフ会員権は財産的な価値があるため、原則として相続税の課税対象になります。この記事では、ゴルフ会員権の相続税評価額の調べ方と計算方法を、国税庁の財産評価基本通達(211)にそって、どなたにも分かりやすくご説明しますね。
先に結論をまとめると、次の3点です。
・取引相場のある会員権は、課税時期(亡くなった日)の取引価格の70%で評価します。
・取引価格に含まれていない預託金がある場合は、その分を加算します。すぐに返還されないものは、基準年利率による複利現価の額で加算します。
・取引相場がない会員権は種類ごとに評価し、株式を持たず譲渡もできずプレーだけができる会員権は評価しません(0円)。
まずはご自身の会員権が「取引相場のあるものか、ないものか」を確かめるところから始めましょう。
ゴルフ会員権は相続税の対象になるの?
まずはじめに、ゴルフ会員権がどのようなもので、相続財産になるのか、基本的なところからお話しします。ゴルフ会員権とは、ゴルフクラブを会員として利用できる権利のことです。これには財産的な価値が認められるため、基本的には相続税の対象となります。ただし、すべての会員権に価値があるわけではない点も知っておきましょう。
ゴルフ会員権の種類
ゴルフ会員権には、大きく分けていくつかの種類があります。どの種類に当てはまるかによって評価方法が変わってくるので、最初に確認することが大切です。主な種類は以下の通りです。
| 株主制 | ゴルフクラブを運営する会社の株主になることで、会員としての権利を得るタイプです。クラブの経営に参加できる権利も含まれます。 |
| 預託金制 | ゴルフクラブに一定のお金を預ける(預託する)ことで、会員としての権利を得るタイプです。日本のゴルフ場の多くがこの形式です。 |
| プレー会員権制 | 株主になったり預託金を預けたりするのではなく、プレーする権利そのものを購入するタイプです。 |
会員権の種類を調べる方法
「うちの会員権はどのタイプだろう?」と迷ったときは、次の3つを順番に見ていくと分かります。
| 会員証書・預託金証書 | 金庫や貸金庫、書類ケースに保管されていることが多い書類です。「預託金証書」があれば預託金制、「株券」や「株主名簿記載事項証明書」があれば株主制と判断できます。 |
| クラブの会則(規約) | ゴルフ場の公式サイトや入会案内に掲載されています。「入会資格」「会員権の譲渡」「据置期間」「退会と預託金の返還」の条項を確認しましょう。 |
| ゴルフ場への直接照会 | 会員番号を伝えて、会員種別・預託金の額・据置期間・名義書換の受付状況を確認します。相続手続きの窓口にもなるため、早めの連絡がおすすめです。 |
なお、通帳の引落履歴に年会費の支払いがあると、会員権の存在に気づくきっかけになります。ゴルフ場からの会報やコンペ案内の郵便物も手がかりになりますので、遺品整理のときは注意して見てみてくださいね。
相続財産にならないケース
すべてのゴルフ会員権が相続税の対象になるわけではありません。例えば、ゴルフクラブの規約で「会員の死亡とともに権利が消滅する」と定められていて、相続が認められていない場合があります。また、株式を保有せず、譲渡もできず、返還を受けられる預託金もなく、プレーができるだけの会員権は、国税庁の通達でも「評価しない」とされており、相続税評価額は0円として扱われます。
ゴルフ会員権の相続税評価額の計算方法
ここからが本題です。ゴルフ会員権の評価方法は、まず「取引相場があるか、ないか」で大きく2つに分かれます。ここが一番のポイントになりますので、しっかり押さえていきましょう。それぞれのケースについて、具体的な計算方法を詳しく見ていきますね。
取引相場のあるゴルフ会員権の評価
市場で売買されている、最も一般的なゴルフ会員権の評価方法です。基本的な計算式と、預託金の有無による違いを順番に解説します。
基本的な評価方法(預託金なし、または返還見込みなし)
最もシンプルなケースです。評価額は、被相続人が亡くなった日(課税時期)の取引価格の70%で計算します。これは国税庁が定めたルールです。例えば、課税時期の取引価格が100万円だった場合、相続税評価額は70万円となります。
【計算式】課税時期の取引価格 × 70% = 相続税評価額
預託金があり、すぐに返還される場合
取引価格に含まれていない預託金がある場合は、その金額も財産価値に含める必要があります。課税時期において直ちに返還を受けられる預託金は、規約などにもとづいて返還を受けられる金額を、そのまま取引価格の70%に足し合わせます。
【計算式】(課税時期の取引価格 × 70%) + 返還される預託金の額 = 相続税評価額
預託金があり、一定期間後に返還される場合
預託金に据置期間があり、返還が「5年後」や「10年後」など将来に設定されている場合は、現在の価値に割り引いて評価します。将来もらえるお金は、今すぐもらえるお金よりも価値が少し低いと考えられるからです。この割り引いた額を「複利現価相当額」といい、国税庁が公表する基準年利率と複利現価率を使って計算します。なお、返還を受けられる日までの期間に1年未満の端数があるときは、1年として計算します。
【計算式】(課税時期の取引価格 × 70%) + 預託金の複利現価相当額 = 相続税評価額
計算例で確認しましょう
言葉だけだと分かりにくいので、同じ会員権を3つのパターンで比べてみますね。いずれも課税時期の取引価格は100万円とします。
| ケース | 計算 | 評価額 |
| 預託金なし | 100万円 × 70% | 70万円 |
| すぐ返還される預託金50万円あり | (100万円 × 70%) + 50万円 | 120万円 |
| 5年後に返還される預託金50万円あり (複利現価率0.97と仮定) |
(100万円 × 70%) + (50万円 × 0.97) | 118万5,000円 |
複利現価率は基準年利率によって変わりますので、実際の計算では課税時期の属する年月の基準年利率を国税庁の公表資料で確認してくださいね。
取引相場のないゴルフ会員権の評価
ゴルフクラブの規約で譲渡が禁止されていたり、長期間にわたって名義書換が停止されていたりして、市場価格が存在しない会員権もあります。この場合は、会員権の種類に応じて以下のように評価方法が変わります。
| 株主制会員権 | ゴルフ場の株式として評価します。これは「非上場株式の評価」という専門的な方法を用いるため、非常に複雑です。この場合は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。 |
| 預託金制会員権 | 返還される預託金の額そのものが評価額となります。返還まで期間がある場合は、先ほどと同じように複利現価率を使って現在の価値に割り引いて計算します。 |
| 株主制+預託金制 | 上記の「株主制」の方法で計算した評価額と、「預託金制」の方法で計算した評価額を合計した金額になります。 |
| プレー権のみ(譲渡不可) | 金銭的な価値がないとみなされるため、相続税評価額は0円です。 |
取引価格70%での評価や預託金がある場合の計算についてはゴルフ会員権の相続税評価(取引価格70%と預託金の計算)で詳しく解説しています。
取引相場の調べ方
「取引相場のある会員権」の評価に欠かせない取引相場ですが、これはどうやって調べればいいのでしょうか。主な方法と、調べた際の注意点についてご説明しますね。
仲介業者のウェブサイトで確認する
最も手軽な方法は、ゴルフ会員権の売買を仲介している業者のウェブサイトで確認することです。インターネットで「〇〇カントリークラブ 会員権相場」のように検索すると、複数の業者のサイトが見つかります。そこで、被相続人が亡くなった日に最も近い日の取引価格を調べましょう。
「課税時期に最も近い日」の価格を選ぶ
評価に使うのは、あくまで課税時期(被相続人が亡くなった日)の取引価格です。相場は日々動きますので、申告書を作っている時点の価格をそのまま使わないよう気をつけてください。相場表に日付が入っていない場合は、業者に問い合わせて「〇年〇月〇日時点の相場」を書面やメールでもらっておくと安心です。
調べた根拠を残しておく
相場の資料は、取得日が分かる形で保存しておきましょう。ウェブサイトの画面を日付入りで印刷する、業者からの回答メールを保管する、といった対応で十分です。税務署から問い合わせがあったときに、評価額の根拠をすぐ示せる状態にしておくことが大切です。
取引相場が複数ある場合の対処法
同じゴルフ会員権でも、仲介業者によって提示される価格が異なることは珍しくありません。このような場合、相続税の計算上有利になる最も低い価格を採用して問題ありません。ただし、一つの業者の価格だけが他の価格と極端にかけ離れている場合は、税務調査で指摘される可能性もゼロではありません。念のため、複数の価格を確認し、その中で妥当と思われる金額を選ぶのが安心です。
売り値と買い値のどちらを使うか
仲介業者のサイトには「売り希望価格」と「買い取り価格」が並んでいることがあります。評価の基礎になるのは「通常の取引価格」ですので、実際に売買が成立している水準を確認しましょう。判断に迷う場合は、業者に「相続税評価に使いたい」と伝えて、成約水準を教えてもらうのが確実です。
名義書換料と売却したときの税金
評価額が決まったあとに気になるのが、名義変更の費用と、売却したときの税金です。どちらも相続手続きでよく質問をいただくところなので、あわせて確認しておきましょう。
名義書換料の取り扱い
相続でゴルフ会員権を引き継ぐ場合、ゴルフクラブに名義書換料(名義変更料)を支払うのが一般的です。金額や必要書類はクラブごとに異なり、相続の場合は通常の売買より低く設定されていることもあります。名義書換料は相続税評価額から差し引くものではなく、会員権の評価とは別に発生する費用という点に注意してくださいね。手続きの流れや必要書類はゴルフ会員権の名義書換請求|相続時の手続きと費用で詳しくご説明しています。
相続後に売却したときの税金
相続したゴルフ会員権を売却して利益が出た場合、その利益は総合課税の譲渡所得として、給与所得などほかの所得と合算して課税されます。譲渡益からは年間で最高50万円の特別控除を差し引くことができ、所有期間が5年を超える長期譲渡所得なら、控除後の金額の2分の1が課税対象になります。なお、ゴルフ会員権の譲渡で損失が出ても、原則として給与所得など他の所得と損益通算することはできません。
相続税申告書への記載方法
ここまでで計算したゴルフ会員権の評価額は、相続税申告書の「第11表(相続税がかかる財産の明細書)」という書類に記載します。記載方法は以下の通りで、それほど難しくはありませんよ。
・「種類」の欄:「その他の財産」と記載します。
・「細目」の欄:「ゴルフ会員権」と記載します。
・「利用区分、銘柄等」の欄:「〇〇カントリークラブ」のように、ゴルフ場の正式名称を記載します。
・「所在場所等」の欄:ゴルフ場の住所を記載します。
・「価額」の欄:計算した相続税評価額を記入します。
・「取得財産の価額」の欄:ゴルフ会員権は不動産と違って共有することができないため、相続する人ひとりの欄に、価額と同じ金額を記載します。
なお、相続税の申告と納税の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。ゴルフ場への照会や相場の確認に時間がかかることもありますので、早めに着手しておくと安心ですね。
まとめ
今回は、ゴルフ会員権の相続税評価額について、調べ方と計算方法、申告書への記載までを詳しく解説しました。ポイントを整理すると、次のとおりです。
・まず会員証書・会則・ゴルフ場への照会で、会員権の種類と預託金の有無を確認する。
・取引相場があれば、課税時期の取引価格の70%に、取引価格に含まれない預託金を加算する。
・取引相場がなければ、株式・預託金の種類に応じて評価し、プレー権のみの会員権は0円とする。
・相場は課税時期に最も近い日のものを使い、根拠資料を残しておく。
評価方法は一見すると複雑に感じるかもしれませんが、この手順に沿って一つひとつ確認していけば、ご自身でもある程度の評価額を計算することができます。
もし、取引相場のない株主制の会員権のように評価が難しいケースや、ご自身での計算に不安がある場合は、無理をせず税理士などの専門家にご相談ください。正確な評価と申告で、スムーズな相続手続きを進めていきましょう。
この記事を読んだ方へ
Inheritance Tax
相続税申告は、相続専門の税理士法人へ
公認会計士・税理士が担当し、全国オンラインで対応します。初回のご相談は無料です。
相続税申告のサービスを見る
Price
相続税申告の料金を確認する
遺産総額に応じた明朗な料金体系です。加算報酬の考え方も掲載しています。
料金体系を見る
参考文献
ゴルフ会員権の相続税評価額に関するよくある質問まとめ
Q. ゴルフ会員権は相続税の課税対象になりますか?
A. はい、ゴルフ会員権は金銭的価値のある財産とみなされるため、相続税の課税対象となります。相続財産として申告が必要です。
Q. ゴルフ会員権の相続税評価額はどのように決まりますか?
A. 取引相場のあるゴルフ会員権は、課税時期における通常の取引価格の70%で評価します。取引価格に含まれない預託金がある場合は、その金額を加算します。取引相場がない場合は、株式・預託金の区分に応じて評価します。
Q. ゴルフ会員権の取引相場はどこで調べればよいですか?
A. ゴルフ会員権の売買を仲介する業者のウェブサイトで確認するのが一般的です。使うのは課税時期(被相続人が亡くなった日)に最も近い日の取引価格で、根拠として日付の分かる画面や業者の回答を保存しておきましょう。
Q. 自分の会員権が株主制か預託金制か分かりません。どう確認しますか?
A. 会員証書や預託金証書、株券などの保管書類を確認し、あわせてクラブの会則で譲渡の可否や据置期間を確認します。分からない場合は会員番号を伝えてゴルフ場に直接照会するのが確実です。
Q. 預託金制のゴルフ会員権の評価方法は通常と違いますか?
A. 取引相場がある場合は取引価格の70%が基本で、取引価格に含まれない預託金を加算します。据置期間があり直ちに返還を受けられない預託金は、返還日までの期間に応じた基準年利率による複利現価の額で加算します。
Q. 評価額が0円になるゴルフ会員権はありますか?
A. 株式を保有せず、譲渡もできず、返還を受けられる預託金もなく、プレーができるだけの会員権は評価しないこととされているため、相続税評価額は0円になります。
Q. 名義書換料は相続税評価額から差し引けますか?
A. 名義書換料は会員権の評価額から差し引くものではなく、名義変更の際に別途かかる費用です。金額や必要書類はゴルフクラブごとに異なるため、事前に確認しておきましょう。
Q. 相続したゴルフ会員権を売却したときの税金は?
A. 売却益は総合課税の譲渡所得として課税されます。譲渡益から最高50万円の特別控除を差し引き、所有期間が5年を超える場合は控除後の金額の2分の1が課税対象です。損失が出ても原則として他の所得と損益通算はできません。
Q. ゴルフ会員権を相続したくない場合、相続放棄できますか?
A. ゴルフ会員権だけを放棄することはできません。相続放棄をする場合は、預貯金や不動産など他のすべての財産も一緒に放棄する必要があります。
Q. ゴルフ会員権の相続税申告はいつまでに行えばよいですか?
A. 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署へ申告と納税を行う必要があります。


