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二次相続対策は一次相続の分割割合で決まる|按分別試算

2026-06-25
目次

父母のどちらか一方が亡くなった一次相続で、配偶者にどれだけの財産を集中させるかは、遺産分割協議や遺言の内容を決める重要な論点です。配偶者の税額軽減を最大限に使えば一次相続の税負担はほぼゼロにできますが、その分だけ残された配偶者の財産が積み上がり、次に配偶者が亡くなった二次相続で子が重い相続税を負うことがあります。本記事では、一次相続の遺産分割割合をどのように決めるべきかを、按分パターン別のシミュレーションを交えて実務の角度から整理します。

一次相続の分割割合が二次相続を左右する理由

一次相続と二次相続は連続した一連の資産移転として捉える必要があります。一次相続で配偶者に財産を寄せるほど目先の相続税は軽くなりますが、その財産は配偶者自身の資産と合算され、二次相続の課税対象を膨らませます。分割割合の決定は、二つの相続を合計した税負担を最小化する視点で行うことが要点です。

配偶者の税額軽減による一次相続の負担圧縮

配偶者が取得した財産のうち、1億6000万円と配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかかりません[No.4158 配偶者の税額の軽減]。この制度により、一次相続では配偶者の取得割合を高めるほど納税額を抑えられます。ただし軽減されるのはあくまで一次相続の税額であり、財産そのものが消えるわけではありません。

二次相続で顕在化する三つの負担増

一次相続で配偶者に多く寄せた財産は、二次相続で次の要因により税負担を押し上げます。第一に、二次相続では配偶者の税額軽減が使えません。第二に、法定相続人の数が一人減るため基礎控除が縮小します。基礎控除は3000万円+600万円×法定相続人の数で計算され、相続人が減ればその分だけ非課税枠が小さくなります[No.4152 相続税の計算]。第三に、相続税は超過累進で課されるため、一人あたりの取得額が大きいほど高い税率が適用されます[No.4155 相続税の税率]

按分パターン別のシミュレーション

ここでは、父の一次相続で相続人が母と子2人、遺産総額が1億円、母には固有財産がない前提で、母の取得割合を変えたときの一次・二次合計の相続税を比較します。二次相続では母の財産1億円を子2人が均等に相続すると仮定します。計算に用いる速算表は以下のとおりです。

法定相続分に応ずる取得金額 税率・控除額
1,000万円以下 10%・控除なし
1,000万円超
3,000万円以下
15%・50万円
3,000万円超
5,000万円以下
20%・200万円
5,000万円超
1億円以下
30%・700万円
1億円超
2億円以下
40%・1,700万円

出典は国税庁の速算表です[No.4155 相続税の税率]

パターンA 配偶者が法定相続分どおり2分の1を取得

一次相続の遺産1億円から基礎控除4800万円(3000万円+600万円×3人)を差し引いた課税遺産総額は5200万円です。これを法定相続分(母2分の1、子各4分の1)で按分し、速算表を適用して相続税の総額を求めます。

母 : 5,200万円 × 1/2 = 2,600万円 → 2,600万円 × 15% − 50万円 = 340万円
子 : 5,200万円 × 1/4 = 1,300万円 → 1,300万円 × 15% − 50万円 = 145万円
相続税の総額 = 340万円 + 145万円 × 2 = 630万円

母は法定相続分どおり2分の1を取得するため、配偶者の税額軽減により母の負担分はゼロになります。一次相続で実際に納めるのは子2人分の合計315万円です。

一次相続の納税額 = 630万円 × (子取得割合 1/2) = 315万円

次に二次相続です。母が取得した5000万円を子2人が均等相続します。基礎控除は相続人2人で4200万円(3000万円+600万円×2人)となり、課税遺産総額は800万円です。

子 : 800万円 × 1/2 = 400万円 → 400万円 × 10% = 40万円
二次相続の納税額 = 40万円 × 2 = 80万円
一次・二次の合計 = 315万円 + 80万円 = 395万円

パターンB 配偶者が全額を取得

一次相続で母が遺産1億円をすべて取得する場合、相続税の総額630万円は変わりませんが、母の取得割合が100%のため配偶者の税額軽減で一次相続の納税額はゼロになります。目先の負担は最も軽くなります。

一次相続の納税額 = 0円(母が全額取得し配偶者の税額軽減を適用)

一方で二次相続では、母が取得した1億円を子2人が均等相続します。基礎控除4200万円を差し引いた課税遺産総額は5800万円です。

子 : 5,800万円 × 1/2 = 2,900万円 → 2,900万円 × 15% − 50万円 = 385万円
二次相続の納税額 = 385万円 × 2 = 770万円
一次・二次の合計 = 0円 + 770万円 = 770万円

パターンC 配偶者が4分の1を取得

一次相続で母の取得を4分の1に抑え、子2人に多く配分する場合を見ます。母の取得は法定相続分2分の1の範囲内であるため、母の負担分は配偶者の税額軽減でゼロになります。一次相続の相続税の総額630万円のうち、子が取得する4分の3に対応する部分を子2人で納めます。

一次相続の納税額 = 630万円 × (子取得割合 3/4) = 472.5万円

二次相続では母が取得した2500万円を子2人が均等相続します。基礎控除4200万円を差し引くと課税遺産総額はゼロとなり、二次相続の相続税はかかりません。

課税遺産総額 = 2,500万円 − 4,200万円 ≦ 0 → 二次相続の納税額 = 0円
一次・二次の合計 = 472.5万円 + 0円 = 472.5万円

三パターンの合計税額比較

同じ遺産総額でも、一次相続の分割割合によって一次・二次を通算した税負担は大きく変わります。

母の取得割合 一次・二次の合計納税額
パターンA
2分の1
395万円
パターンB
全額
770万円
パターンC
4分の1
472.5万円

このケースでは、配偶者に全額を寄せるパターンBが合計で最も高くなり、法定相続分どおりのパターンAが最も低くなりました。母の固有財産の有無や財産構成によって最適割合は変わるため、按分は必ず具体的な数値で試算することが重要です。

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分割割合を決めるときの実務上の留意点

配偶者の固有財産と将来の生活資金

シミュレーションは税額だけを比較したものですが、実際の分割では配偶者の生活資金の確保が最優先です。配偶者が既に十分な固有財産を持つ場合、一次相続でさらに財産を寄せると二次相続の課税が加速します。逆に固有財産が乏しい場合は、税負担よりも配偶者の生活の安定を優先して取得割合を高める判断も合理的です。

小規模宅地等の特例と自宅の承継

自宅の敷地を誰が相続するかも分割割合と密接に関わります。特定居住用宅地等に該当すれば、330平方メートルまでの部分について評価額を80%減額できます[No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)]。一次相続で配偶者が自宅を取得すれば要件を満たしやすい一方、二次相続で同居の子が承継できるよう一次相続の段階で自宅を子に取得させる設計も検討に値します。

遺言と遺産分割協議による割合の確定

分割割合を確実に実現するには、遺言または遺産分割協議による合意が必要です。遺言があっても、相続人全員の合意があれば遺言と異なる内容で分割することもできます。分割協議・遺言の実務については、当法人の関連記事もあわせてご覧ください。

配偶者の相続税1億6000万円控除と二次相続の注意点

遺言書と違う遺産分割はできる?相続人全員の合意で円満解決へ

まとめ

一次相続の遺産分割割合は、配偶者の税額軽減を使って目先の税額を抑えるだけでなく、配偶者の税額軽減が使えず基礎控除も縮小する二次相続まで見据えて決めることが重要です。本記事のシミュレーションでは、配偶者に全額を寄せる方法が一次・二次の合計で最も高い税負担となり、法定相続分どおりの配分が最も軽くなりました。ただし最適な割合は配偶者の固有財産、自宅の承継、小規模宅地等の特例の適用可否によって変わります。分割協議や遺言の前に、具体的な数値による通算試算を行うことをおすすめします。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断については税理士等の専門家にご相談ください。

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参考文献

二次相続を見据えた遺産分割割合に関するよくある質問まとめ

Q. 一次相続で配偶者に全額を相続させると損をしますか。

A. 一次相続の税額は配偶者の税額軽減でゼロにできますが、その財産は二次相続で子が相続する際に配偶者の税額軽減が使えず、基礎控除も縮小するため、一次・二次を通算すると税負担が重くなる場合があります。本記事の試算では全額を配偶者に寄せる方法が合計で最も高くなりました。

Q. 配偶者の税額軽減はいくらまで非課税になりますか。

A. 配偶者が取得した財産のうち、1億6000万円と配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。適用には遺産分割が確定していることなどの要件があります。

Q. 二次相続で税負担が増えるのはなぜですか。

A. 二次相続では配偶者の税額軽減が使えないこと、法定相続人が一人減り基礎控除が縮小すること、相続税が超過累進課税で一人あたりの取得額が大きいほど高い税率が適用されることの三点により、税負担が増えやすくなります。

Q. 一次相続の最適な分割割合はどのように決めればよいですか。

A. 配偶者の固有財産の有無、自宅など小規模宅地等の特例の適用可否、財産構成によって最適割合は変わります。一次相続と二次相続を合計した税額を具体的な数値で試算し、配偶者の生活資金の確保とあわせて判断することが重要です。

Q. 小規模宅地等の特例は分割割合とどう関係しますか。

A. 特定居住用宅地等に該当すれば330平方メートルまでの部分について評価額を80%減額できます。自宅を誰が取得するかで特例の適用可否が変わるため、分割割合を決める際は自宅の承継者も含めて検討する必要があります。

Q. 遺言と異なる割合で分割することはできますか。

A. 遺言がある場合でも、相続人全員の合意があれば遺言と異なる内容で遺産分割を行うことができます。二次相続まで見据えた割合に調整したい場合は、遺産分割協議での合意形成が有効です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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