親や祖父母からマイホームの購入資金を援助してもらうとき、まとまった金額であれば通常は贈与税がかかります。しかし、一定の要件を満たせば、住宅取得等資金の贈与について贈与税が非課税になる特例が用意されています。この記事では、住宅取得等資金の贈与の非課税について、非課税限度額・要件・適用期限という制度の核となる部分を、国税庁の一次情報にもとづいて整理します。2026年(令和8年)時点で使えるのか、限度額はいくらなのか、誰がどんな条件で使えるのかを、これから住宅資金を援助する親世代・援助を受ける子世代の双方に向けてやさしく解説します。
住宅取得等資金の贈与の非課税制度の概要
この特例は、正式には直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税といいます。父母や祖父母など直系尊属(親や祖父母などの直系の目上の親族)からの贈与により、自分が住むための住宅用家屋の新築・取得・増改築等の対価に充てるお金を受け取り、一定の要件を満たしたときに、一定額まで贈与税がかからないという制度です。対象となる資金の使いみちは、住宅の新築・取得・増改築等の3つの形態に限られます[国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税]。
贈与税には毎年110万円までの基礎控除がありますが、住宅資金は数百万円から1,000万円規模になることも珍しくありません。この特例を使うことで、通常の基礎控除だけでは課税されてしまう大きな金額についても、非課税で援助を受けられる可能性があります。まずは、この特例が2026年時点で使えるのか、期限から確認していきます。
適用期限と2026年時点での利用可否
結論からお伝えすると、この特例は令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に贈与を受ける場合が対象です。西暦でいうと2024年1月1日から2026年12月31日までであり、2026年(令和8年)中の贈与であれば現行の特例を利用できます[国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税]。
この特例は過去に何度も期限が延長されてきた経緯があります。期限が近づいてから、その時点で延長されているか・限度額が変わっていないかを国税庁のページで最新の内容を確認することが大切です。金額や期限は改正で変わる可能性があるため、実際に贈与を行う前に必ず現行の内容をご確認ください。次に、この非課税制度の中心となる限度額を見ていきます。
非課税限度額(省エネ等住宅と一般住宅の違い)
非課税となる金額は、贈与を受けた人ごとに、住宅の性能によって次の2区分に分かれます。省エネ性能などの基準を満たす省エネ等住宅の場合は1,000万円まで、それ以外の一般住宅の場合は500万円までが非課税限度額です[国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税]。同じ援助でも、住宅の性能によって非課税で受け取れる上限が2倍変わることになります。
| 省エネ等住宅 | 一般住宅 |
|---|---|
| 1,000万円まで非課税 | 500万円まで非課税 |
この限度額は「贈与を受けた人ごと」の枠です。夫婦がそれぞれ自分の親から援助を受ける場合、夫と妻がそれぞれこの枠を使える点が実務上のポイントになります。次に、どのような住宅が省エネ等住宅にあたるのかを確認します。
省エネ等住宅の基準
省エネ等住宅とは、省エネルギー性・耐震性・バリアフリー性のいずれかの基準を満たすことを、住宅性能証明書など一定の書類で証明した住宅をいいます。新築をした住宅用家屋の場合、次のいずれかに当てはまることが基準です[国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税]。
- 断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上であること(省エネルギー性)
- 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上、または免震建築物であること(耐震性)
- 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること(バリアフリー性)
これらの基準を満たしていることは、住宅性能証明書などの書類を贈与税の申告書に添付して証明する必要があります。1,000万円の非課税枠を使う予定であれば、住宅の性能が基準を満たすか、証明書を取得できるかを事前に確認しておくと安心です。続いて、受け取る側(受贈者)が満たすべき要件を整理します。
受贈者の要件(年齢・所得・床面積・居住・申告)
この特例は、資金を受け取る人(受贈者)についても複数の要件が定められています。主な要件は次のとおりです。1つでも欠けると特例を使えないため、事前の確認が欠かせません[国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税]。
| 贈与者との関係 | 贈与者の直系卑属(子・孫など)であること |
|---|---|
| 年齢 | 贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であること |
| 合計所得金額 | 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること(床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は1,000万円以下) |
| 床面積要件 | 住宅の床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下で、床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であること |
| 取得の要件 | 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて新築等をすること |
| 居住の要件 | 翌年3月15日までにその家屋に居住する、または同日後遅滞なく居住することが確実と見込まれること |
特に注意したいのが、合計所得金額の上限と、翌年3月15日までという期限です。受贈者の合計所得金額が2,000万円を超えると、この特例は使えません。また、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の比較的小さな住宅では、所得の上限が1,000万円以下に下がる点にも気をつけてください。次に、援助を受けたあとの手続きである申告要件を見ていきます。
申告要件と期限
この特例は、要件を満たしているだけでは自動的に適用されません。非課税の特例を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に、戸籍の謄本や新築・取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります[国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税]。
注意したいのは、非課税枠の適用によって納める贈与税が0円になる場合でも、期限内の申告が必要だという点です。申告を忘れると特例そのものが受けられず、多額の贈与税がかかってしまうおそれがあります。取得・居住・申告のいずれも「翌年3月15日」という期限が関係するため、贈与を受けるタイミングと入居・申告のスケジュールをあわせて計画することが大切です。
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暦年課税・相続時精算課税の基礎控除との併用
住宅取得等資金の非課税は、贈与税の課税価格から非課税限度額を差し引く仕組みです。そのうえで、非課税限度額を超えた残りの金額については、通常の贈与税の計算に進みます。このとき、暦年課税の基礎控除110万円または相続時精算課税の控除を、あわせて適用することができます[国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税]。つまり、非課税枠を使い切っても、そこに110万円の基礎控除を上乗せできるということです。
たとえば省エネ等住宅で1,000万円の援助を受け、暦年課税を選ぶ場合、非課税限度額と基礎控除を合わせた金額までは贈与税がかからない計算になります。
暦年課税を選ぶか相続時精算課税を選ぶかは、その後の贈与や将来の相続まで含めて有利不利が変わります。どちらを選ぶかは慎重に検討する必要があるため、暦年課税の考え方については、あわせて暦年贈与は2026年もまだ使える?改正後の注意点と早期開始のメリットもご確認ください。
相続時精算課税との組み合わせ
この住宅資金の特例には、相続時精算課税とあわせて使える点でもう一つの利点があります。相続時精算課税は通常、贈与者が贈与の年の1月1日において60歳以上であることが要件ですが、住宅取得等資金の贈与についての特例では、令和8年12月31日までの贈与であれば、贈与者が60歳未満であっても相続時精算課税を選択できます[国税庁 No.4503 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例]。
これにより、比較的若い親からの住宅資金援助でも相続時精算課税を組み合わせられます。相続時精算課税は将来の相続時に贈与財産を持ち戻して精算する制度のため、目先の負担だけでなく相続全体を見て選ぶ必要があります。制度の基本的な考え方は生前贈与で孫はいくらまで非課税?加算対象外のメリットもあわせてご覧ください。
利用時の注意点
制度の核を押さえたうえで、実務で見落としやすい点を整理します。まず、この特例は住宅の新築・取得・増改築等の対価に充てる資金が対象であり、資金の使いみちが限られています。すでに組んでいる住宅ローンの返済に充てる目的では使えないなど、目的外の使い方には注意が必要です。
また、教育資金や結婚・子育て資金など、住宅以外の目的には別の非課税制度が用意されています。目的に応じて制度を使い分けることが大切です。教育資金の一括贈与については教育資金贈与1500万円非課税を2026年適用期限まで解説で解説しています。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
まとめ
住宅取得等資金の贈与の非課税は、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に、父母や祖父母などから住宅の新築・取得・増改築等の資金を受け取った場合に、省エネ等住宅で1,000万円まで、一般住宅で500万円まで贈与税が非課税になる制度です。2026年(令和8年)中の贈与であれば現行の特例を利用できます。
利用には、受贈者が18歳以上・合計所得金額2,000万円以下であることや、床面積要件、翌年3月15日までの取得・居住、期限内の申告といった複数の要件があります。さらに暦年課税の基礎控除110万円や相続時精算課税と組み合わせることもできます。限度額や期限は改正で変わる可能性があるため、実行前に現行の内容を確認し、有利な選び方については専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
参考文献
具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
住宅取得等資金の贈与の非課税に関するよくある質問
Q. 住宅取得等資金の贈与の非課税は2026年でも使えますか。
A. 令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に贈与を受ける場合が対象で、2026年(令和8年)中の贈与であれば現行の特例を利用できます。期限や限度額は改正で変わる可能性があるため、実行前に国税庁の最新情報をご確認ください。
Q. 非課税限度額はいくらですか。
A. 贈与を受けた人ごとに、省エネ等住宅の場合は1,000万円まで、それ以外の一般住宅の場合は500万円までが非課税限度額です。
Q. 省エネ等住宅とはどのような住宅ですか。
A. 断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上、耐震等級2以上または免震建築物、高齢者等配慮対策等級3以上のいずれかを満たし、住宅性能証明書など一定の書類で証明した住宅をいいます。
Q. 資金を受け取る側にはどんな要件がありますか。
A. 贈与を受けた年の1月1日に18歳以上であること、合計所得金額が2,000万円以下(床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は1,000万円以下)であること、床面積40平方メートル以上240平方メートル以下であること、翌年3月15日までに取得・居住することなどが必要です。
Q. 贈与税が0円でも申告は必要ですか。
A. 必要です。非課税の特例を受けるには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に一定の書類を添付して提出する必要があります。
Q. 暦年課税の基礎控除110万円と併用できますか。
A. 併用できます。非課税限度額を超えた残りの金額については、暦年課税の基礎控除110万円または相続時精算課税の控除をあわせて適用することができます。