相続した土地の相続税評価額は、実際の売買価格ではなく、国税庁が定めた方法にしたがって計算します。方法は路線価方式と倍率方式の2つがあり、その土地がどの地域にあるかで、どちらを使うかが決まります。まずはこの使い分けを押さえることが、正しい評価額にたどり着く第一歩になります。
「うちの土地はいくらで申告すればよいのか」「思っていたより高い金額が出てしまわないか」と不安に感じる方は少なくありません。実際の評価では、土地の形や道路との接し方に応じた補正、人に貸している土地かどうか、亡くなった方が住まいや事業に使っていたかどうかによって、評価額が大きく変わります。
この記事では、相続税の土地の評価の全体像を、評価方式の使い分け、路線価方式の計算、倍率方式の計算、評価額が下がる主なケースの順に整理します。個別の論点は関連コラムで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
土地の相続税評価の基本
相続税を計算するときの土地の価額は、相続が起きた時点の価額を、国税庁が定めた財産評価の方法で求めます。売りに出したときの価格や、不動産会社の査定額をそのまま使うわけではありません。同じ土地でも、どの方式で評価するかによって計算の道すじが変わります。
地目ごとの評価という原則
土地は、原則として宅地、田、畑、山林などの地目ごとに評価します。国税庁 No.4602 土地家屋の評価ここでいう地目は、登記簿に書かれた地目ではなく、相続が起きた時点で実際にどのように使われていたかで判断します。たとえば、登記簿上は畑でも、実際に建物が建っていて宅地として使われていれば、宅地として評価することになります。
建物については、固定資産税評価額に1.0を乗じた金額で評価します。つまり、建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同じ金額になります。土地と建物では計算の考え方がまったく違うため、分けて考えることが大切です。
路線価方式と倍率方式の使い分け
土地の評価方式は、納税者が好きな方を選べるものではありません。市街地的な形態を形成する地域にある宅地は路線価方式、それ以外の宅地は倍率方式と決められています。国税庁 第2節 宅地及び宅地の上に存する権利そのため、まずは対象の土地に路線価が定められているかどうかを調べることから始めます。
| 路線価方式 | 倍率方式 |
|---|---|
| 路線価が定められている地域の土地に使います | 路線価が定められていない地域の土地に使います |
| 路線価に補正率を乗じ、さらに地積を乗じて計算します | 固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します |
| 市街地的な形態を形成する地域が中心です | それ以外の地域が中心です |
| 土地の形や道路との接し方が評価額に反映されます | 倍率表の倍率で一律に計算します |
路線価が定められているかどうかは、国税庁ホームページの路線価図と評価倍率表で確認できます。調べ方の具体的な手順は、次のコラムで画面の流れに沿って解説しています。
関連コラム相続した不動産の路線価の調べ方|国税庁サイトでの評価手順▸
路線価方式による土地の評価額の計算
路線価方式は、その土地が面している道路に付けられた路線価をもとに評価する方法です。路線価とは、その道路に面している標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額を、千円単位で表したものをいいます。国税庁 No.4604 路線価方式による宅地の評価
路線価方式の基本の計算式
路線価方式の計算は、路線価に土地の形状に応じた補正率を乗じ、そこに地積を乗じるという流れです。地積とは、その土地の面積のことです。まずは補正が不要な、道路に面した整った形の土地を例に見てみます。
路線価は千円単位で表示されるため、路線価図に300と記載されていれば、1平方メートル当たり30万円という意味になります。この単位を読み違えると評価額が1000倍ずれてしまうため、最初に確認しておきたいポイントです。調整率表や路線価図は、国税庁ホームページの路線価図と評価倍率表から閲覧できます。
奥行価格補正率による調整
同じ路線価の道路に面していても、奥行きが極端に長い土地や短い土地は使いにくくなります。そこで、一方のみが路線に接する宅地は、路線価にその宅地の奥行距離に応じた奥行価格補正率を乗じて求めた価額に、地積を乗じて評価します。奥行価格補正率は、路線価図に示された地区の区分と奥行距離の組み合わせで決まります。
たとえば、普通住宅地区にある土地で奥行価格補正率が0.97と判定された場合、計算は次のように2段階になります。
補正率が0.03違うだけでも、この例では評価額が180万円変わります。地積が大きい土地ほど、補正率のわずかな差が金額に大きく響きます。
不整形地や間口狭小などの画地補正
土地の形や道路との接し方を評価額に反映させる補正を、まとめて画地補正と呼びます。奥行価格補正はその一つで、ほかにも次のような補正が定められています。実際の評価では、これらを組み合わせて計算していきます。
| 奥行価格補正率 | 奥行距離が標準より長い、または短い宅地の価額を調整します |
|---|---|
| 不整形地補正率 | 三角形やL字型など、形がいびつな宅地の価額を調整します |
| 間口狭小補正率 | 道路に接している間口が狭い宅地の価額を調整します |
| 奥行長大補正率 | 間口に対して奥行が長い、細長い宅地の価額を調整します |
| 規模格差補正率 | 地積規模の大きな宅地に該当する場合の価額を調整します |
このうち規模格差補正率は、三大都市圏では500平方メートル以上、それ以外の地域では1000平方メートル以上の地積の宅地について、一定の要件を満たす場合に適用されます。国税庁 No.4609 地積規模の大きな宅地の評価広い土地を相続した場合は、この補正の対象になるかどうかを必ず確認したいところです。
複数の道路に面する土地の加算
角地のように2つ以上の道路に接している土地は、使い勝手がよいぶん評価額が上がります。正面路線価に奥行価格補正率を乗じた金額に、側方路線や裏面路線について計算した金額を加算し、その合計に地積を乗じて評価します。加算に使うのは、側方路線影響加算率や二方路線影響加算率と呼ばれる率です。
どの道路を正面路線とするかは、原則として、その宅地が接する路線価に奥行価格補正率を乗じて計算した金額が高い方の路線になります。金額が同じ場合は、その宅地に接する距離が長い方の路線を正面路線とします。単純に路線価が高い方を選ぶわけではない点に注意が必要です。
倍率方式による土地の評価額の計算
路線価が定められていない地域の土地は、倍率方式で評価します。路線価方式に比べて計算はシンプルですが、そのぶん、もとになる固定資産税評価額を正確に確認することが重要になります。
倍率方式の基本の計算式
倍率方式は、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算した金額で評価する方法です。国税庁 No.4606 倍率方式による土地の評価路線価方式のような画地補正は行いません。固定資産税評価額そのものに、土地の形状などがすでに織り込まれているためです。
倍率は、地域と地目ごとに評価倍率表で定められています。同じ市区町村でも地区や地目によって倍率が異なるため、自分で数値を推測せず、必ず対象の土地に対応する倍率表で確認してください。
固定資産税評価額と評価倍率の確認先
固定資産税評価額は、毎年春ごろに送られてくる固定資産税の課税明細書に記載されています。手元に見当たらない場合は、都税事務所や市区町村の役所で確認することができます。相続税の申告では、亡くなった年の固定資産税評価額を使う点に注意してください。
評価倍率は、国税庁ホームページの財産評価基準書にある評価倍率表で確認します。倍率表には、宅地、田、畑、山林といった地目ごとに倍率が記載されています。同じ市区町村のなかでも地区ごとに倍率が違うことがあるため、住所を正確に突き合わせることが欠かせません。
土地の評価額が下がる主なケース
土地の評価額は、その土地に他人の権利が付いていたり、使い方に制限があったりする場合に下がります。ここでは、相続の実務でよく登場する減額のパターンを取り上げます。該当するかどうかで納税額が大きく変わるため、一つずつ確認していきましょう。
貸宅地の評価
貸宅地とは、借地権など宅地の上に存する権利の目的となっている宅地をいいます。国税庁 No.4613 貸宅地の評価他人に土地を貸して、その人が建物を建てている場合の土地がこれにあたります。地主は自由に土地を使えないため、自用地としての価額から借地権割合に相当する金額を差し引いて評価します。
借地権割合が60パーセントの地域にある、自用地としての価額が6000万円の土地を例にすると、計算は次のようになります。
借地権割合は財産評価基準書で確認します。借地権の取引慣行がないと認められる地域では、20パーセントとして計算します。貸している側と借りている側で評価の考え方が対になっているため、あわせて理解しておくと整理しやすくなります。
関連コラム借地権の相続税評価|借地権割合と評価方法をわかりやすく解説▸
貸家建付地の評価
貸家建付地とは、貸家の敷地の用に供されている宅地をいいます。国税庁 No.4614 貸家建付地の評価その宅地を所有する方が建てたアパートやビルを他人に貸している場合の、その敷地がこれにあたります。借家人の権利が及ぶぶんだけ、自用地としての価額から一定の金額が差し引かれます。
借地権割合60パーセント、借家権割合30パーセントの地域にあるアパートの敷地で、全室が賃貸されている場合を例にします。
賃貸割合は、各独立部分の賃貸状況にもとづいて計算する割合です。相続が起きた時点でたまたま空室だった部屋も、継続的に賃貸されてきたことや、退去後すぐに新しい入居者の募集が行われていることなど一定の事実関係が認められれば、賃貸されていたものとして取り扱って差し支えないとされています。空室の期間が1か月程度など一時的なものかどうかが、判断の目安になります。
関連コラム貸家建付地と底地の違い|相続税評価の計算方法と借地権割合・借家権割合▸
小規模宅地等の特例
亡くなった方が住まいや事業に使っていた宅地は、一定の要件を満たすと、限度面積までの部分について評価額を大きく減額できます。これが小規模宅地等の特例です。国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)減額の幅が大きいため、相続税がかかるかどうかを左右することも珍しくありません。
| 特定居住用宅地等 | 限度面積330平方メートル、減額割合80パーセント |
|---|---|
| 特定事業用宅地等 | 限度面積400平方メートル、減額割合80パーセント |
| 特定同族会社 事業用宅地等 |
限度面積400平方メートル、減額割合80パーセント |
| 貸付事業用宅地等 | 限度面積200平方メートル、減額割合50パーセント |
それぞれの区分を適用するには、相続税の申告期限まで事業を続けることや、宅地を持ち続けることなどの要件を満たす必要があります。また、区分の異なる宅地を組み合わせて適用する場合は、面積の按分計算が必要になります。要件の判定は細かいため、早めの確認をおすすめします。
関連コラム小規模宅地の特例とは|4区分の限度面積と80%減額を徹底解説▸
利用価値が著しく低下している宅地
周囲の土地に比べて著しく高低差がある宅地、地盤に甚だしい凹凸のある宅地、震動の甚だしい宅地などは、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額に10パーセントを乗じた金額を控除して評価できます。国税庁 No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価騒音、日照阻害、臭気などにより取引金額が影響を受けると認められるものも対象になります。
ただし、路線価や固定資産税評価額の段階ですでにその低下が考慮されている場合は、重ねて適用することはできません。現地を見ないと判断できない要素のため、写真や測量図などで状況を記録しておくと、後の説明がしやすくなります。
土地評価で専門家の確認が有効な理由
土地の相続税評価は、路線価や倍率を当てはめるだけで終わるものではありません。どの補正を、どの範囲に、どの数値で適用するかという見極めによって、最終的な評価額が数百万円単位で変わることがあります。ここが土地評価のもっとも難しい部分です。
補正の見極めで評価額が変わる場面
たとえば、不整形地補正を適用するには、その土地の形状をどう捉えるかという判断が入ります。間口の測り方、奥行距離の取り方、想定整形地の置き方などによって、補正率が変わることがあります。同じ土地でも、評価する人によって結果に差が出やすいのはこのためです。
また、複数の道路に接している土地では、どれを正面路線とするかの判定を誤ると、評価額全体がずれてしまいます。減額要素を見落とすと本来より高い評価額で申告することになり、反対に適用要件を満たさない補正を使うと、後の税務調査で否認されるおそれがあります。どちらに転んでも不利益が生じます。
評価の前に用意したい資料
土地の評価を進めるにあたっては、あらかじめ次の資料をそろえておくと作業がスムーズです。手元にないものは、市区町村の役所や法務局で取得できます。
- 固定資産税の課税明細書、または固定資産評価証明書
- 登記事項証明書と公図
- 地積測量図、建物図面
- 賃貸借契約書(土地や建物を貸している場合)
- 現地の写真、道路との高低差がわかる資料
これらの資料がそろっていると、机上の数字だけでは見えない減額要素にも気づきやすくなります。とくに公図や測量図は、土地の形状を判断するうえで欠かせません。
まとめ
相続税の土地の評価は、まず路線価方式と倍率方式のどちらを使うかを確認するところから始まります。路線価が定められている地域なら路線価に画地補正率と地積を乗じて計算し、定められていない地域なら固定資産税評価額に評価倍率を乗じて計算します。この使い分けを間違えると、その先の計算はすべてやり直しになります。
そのうえで、貸宅地や貸家建付地に該当しないか、小規模宅地等の特例が使えないか、利用価値が著しく低下している宅地にあたらないかを一つずつ確認していきます。減額要素は自動的に反映されるものではなく、自分で見つけて申告に反映させる必要があります。
土地の評価は、補正の見極めひとつで評価額が大きく動く分野です。適正な評価額で申告し、余計な税負担も後日の指摘も避けるために、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
お問い合わせはこちら ▸参考文献
- 国税庁 No.4602 土地家屋の評価
- 国税庁 第2節 宅地及び宅地の上に存する権利
- 国税庁 No.4604 路線価方式による宅地の評価
- 国税庁 No.4609 地積規模の大きな宅地の評価
- 国税庁 No.4606 倍率方式による土地の評価
- 国税庁 No.4613 貸宅地の評価
- 国税庁 No.4614 貸家建付地の評価
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 国税庁 No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価
土地の相続税評価のよくある質問まとめ
Q.相続税の土地の評価額は実際の売買価格と同じですか。
A.同じではありません。相続税の土地の評価額は、国税庁が定めた財産評価の方法にしたがい、路線価方式または倍率方式で計算します。不動産会社の査定額や実際の売買価格をそのまま使うことはできません。
Q.路線価方式と倍率方式はどちらを使うか選べますか。
A.選ぶことはできません。市街地的な形態を形成する地域にある宅地は路線価方式、それ以外の宅地は倍率方式と定められています。対象の土地に路線価が定められているかどうかで、使う方式が決まります。
Q.路線価図に書かれている数字はどのように読みますか。
A.路線価は、その道路に面している標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額を千円単位で表したものです。路線価図に300と記載されていれば、1平方メートル当たり30万円を意味します。路線価図と評価倍率表は国税庁ホームページで閲覧できます。
Q.土地の形がいびつな場合は評価額が下がりますか。
A.路線価方式で評価する土地であれば、不整形地補正率などの画地補正によって評価額が下がる場合があります。ほかにも奥行価格補正率、間口狭小補正率、奥行長大補正率などが定められており、土地の形状や道路との接し方に応じて適用します。
Q.人に貸している土地は評価額が下がりますか。
A.下がります。借地権の目的となっている宅地は貸宅地として、自用地としての価額から借地権割合に相当する金額を差し引いて評価します。自分が建てたアパートなどを貸している土地は貸家建付地として、借地権割合、借家権割合、賃貸割合を乗じた金額を差し引いて評価します。
Q.小規模宅地等の特例ではどのくらい評価額が下がりますか。
A.特定居住用宅地等は限度面積330平方メートルまで80パーセント、特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等は400平方メートルまで80パーセント、貸付事業用宅地等は200平方メートルまで50パーセントの減額となります。適用には申告期限までの継続要件などを満たす必要があります。