税理士法人プライムパートナーズ

生命保険の受取人を子供にするデメリット|税金と手続きの注意点

2026-08-29
目次

生命保険の死亡保険金の受取人を、配偶者にするか子供にするかで迷われる方はとても多くいらっしゃいます。「子供を受取人にすると相続税が有利になる」という説明を目にする一方で、「何かデメリットもあるのではないか」と不安に感じる方もいらっしゃるはずです。実際、生命保険の受取人を子供にすることには、税金面でも手続き面でも見落としやすい注意点があります。

本記事では、税理士法人プライムパートナーズの実務の視点から、受取人を子供にした場合の課税関係、配偶者を受取人にする場合との違い、未成年のお子様が受取人になるときの実務、二次相続まで見据えた判断基準までを整理してご説明します。ご家庭の状況によって答えが変わる論点ですので、まずは「どこで差が出るのか」を押さえていただければと思います。

生命保険の受取人を子供にした場合の課税関係

最初に押さえていただきたいのは、死亡保険金にかかる税金は、受取人が誰かだけでは決まらないということです。保険料を実際に負担していた人、被保険者、保険金受取人という3者の組み合わせによって、相続税・所得税・贈与税のいずれかに分かれます。ここを取り違えると、想定していた税負担と実際の負担が大きくずれてしまいます。

契約形態による税金の違い

国税庁も、死亡保険金の課税関係を被保険者・保険料の負担者・保険金受取人の3者の関係で整理しています国税庁 No.1750 死亡保険金を受け取ったとき。父親が契約者として保険料を払い、父親自身を被保険者とし、子供を受取人にしている場合が最も一般的で、この形は相続税の対象になります。

契約形態(保険料の負担者・
被保険者・受取人)
かかる税金
父が保険料を負担・父が被保険者・子が受取人 相続税
子が保険料を負担・父が被保険者・子が受取人 所得税(一時所得)
母が保険料を負担・父が被保険者・子が受取人 贈与税

実務で多いのは、保険料の引落口座が配偶者名義になっていて、実質的な負担者が誰なのか曖昧になっているケースです。受取人だけを子供に変更しても、保険料の負担者が別の方であれば贈与税の対象になり得ますので、変更の前に契約内容を通しで確認しておく必要があります。

相続税がかかる場合の非課税枠

相続税の対象になる死亡保険金には、受取人が相続人であることを前提に非課税限度額が設けられています。その金額は500万円に法定相続人の数を掛けた額で計算し、すべての相続人が受け取った保険金の合計額がこの限度額を超えたときに、超える部分が相続税の課税対象になります国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

500万円 × 法定相続人3人 = 非課税限度額1500万円
死亡保険金2000万円 − 非課税限度額1500万円 = 相続税の課税対象500万円

ここで見落としやすいのが、相続人以外の人が受け取った死亡保険金にはこの非課税の適用がないという点です。お子様が既に亡くなっていてお孫様を受取人にしている場合や、相続放棄をしたお子様が受け取る場合には、非課税枠を使えず保険金の全額が課税対象になります。

関連コラム生命保険の相続税非課税枠500万円の仕組みと注意点

所得税・贈与税がかかる場合の負担

お子様がご自身で保険料を負担していた場合、受け取った死亡保険金は一時所得として所得税の対象になります。一時所得の金額は、受け取った金額から支払った保険料を差し引き、さらに特別控除額として最高50万円を差し引いて計算し、その2分の1が他の所得と合算されます国税庁 No.1490 一時所得

保険金2000万円 − 払込保険料1200万円 − 特別控除50万円 = 一時所得750万円
一時所得750万円 ÷ 2 = 総所得金額に算入される375万円

一方、保険料を負担していない人が被保険者の死亡により生命保険金を受け取った場合には、保険料を負担した人からその生命保険金の贈与があったものとして取り扱われます国税庁 No.4417 贈与税の対象になる生命保険金。母親が保険料を払い、父親を被保険者、子供を受取人としている契約がこれに当たり、3つの課税パターンの中で最も税負担が重くなりやすい形です。

受取人を子供にする主なデメリット

受取人を子供にすることは、非課税枠を有効に使いやすいという意味では合理的な選択です。ただし、それは「一次相続の税額だけを見た場合」の話です。実務では、次のような点が後から問題になることがあります。

配偶者の生活資金が
不足しやすい
まとまった保険金が子供に渡り、残された配偶者の手元資金が薄くなる
配偶者の税額軽減と
重複しやすい
配偶者が受け取る場合は税額軽減で結果的に税負担がゼロになることが多く、有利不利の比較が単純ではない
孫が受取人だと
負担が増える
非課税枠が使えないうえ、相続税額の2割加算の対象になる場合がある
子供の間で
不公平感が生じる
死亡保険金は受取人に指定された方が受け取るため、他のお子様との間で不満が残りやすい

配偶者の税額軽減が使えない点

配偶者が財産を取得した場合には、1億6千万円と配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額まで相続税がかからないという大きな軽減制度があります国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減。この制度は配偶者が実際に取得した財産を基に計算されるため、保険金を子供が受け取れば、その保険金部分に軽減は及びません。

ここが判断の難しいところです。配偶者が受け取れば軽減で税額はほぼ生じない一方、非課税枠500万円分の効果は税額に表れません。子供が受け取れば非課税枠は活きますが、超える部分には子供の相続税がそのままかかります。どちらが有利かは、遺産全体の規模と配偶者が取得する財産の額によって逆転しますので、一律に「子供受取が正解」とは言い切れません。

孫を受取人にする場合の2割加算

相続や遺贈によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族および配偶者以外である場合には、その人の相続税額に2割に相当する金額が加算されます国税庁 No.4157 相続税額の2割加算。お子様は一親等の血族に当たるため加算の対象になりませんが、お孫様を受取人にすると原則として加算の対象になります。

お孫様が代襲相続人になっている場合は加算の対象から外れますが、代襲相続人ではないお孫様を養子にしているケースでは加算されます。相続税対策として孫を受取人に指定したところ、非課税枠が使えないうえに2割加算まで重なり、かえって負担が増えたという例は実務でも見受けられます。

遺産分割との関係で生じる不公平感

死亡保険金は、被相続人の財産をそのまま引き継ぐものではなく、相続によって取得したものとみなされて相続税の課税対象になる財産です。そのため、預貯金や不動産のように相続人全員で分け方を話し合う財産とは性質が異なり、指定された受取人がそのまま受け取ることになります。

この性質は、渡したい方へ確実に財産を渡せるという長所である一方、他のお子様から見れば「自分だけ受け取れていない」と感じる原因にもなります。実務では、保険金の額が遺産全体に対して大きい場合ほど、この不公平感が話し合いをこじらせる要因になりやすいと感じています。受取人の指定と併せて、他のお子様が取得する財産のバランスまで含めて設計することが大切です。

関連コラムみなし相続財産とは|課税される財産一覧と非課税枠の計算

未成年の子供を受取人にする場合の実務

お子様がまだ小さいご家庭では、受取人を未成年のお子様にしているケースがあります。税金の取り扱いだけでなく、実際に保険金を受け取り、その後の相続手続きを進める場面で追加の手間が生じます。

親権者による受け取りと特別代理人

未成年のお子様は単独で法律行為を行えないため、保険金の請求手続きは通常、親権者が法定代理人として行います。問題になりやすいのは、その後の遺産分割協議です。親権者自身も相続人である場合、親権者とお子様の利益が対立する関係になります。

このような場合、親権者は子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません裁判所 特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)。同じ親権に服するお子様が複数いて、その間で利益が対立する場合も同様です。選任には申立てから一定の期間を要しますので、相続税の申告期限に間に合わせるには早めの着手が欠かせません。

未成年者控除の取り扱い

相続人が未成年者である場合には、相続税額から未成年者控除を差し引くことができます。控除が受けられるのは、財産を取得したときに18歳未満で、かつ法定相続人である方などの要件を満たす場合で、控除額は18歳になるまでの年数1年につき10万円で計算します国税庁 No.4164 未成年者の税額控除。年数の計算で1年未満の期間があるときは、切り上げて1年として計算します。

10万円 × 18歳になるまでの年数3年 = 未成年者控除額30万円

控除額が本人の相続税額より大きく引き切れない場合には、その引き切れない部分を扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。ただし控除額の水準としては年10万円ですので、未成年者控除があるから受取人を子供にすれば有利になる、という規模の効果ではありません。判断の主役は、あくまで非課税枠と配偶者の税額軽減の使い方です。

代襲相続と二次相続からみた注意点

受取人の指定は、一度決めると長く据え置かれがちです。しかし、ご家族の状況は年月とともに変わります。とくに「受取人が先に亡くなった場合」と「二次相続まで含めた税負担」は、受取人を子供にする際に必ず確認しておきたい論点です。

受取人である子供が先に亡くなった場合

お子様が被相続人より先に亡くなられていた場合、そのお子様に子(被相続人から見たお孫様)がいれば、その方が代襲相続人となります。相続人の範囲と法定相続分の考え方は、子・直系尊属・兄弟姉妹の順で相続人となる順位に沿って定められています国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分

ただし、相続における代襲の考え方と、保険契約上の受取人の地位は別のものです。受取人が先に亡くなったまま契約を放置していると、実際に誰が保険金を受け取るのかをめぐって手続きが滞ることがあります。お子様が先に亡くなられた場合には、保険会社に受取人変更の手続きを行っておくのが実務上は確実です。

二次相続まで含めた税負担の比較

一次相続で配偶者が多く取得すると、その財産は二次相続で改めて課税されます。相続税の総額は、課税価格の合計額から3000万円と600万円に法定相続人の数を掛けた額の合計である基礎控除額を差し引いた課税遺産総額をもとに計算しますが国税庁 No.4152 相続税の計算、二次相続では法定相続人が1人減るため基礎控除額も非課税枠も縮みます。

一次相続の基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 法定相続人3人 = 4800万円
二次相続の基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 法定相続人2人 = 4200万円

なお、一次相続から10年以内に二次相続が発生した場合には、前回の相続で課された相続税額のうち1年につき10パーセントの割合で逓減した後の金額を今回の相続税額から控除する相次相続控除があります国税庁 No.4168 相次相続控除。二次相続が近い時期に起こる可能性がある場合には、この控除の有無も含めて全体を見る必要があります。

関連コラム二次相続対策で大損?遺産分割で税金が2倍になる前に知るべきこと

受取人を子供にすべき家庭と配偶者にすべき家庭

ここまでの内容を踏まえて、実務でご相談を受けたときに私たちが見ている判断の軸を整理します。ご家庭の財産構成と、配偶者の生活資金の状況が主な分かれ目になります。

子供を受取人にすることが有利になりやすいケース

遺産総額が
基礎控除を大きく超える
配偶者の税額軽減を使っても子供に相続税が生じるため、非課税枠を子供側で使う効果が税額に直結する
配偶者に十分な
生活資金がある
年金や自身の預貯金で生活が成り立ち、保険金を配偶者の手元資金に充てる必要が乏しい
二次相続が
近いと見込まれる
配偶者が取得した財産が短期間で再び課税されるため、一次相続の段階で子供へ移す意味が大きい
子供に納税資金が
必要になる
不動産中心の相続で子供の納税資金が不足しやすく、保険金をその原資に充てたい

配偶者を受取人にすることが有利になりやすいケース

遺産総額が
基礎控除の範囲内
そもそも相続税がかからないため、非課税枠の使い方より配偶者の生活資金の確保を優先すべき
配偶者の生活資金が
不足しやすい
収入源が限られ、当面の生活費や医療費の原資として保険金が欠かせない
子供との関係に
不安がある
受け取った保険金を配偶者の生活のために使ってもらえるとは限らない事情がある
相続人が
配偶者のみ
そもそも比較の余地がなく、配偶者の税額軽減で税負担が生じない可能性が高い

実務では、保険金の全額を一方に寄せるのではなく、複数の契約に分けて配偶者と子供それぞれを受取人にする形で調整することもあります。1つの契約の受取人を複数人にする方法もありますが、その場合は請求手続きが煩雑になりやすい点にご留意ください。

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受取人変更の手続きと見直しの時期

死亡保険金の受取人は、契約者の意思で変更できるのが一般的です。手続きは保険会社所定の請求書に必要事項を記載して提出する流れで、契約者本人が行います。費用がかからないことが多く、思い立ったときに着手しやすい対策です。

受取人を見直したいタイミング

結婚・離婚があったとき 離婚後も元配偶者が受取人のまま残っている契約は少なくない
子供が生まれたとき 受取人が親や兄弟のままになっていないかを確認する
子供が独立したとき 配偶者の生活資金と子供の納税資金のバランスを取り直す
受取人が先に
亡くなったとき
放置すると受取手続きが滞るため、速やかに変更する
保有財産が
大きく変わったとき
不動産の取得や売却で相続税の見込み額が変われば最適解も変わる

あわせて確認していただきたいのが、相続税の申告と納税の期限です。相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています国税庁 No.4205 相続税の申告と納税。未成年のお子様がいらっしゃる場合や、受取人の指定が実態に合っていない場合は、この10か月の中で手続きが立て込みます。生前のうちに整えておくことが、結果としてご家族の負担を軽くします。

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まとめ

生命保険の受取人を子供にすることには、非課税枠を税額に反映させやすいという明確な利点があります。その一方で、配偶者の税額軽減が及ばないこと、配偶者の生活資金が薄くなりやすいこと、お孫様を指定すると非課税枠が使えず2割加算の対象になり得ることなど、押さえておくべきデメリットもあります。

未成年のお子様を受取人にする場合は、遺産分割協議の場面で特別代理人の選任が必要になることがあり、10か月という申告期限の中では時間的な余裕が失われがちです。代襲相続や二次相続まで含めて考えると、「子供受取が常に有利」とも「配偶者受取が安全」とも言い切れません。

判断の軸は、遺産総額が基礎控除をどの程度上回るか、配偶者の生活資金が足りているか、二次相続がどの程度近いか、の3点です。ご家庭ごとに前提が異なり、金額の規模によって結論が逆転する論点ですので、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。契約内容と財産の全体像を並べて確認することで、無理のない受取人の設計が見えてきます。

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参考文献

生命保険の受取人を子供にする場合のよくある質問まとめ

Q.生命保険の受取人を子供にすると相続税は必ず安くなりますか。

A.必ず安くなるとは限りません。500万円に法定相続人の数を掛けた非課税限度額を税額に反映させやすい一方で、配偶者の税額軽減が及ばないため、遺産総額や配偶者が取得する財産の額によっては配偶者を受取人にしたほうが有利になる場合もあります。

Q.受取人を孫にすると相続税はどうなりますか。

A.相続人以外の人が取得した死亡保険金には500万円の非課税枠が適用されません。さらに、被相続人の一親等の血族および配偶者以外の人が財産を取得した場合は相続税額に2割が加算されるため、負担が重くなりやすい形です。

Q.未成年の子供が受取人の場合、手続きはどうなりますか。

A.保険金の請求は親権者が法定代理人として行うのが一般的です。ただし親権者自身も相続人で利益が対立する場合、遺産分割協議には家庭裁判所に特別代理人の選任を請求する必要があります。時間がかかるため早めの着手が必要です。

Q.未成年者控除はどのくらい相続税が減りますか。

A.18歳になるまでの年数1年につき10万円で計算します。1年未満の期間は切り上げます。たとえば15歳9か月であれば3年分の30万円です。控除額が本人の税額より大きい場合は扶養義務者の税額から差し引けます。

Q.保険料を子供が払っていた場合の税金は何になりますか。

A.保険料の負担者と受取人が同じ場合は所得税の対象です。一時金で受け取れば一時所得となり、受取額から払込保険料と特別控除額最高50万円を差し引き、その2分の1が他の所得と合算されます。

Q.受取人はいつでも変更できますか。

A.契約者の意思で変更できるのが一般的で、保険会社所定の手続きを行います。結婚や離婚、子供の独立、受取人が先に亡くなったとき、保有財産が大きく変わったときは見直しの機会です。放置すると請求手続きが滞ることがあります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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