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生命保険の受取人が子供で複数のとき|500万円非課税枠の按分と落とし穴

目次
  1. 受取人が複数の子供の場合の基本的な扱い
  2. 死亡保険金のみなし相続財産としての性質
  3. 受取人を複数指定するときの割合の決め方
  4. 保険料の負担者による税金の種類
  5. 非課税限度額500万円×法定相続人の数の按分
  6. 受取額が同額の場合の計算例
  7. 割合が均等でない場合の計算例
  8. 非課税限度額が受取額を上回る場合
  9. 注意が必要な4つのケース
  10. 相続放棄した子がいる場合
  11. 子以外(孫など)が受取人に含まれる場合
  12. 受取人の一人が先に死亡していた場合
  13. 保険料の負担者が子である場合
  14. 複数受取人の請求手続きと申告の実務
  15. 代表受取人による請求
  16. 相続税申告書への記載
  17. まとめ
  18. 参考文献
  19. 生命保険の複数受取人に関するよくある質問

生命保険の受取人を複数の子供に分けて指定したいけれど、税金はどうなるのか、割合は自由に決められるのか、と気になっている方は多いと思います。結論から申し上げますと、受取人を複数にしても死亡保険金の非課税枠は「1人あたり500万円」ではなく、相続人全体で500万円×法定相続人の数という1つの枠を受け取った金額の割合で分け合う形になります。

この仕組みを知らないまま「子供2人にしたから非課税枠も2倍」と考えてしまうと、相続税の試算が大きくずれてしまいます。ここでは、受取人が複数いる場合の按分計算の考え方から、相続放棄した子がいるケース、受取人の一人が先に亡くなっていたケースまで、国税庁の公式情報に沿って順番にご説明しますね。

受取人が複数の子供の場合の基本的な扱い

まず前提として、死亡保険金は預金や不動産とは性質が異なります。ここを押さえておくと、以降の税金の話がとても分かりやすくなります。

死亡保険金のみなし相続財産としての性質

死亡保険金は、保険契約にもとづいて指定された受取人が保険会社から直接受け取るお金です。民法上の相続財産そのものではないため、原則として遺産分割協議の対象になりません。受取人として指定された子供が、それぞれ自分の権利として保険金を受け取ります。

ただし税金の世界では扱いが違います。被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金には、相続税がかかります。税法上は、相続や遺贈で取得したものとみなす扱いになるためです国税庁 No.4105 相続税がかかる財産。これを「みなし相続財産」と呼びます。遺産分割の対象ではないのに相続税はかかる、という点が最初のつまずきポイントです。

受取人を複数指定するときの割合の決め方

受取人を複数にする場合、多くの生命保険会社では「長男50%・長女50%」のように受取割合をパーセントや割合で指定する方法をとっています。均等でなくてもかまいませんし、「長男70%・長女30%」といった配分も可能です。

割合の指定方法や指定できる単位は保険会社や商品によって異なりますので、契約内容の確認や変更の際は、ご契約の保険会社にご確認ください。なお、受取割合を変えても、後述する非課税限度額の総枠そのものは変わりません。変わるのは、その枠を誰がどれだけ使えるかという配分だけです。

保険料の負担者による税金の種類

「死亡保険金には相続税がかかる」と思われがちですが、実際には誰が保険料を負担していたかで税金の種類が変わります。受取人が複数いる場合も、受取人ごとに個別に判定していきます国税庁 No.1750 死亡保険金を受け取ったとき。

被保険者と保険料の
負担者が同じ人
相続税の課税対象。受取人が相続人なら相続により、相続人以外なら遺贈により取得したものとみなされます。
保険料の負担者と
受取人が同じ人
所得税の課税対象。一時金で受け取った場合は一時所得になります。
被保険者・保険料の
負担者・受取人が
すべて別人
贈与税の課税対象になります。

たとえば父が被保険者で、保険料を父が払っていた契約の保険金を子供2人が受け取れば、2人とも相続税の対象です。一方、同じ契約でも保険料を子供の一人が払っていた場合、その子の分は所得税(一時所得)の対象となり、保険料を払っていない別の子が受け取った分は贈与税の対象になることがあります国税庁 No.4417 贈与税の対象になる生命保険金。受取人が2人いる場合の一時所得の計算では、控除できる保険料はその人が受け取った保険金に対応する部分に限られる点にも注意が必要です国税庁 生命保険金の受取人が2人いる場合の一時所得の金額の計算。

以下では、もっとも多いパターンである「被相続人が保険料を負担していた契約」=相続税の対象となるケースを前提に進めます。

非課税限度額500万円×法定相続人の数の按分

相続人が受け取った死亡保険金には、相続税の非課税枠が設けられています。この非課税限度額は次の式で計算します国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

ここで大事なのは、この枠が受取人1人ごとの枠ではなく、相続人全体で1つの枠だということです。受取人を子供2人に分けても、枠が2倍になるわけではありません。相続人が複数人で死亡保険金を受け取った場合、この非課税限度額を、各人が受け取った保険金の額の割合で按分しますe-Gov法令検索 相続税法第12条。

なお、ここでいう「法定相続人の数」は、民法上の相続人の範囲にもとづいて数えます国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分。実際に保険金を受け取った人の数ではありませんので、混同しないようにしてください。

受取額が同額の場合の計算例

相続人が配偶者・長男・長女の3人で、死亡保険金3,000万円を長男と長女が1,500万円ずつ受け取ったケースで考えてみます。

まず非課税限度額を求めます。法定相続人は配偶者・長男・長女の3人ですので、次のようになります。

500万円 × 3人 = 1,500万円

次に、すべての相続人が受け取った保険金の合計額は、長男1,500万円+長女1,500万円で3,000万円です。非課税限度額1,500万円が合計額3,000万円より小さいため、各人の非課税金額は受取額の割合で按分します。

長男の非課税金額 = 1,500万円 × 1,500万円 ÷ 3,000万円 = 750万円
長男の課税対象額 = 1,500万円 − 750万円 = 750万円

長女も受取額が同じですので、非課税金額750万円・課税対象額750万円となります。2人合わせて1,500万円が非課税、1,500万円が相続税の課税価格に加算されるという結果です。

割合が均等でない場合の計算例

今度は同じ相続人3人・保険金3,000万円で、受取割合を長男70%・長女30%に指定していたケースです。長男の受取額は2,100万円、長女は900万円になります。

非課税限度額は受取割合に関係なく、500万円×3人=1,500万円です。この枠を実際に受け取った金額の割合で分けます。

長男の非課税金額 = 1,500万円 × 2,100万円 ÷ 3,000万円 = 1,050万円
長女の非課税金額 = 1,500万円 × 900万円 ÷ 3,000万円 = 450万円

課税対象額は長男が2,100万円−1,050万円=1,050万円、長女が900万円−450万円=450万円です。受取割合をどう変えても、非課税となる合計額は1,500万円で変わりません。受取割合の設計は相続税の総額を減らす手段にはならない、という点を押さえておいてください。

非課税限度額が受取額を上回る場合

非課税限度額が、相続人が受け取った保険金の合計額以上であれば、受け取った保険金は全額が非課税になります。たとえば法定相続人3人で非課税限度額1,500万円、子供2人が受け取った保険金の合計が1,000万円であれば、按分計算をするまでもなく1,000万円すべてが非課税です。

この場合、余った500万円の枠を他の財産に使うことはできません。生命保険の非課税枠は、あくまで死亡保険金と死亡退職金にそれぞれ用意されているものです。相続税全体では別に基礎控除が用意されていますので、そちらと合わせて試算することになります国税庁 No.4152 相続税の計算。

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注意が必要な4つのケース

受取人が複数いる場合、実務で判断を誤りやすいのが次の4つのケースです。いずれも金額に直接ひびきますので、一つずつ確認していきましょう。

相続放棄した子がいる場合

子供のうち1人が相続放棄をしていても、その子は保険契約にもとづく固有の権利として死亡保険金を受け取ることができます。ところが税金の扱いは、相続放棄をしていない子とまったく違うものになります。整理すると次のとおりです。

非課税枠の適用 相続放棄をした人は相続人に含まれないため、死亡保険金の非課税の適用はありません。受け取った全額が課税対象です。
法定相続人の数 非課税限度額を計算するときの「法定相続人の数」は、相続の放棄がなかったものとして数えます。放棄によって枠が減ることはありません。

具体例で見てみます。相続人が長男と長女の2人(配偶者はすでに死亡)で、長女が相続放棄をしているとします。死亡保険金3,000万円を長男1,500万円・長女1,500万円で受け取りました。

非課税限度額は、放棄がなかったものとして2人で計算します。

500万円 × 2人 = 1,000万円

次に按分の分母となる「すべての相続人が取得した保険金の合計額」は、相続人である長男の1,500万円だけです。長女は相続人ではないため、この合計額には含めません。

長男の非課税金額 = 1,000万円 × 1,500万円 ÷ 1,500万円 = 1,000万円
長男の課税対象額 = 1,500万円 − 1,000万円 = 500万円

一方、長女は非課税の適用がありませんので、受け取った1,500万円がそのまま課税対象になります。相続放棄をすれば税金もかからないと誤解されている方がときどきいらっしゃいますが、死亡保険金については逆に不利になるということです。

子以外(孫など)が受取人に含まれる場合

受取人を複数にするとき、子供に加えて孫を入れたいというご相談もよくあります。しかし孫は、子供が生きていれば相続人ではありません。相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用がありません。

さらに、被相続人の一親等の血族および配偶者以外の人が財産を取得した場合には、相続税額に2割が加算されます国税庁 No.4157 相続税額の2割加算。代襲相続人となった孫は除かれますが、そうでなければ孫は加算の対象です。非課税枠が使えないうえに税額が2割増えるため、受取人に孫を加えるときは慎重に検討してください。

受取人の一人が先に死亡していた場合

受取人として指定していた子供のうち1人が、被相続人より先に亡くなってしまうことがあります。この場合、保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となりますe-Gov法令検索 保険法第46条。

つまり、亡くなった子の配偶者や子(被相続人の孫)が受取人の立場に入ってくる可能性があります。受取人が思わぬ人数に増え、しかもその方々が被相続人の相続人ではないために非課税枠を使えず、2割加算の対象になることもあります。受取割合の扱いは契約内容によりますので、受取人に変更があったときは保険会社に確認し、必要であれば受取人指定を見直すことをおすすめします。

保険料の負担者が子である場合

契約者の名義が父になっていても、実際に保険料を支払っていたのが子供だった、というケースもあります。この場合、保険料を負担していた子が受け取った分は所得税(一時所得)、保険料を負担していない別の子が受け取った分は贈与税の対象になり得ます。名義ではなく実際の負担者で判定されますので、誰の口座から保険料が引き落とされていたかを必ず確認してください。

複数受取人の請求手続きと申告の実務

税金の整理ができたら、次は実際の手続きです。受取人が複数いる場合、請求のしかたにも独特の注意点があります。

代表受取人による請求

受取人が複数いる場合、保険会社によっては受取人のうち1人を代表者として立て、その代表者がまとめて請求する取扱いを認めていることがあります。手続きが1本化されるので便利ですが、代表者の口座に保険金全額が振り込まれる形になるため、その後の受取人間での精算が必要になります。

ここで大切なのは、税務上の課税関係は「誰の口座に入金されたか」ではなく「誰がいくら受け取る権利を持っていたか」で決まるという点です。代表受取人がいったん全額を受け取っても、各人の受取割合に応じた金額がそれぞれの課税対象になります。代表者が全額に課税されるわけではありませんので、精算の記録は必ず残しておいてください。

関連コラム死亡保険金の請求手続き|流れ・必要書類と3年の期限、税金の扱い▸

相続税申告書への記載

相続税の申告では、死亡保険金は生命保険金等として、受取人ごとに受取額と非課税金額を記載します。按分計算の結果も申告書上で示すことになりますので、次の3点を漏れなく把握しておく必要があります。

  • 契約ごとの保険金額と、受取人それぞれの受取額
  • 保険料の負担者が誰であったか(契約者名義ではなく実際の負担者)
  • 相続放棄をした人や、相続人以外の受取人がいるかどうか

保険会社から届く支払明細書や支払通知書は、受取額を確認する基本資料になりますので、受取人全員分をそろえて保管しておくと申告がスムーズです。

関連コラム生命保険の受取人を子供にするデメリット|税金と手続きの注意点▸

まとめ

生命保険の受取人を複数の子供にした場合のポイントを、あらためて整理します。

  • 死亡保険金は遺産分割の対象外だが、相続税の課税対象(みなし相続財産)になる
  • 非課税限度額は500万円×法定相続人の数で、受取人ごとの枠ではなく全体で1つの枠
  • 受取人が複数いる場合、非課税限度額は各人の受取額の割合で按分する
  • 受取割合を変えても非課税となる合計額は変わらない
  • 相続放棄した子は非課税の適用がないが、法定相続人の数は放棄がなかったものとして数える
  • 孫など相続人以外が受取人だと非課税枠が使えず、2割加算の対象にもなる
  • 受取人が先に死亡していた場合は、その相続人全員が受取人になる

受取人を複数指定することは、遺産分割をめぐる争いを避ける有効な手段になります。一方で、非課税枠の按分や相続放棄・孫の指定といった論点がからむと、思っていた税額と大きくずれることも少なくありません。ご家族の構成や契約内容によって結論が変わりますので、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

生命保険の複数受取人に関するよくある質問

Q. 受取人を子供2人にすると非課税枠も2倍になりますか。

A. なりません。死亡保険金の非課税限度額は500万円×法定相続人の数で計算する、相続人全体で1つの枠です。受取人の人数を増やしても枠は増えず、各受取人が受け取った金額の割合でその枠を按分します。

Q. 受取割合は均等でなくてもよいのですか。

A. 多くの保険会社では均等でない割合の指定が可能です。ただし非課税限度額の総額は受取割合に関係なく一定で、各人の非課税金額が実際の受取額の割合で決まるだけです。指定できる方法は契約内容によりますので、保険会社にご確認ください。

Q. 相続放棄した子が受取人でも保険金は受け取れますか。

A. 受け取れます。死亡保険金は保険契約にもとづく受取人固有の権利だからです。ただし相続放棄をした人は相続人に含まれないため死亡保険金の非課税の適用がなく、受け取った全額が課税対象になります。

Q. 相続放棄した子がいると非課税限度額は減りますか。

A. 減りません。非課税限度額を計算するときの法定相続人の数は、相続の放棄がなかったものとして数えます。枠は維持されますが、放棄した人自身はその枠を使えないという扱いになります。

Q. 受取人にしていた子が先に亡くなった場合はどうなりますか。

A. 保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となります。被相続人の相続人ではない方が受取人に入ると非課税枠が使えず、2割加算の対象になることもありますので、受取人指定の見直しをおすすめします。

Q. 代表受取人がまとめて請求すると全額に課税されますか。

A. されません。課税関係は誰の口座に入金されたかではなく、誰がいくら受け取る権利を持っていたかで決まります。代表受取人がいったん全額を受け取った場合も、各人の受取割合に応じた金額がそれぞれの課税対象になります。

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