相続した土地の中に「公衆用道路」があるとき、相続税の評価は誰が通っている道かで決まります。結論からお伝えすると、不特定多数の人が通る私道は評価しない(0円)、特定の人だけが通る行き止まりの私道は私道でないものとして評価した価額の30%で評価します。国税庁 No.4622 私道の評価
皆さん、こんにちは!相続について調べていると、登記簿の地目に「公衆用道路」と書かれた土地を見つけて、「これにも相続税がかかるの?」と戸惑う方も多いですよね。普段何気なく通っている道路でも、亡くなった方の名義になっていれば、相続財産として評価するかどうかを判断する必要があるんです。
この記事では、0円になる私道と30%で評価する私道の見分け方、路線価方式・倍率方式・特定路線価それぞれの計算例、固定資産税との違い、申告で見落としやすい点を順番にご説明しますね。
公衆用道路ってどんな道路?
「公衆用道路」と聞くと、なんだか難しそうに感じるかもしれませんが、実は私たちの身近にある道路のことなんです。
公衆用道路の定義
公衆用道路とは、簡単に言うと、一般の人の通行に使われている道路のことです。国道、都道府県道、市町村道などの「公道」はもちろん、特定の個人や団体が所有している「私道」でも、近所の人や通りがかりの人が日常的に通っている場合は、公衆用道路として扱われることがあります。
私道と公衆用道路の違い
「私道」は、個人や企業が所有している土地を道路として使っているものです。相続で問題になるのは、ほとんどがこの私道です。国や自治体が所有する公道は、そもそも亡くなった方の財産ではないため、相続税の評価の対象になりません。
私道は、相続税の評価では大きく2つに分かれます。誰でも通れる「通り抜け道路」のような私道と、袋小路のように特定の人しか通らない「行き止まり道路」のような私道です。この区別によって、評価額が0円になるか、30%で評価するかが変わります。
登記簿の地目が「公衆用道路」でも、判断は現況で
相続税の土地の評価では、地目は登記簿の記載ではなく、相続が起きた時点の実際の使われ方(現況)で判定します。国税庁 第1節 通則登記簿に「公衆用道路」と書かれていても、実際には自宅の駐車場や庭の一部として使っていれば、私道ではなく宅地として評価します。反対に、登記簿の地目が「宅地」のままでも、実際に道路として使われていれば私道として評価することになります。
評価0円になる私道・30%で評価する私道の判定
相続税の評価では、私道を「不特定多数の者の通行の用に供されている私道」と「専ら特定の者の通行の用に供されている私道」に分けて考えます。ここが評価額を大きく左右するポイントです。
評価しない(0円)私道の具体例
国税庁は、不特定多数の者の通行の用に供されている私道の例として、次のようなものを挙げています。国税庁 不特定多数の者の通行の用に供されている私道
- 通り抜けできる私道: 公道から公道へ通り抜けできる私道
- 公共施設などへ通じる行き止まりの私道: 行き止まりでも、その私道を通って不特定多数の人が集会所、地域センター、公園などの公共施設や商店街などに出入りしている私道
- バスの転回場・停留所がある私道: 私道の一部に公共バスの転回場や停留所があり、不特定多数の人が利用している私道
なお、この判定は道路の幅で決まるものではありません。幅員2メートル程度の細い道でも、通り抜けができて一定の公共性が認められれば、評価しない私道に当たります。
30%で評価する私道の具体例
一方で、袋小路の奥にある数軒の住宅だけが使っている行き止まりの私道のように、もっぱら特定の人の通行に使われている私道は、評価の対象になります。こうした私道は、所有者が自由に使ったり売ったりしにくいため、通常の宅地より価値が低いと考えられています。そのため、評価額を通常の30%に抑える取扱いになっているんです。
判定のまとめ
| 私道の利用状況 | 相続税の評価 |
|---|---|
| 公道から公道へ通り抜けできる | 評価しない(0円) |
| 行き止まりだが、不特定多数の人が公共施設・商店街などへ出入りしている | 評価しない(0円) |
| 一部に公共バスの転回場・停留所があり、不特定多数の人が利用している | 評価しない(0円) |
| 袋小路など、特定の人だけが通行している | 私道でないものとして評価した価額の30% |
| 自分の家だけが通路として使っている路地状部分 | 私道として評価せず、奥の宅地と一体で評価 |
自分の家専用の通路は「私道」ではない
いわゆる旗竿地の「竿」の部分のように、自分の家に出入りするためだけに使っている路地状の敷地は、私道として30%で評価するのではありません。奥の宅地と合わせて1つの宅地(1画地)として評価します。国税庁 私道の用に供されている宅地の評価見た目は道路のようでも、利用しているのが自分の家だけなら、宅地の一部という扱いになる点に注意が必要です。
関連コラム知らないと損?42条1項5号行き止まり私道の土地評価を徹底解説▸
マンション敷地の「歩道状空地」も対象になることがあります
開発許可の際に行政指導によって整備された、道路沿いの歩道状の空き地(歩道状空地)も、第三者が自由に通行していて、道路以外の用途へ転用しにくいなどの事情があれば、私道と同じ考え方で評価します。不特定多数の人の通行に使われていれば、その部分は評価しません。国税庁 歩道状空地の用に供されている宅地の評価賃貸マンションの敷地などをお持ちの方は、確認しておきたいポイントです。
公衆用道路(私道)の評価額を具体的に計算してみよう!
ここからは、特定の人だけが通る行き止まりの私道を例に、評価額の計算をご説明しますね。計算の考え方は「その土地が私道でないものとして評価した価額×30%」で、路線価方式・倍率方式のどちらの地域でも同じです。
路線価方式による評価
路線価方式とは、道路に面する宅地の1平方メートルあたりの価格(路線価)をもとに評価する方法です。国税庁 No.4604 路線価方式による宅地の評価私道の価額は、次の算式で求めます。
たとえば、正面路線価が1平方メートルあたり20万円、補正率がいずれも1.00、私道の地積が60平方メートルの場合は、次のようになります。
同じ60平方メートルの私道でも、通り抜けできて不特定多数の人が通っていれば評価額は0円です。判定ひとつで360万円の差が出るため、現地の利用状況をしっかり確認することが大切です。
- 路線価: 国税庁の路線価図で確認できます(千円単位で表示されています)。
- 奥行価格補正率などの補正率: 土地の奥行きや間口の長さに応じて評価額を調整するための数値です。国税庁ホームページの調整率表で確認できます。
- 地積: 私道部分の面積です。
私道に特定路線価を設定した場合
路線価地域にあっても、私道そのものには路線価が付いていないことがよくあります。私道の奥にある宅地を評価するために、税務署へ申し出て私道に「特定路線価」を設定してもらった場合には、その特定路線価をもとに私道を評価しても差し支えありません。特定路線価の設定には、概ね1〜2月程度かかります。国税庁 No.4607 特定路線価の設定の申出
倍率方式による評価
倍率方式とは、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて評価する方法で、路線価が定められていない地域で用いられます。国税庁 No.4606 倍率方式による土地の評価倍率は国税庁の評価倍率表で確認できます。
ここで注意したいのは、私道の固定資産税評価額が、すでに「私道であること」を考慮して低く付けられている場合です。このときは、その宅地が私道でないものとした場合の固定資産税評価額に倍率を掛け、その30%で評価します。私道として低くなった固定資産税評価額にさらに30%を掛けると、二重に減額することになってしまうためです。
たとえば、私道でないものとした固定資産税評価額が800万円、評価倍率が1.1倍の場合は、次のようになります。
近所の方と共有している私道は持分で
行き止まりの私道は、その私道を使う数軒の所有者で共有していることがよくあります。この場合は、私道全体の評価額を計算したうえで、亡くなった方の持分割合を掛けた金額が相続財産になります。登記事項証明書で持分を確認しておくと安心です。
関連コラム相続税の土地評価|路線価方式と倍率方式の計算方法と減額要素▸
固定資産税との関係
公衆用道路は、固定資産税においても特別な取扱いがあります。ただし、相続税とは判断の仕組みが別である点を押さえておきましょう。
公共の用に供する道路は固定資産税が非課税
地方税法では、公共の用に供する道路には固定資産税を課すことができないと定められています。e-Gov法令検索 地方税法第348条私道であっても、一般の人の通行に使われていると市区町村が認めれば、非課税になることが多いです。お持ちの私道が非課税になっているかどうかは、固定資産税の課税明細書や、市区町村の固定資産税の担当窓口で確認できます。
固定資産税が非課税でも、相続税が0円とは限りません
固定資産税の非課税は市区町村が、相続税の評価は財産評価のルールにしたがって判断します。そのため、固定資産税が非課税になっている私道でも、相続税の評価では「特定の人だけが通る私道」として30%で評価する場合があります。「固定資産税がかかっていないから、相続税の申告にも載せなくてよい」と考えてしまうのは、よくある見落としのひとつです。
関連コラム固定資産税評価額と相続税の関係|評価額の概算方法と課税明細書の見方▸
評価の際に注意すべきポイント
公衆用道路の評価は、判断が難しいケースも少なくありません。以下の点に注意して、慎重に進めましょう。
相続が起きた時点の利用状況を記録しておく
0円にするか30%で評価するかは、相続が起きた時点で実際にどう使われていたかで決まります。実務では、通り抜けできるかどうか、通行を妨げる柵や門がないか、私道の先に公園や集会所などがあるかを現地で確認し、写真を残しておくことが大切です。申告後に税務署から説明を求められたときにも、こうした記録が判断の裏付けになります。
名寄帳で私道の漏れを防ぐ
私道は固定資産税が非課税になっていることが多いため、毎年届く課税明細書に載っていないことがあります。亡くなった方が所有していた土地をもれなく把握するには、市区町村で取得できる名寄帳(その人が持つ不動産の一覧)で確認するのがおすすめです。多くの市区町村では非課税の土地も名寄帳に記載されるため、課税明細書だけを見るより申告漏れを防ぎやすくなります(記載の範囲は市区町村によって異なります)。
必要書類の準備
公衆用道路の評価には、以下のような書類が必要になります。
- 登記事項証明書(全部事項証明書): 法務局で取得できます。地目や持分の確認に使います。
- 公図・地積測量図: 法務局で取得できます。私道の位置や形状を確認します。
- 固定資産税評価証明書・名寄帳: 市区町村役場で取得できます。
- 路線価図・評価倍率表: 国税庁のホームページで確認できます。
- 現地の写真: 通り抜けの可否や、私道の先にある施設などがわかるもの。
これらの書類を事前に準備しておくと、スムーズに評価を進めることができます。
関連コラム車が通れない公衆用道路の相続税評価は?袋小路じゃない道も評価が必要?▸
まとめ
今回は、相続時の公衆用道路の評価についてご説明しました。公衆用道路は、その利用状況によって評価方法が変わるため、注意が必要です。今回の内容をまとめると以下のようになります。
- 不特定多数の人が通行する私道は、相続税の評価をしない(0円)。
- 特定の人だけが通行する私道は、私道でないものとして評価した価額の30%で評価。
- 判定は登記簿の地目ではなく、相続が起きた時点の現況で行う。道路の幅では決まらない。
- 自分の家だけが使う路地状の通路は、私道ではなく奥の宅地と一体で評価する。
- 固定資産税が非課税でも、相続税の評価が0円になるとは限らない。
私道の判定は、現地の状況によって結論が分かれやすい分野です。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。少しでも皆さんのお役に立てれば嬉しいです。
公衆用道路の相続税評価、ここが知りたい!よくある質問まとめ
Q. 公衆用道路ってそもそも何ですか?
A. 一般の人の通行に使われている道路のことです。私道であっても、通り抜けできるなど不特定多数の人が通行している場合は、公衆用道路として扱われることがあります。
Q. 相続した土地が公衆用道路の場合、評価額はどうなりますか?
A. 不特定多数の人が通行する私道であれば、相続税の評価はしません(0円)。袋小路のように特定の人だけが通行する私道は、私道でないものとして評価した価額の30%で評価します。
Q. 公衆用道路の評価がゼロになるのはなぜですか?
A. 不特定多数の人の通行に使われている私道は、所有者が自由に使ったり売ったりすることが難しく、財産としての価値がほとんどないと考えられるためです。
Q. 幅が2メートルほどの細い私道でも0円になりますか?
A. 道路の幅だけで判断するものではありません。細い道でも、公道から公道へ通り抜けできるなど一定の公共性が認められれば、評価しない私道に当たります。
Q. 登記簿の地目が公衆用道路なら、評価は0円ですか?
A. 登記簿の地目だけでは決まりません。相続税の評価では、相続が起きた時点の実際の利用状況で地目や私道の区分を判定します。実際には駐車場として使っている場合などは、宅地として評価することになります。
Q. 固定資産税が非課税の私道は、相続税の申告に載せなくてよいですか?
A. 載せる必要があります。固定資産税の非課税と相続税の評価は別の判断です。固定資産税が非課税でも、特定の人だけが通行する私道であれば、相続税では30%で評価します。
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