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取得費加算の特例|相続した不動産売却の要件と計算

2026-07-09
目次

相続した不動産や株式を売却するとき、売却益に対して譲渡所得税がかかります。ここで見落とされがちなのが、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例です。納めた相続税の一部を売却時の取得費に上乗せでき、譲渡所得税の負担を軽くできる制度ですが、売却の時期に厳しい期限があり、空き家の3,000万円特別控除とは同時に使えないなど、判断を誤りやすい注意点もあります。この記事では、相続した不動産・株式を売却する方に向けて、適用要件・計算方法・併用の可否まで正確に解説します。

取得費加算の特例の概要

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例とは、相続または遺贈で取得した財産を一定期間内に売却した場合に、その財産にかかった相続税額のうち一定額を譲渡資産の取得費に加算できる制度です。取得費が増えるとその分だけ譲渡所得が圧縮され、結果として譲渡所得税・住民税が軽減されます[国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例]

対象となる財産は不動産に限りません。相続した土地・建物のほか、株式などの有価証券を売却した場合にも適用できます。相続税を納めた方が、相続した財産を売る際に広く使える特例です。

適用要件

この特例を受けるには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります[国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例]

財産の取得 相続や遺贈により財産を取得した者であること
相続税の課税 その財産を取得した人に相続税が課税されていること
譲渡の時期 その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること

ポイントは、実際に相続税を納めた方でなければ使えないという点です。基礎控除の範囲内で相続税がかからなかった場合は、加算する相続税額が存在しないため対象外となります。

売却期限は実質3年10ヶ月以内

要件のうち特に注意したいのが譲渡の時期です。相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内と定められています[国税庁 No.4205 相続税の申告と納税]。取得費加算の特例の期限は「相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」であるため、相続開始からおおむね3年10ヶ月以内に売却する必要があると理解しておくと分かりやすいでしょう。この期限を1日でも過ぎると特例は使えなくなるため、売却の検討は早めに始めることが大切です。

取得費に加算する相続税額の計算方法

取得費に加算できる相続税額は、その方が納めた相続税額のうち、売却した財産に対応する部分です。国税庁が示す計算式は次のとおりです[国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例]

取得費に加算する相続税額 = その者の相続税額 × 譲渡した財産の相続税評価額 ÷ その者の相続税の課税価格

分母となる「その者の相続税の課税価格」は、正確には、その方が取得した財産の価額に、相続時精算課税適用財産の価額と暦年課税分の贈与財産の価額を加算した金額とされています。加算できる金額は、その財産を売却したことで生じる譲渡所得の金額が上限となります。

計算例

相続税額が600万円、売却した土地の相続税評価額が3,000万円、その方の相続税の課税価格が1億円だった場合、取得費に加算できる相続税額は次のように求めます。

600万円 × 3,000万円 ÷ 1億円 = 180万円

この例では、譲渡所得の計算上、通常の取得費に加えて180万円を上乗せできます。譲渡所得税・住民税の税率が合わせて約20%の長期譲渡であれば、単純計算でおよそ36万円の税負担軽減につながります。

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空き家3,000万円特別控除との関係

相続した不動産の売却では、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例による3,000万円の特別控除も検討候補になります。一定の要件を満たす空き家とその敷地を売却した場合、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できる制度です[国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例]

ここで重要なのは、この空き家特例と取得費加算の特例は、同じ資産について同時に適用することができないという点です。空き家特例の適用要件として、売った家屋や敷地等について相続財産を譲渡した場合の取得費の特例など他の特例の適用を受けていないことが求められているため、どちらか一方を選ぶことになります[国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例]

一般的には、控除額が大きい空き家3,000万円特別控除のほうが有利になるケースが多い一方、空き家特例は建物が昭和56年5月31日以前の建築であることなど要件が厳しく、そもそも適用できない場合もあります。相続財産の内容や売却益の大きさによって有利不利が変わるため、どちらを選ぶかは慎重な比較が必要です。なお、空き家特例は令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上いる場合、控除限度額が2,000万円に引き下げられている点にも注意が必要です[国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例]

空き家特例の詳しい要件は、相続空き家の3000万円控除とは?適用要件と令和5年改正を解説もあわせてご覧ください。

売却前に確認したい注意点

確定申告での手続き

取得費加算の特例は、譲渡した年分の所得税の確定申告で適用を受けます。相続税の申告書の写しなど必要書類を添付して申告する必要があるため、相続税の申告内容が確定していることが前提となります。

実家の売却全体での検討

相続した実家を売却する場合、取得費加算の特例だけでなく、譲渡所得の計算全体を通じてどの特例を使うかを設計することが節税につながります。売却にかかる税金の全体像は、実家を相続して売却したときの税金はいくら?計算方法を解説で確認できます。

特例の選択は一度確定申告すると後から変更が難しく、金額も大きくなりがちです。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

まとめ

取得費加算の特例は、相続した不動産や株式を売却する際に、納めた相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得税を軽減できる制度です。適用には、相続税を納めていること、そして相続開始からおおむね3年10ヶ月以内に売却することが要件となります。加算額は「相続税額×譲渡した財産の相続税評価額÷その者の相続税の課税価格」で計算します。空き家3,000万円特別控除とは同じ資産について同時に使えないため、どちらが有利かを売却前に見極めることが重要です。期限や特例の選択で後悔しないよう、売却を検討し始めた段階で専門家に相談されることをおすすめします。

参考文献

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取得費加算の特例のよくある質問まとめ

Q.取得費加算の特例とは何ですか?

A.相続や遺贈で取得した財産を一定期間内に売却した場合に、その財産にかかった相続税額の一部を譲渡資産の取得費に加算できる制度です。取得費が増えることで譲渡所得が圧縮され、譲渡所得税・住民税が軽減されます。

Q.取得費加算の特例はいつまでに売却すればよいですか?

A.相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡することが要件です。相続税の申告期限が相続開始から10か月以内であるため、実質的にはおおむね3年10ヶ月以内の売却が目安となります。

Q.取得費に加算する相続税額はどう計算しますか?

A.その者の相続税額に、譲渡した財産の相続税評価額を掛け、その者の相続税の課税価格で割って求めます。加算できる金額は、その財産の売却で生じる譲渡所得の金額が上限です。

Q.相続税を納めていなくても使えますか?

A.使えません。この特例は財産を取得した人に相続税が課税されていることが要件です。基礎控除の範囲内で相続税がかからなかった場合は、加算する相続税額が存在しないため適用できません。

Q.空き家3,000万円特別控除と併用できますか?

A.同じ資産について同時に適用することはできません。空き家特例は取得費加算の特例など他の特例の適用を受けていないことが要件となっているため、どちらか一方を選択します。

Q.不動産以外の財産でも適用できますか?

A.適用できます。相続した土地・建物のほか、株式などの有価証券を売却した場合にも取得費加算の特例の対象となります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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