令和8年度税制改正の大綱では、国際課税の分野で外国子会社合算税制(いわゆるタックスヘイブン対策税制、CFC税制)の見直しが盛り込まれました。なかでも注目されるのが、解散した部分対象外国関係会社等に係る特例の創設です。この記事では、外国子会社合算税制の基本的な枠組みを整理したうえで、令和8年度改正の要点を実務担当者向けに解説します。
外国子会社合算税制の基本的な枠組み
外国子会社合算税制は、内国法人等が実質的な活動を伴わない外国子会社等を利用するなどして、日本の税負担を軽減・回避する行為に対処するための制度です。一定の外国子会社等の所得を、その持分を有する内国法人等の所得とみなして合算し、日本で課税する仕組みとなっています財務省 外国子会社合算税制の概要。
合算課税の対象
合算課税の対象となるのは、ペーパー・カンパニーである場合や、次の経済活動基準のいずれかを満たさない外国子会社等です。実体のある事業活動を行っているかどうかが判定の軸となります。
| 事業基準 | 主たる事業が株式の保有等でないこと |
|---|---|
| 実体基準 | 本店所在地国に事業に必要な事務所等を有すること |
| 管理支配基準 | 本店所在地国において自ら事業の管理・支配を行っていること |
| 所在地国基準 ・非関連者基準 |
事業を主として本店所在地国で行っていること等 |
合算課税には、外国子会社等の所得を会社単位で合算する方式と、実質的活動のない事業から得られる受動的所得を合算する方式があります。ただし、租税負担割合が一定以上の場合には適用が免除されます。
令和8年度改正における見直しの全体像
令和8年度税制改正の大綱では、内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(いわゆる外国子会社合算税制)等について、複数の見直しが行われることとされています。主な改正項目は次のとおりです財務省 令和8年度税制改正の大綱(5/9)。
- 解散した部分対象外国関係会社又は外国金融子会社等に係る特例の創設
- ペーパー・カンパニー特例に係る資産割合要件の見直し
- 最高税率を用いて租税負担割合を計算する特例の見直し
- 居住者に係る外国子会社合算税制等の関連制度についての同様の見直し
これらの改正は、外国関係会社の令和8年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。
解散した部分対象外国関係会社等に係る特例の創設
今回の改正の中心となるのが、解散した外国関係会社に関する特例の創設です。外国関係会社が清算部分対象外国関係会社又は清算外国金融子会社等に該当する場合の取扱いが新たに整備されます。
清算部分対象外国関係会社等の定義
清算部分対象外国関係会社とは、解散した外国関係会社のうち、その解散の日を含む事業年度開始の日前2年以内に開始した事業年度のいずれにおいても部分対象外国関係会社に該当していたものをいいます。清算外国金融子会社等は、同様に解散の日を含む事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度のいずれにおいても外国金融子会社等に該当していたものをいいます。
特例清算事業年度における取扱い
これらに該当する場合には、その解散により最初に部分対象外国関係会社又は外国金融子会社等に該当しないこととなった事業年度終了の日から、原則として同日以後3年を経過した日までの期間内の日を含む事業年度(特例清算事業年度)について、清算部分対象外国関係会社は部分対象外国関係会社と、清算外国金融子会社等は外国金融子会社等とそれぞれみなして外国子会社合算税制を適用することとされます。
特例清算事業年度については、部分合算課税の対象所得である異常所得の金額の計算において控除する金額の基礎となる総資産の額、人件費の額及び減価償却累計額は、その解散により最初に部分対象外国関係会社又は外国金融子会社等に該当しないこととなった事業年度の前事業年度に係るこれらの金額を用いることとされています。また、清算外国金融子会社等に該当する場合の特例清算事業年度については、異常な水準にある資本に係る所得の金額はないものとして金融子会社等部分適用対象金額の計算を行います。
推定規定と現行特例の廃止
国税当局の職員が、外国関係会社が清算部分対象外国関係会社若しくは清算外国金融子会社等に該当すること、又はその事業年度が特例清算事業年度に該当することを明らかにする書類等の提出等を求めた場合において、期限までにその提出等がないときは、これらに該当しないものと推定することとされます。あわせて、現行の解散した外国金融子会社等に係る特例は廃止されます。
その他の見直し項目
ペーパー・カンパニー特例の資産割合要件
ペーパー・カンパニー特例に係る資産割合要件について、外国関係会社の事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の額が零である場合には、その事業年度に係る資産割合要件の判定を不要とすることとされます。
最高税率を用いた租税負担割合計算の特例
外国関係会社の本店所在地国の外国法人税の税率が所得の額に応じて高くなる場合に、最高税率を用いて租税負担割合を計算することができる特例については、その最高税率が適用されることが通常見込まれないことや、その最高税率が適用される所得の額の区分が適用される所得の金額が極めて限定されていることその他の事情により本特例を適用することが著しく不適当であると認められる場合には、本特例を適用できないこととされます。
関連制度への波及
居住者に係る外国子会社合算税制、及び特殊関係株主等である内国法人に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例等の関連制度についても、上記と同様の見直しが行われます。地方税においても、個人住民税・法人住民税・事業税について、国税の取扱いに準じた所要の措置が講じられます。
国際課税分野の令和8年度改正には、以下の関連コラムもあわせてご参照ください。
関連コラム令和8年度改正 プラットフォーム課税の物品販売拡大を解説▸
関連コラム越境EC課税の見直し|特定少額資産の譲渡と消費税▸
まとめ
令和8年度税制改正における外国子会社合算税制の見直しは、解散した部分対象外国関係会社等に係る特例の創設を中心に、ペーパー・カンパニー特例の資産割合要件や最高税率を用いた租税負担割合計算の特例の見直しなど、実務に影響し得る項目が含まれています。いずれも外国関係会社の令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるため、対象となる外国子会社等を有する法人は、解散・清算のスケジュールや必要書類の整備を早めに確認しておくことが重要です。国際課税は判定要素が多く複雑であるため、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
お問い合わせはこちら ▸参考文献
令和8年度税制改正 国際課税のよくある質問まとめ
Q. 令和8年度税制改正で外国子会社合算税制はどう見直されますか。
A. 解散した部分対象外国関係会社又は外国金融子会社等に係る特例の創設を中心に、ペーパー・カンパニー特例の資産割合要件の見直し、最高税率を用いた租税負担割合計算の特例の見直し、居住者に係る関連制度の同様の見直しが行われます。
Q. 外国子会社合算税制とは何ですか。
A. 内国法人等が実質的な活動を伴わない外国子会社等を利用するなどして日本の税負担を軽減・回避する行為に対処する制度で、一定の外国子会社等の所得を内国法人等の所得とみなして合算し課税する仕組みです。
Q. 清算部分対象外国関係会社とは何ですか。
A. 解散した外国関係会社のうち、その解散の日を含む事業年度開始の日前2年以内に開始した事業年度のいずれにおいても部分対象外国関係会社に該当していたものをいいます。
Q. 特例清算事業年度ではどのような取扱いになりますか。
A. 清算部分対象外国関係会社は部分対象外国関係会社と、清算外国金融子会社等は外国金融子会社等とそれぞれみなして外国子会社合算税制を適用します。異常所得の計算で控除する金額の基礎となる総資産の額等は、該当しないこととなった事業年度の前事業年度の金額を用います。
Q. ペーパー・カンパニー特例の資産割合要件はどう変わりますか。
A. 外国関係会社の事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の額が零である場合には、その事業年度に係る資産割合要件の判定を不要とすることとされます。
Q. 改正はいつから適用されますか。
A. 外国関係会社の令和8年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。