相続手続きの必要書類を調べていると、戸籍謄本や住民票にまじって戸籍の附票という耳慣れない書類の名前が出てきます。名前だけでは何が書かれているのか分からず、住民票と何が違うのか、どこで取ればよいのか迷ってしまう方は少なくありません。戸籍の附票は、戸籍とセットで住所の履歴を記録した公的な書類で、とくに相続登記の場面で決定的な役割を果たします。この記事では、戸籍の附票の定義から住民票との違い、相続手続きでの使いどころ、取得方法、保存期間までを法令と公的資料にもとづいて整理します。
戸籍の附票とは
戸籍の附票の定義
戸籍の附票とは、市区町村長がその区域内に本籍を有する方について、戸籍を単位として作成する住所の記録です。e-Gov法令検索 住民基本台帳法第16条
戸籍そのものには、本籍と身分関係(出生、婚姻、死亡など)が記録されますが、住所は記録されません。その戸籍に在籍している間の住所の移り変わりを補うのが戸籍の附票という位置づけです。戸籍と附票は本籍地の市区町村で一体的に管理されているため、同じ戸籍にいる限り、引っ越しを重ねても住所の履歴が一続きで残るという特徴があります。
この「一続きで残る」という性質が、相続手続きで戸籍の附票が求められる最大の理由です。亡くなった方が生前に何度も転居していた場合でも、附票を見れば住所の変遷をまとめて確認できます。
戸籍の附票の記載事項
戸籍の附票に記載される事項は法律で定められています。市区町村が独自に項目を増減できるものではなく、全国共通で次の内容が記録されます。
| 戸籍の表示 | 本籍と筆頭者の氏名 |
|---|---|
| 氏名 | その戸籍に在籍する方の氏名および氏名の振り仮名 |
| 住所 | 住民基本台帳に記録されている住所 |
| 住所を定めた年月日 | その住所に住み始めた日 |
| 生年月日 男女の別 |
出生の年月日と性別 |
| 住民票コード | 住民票に記載された住民票コード |
戸籍の附票には、住所と、その住所を定めた年月日がセットで記録される点が重要です。「いつからどこに住んでいたか」を時系列で示せるため、登記簿の住所と最後の住所を突き合わせる作業に向いています。
住民票および住民票の除票との違い
住民票との違い
住民票は住所地の市区町村が世帯を単位として作成する記録で、現在の住所を証明するための書類です。これに対して戸籍の附票は本籍地の市区町村が戸籍を単位として作成し、住所の履歴を示すための記録です。作成する役所も、単位も、示せる情報も異なります。
住民票にも前住所は記載されますが、原則として直前の住所にとどまります。転居を繰り返している場合、住民票だけでは古い住所までさかのぼれません。複数回の転居をまとめて追いたいときは戸籍の附票、という使い分けになります。
住民票の除票との違い
住民票の除票は、死亡や転出によって住民票が消除された後に保存されるものです。亡くなった方の最後の住所を証明する書類として相続手続きで広く使われますが、あくまで住所地の市区町村が保管しているため、請求先が戸籍の附票とは異なります。
| 戸籍の附票 | 住民票の除票 |
|---|---|
| 本籍地の市区町村が戸籍を単位として作成 | 住所地の市区町村で消除された住民票を保存したもの |
| 請求先は本籍地の市区町村 | 請求先は住所地の市区町村 |
| 同じ戸籍にいる間の住所の履歴を確認できる | 最後の住所と消除された事実を確認できる |
相続登記の必要書類としては、被相続人の住民票の除票または戸籍の附票のいずれかが求められます。どちらを用意するかは、登記簿上の住所が記載されているかどうかで決まります。法務局 相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等
関連コラム相続手続きに必須!被相続人の住民票の除票とは?取得方法も解説▸
相続手続きで戸籍の附票が必要になる場面
相続登記における住所のつながりの証明
戸籍の附票が最も活躍するのは、不動産の相続登記です。相続登記では、登記簿に記録されている所有者と、戸籍に記載された被相続人が同一人物であることを書面で示す必要があります。ところが、被相続人が登記後に転居していると、登記簿上の住所と亡くなった時点の住所が一致しません。
法務局の資料でも、被相続人の住民票の除票または戸籍の附票について「登記簿上の住所及び本籍地の記載のあるもの」が必要とされ、登記上の住所が戸籍に記載された本籍と異なる場合に必要となると整理されています。住所の履歴が一続きで残る戸籍の附票は、この住所のつながりを一枚で示せる書類として重宝します。
なお、相続登記は令和6年4月1日から義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請することが求められています。政府広報オンライン 相続登記 令和6年から義務化
相続人の所在確認と各種手続きでの利用
戸籍の附票は、被相続人だけでなく相続人の住所を確認する場面でも使われます。長く連絡を取っていない相続人がいる場合でも、戸籍をたどって本籍地の市区町村に附票を請求すれば、住民基本台帳に記録された住所を確認できます。遺産分割協議の連絡先を把握するための出発点になります。
また、戸除籍謄本の束を何度も提出する負担を減らす仕組みとして、法定相続情報証明制度があります。相続関係を一覧にした図とともに戸除籍謄本等を登記所に提出すると、登記官の確認を経た認証文付きの写しが無料で交付される制度です。法務局 「法定相続情報証明制度」について
関連コラム法定相続情報一覧図の取得方法|必要書類と法務局での手続きを解説▸
戸籍の附票の取得方法
請求先と請求できる方
戸籍の附票の請求先は本籍地の市区町村です。住所地ではない点に注意してください。法務局の必要書類の一覧でも、住民票の除票は住所地の市区町村、戸籍の附票は本籍地の市区町村と明確に分けて案内されています。
請求できるのは、その戸籍の附票に記録されている本人のほか、配偶者、直系尊属(父母や祖父母)、直系卑属(子や孫)です。これら以外の方でも、自己の権利行使や義務の履行のために記載事項を確認する必要があるなど正当な理由があるときは、市区町村長が相当と認めれば交付を受けられる場合があります。弁護士や司法書士などの資格者が依頼を受けて職務上請求する仕組みも設けられています。
窓口で請求する際は、本籍と筆頭者の氏名を正確に伝える必要があります。本籍が分からないときは、本籍を記載した住民票を先に取得しておくと手続きがスムーズです。
戸籍謄本の広域交付との関係
戸籍謄本や除籍謄本については、本人、配偶者、直系尊属、直系卑属の分に限り、本籍地以外の市区町村の窓口でも請求できる広域交付の仕組みが戸籍法に設けられています。ただしコンピュータ化されていない一部の戸籍等は対象外です。e-Gov法令検索 戸籍法第120条の2
一方で、戸籍の附票は住民基本台帳法にもとづく記録であり、戸籍謄本等とは根拠となる法律が異なります。附票の写しは本籍地の市区町村への請求が基本となるため、広域交付で戸籍をまとめて集められた場合でも、附票は別途手当てが必要になると考えておくと安全です。実際の取扱いは請求前に本籍地の市区町村へ確認してください。
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戸籍の附票の保存期間
戸籍の附票の除票は150年間保存
戸籍の全部が消除されたり、戸籍が改製されたりすると、それまでの戸籍の附票は戸籍の附票の除票として保存されます。この保存期間は、消除または改製した日から150年間と定められています。e-Gov法令検索 住民基本台帳法施行令第34条
150年という長い期間が定められているため、相続が発生した時点で被相続人の住所の履歴を確認できないという事態は、以前に比べて起こりにくくなっています。相続手続きが数年後にずれ込んだ場合でも、附票の除票からさかのぼれる可能性は高いといえます。
改製や転籍で附票が切り替わる点への注意
注意が必要なのは、戸籍が変わると附票も切り替わるという点です。婚姻や転籍で新しい戸籍が作られると、その時点から新しい附票が始まります。つまり、一通の附票で確認できるのは、あくまでその戸籍に在籍していた期間の住所に限られます。
そのため、登記簿の住所が古く、被相続人が転籍を経ている場合には、現在の戸籍の附票だけでは住所がつながらないことがあります。この場合は、前の戸籍の附票の除票もあわせて取得し、住所の履歴を継ぎ足していく作業が必要です。どこまでさかのぼれば足りるかは、登記簿の記録内容によって変わります。
また、保存期間を経過しているなどの理由で市区町村に記録が残っていない場合には、附票の除票の交付を受けられません。その際にどのような書類で代替するかは、提出先である法務局や金融機関の判断にかかわるため、早めに確認しておくことをおすすめします。
戸籍の附票とマイナンバーの記載
戸籍の附票に個人番号(マイナンバー)が記載されるのかを心配される方がいます。法律が定める戸籍の附票の記載事項は、戸籍の表示、氏名、氏名の振り仮名、住所、住所を定めた年月日、生年月日、男女の別、住民票コードなどであり、個人番号は記載事項として掲げられていません。
住民票コードについても、国や地方公共団体の機関への交付では記載を省略したものが交付されるなど、必要に応じて表示を絞る仕組みが法律上設けられています。相続手続きのために附票の写しを取得する場面で、個人番号が第三者に伝わることを過度に心配する必要はありません。
あわせて覚えておきたいのが、戸籍関係の書類には謄本と抄本という単位の違いがあることです。戸籍の附票も、戸籍に在籍する全員分を記載したものと、特定の方だけを記載したものを選べる場合があります。提出先の求める内容に合わせて選択してください。
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まとめ
戸籍の附票は、本籍地の市区町村が戸籍を単位として作成する住所の履歴の記録です。住民票が現在の住所を示す書類であるのに対し、附票は「いつからどこに住んでいたか」を一続きで示せる点に価値があります。相続登記で登記簿上の住所と最後の住所がつながらないときの切り札として、実務では欠かせない書類です。
請求先は住所地ではなく本籍地であること、戸籍が改製や転籍で変わると附票も切り替わること、除票の保存期間は150年であることの3点を押さえておけば、必要書類の準備で迷う場面はぐっと減ります。一方で、どの範囲までさかのぼるべきか、どの書類で代替できるかといった判断は、登記簿の記録や提出先の運用によって変わります。
相続税の申告と相続登記は必要書類が重なる部分が多く、まとめて段取りを組んだほうが手戻りが少なくて済みます。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
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- e-Gov法令検索 住民基本台帳法第16条
- e-Gov法令検索 住民基本台帳法施行令第34条
- e-Gov法令検索 戸籍法第120条の2
- 法務局 相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等
- 法務局 「法定相続情報証明制度」について
- 政府広報オンライン 相続登記 令和6年から義務化
戸籍の附票のよくある質問まとめ
Q.戸籍の附票とは何ですか。
A.市区町村長がその区域内に本籍を有する方について、戸籍を単位として作成する住所の記録です。戸籍には住所が記載されないため、その戸籍に在籍している間の住所の履歴を補う役割を持ちます。
Q.戸籍の附票はどこで取得できますか。
A.本籍地の市区町村に請求します。住所地の市区町村で取得する住民票や住民票の除票とは請求先が異なるため注意が必要です。請求時には本籍と筆頭者の氏名を正確に伝える必要があります。
Q.戸籍の附票は誰が請求できますか。
A.附票に記録されている本人のほか、配偶者、直系尊属、直系卑属が請求できます。それ以外の方でも、自己の権利行使や義務の履行のために記載事項を確認する必要があるなど正当な理由が認められる場合には交付を受けられることがあります。
Q.戸籍の附票の保存期間はどれくらいですか。
A.戸籍の附票が消除または改製されると戸籍の附票の除票として保存され、その保存期間は消除または改製した日から150年間と定められています。
Q.戸籍の附票と住民票の除票はどちらを用意すればよいですか。
A.相続登記では、被相続人について登記簿上の住所と本籍の記載があるものが求められ、住民票の除票または戸籍の附票のいずれかを用意します。登記上の住所が古く転居を重ねている場合は、住所の履歴が一続きで残る戸籍の附票が適しています。
Q.戸籍の附票にマイナンバーは記載されますか。
A.法律が定める戸籍の附票の記載事項に個人番号は含まれていません。記載されるのは戸籍の表示、氏名、住所、住所を定めた年月日、生年月日、男女の別、住民票コードなどです。