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個人から法人への贈与にかかる税金|贈与税ではなく法人税・所得税に注意

2026-07-16
目次

個人から法人へ財産を贈与するとき、多くの方が「贈与税がかかるのでは」と心配されます。ですが結論からお伝えすると、法人への贈与に贈与税はかかりません。贈与税は個人(自然人)が財産をもらったときの税金で、法人は贈与税の納税義務者ではないからです。

ただし「贈与税がかからない=無税」ではない点に、くれぐれもご注意ください。実は法人への贈与では、贈与税の代わりに最大3つの税金が登場します。もらった法人には法人税、あげた個人には所得税、そして相手が同族会社なら他の株主に贈与税がかかることがあるのです。

資産管理会社の設立や事業承継を考え始めた方が「贈与税がかからないなら」と安易に不動産を法人へ移し、あとから想定外の所得税に驚かれるケースは実務でも少なくありません。この記事では、誰にどの税金がなぜかかるのかを、国税庁のタックスアンサーや条文の根拠つきでご説明します。

個人から法人への贈与に贈与税はかからない理由

まず大前提として、個人から法人へ財産を贈与しても、受け取った法人に贈与税は課されません。贈与税は、個人が個人から財産をもらったときに、もらった側の個人に課される税金だからです。会社などの法人は、そもそも贈与税を納める対象になっていません。

では法人が財産をもらっても完全に無税かというと、そうではありません。贈与税がかからない代わりに、法人の利益として法人税の対象になります。さらに、財産をあげた個人の側にも所得税がかかる場合があり、相手が同族会社であれば、その会社の他の株主に贈与税がかかることもあります。

登場人物ごとに「誰にどの税金がかかるのか」を、先に全体像として表にまとめました。まずはこの3段構えの課税イメージを押さえていただくと、この後の説明がぐっと分かりやすくなります。

登場人物 かかる税金
財産を贈与した個人(あげた人) 所得税・住民税(みなし譲渡。現物資産を贈与した場合)
財産をもらった法人 法人税(受贈益として益金に算入)
同族会社の他の株主(家族など) 贈与税(株式価値の増加分がみなし贈与になる場合)

次の章から、この3つの税金を1つずつ、根拠となる条文とあわせて丁寧に見ていきます。

①もらった法人には「受贈益」として法人税がかかる

1つめは、財産を受け取った法人にかかる法人税です。法人が対価を払わずに(無償で)資産を譲り受けると、その資産の時価が受贈益という利益として法人税の課税対象になります。根拠は法人税法第22条第2項で、益金に算入すべきものとして「無償による資産の譲受け」がはっきりと定められています。e-Gov法令検索 法人税法(第22条 各事業年度の所得の金額の計算)

この受贈益は、もらった財産が現金でも、不動産でも、株式でも同じように発生します。たとえば時価5,000万円の土地を無償でもらった法人は、5,000万円が受贈益として益金に算入され、他の所得とあわせて法人税等が計算されます(金額は架空の例です)。

「贈与税はかからない」という言葉だけが独り歩きしがちですが、法人側では受け取った財産の時価がそのまま利益として税金の対象になる、とイメージしていただくと安全です。実効税率は会社の規模や他の損益によって変わるため、実際の負担額は個別に試算する必要があります。

②あげた個人には「みなし譲渡」で所得税がかかる

2つめが、この記事でいちばん見落とされやすい税金です。個人が法人へ現金以外の資産(不動産や株式など)を贈与すると、時価で売ったものとみなして、あげた個人に譲渡所得の所得税・住民税がかかります。これを「みなし譲渡」といい、所得税法第59条第1項第1号に定められた取り扱いです。e-Gov法令検索 所得税法(第59条 贈与等の場合の譲渡所得等の特例)

国税庁のタックスアンサーNo.3105でも、法人に対して資産を贈与した場合には「時価で資産の譲渡があったもの」とされる、と明記されています。国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法つまり、お金を1円も受け取っていないのに、値上がり益に対して税金がかかる、というのが最大の落とし穴です。

具体的に計算してみましょう(金額はすべて架空の例です)。取得費1,000万円で購入した土地が、いまは時価5,000万円になっているとします。この土地を法人へ贈与すると、譲渡所得は次のように計算されます。

譲渡所得:5,000万円 - 1,000万円 = 4,000万円

所有期間が5年を超える長期譲渡所得なら、税率は所得税15%・住民税5%(このほか復興特別所得税が所得税額の2.1%)で、あわせておよそ812万円もの税金がかかる計算です。国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算

所得税・住民税:4,000万円 × 20.315% ≒ 812万円

実務では「贈与税がかからないなら無税だろう」と考えて自宅や収益不動産を法人へ移し、翌年の確定申告でこのみなし譲渡の所得税に直面して慌てる、という失敗が起こりがちです。現金を用意しないまま資産だけを動かすと、納税資金が足りなくなる恐れもあります。なお、法人へ時価の2分の1未満の価額で売った場合も、同じく時価でのみなし譲渡として扱われます(所得税法第59条第1項第2号、タックスアンサーNo.4423)。国税庁 No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき

不動産や非上場株式を法人へ移すときは、まず時価を正しく把握し、あげた個人にいくらの所得税がかかるのかを事前に試算しておくことが欠かせません。試算の前提となる株式の時価は、非上場株式の相続税評価の考え方とも共通する部分が多いので、あわせて確認しておくと安心です。

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③同族会社への贈与は他の株主に「みなし贈与」で贈与税がかかる

3つめは、相手が同族会社(親族などで株式の多くを保有する会社)である場合に生じる贈与税です。個人が同族会社へ無償で財産を提供すると、その会社の株式の価値が上がります。この値上がり分について、他の株主が贈与によって利益を受けたものとみなされ、その株主に贈与税がかかることがあります。

根拠は相続税法第9条(その他の利益の享受)と、相続税法基本通達9-2です。e-Gov法令検索 相続税法(第9条 その他の利益の享受)国税庁 相続税法基本通達 第9条《その他の利益の享受》関係通達9-2では、同族会社の株式や出資の価額が増加した場合に、株主がその増加部分を贈与によって取得したものとして取り扱うケースとして、次のようなものを挙げています。

  • 会社に対し、無償で財産の提供があった場合
  • 時価より著しく低い価額で、現物出資があった場合
  • 対価を受けないで、会社の債務の免除・引受け・弁済があった場合
  • 会社に対し、時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡があった場合

資産管理会社は、株主が本人とその家族で構成されていることがほとんどです。そのため、親が自分の資産管理会社へ財産を贈与すると、株主である子や配偶者の持ち株の価値が上がり、その増加分に子や配偶者への贈与税がかかる、という流れが起こり得ます。法人税と贈与税が二重に生じる形になるため、事前の設計がとても重要です。

現金を法人へ贈与した場合はどうなる?

ここまでは主に不動産や株式などの現物資産を前提にしてきました。では、現金を法人へ贈与した場合はどうなるのでしょうか。ポイントは、現金にはみなし譲渡が生じないという点です。

みなし譲渡は、値上がり益(譲渡所得)が生じる資産を法人へ移したときの取り扱いです。現金そのものには値上がり益がないため、現金を贈与しても、あげた個人に所得税はかかりません。一方で、もらった法人には受贈益として法人税がかかる点は、現物資産の場合と変わりません。

贈与した財産 贈与した個人にかかる所得税
不動産・株式などの現物資産 みなし譲渡による所得税・住民税がかかる
現金 みなし譲渡は生じず、所得税はかからない

ただし、相手が同族会社であれば、現金の贈与でも会社の純資産が増えて株式価値が上がるため、他の株主へのみなし贈与(贈与税)は現金でも起こり得ます。なお、現金を家族名義の口座へ移すだけでは、名義を借りているだけの名義預金と相続税対策の注意点の問題につながることもあるため、資金の移動は目的と経路を明確にしておくことが大切です。個人間で現金を贈与する場合の進め方は、生前贈与を銀行振込で行うときのやり方と証拠の残し方もご参照ください。

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相続対策で法人へ財産を移すメリットと課税コストの天秤

そもそも、なぜ個人の財産をわざわざ法人へ移すのでしょうか。相続対策としての主なねらいは2つあります。1つは、個人の相続財産から資産を切り離し、将来の相続税の対象を圧縮すること。もう1つは、賃料などの収益を法人に帰属させ、役員給与を通じて家族へ所得を分散することです。資産管理会社が使われるのは、こうした効果を期待してのことです。

ただし、ここまで見てきたとおり、財産を法人へ移すその瞬間に、みなし譲渡の所得税・受贈益の法人税・株主へのみなし贈与という課税コストが先に発生します。相続税を将来減らせる可能性がある一方で、移転時にまとまった税負担が生じるため、両者を天秤にかけて判断する必要があります。目先の相続財産の圧縮だけを見て動くと、かえって全体の税負担が重くなることもあるのです。

また、財産を法人へ移す方法は「贈与」だけではありません。売買(譲渡)や現物出資という選択肢もあり、それぞれ課税の形が異なります。どの方法が有利かは財産の種類や含み益、会社の状況によって変わります。

移転の方法 課税の特徴
贈与(無償で渡す) 個人にみなし譲渡の所得税、法人に受贈益の法人税
時価の2分の1未満での売買 個人は時価でみなし譲渡、時価との差額は法人の受贈益
現物出資(対価に株式を受け取る) 個人は譲渡所得、法人は資本等取引で受贈益は生じない

なお例外として、国や地方公共団体、公益を目的とする事業を行う法人(公益法人等)へ財産を贈与・寄附した場合には、その財産が寄附日から2年以内に公益目的事業へ直接使われるなどの要件を満たして国税庁長官の承認を受けると、みなし譲渡の所得税が非課税になる特例があります(租税特別措置法第40条、タックスアンサーNo.3108)。国税庁 No.3108 国や地方公共団体又は公益を目的とする事業を行う法人に財産を寄附したときただし承認には申請期限などの手続要件もあり、通常の同族会社への贈与には使えません。

このように、個人から法人への贈与は、贈与税がかからない反面、関係する税金が多く、方法の選び方で結果が大きく変わります。財産の種類や金額、家族構成によって最適な進め方は異なりますので、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

まとめ|個人から法人への贈与で押さえる3つの税金

個人から法人への贈与に贈与税はかかりませんが、その代わりに、①もらった法人に受贈益の法人税、②あげた個人に現物資産のみなし譲渡の所得税、③同族会社なら他の株主にみなし贈与の贈与税、という3つの税金が関わってきます。

特に②のみなし譲渡は、お金を受け取っていないのに値上がり益へ課税されるため、「贈与税がかからないから無税」という思い込みが大きな失敗につながりやすいポイントです。不動産や自社株を資産管理会社へ移すときは、移転時の税負担を必ず事前に試算し、相続対策としての効果と天秤にかけて判断しましょう。

個人から法人への贈与のよくある質問まとめ

Q. 個人から法人への贈与に贈与税はかかりますか?

A. かかりません。贈与税は個人がもらったときの税金で、法人は納税義務者ではないためです。ただし、もらった法人には受贈益として法人税がかかり、現物資産を贈与した個人にはみなし譲渡の所得税がかかります。

Q. 現金を法人に贈与した場合も税金はかかりますか?

A. 贈与した個人にはみなし譲渡が生じないため所得税はかかりませんが、もらった法人には受贈益として法人税がかかります。相手が同族会社なら、株式価値の増加分に他の株主への贈与税が生じることもあります。

Q. 資産管理会社に不動産を贈与すると、どんな税金がかかりますか?

A. あげた個人にみなし譲渡の所得税・住民税、もらった会社に受贈益の法人税がかかります。さらに株主である家族の持ち株価値が上がる分について、その家族に贈与税(みなし贈与)がかかることがあります。

Q. 贈与税がかからないなら、法人への贈与がいちばん得ですか?

A. 一概には言えません。贈与税はかからなくても、みなし譲渡の所得税や受贈益の法人税がまとまって生じることがあります。売買や現物出資など他の方法との比較や、相続対策全体での試算をおすすめします。

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参考文献

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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