親名義の土地を子どもへ渡す方法には、親が生きているうちに贈与して名義変更する生前贈与と、親が亡くなった後に相続で名義変更する相続の二通りがあります。どちらの方法でも土地の名義は子どもに移りますが、かかる税金の種類と金額、手続きは大きく異なります。特に生前贈与では贈与税の負担が重くなりやすく、登記時に納める登録免許税の税率も相続より高く設定されています。
この記事では、親の土地を生前に贈与で名義変更した場合にかかる税金を整理し、相続まで待って名義変更する場合と税負担・手続きを具体的な金額で比較します。生前贈与のメリットとデメリットを踏まえ、どちらの方法が適しているかを判断するための材料を提供します。
親の土地を生前贈与で名義変更したときにかかる税金
親名義の土地を生前に子どもへ贈与して名義変更する場合、主に次の三つの税金がかかります。贈与を受けた子ども(受贈者)が負担する税金です。
一つ目は贈与税です。個人から財産の贈与を受けた場合、受け取った側に課される国税です。土地のように評価額の大きい財産を一度に贈与すると、高い税率が適用されやすくなります。二つ目は登録免許税で、法務局で土地の名義変更(所有権移転登記)を申請する際に納める税金です。三つ目は不動産取得税で、土地や建物を取得したときに都道府県が課す地方税です。
贈与税の計算方法と税率
贈与税(暦年課税)は、1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた金額に、税率を乗じて計算します。土地の評価額は原則として相続税評価額(路線価方式または倍率方式)で算定します。
親から18歳以上の子や孫(直系卑属)への贈与には、税率が緩和された特例税率が適用されます。基礎控除後の課税価格に応じて税率10%から55%までの8段階が定められています[No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)]。
たとえば相続税評価額が3,000万円の土地を、親から成人の子へ1年で贈与した場合の贈与税額(特例税率)は次のとおりです。
2,890万円 × 45% – 265万円 = 1,035.5万円(贈与税額)
この試算では、土地の名義変更だけで1,035.5万円もの贈与税が発生します。土地を一括で贈与すると税負担が重くなりやすい点が、生前贈与の大きな注意点です。
登録免許税の計算方法
土地の名義変更を法務局に登記申請する際は、登録免許税を納める必要があります。贈与による所有権移転登記の税率は、固定資産税評価額(課税標準額)に対して1,000分の20(2%)です[No.7191 登録免許税の税額表]。
固定資産税評価額が3,000万円の土地を贈与で名義変更する場合の登録免許税は次のとおりです。
不動産取得税の扱い
贈与によって土地を取得した場合、取得した子どもに不動産取得税が課されます。不動産取得税は都道府県が課す地方税であり、税率や軽減措置は各都道府県が定めています。贈与による取得は原則として課税対象となる一方、相続による取得は不動産取得税の課税対象外となる点が、両者の大きな違いです。具体的な税率や軽減の可否は、土地が所在する都道府県の窓口で確認してください。
相続まで待って名義変更したときにかかる税金
親が亡くなった後、相続によって土地の名義を子どもへ変更する場合にかかる税金は、生前贈与とは異なります。
まず、相続で土地を取得しても贈与税はかかりません。代わりに、相続財産全体が一定額を超える場合に相続税の対象となります。相続税には基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)があり、遺産の総額がこの範囲内であれば相続税はかかりません。土地の相続税評価額についても、要件を満たせば小規模宅地等の特例などによる評価減が使える場合があります。
次に、相続による所有権移転登記の登録免許税の税率は1,000分の4(0.4%)で、贈与の2%より大幅に低く設定されています[No.7191 登録免許税の税額表]。固定資産税評価額3,000万円の土地であれば、相続登記の登録免許税は次のとおりです。
さらに、相続による土地の取得には不動産取得税がかかりません。贈与では課税される不動産取得税が、相続では非課税となる点も税負担の差につながります。
なお、相続による不動産の名義変更(相続登記)は、令和6年4月1日から義務化されています。相続登記の期限や過料などの詳細は、あわせて次の記事も参考にしてください。
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生前贈与と相続で名義変更した場合の税負担の比較
評価額3,000万円の土地を子ども1人へ渡すケースを例に、生前贈与(暦年課税)で名義変更した場合と、相続で名義変更した場合の税負担を比較します。前提として、贈与税は特例税率、登録免許税は評価額に税率を乗じた金額とし、相続税は基礎控除の範囲内でかからないものと仮定します。
| 税金の種類 | 生前贈与/相続での税額 |
|---|---|
| 贈与税 | 生前贈与: 約1,035.5万円 相続: なし |
| 相続税 | 生前贈与: なし 相続: 基礎控除内ならなし |
| 登録免許税 | 生前贈与: 60万円(2%) 相続: 12万円(0.4%) |
| 不動産取得税 | 生前贈与: 課税対象 相続: 非課税 |
この例では、生前贈与で名義変更すると贈与税と登録免許税だけで1,000万円を超える税負担が生じるのに対し、相続で名義変更すれば遺産が基礎控除の範囲内であれば相続税はかからず、登録免許税も12万円で済みます。土地を丸ごと一度に生前贈与すると、税負担の面では相続を待つ場合より大幅に不利になりやすいことがわかります。
贈与税の負担を抑える制度と生前贈与のメリット
暦年課税で土地を一括贈与すると贈与税が重くなりますが、負担を抑える制度も用意されています。
相続時精算課税制度の活用
相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与について選択できる制度です。この制度を選択すると、累計2,500万円の特別控除までは贈与税がかからず、超えた部分に一律20%の贈与税が課されます。さらに令和6年1月1日以後の贈与からは、特別控除とは別に年110万円の基礎控除が設けられています[No.4103 相続時精算課税の選択]。
ただし相続時精算課税で贈与した財産は、贈与者が亡くなったときに相続財産へ加算して相続税を計算するため、税負担が完全になくなるわけではありません。また一度選択すると同じ贈与者からの贈与について暦年課税へ戻すことはできません。制度の仕組みとデメリットは次の記事で詳しく解説しています。
相続時精算課税110万円のデメリット|暦年課税に戻せない落とし穴
暦年贈与による分割贈与
暦年課税の基礎控除110万円を活用し、複数年に分けて少しずつ持分を贈与する方法もあります。土地の持分を毎年110万円以内で贈与すれば、その年の贈与税はかかりません。ただし土地全体を渡すには長い年数がかかり、その都度の登記費用が発生する点には注意が必要です。暦年贈与の改正後の注意点は次の記事で確認できます。
暦年贈与は2026年もまだ使える?改正後の注意点と早期開始のメリット
生前贈与のメリット
税負担の面では相続が有利になりやすい一方、生前贈与には次のメリットがあります。まず、親が元気なうちに確実に渡したい相手へ土地を渡せる点です。相続では遺産分割協議で他の相続人と話し合う必要があり、希望どおりに土地を渡せるとは限りません。生前贈与であれば、親の意思で特定の子どもへ土地を確定的に移すことができます。
次に、将来値上がりが見込まれる土地を早めに贈与することで、値上がり後の評価額での課税を避けられる可能性があります。また、収益を生む土地であれば、贈与後の賃料収入を子ども側に移すことで、親の相続財産の増加を抑える効果も期待できます。
まとめ
親の土地を生前贈与で名義変更する場合、受贈者に贈与税がかかり、登録免許税も相続の0.4%に対して2%と高く、不動産取得税も課税対象となります。評価額3,000万円の土地を一括贈与すると、贈与税と登録免許税だけで1,000万円を超える負担が生じる場合もあります。一方、相続まで待って名義変更すれば、遺産が基礎控除の範囲内であれば相続税はかからず、登録免許税も0.4%、不動産取得税も非課税です。
ただし相続では確実に希望どおり土地を渡せるとは限らず、生前贈与には確実に渡したい相手へ渡せるというメリットもあります。相続時精算課税制度や暦年贈与を組み合わせれば、贈与税の負担を抑えることも可能です。どちらの方法が適しているかは、土地の評価額、他の相続財産の状況、家族構成によって異なります。判断に迷う場合は、税理士へ相談したうえで方針を決めることをおすすめします。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の手続きにあたっては、税理士など専門家へご相談ください。
参考文献
親名義の土地の生前贈与に関するよくある質問まとめ
Q. 親の土地を生前贈与で名義変更するとどんな税金がかかりますか。
A. 贈与を受けた子どもに贈与税がかかるほか、名義変更の登記時に登録免許税(評価額の2%)、土地の取得に対して不動産取得税がかかります。土地の評価額が大きいほど贈与税の負担は重くなります。
Q. 生前贈与と相続では登録免許税はどのくらい違いますか。
A. 贈与による所有権移転登記の登録免許税は評価額の1,000分の20(2%)ですが、相続による所有権移転登記は1,000分の4(0.4%)です。評価額3,000万円の土地では贈与60万円に対し相続12万円となります。
Q. 相続で名義変更すれば贈与税はかかりませんか。
A. 相続による土地の取得に贈与税はかかりません。代わりに相続財産全体が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に相続税の対象となります。
Q. 贈与税の負担を抑える方法はありますか。
A. 相続時精算課税制度を選択すると累計2,500万円までの特別控除と年110万円の基礎控除が使えます。また暦年課税の基礎控除110万円を使い、持分を複数年に分けて贈与する方法もあります。
Q. 生前贈与のメリットは何ですか。
A. 親が元気なうちに確実に渡したい相手へ土地を渡せる点が最大のメリットです。相続では遺産分割協議が必要で希望どおりに渡せるとは限りませんが、生前贈与なら親の意思で特定の子どもへ確定的に移せます。
Q. 不動産取得税は生前贈与と相続で違いますか。
A. 贈与による土地の取得には不動産取得税が課されますが、相続による取得は不動産取得税の課税対象外です。税率や軽減措置は都道府県が定めるため、土地の所在地の窓口で確認してください。