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成年後見のデメリットと家族信託の違いを比較解説

2026-06-27
目次

親が認知症になった後の財産管理の方法を検討する際、多くの方が最初に候補として挙げるのが成年後見制度です。しかし、実際に法定後見を利用すると、家庭裁判所の関与が本人が亡くなるまで続き、後見人への報酬が継続的に発生し、財産の柔軟な運用や生前贈与ができなくなるといった制約に直面します。こうした制約を理解しないまま利用を始めると、想定していた財産管理ができず後悔するケースが少なくありません。

本記事では、成年後見制度(法定後見)のデメリットを整理したうえで、財産管理の柔軟性が高い家族信託との違いを比較し、どちらの制度を選ぶべきかの判断軸を解説します。制度の個別手続きではなく、制度選択の考え方に焦点を当てて説明します。

成年後見制度の基本的な仕組み

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分ではない方について、本人を法律的に支援する人を選ぶことで本人の権利を守る制度です[裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ」]。制度は本人の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3つの類型に分かれます。

このうち、判断能力が欠けているのが通常の状態にある方を対象とするのが後見であり、家庭裁判所が選任した成年後見人が本人に代わって財産を管理します。本記事で扱う成年後見制度は、この法定後見を指します。任意後見(本人が判断能力を有するうちに将来の後見人を契約で定めておく制度)とは異なる点にご注意ください。

成年後見制度が利用される典型的な場面

成年後見制度が必要になる代表的な場面は、認知症により本人の判断能力が低下し、預貯金の引き出しや不動産の売却、相続における遺産分割協議などができなくなった場合です。金融機関は名義人の判断能力低下を把握すると口座を凍結することがあり、家族であっても本人の預貯金を引き出せなくなります。このような口座凍結への対処については、関連記事もあわせてご確認ください。

認知症の親の銀行口座凍結を防ぐ生前対策と引き出し方法

成年後見制度(法定後見)の主なデメリット

成年後見制度は本人の権利を守るための有効な制度ですが、財産管理の観点からは複数の制約があります。ここでは、制度選択の判断で特に重要となるデメリットを整理します。

家庭裁判所の関与が継続する

成年後見制度では、後見人の選任だけでなく、その後の後見事務についても家庭裁判所が関与します。家庭裁判所は監督人の選任、後見人等の選任決定、報酬の付与決定などを行い、後見人は定期的に財産状況を家庭裁判所へ報告する義務を負います[裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ」]

この関与は原則として本人が亡くなるまで継続します。いったん後見が開始すると、本人の判断能力が回復しない限り途中でやめることは原則できず、家族の意向だけで後見人を交代させることもできません。財産管理に家庭裁判所という第三者の監督が恒常的に及ぶ点は、家族による自由な財産管理を望む方にとって大きな制約となります。

後見人への報酬が発生し続ける

専門職(弁護士や司法書士など)が後見人に選任された場合、その後見人に対して報酬が発生します。報酬を得るには後見人が家庭裁判所へ報酬付与の審判を申し立て、家庭裁判所が報酬を付与する旨の審判をした後に、本人の財産から報酬を受け取る仕組みです[裁判所「報酬の付与(成年後見制度、未成年後見制度)」]

報酬額は家庭裁判所が後見人および本人の資力その他の事情を考慮して決定するため、あらかじめ確定した金額を示すことはできません。重要なのは、この報酬が本人が亡くなるまで継続して本人の財産から支払われる点です。後見期間が長期にわたるほど累計の負担は大きくなり、家族が親族後見人となった場合でも報酬付与を申し立てれば同様に本人の財産から支払われます。

財産の積極的な運用や生前贈与ができない

成年後見制度における財産管理の目的は、あくまで本人の財産の保護にあります。後見人は本人の財産を適切に保護・管理し、本人の権利・利益を擁護する責任を負うため、不適切な事務処理は解任や責任追及につながる可能性があります[裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ」]

この保護を目的とする性質から、本人の財産を用いた積極的な資産運用や、相続税対策を目的とした生前贈与は原則として認められません。本人の利益にならない支出や、本人以外の家族の利益となる財産処分は制限されます。そのため、生前贈与を活用した相続税対策や、収益不動産の建て替えといった積極的な財産活用を予定している家庭では、成年後見制度のもとではこれらの実行が困難になります。

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家族信託の基本的な仕組みと特徴

家族信託は、信託法にもとづき、財産を持つ本人(委託者)が信頼できる家族(受託者)に財産を託し、受託者がその財産を管理・処分して受益者のために運用する仕組みです[e-Gov法令検索「信託法」(平成十八年法律第百八号)]。委託者が判断能力を有するうちに信託契約を結んでおくことで、その後に本人の判断能力が低下しても、受託者が契約で定められた範囲で財産管理を継続できます。

成年後見制度が財産の保護を主眼とするのに対し、家族信託は契約であらかじめ定めた目的に沿って財産を管理・処分できるため、財産管理の柔軟性が高いことが特徴です。ただし、家族信託は財産管理に関する制度であり、後述するとおり本人の身上監護(生活や療養看護に関する法律行為)を担う権限は含まれません。家族信託の費用や注意点については、関連記事で詳しく解説しています。

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成年後見制度と家族信託の比較

両制度は、財産管理を第三者や家族に委ねるという点では共通しますが、開始できる時期、財産管理の自由度、身上監護の可否、コストの発生の仕方などが大きく異なります。制度選択の判断軸となる主な項目を比較します。

成年後見
(法定後見)
家族信託
本人の判断能力が低下した後に家庭裁判所へ申立て 本人の判断能力があるうちに信託契約を締結
財産の保護が目的で運用・贈与は原則不可 契約で定めた範囲で柔軟に管理・処分が可能
身上監護に関する権限を含む 身上監護に関する権限は含まない
家庭裁判所の関与と監督が継続 家庭裁判所の関与は原則不要
専門職後見人には報酬が継続的に発生 契約時に組成費用が発生し継続報酬は任意

比較から分かるとおり、成年後見制度は本人の判断能力が低下した後でも利用できる一方、財産管理の自由度は低く、家庭裁判所の関与とコストが継続します。家族信託は柔軟な財産管理が可能ですが、本人の判断能力があるうちに契約を結ぶ必要があり、身上監護の権限を持たない点に注意が必要です。

身上監護が必要な場合の留意点

家族信託は財産管理に特化した制度であるため、施設への入所契約や医療・介護に関する法律行為といった身上監護には対応できません。身上監護が必要となる場面が想定される場合は、家族信託と成年後見制度を併用する、あるいは任意後見契約を組み合わせるといった設計が検討されます。財産管理と身上監護のどちらを重視するかが、制度選択の重要な判断軸となります。

制度選択を検討すべきタイミング

家族信託は本人の判断能力があるうちにしか契約できないため、すでに本人の判断能力が低下している場合は、選択肢が成年後見制度に限られます。一方、本人がまだ判断能力を有している段階であれば、家族信託や任意後見を含めた生前対策の選択肢を広く検討できます。認知症に備えた生前対策の全体像については、関連記事もあわせてご確認ください。

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まとめ

成年後見制度(法定後見)は本人の権利を守るための重要な制度ですが、家庭裁判所の関与が本人が亡くなるまで継続すること、専門職後見人には報酬が継続的に発生すること、財産の積極的な運用や生前贈与が原則できないことといったデメリットがあります。これらは財産の保護を目的とする制度である以上、避けがたい制約です。

これに対し家族信託は、本人の判断能力があるうちに契約を結ぶ必要があり身上監護の権限は持たないものの、契約で定めた範囲で柔軟な財産管理が可能です。どちらの制度が適しているかは、本人の判断能力の状況、財産管理に求める柔軟性、身上監護の必要性によって異なります。制度選択に迷われた場合は、相続と生前対策に精通した専門家へご相談ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案における判断は制度の詳細や最新の法令をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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参考文献

成年後見と家族信託の比較に関するよくある質問まとめ

Q. 成年後見制度の最大のデメリットは何ですか。

A. 財産の保護を目的とする制度であるため、積極的な資産運用や相続税対策のための生前贈与が原則としてできない点が大きなデメリットです。加えて、家庭裁判所の関与と監督が本人が亡くなるまで継続します。

Q. 成年後見人への報酬はいくらかかりますか。

A. 報酬額は家庭裁判所が後見人および本人の資力その他の事情を考慮して決定するため、一律の金額は定まっていません。専門職後見人の場合、報酬は本人が亡くなるまで継続して本人の財産から支払われます。

Q. 成年後見制度は途中でやめることができますか。

A. いったん後見が開始すると、本人の判断能力が回復しない限り原則として途中でやめることはできません。家族の意向だけで後見人を交代させることもできません。

Q. 家族信託と成年後見制度の最も大きな違いは何ですか。

A. 家族信託は契約で定めた範囲で柔軟に財産を管理・処分できるのに対し、成年後見制度は財産の保護が目的で運用や贈与が原則できない点が最も大きな違いです。ただし家族信託には身上監護の権限が含まれません。

Q. すでに親が認知症になっている場合でも家族信託は利用できますか。

A. 家族信託は本人の判断能力があるうちに信託契約を結ぶ必要があるため、すでに判断能力が低下している場合は利用が難しく、選択肢は成年後見制度に限られることが一般的です。

Q. 家族信託だけで身上監護に対応できますか。

A. 家族信託は財産管理に特化した制度であり、施設入所契約や医療・介護に関する法律行為といった身上監護には対応できません。身上監護が必要な場合は成年後見制度や任意後見契約との併用が検討されます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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