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相続時精算課税110万円のデメリット|暦年課税との選び方を解説

目次
  1. 相続時精算課税制度の基本
  2. 制度の対象者と対象財産
  3. 贈与税と相続税を通じた課税の仕組み
  4. 2500万円の特別控除と一律20%の税率
  5. 年110万円の基礎控除と2024年改正
  6. 基礎控除の新設と適用開始時期
  7. 相続財産に加算されない基礎控除部分
  8. 贈与税額の計算例
  9. 相続時精算課税の主なデメリット
  10. 暦年課税へ変更できない撤回不可
  11. 小規模宅地等の特例の適用除外
  12. 贈与時の価額での加算による値下がりリスク
  13. 複数の特定贈与者がいる場合の基礎控除のあん分
  14. 届出書と期限内申告の手続き負担
  15. 相続時精算課税のメリット
  16. 加算対象期間の影響を受けない110万円
  17. 大型贈与における税負担の繰延べ
  18. 値上がりが見込まれる財産の早期移転
  19. 暦年課税との選び方
  20. 両制度の比較
  21. 相続時精算課税が向くケース
  22. 暦年課税が向くケース
  23. 選択の手続きと期限
  24. 相続時精算課税選択届出書の提出期限
  25. 贈与税の申告と納税
  26. 相続時の申告と還付
  27. まとめ
  28. 参考文献
  29. 相続時精算課税のよくある質問まとめ

相続時精算課税とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などへ財産を贈与した場合に選べる贈与税の制度です。2024年(令和6年)1月1日以後の贈与からは、この制度にも年110万円の基礎控除が設けられました。その分には贈与税がかからず、しかも贈与した方が亡くなったときの相続財産にも加算されません。

この改正を受けて、「110万円の基礎控除ができたのなら、暦年課税より相続時精算課税のほうが得なのではないか」と迷う方も多いはずです。たしかに有利になる場面は確実に増えました。ただし、一度選ぶと同じ贈与者からの贈与について二度と暦年課税へ戻せない、贈与した土地に小規模宅地等の特例が使えなくなるなど、後から取り返しのつかないデメリットも同時に抱えることになります。

この記事では、相続時精算課税の仕組みと110万円基礎控除の効果を整理したうえで、見落としやすいデメリットと、暦年課税との選び分けの基準を、国税庁の公表資料に基づいて解説します。

相続時精算課税制度の基本

まず制度の輪郭を押さえます。贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、財産をもらう受贈者は、財産をあげる贈与者ごとにどちらを使うかを選べます。相続時精算課税は、その名のとおり贈与の時点でいったん軽い負担で財産を移し、相続の時点で最終的な精算を行う制度です。国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

制度の対象者と対象財産

誰でも使える制度ではありません。贈与者と受贈者の双方に、年齢と続柄の要件があります。年齢はいずれも贈与をした年、贈与を受けた年の1月1日時点で判定しますので、誕生日の前後で1年ずれる点に注意が必要です。

贈与者
(財産をあげる方)
贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母など
受贈者
(財産をもらう方)
贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人または孫
対象となる財産 贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません

贈与する財産に制限がないことは、この制度の大きな特徴です。現金でも自社株でも不動産でも使えますし、1回の贈与額に上限もありません。なお、この制度は贈与者ごとに選択できますので、父からの贈与には相続時精算課税を使い、母からの贈与は暦年課税のまま、という組み合わせも可能です。

贈与税と相続税を通じた課税の仕組み

相続時精算課税は、贈与税を安く済ませて終わりの制度ではありません。この制度を使って贈与した財産(相続時精算課税適用財産といいます)は、贈与者が亡くなったときに、相続財産の価額へ加算して相続税を計算します。つまり相続税の課税対象から外れるわけではないという点が、制度の根幹です。

そのうえで、贈与のときに納めた贈与税相当額は、計算された相続税額から差し引きます。差し引ききれない場合は、相続税の申告をすることで還付を受けられます。贈与税と相続税を通算して、最終的に相続税で帳尻を合わせる制度と理解すると分かりやすいはずです。

2500万円の特別控除と一律20%の税率

贈与税の計算では、1年間に特定贈与者から受けた財産の合計額から、まず基礎控除額110万円を差し引き、次に特別控除額2500万円を差し引きます。特別控除は累計の枠で、前年以前に使った分があれば、その残額が限度になります。

そして、両方の控除を超えた部分に対して一律20%の税率がかかります。暦年課税のように金額が増えるほど税率が上がる仕組みではありませんので、まとまった金額を一度に移す場面では贈与税の負担を大きく抑えられます。ただし、特別控除額は贈与税の期限内申告書を提出した場合に限り控除できる点は必ず覚えておいてください。

年110万円の基礎控除と2024年改正

ここからが本題の110万円です。2023年(令和5年)度の税制改正で、相続時精算課税にも毎年使える基礎控除が新設されました。この改正が、制度の使い勝手を大きく変えています。

基礎控除の新設と適用開始時期

相続時精算課税に係る基礎控除額110万円が適用されるのは、2024年(令和6年)1月1日以後にこの制度に係る贈与により取得した財産です。2023年(令和5年)12月31日以前の贈与については、基礎控除額の控除はありません。すでに以前から相続時精算課税を選択している方も、2024年以後の贈与からは基礎控除を使えます。

重要なのは、この110万円が暦年課税の基礎控除110万円とは別枠である点です。たとえば父からの贈与に相続時精算課税を選び、母からの贈与は暦年課税のままにしている場合、父からの贈与には相続時精算課税に係る基礎控除110万円を、母からの贈与には暦年課税に係る基礎控除110万円を、それぞれ適用できます。

相続財産に加算されない基礎控除部分

110万円基礎控除の効果は、贈与税がゼロになることだけではありません。むしろ本命は相続税側にあります。贈与者が亡くなったときに相続財産へ加算するのは、贈与を受けた年分ごとに、その年の贈与額の合計から基礎控除額を差し引いた残額とされているためです。

つまり、毎年110万円以内で贈与を続ければ、その分は贈与税もかからず、相続税の課税価格にも加算されません。ここが暦年課税との決定的な違いになります。暦年課税では、加算対象期間内の贈与は110万円以下であっても、亡くなった年に贈与された財産であっても相続税の課税価格に加算されるためです。国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

関連コラム生前贈与加算はいつから7年?経過措置と100万円控除を解説▸

贈与税額の計算例

実際の数字で確認します。2024年1月1日以後に、父から3年続けて毎年1000万円の贈与を受け、1年目から相続時精算課税を選択した場合の計算です。1年目は基礎控除110万円を引いたうえで、特別控除を890万円使います。

1,000万円 − 110万円 − 890万円 = 0円
2,500万円 − 890万円 = 1,610万円(翌年以降に繰り越される特別控除額)

2年目も同じく890万円の特別控除を使い、贈与税はかかりません。繰り越される特別控除額は720万円まで減ります。3年目になると特別控除の残額が足りず、超えた部分に20%の税率がかかります。

1,000万円 − 110万円 − 720万円 = 170万円
170万円 × 20% = 34万円

そして父が亡くなったときに相続税の課税価格へ加算するのは、各年の贈与額から110万円ずつを引いた残額の合計です。3年分で3000万円を贈与しても、加算されるのは2670万円にとどまります。国税庁 No.4409 贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)

890万円 + 890万円 + 890万円 = 2,670万円

改正前の同じ条件では、3年目の課税対象が500万円、贈与税は100万円となり、相続時に加算される額も3000万円全額でした。基礎控除の新設によって、贈与税で66万円、相続税の課税価格で330万円の差が生まれた計算になります。

相続時精算課税の主なデメリット

ここまで読むと有利な制度に見えますが、判断を誤ると取り返しがつかない論点がいくつもあります。相続時精算課税を選ぶ前に、必ず確認しておきたいデメリットを順に整理します。

暦年課税へ変更できない撤回不可

最大のデメリットは、一度選択すると撤回できないことです。相続時精算課税は贈与者ごとに選択できますが、いったんある贈与者について選ぶと、その贈与者から受ける財産については選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、暦年課税へ変更することはできません。

これは「今年だけ試しに使ってみる」ができないことを意味します。たとえば父からの贈与に相続時精算課税を選んだ後、数年たって財産構成が変わり、暦年課税で毎年少しずつ渡すほうが有利だと分かっても、父からの贈与について暦年課税へ戻す手立てはありません。制度の選択は、その贈与者との関係が続くかぎり一生涯の判断になります。

小規模宅地等の特例の適用除外

不動産を持つ方にとって見過ごせないのが、この論点です。相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等については、小規模宅地等の特例の適用を受けることができません。国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

小規模宅地等の特例は、被相続人の居住用の宅地等であれば330平方メートルまで80%、事業用の宅地等であれば400平方メートルまで80%を減額できる制度です。仮に自宅の敷地が特定居住用宅地等に該当し、限度面積の330平方メートル以内であれば、評価額6000万円の土地は相続で取得した場合に1200万円まで評価が下がります。

ところが、同じ土地を相続時精算課税で生前に贈与すると、相続税の課税価格には贈与時の価額がそのまま加算され、80%の減額は受けられません。減額の差は数千万円規模になり得ますので、自宅の敷地や賃貸物件の敷地を相続時精算課税で贈与する判断は、特に慎重に検討する必要があります。

贈与時の価額での加算による値下がりリスク

相続財産に加算する相続時精算課税適用財産の価額は、原則として贈与時の価額です。相続が発生した時点の時価ではありません。この点は、財産が値上がりすれば有利に、値下がりすれば不利に働きます。

たとえば贈与時に3000万円だった非上場株式が、相続時には1000万円まで下がっていたとしても、相続税の課税価格に加算するのは贈与時の3000万円です。値下がりした分だけ余計な相続税を負担することになります。将来の価値が読みにくい財産を早めに移す判断には、この片道リスクがついて回ります。

複数の特定贈与者がいる場合の基礎控除のあん分

110万円基礎控除は、必ずしも贈与者の人数分だけ増えるわけではありません。同一年中に2人以上の特定贈与者から贈与を受けた場合、相続時精算課税に係る基礎控除額110万円は、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格であん分します。

父と母の両方について相続時精算課税を選んでいる場合、父から110万円、母から110万円を受け取っても、控除できるのは合計で110万円までです。「両親それぞれから110万円ずつ非課税で受け取れる」と考えていると計算が合わなくなりますので、選択する贈与者を誰にするかは事前に設計しておく必要があります。

届出書と期限内申告の手続き負担

手続きの手間も現実的なデメリットです。制度を使うには、最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、受贈者の戸籍の謄本などの一定の書類を添えて「相続時精算課税選択届出書」を所轄税務署長へ提出しなければなりません。この期限を過ぎると、その年の贈与について相続時精算課税を選択できません。

さらに、2500万円の特別控除額は贈与税の期限内申告書を提出した場合に限り控除できます。申告を忘れたり期限に遅れたりすると、特別控除が使えず、控除前の金額に20%の税率がかかる事態になりかねません。贈与のたびに期限を管理する体制がとれるかどうかは、制度を選ぶ前に確認しておきたい点です。

相続時精算課税のメリット

デメリットを踏まえたうえで、それでもこの制度が力を発揮する場面があります。110万円基礎控除の新設によって、その範囲は明確に広がりました。

加算対象期間の影響を受けない110万円

暦年課税では、相続や遺贈により財産を取得した方が被相続人から加算対象期間内に受けた贈与は、相続税の課税価格へ加算されます。加算対象期間は、2024年1月1日以後の贈与について相続開始前7年以内へ段階的に延長され、相続開始日が2031年(令和13年)1月1日以後であれば7年となります。

これに対し、相続時精算課税の110万円基礎控除の部分は、いつ贈与したかにかかわらず相続財産へ加算されません。亡くなる直前の贈与であっても同じです。高齢で贈与を始める場合や、健康面の不安から時間的な余裕が読めない場合には、この違いが決定的に効いてきます。

大型贈与における税負担の繰延べ

2500万円の特別控除と一律20%の税率により、まとまった財産を一度に移すときの贈与税を大きく抑えられます。たとえば18歳以上の子が父から2500万円の贈与を受ける場合、暦年課税の特例税率では次のとおり810万5000円の贈与税がかかります。国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

2,500万円 − 110万円 = 2,390万円
2,390万円 × 45% − 265万円 = 810.5万円

同じ贈与を相続時精算課税で行えば、基礎控除110万円と特別控除2390万円の枠内に収まり、その年の贈与税はかかりません。

事業用資産や自社株を後継者へ確実に移したい場合、住宅資金や開業資金をまとまった額で援助したい場合など、時間をかけて少しずつ渡すことが現実的でない場面では有力な選択肢になります。ただし相続時には加算されますので、相続税そのものが減るわけではない点を取り違えないようにしてください。

値上がりが見込まれる財産の早期移転

加算する価額が贈与時の価額で固定されることは、値上がりが確実視される財産についてはメリットに転じます。開発計画が具体化している土地や、業績の伸びが見込まれる会社の株式などがこれにあたります。

贈与時に2000万円と評価された財産が相続時に5000万円になっていても、相続税の課税価格へ加算するのは2000万円です。差額の3000万円分には相続税がかからない計算になります。もっとも、将来の値上がりは予測にすぎませんので、賭けの側面があることは意識しておく必要があります。

暦年課税との選び方

ここまでの内容を、判断できる形に整理します。まず両制度の性格の違いを一覧で確認してください。制度ごとに見るほうが、比較軸の違いを取り違えずに済みます。

両制度の比較

暦年課税の
基礎控除
受贈者ごとに毎年110万円
暦年課税の
税率
課税価格に応じた10%から55%までの累進税率
暦年課税の
相続時の加算
相続や遺贈で財産を取得した方が加算対象期間内に受けた贈与を加算(110万円以下の贈与も加算対象)
暦年課税の
選択手続
届出書の提出は不要で、贈与者ごとの変更も可能
相続時精算課税の
基礎控除
特定贈与者からの贈与について毎年110万円(複数の特定贈与者がいる場合はあん分)
相続時精算課税の
特別控除
累計2500万円(期限内申告書の提出が要件)
相続時精算課税の
税率
基礎控除と特別控除を超えた部分に一律20%
相続時精算課税の
相続時の加算
贈与時の価額から基礎控除額を差し引いた残額を、時期を問わずすべて加算
相続時精算課税の
選択手続
届出書の提出が必要で、選択後は暦年課税へ戻せない

この2つを並べると、判断の軸は「贈与に使える時間がどれだけ残っているか」と「相続税が実際にかかる見込みか」の2点に絞られます。以下で具体的なケースに落とし込みます。

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相続時精算課税が向くケース

次のような状況では、相続時精算課税に分があります。共通するのは、暦年課税で時間をかける前提が成り立ちにくい点です。

  • 贈与者が高齢で、暦年課税の加算対象期間を超えて贈与を続けられる見通しが立たない場合
  • 相続財産の総額が相続税の基礎控除額以下で、そもそも相続税がかからない見込みの場合
  • 自社株や事業用資産など、まとまった財産を後継者へ一度に移す必要がある場合
  • 今後の値上がりが具体的に見込まれる財産を早めに移したい場合

特に2つ目は見落とされがちです。相続税がかからない家庭であれば、相続時に加算されること自体が不利になりません。財産を早く渡せて贈与税もかからないという、純粋な利点だけを受け取れる形になります。

暦年課税が向くケース

反対に、次のような状況では暦年課税を維持するほうが有利です。

  • 贈与者がまだ若く、10年以上にわたって計画的に贈与を続けられる場合
  • 自宅の敷地など、小規模宅地等の特例を使いたい不動産が相続財産に含まれる場合
  • 子だけでなく孫や子の配偶者など、相続人以外へも財産を移したい場合
  • 将来の値下がりが否定できない財産を対象にする場合

3つ目は暦年課税の強みが最も出る場面です。相続や遺贈により財産を取得しない孫への贈与であれば、暦年課税の加算対象にならないためです。誰に渡すかによって最適な制度は変わりますので、家族全体の設計として考える必要があります。

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選択の手続きと期限

相続時精算課税を使うと決めたら、期限内の手続きが不可欠です。手続きを誤ると制度そのものが使えなくなりますので、流れを正確に把握しておいてください。

相続時精算課税選択届出書の提出期限

相続時精算課税を選択しようとする受贈者は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、納税地の所轄税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を、受贈者の戸籍の謄本などの一定の書類とともに提出します。届出書は贈与税の申告書の提出期間と同じ期間内に出す必要があります。

なお、特定贈与者からの贈与により取得した財産の価額が110万円を超えるなど、贈与税の申告書を提出する場合には、届出書および一定の書類を贈与税の申告書に添付して所轄税務署長へ提出します。届出書は最初の年だけで足り、2年目以降に再提出する必要はありません。

贈与税の申告と納税

贈与税の申告と納税は、原則として財産をもらった方が、もらった年の翌年の2月1日から3月15日までに行います。申告書の提出先は、原則として贈与を受けた方の住所を所轄する税務署です。国税庁 No.4429 贈与税の申告と納税

前述のとおり、2500万円の特別控除は期限内申告が要件です。期限までに申告しなかった場合や実際にもらった額より少ない額で申告した場合には、本来の税金のほかに加算税がかかり、納税が遅れれば延滞税もかかります。制度の恩恵を確実に受けるために、申告期限の管理は最優先で行ってください。

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相続時の申告と還付

「相続時精算課税を使うと必ず相続税の申告が必要になる」と誤解されることがありますが、そうではありません。相続時精算課税適用財産を相続財産に加算して計算した結果、相続税の基礎控除額以下であれば相続税の申告は必要ありません。国税庁 No.4301 相続時精算課税の選択と相続税の申告義務

ただし、相続税の申告の必要がない場合でも、相続時精算課税適用財産について既に納めた贈与税があるときは、相続税の申告をすることで還付を受けられます。この還付を受けるための申告書は、相続開始の日の翌日から起算して5年を経過する日まで提出できます。納めすぎた贈与税を取り戻せる制度ですので、該当する方は忘れずに手続きしてください。

まとめ

2024年に新設された年110万円の基礎控除により、相続時精算課税は「毎年110万円までなら贈与税もかからず、相続財産にも加算されない」制度になりました。暦年課税の110万円が加算対象期間内であれば相続財産に加算されることと比べると、時間的な余裕が少ない方にとっては明確な利点です。

一方で、一度選ぶと暦年課税へ戻せないこと、贈与した宅地等に小規模宅地等の特例が使えないこと、相続時に加算する価額が贈与時の価額で固定されること、複数の特定贈与者がいれば110万円をあん分することといったデメリットは、110万円基礎控除の新設後も何ひとつ変わっていません。とりわけ自宅の敷地を持つ方は、小規模宅地等の特例との比較を必ず行ってください。

判断の分かれ目は、贈与に使える年数、相続税がかかる見込みの有無、そして財産の種類の3点に集約されます。この3点は家庭ごとに事情が大きく異なり、いったん選択すると修正がきかない性質のものです。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

相続時精算課税のよくある質問まとめ

Q. 相続時精算課税の110万円の基礎控除はいつの贈与から使えますか。

A. 2024年(令和6年)1月1日以後に相続時精算課税に係る贈与により取得した財産から適用されます。2023年(令和5年)12月31日以前の贈与については基礎控除額の控除はありません。以前からこの制度を選択している方も、2024年以後の贈与には基礎控除を使えます。

Q. 相続時精算課税を選んだ後で暦年課税に戻せますか。

A. 戻せません。一度選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、選択をした年分以降すべて相続時精算課税が適用され、暦年課税へ変更することはできません。ほかの贈与者からの贈与は暦年課税のままにできます。

Q. 相続時精算課税で贈与した土地に小規模宅地等の特例は使えますか。

A. 使えません。相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等については、小規模宅地等の特例の適用を受けることができません。自宅の敷地など特例の対象となる不動産がある場合は、贈与する前に減額の効果と比較して検討する必要があります。

Q. 相続時精算課税の110万円は暦年課税の110万円と別枠ですか。

A. 別枠です。相続時精算課税を選択した贈与者からの贈与には相続時精算課税に係る基礎控除110万円を、それ以外の贈与者からの贈与には暦年課税に係る基礎控除110万円を適用できます。ただし同一年中に2人以上の特定贈与者から贈与を受けた場合、相続時精算課税の110万円は特定贈与者ごとの課税価格であん分します。

Q. 相続時精算課税を選ぶには何をすればよいですか。

A. 最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、受贈者の戸籍の謄本などの一定の書類を添えて相続時精算課税選択届出書を納税地の所轄税務署長へ提出します。贈与税の申告書を提出する場合は、届出書を申告書に添付して提出します。

Q. 相続時精算課税を使うと必ず相続税の申告が必要になりますか。

A. 必ずしも必要ではありません。相続時精算課税適用財産を相続財産に加算して計算した結果、相続税の基礎控除額以下であれば申告は不要です。ただし既に納めた贈与税がある場合は、相続税の申告をすることで還付を受けられます。

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本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。