相続が起きたとき、亡くなった方の財産すべてに相続税がかかるわけではありません。とはいえ「どの財産に相続税がかかって、どれがかからないのか分からない」という不安を抱える方は少なくありません。お墓や仏壇、生命保険金、死亡退職金など、法律で相続税がかからないと定められた財産があり、これらを正しく理解しておくことで、余計な税負担を避けられます。
この記事では、相続税 非課税財産にはどのようなものがあるのか、その範囲や計算方法、間違えやすいポイントまでを、国税庁や法令の根拠をもとに整理します。
相続税の非課税財産とは
相続税の非課税財産とは、相続や遺贈によって取得した財産のうち、その性質や社会政策上の配慮から相続税の課税対象としないと法律で定められた財産のことです。これは相続税法第12条に「相続税の課税価格に算入しない財産」として規定されています[e-Gov法令検索 相続税法]。
相続財産全体からこの非課税財産を除いたうえで、さらに債務や葬式費用を差し引き、基礎控除を適用して課税対象額を計算します。そのため、どの財産が非課税に当たるのかを最初に押さえておくことが、相続税を正しく把握する出発点となります。基礎控除の計算については相続税の課税価格と基礎控除の計算方法をステップ解説もあわせてご確認ください。
主な非課税財産の一覧
国税庁のタックスアンサーでは、相続税がかからない財産の主なものが具体的に挙げられています。代表的なものを整理すると次のとおりです[国税庁No.4108 相続税がかからない財産]。
| 財産の種類 | 非課税の範囲 |
|---|---|
| 墓地・墓石・仏壇・仏具・神を祭る道具など日常礼拝している物(祭祀財産) | 全額非課税(ただし骨とう的価値があるなど投資対象や商品として所有する物は課税) |
| 生命保険金等(みなし相続財産) | 500万円 × 法定相続人の数までの部分 |
| 退職手当金等(死亡退職金) | 500万円 × 法定相続人の数までの部分 |
| 心身障害者共済制度に基づく給付金を受ける権利 | 全額非課税 |
| 公益事業を行う一定の者が取得し公益目的に確実に使われる財産 | 全額非課税 |
| 国・地方公共団体・特定の公益法人などへ申告期限までに寄附した財産 | 非課税(一定の要件あり) |
お墓や仏壇などの祭祀財産は、日常的に礼拝している物であれば相続税がかかりません。生命保険金と死亡退職金には、それぞれ「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設けられています。国や地方公共団体、認定NPO法人などへ相続財産を寄附した場合の取り扱いは[国税庁No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき]で詳しく説明されています。
生命保険金・死亡退職金の非課税枠の計算方法と注意点
生命保険金と死亡退職金は、亡くなった方が所有していた財産ではなく、死亡をきっかけに相続人が受け取る「みなし相続財産」です。これらには残された家族の生活保障という性格があるため、一定額まで非課税とされています。
非課税限度額は、生命保険金・死亡退職金それぞれで次のように計算します。
たとえば法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、非課税限度額は次のとおりです。
この場合、受け取った生命保険金のうち1,500万円までが非課税となり、これを超えた部分が相続税の課税対象になります。死亡退職金についても同じ計算で、別枠として1,500万円まで非課税です。課税対象となる部分の考え方は、生命保険金は[国税庁No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金]、死亡退職金は[国税庁No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金]で確認できます。
注意したいのは、相続を放棄した人はこの非課税枠を使えないという点です。相続放棄をした人が生命保険金を受け取ること自体はできますが、その金額に非課税枠は適用されず、受け取った全額が課税対象となります。また、非課税枠の計算に用いる法定相続人の数には、相続放棄があった場合でも放棄がなかったものとした人数を用います。生命保険の非課税枠の仕組みは生命保険の相続税非課税枠500万円の仕組みと注意点で詳しく解説しています。
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非課税財産と間違えやすいもの
非課税財産と思い込んでいたものが、実際には課税対象になるケースがあります。判断を誤ると申告漏れにつながるため、次の点に注意が必要です。
名義預金
子や孫の名義になっている預金でも、実際の資金を出したのが亡くなった方であり、その管理も本人が行っていた場合は名義預金として亡くなった方の相続財産に含まれます。名義が家族のものであっても非課税にはならず、相続税の課税対象となる点に注意が必要です。
高価すぎる仏具・骨とう的価値のある物
仏壇・仏具は原則として非課税ですが、純金製の仏具など投資や資産保有を目的とした高価な物や、骨とう的価値があり商品として所有している物は、非課税財産に当たらず相続税の課税対象になり得ます[国税庁No.4108 相続税がかからない財産]。日常礼拝の範囲を超える物は課税されると理解しておくと安全です。仏具の非課税と課税の境界については相続で高価な仏具は非課税?課税対象との境界線を徹底解説!もご覧ください。
申告での扱い
非課税財産は相続税の課税価格に算入されませんが、生命保険金や死亡退職金は「受け取った総額」と「非課税限度額」の両方を相続税の申告書に記載したうえで差し引く形になります。単に申告書に載せないのではなく、非課税枠を適用した過程を示す必要があります。
また、相続財産から控除できるのは非課税財産だけではありません。借入金などの債務や葬式費用も差し引くことができます。控除できる債務の範囲は[国税庁No.4126 相続財産から控除できる債務]で確認できます。これらを正しく反映することで、課税対象額を適切に計算できます。
まとめ
相続税の非課税財産には、お墓や仏壇などの祭祀財産、生命保険金・死亡退職金の「500万円×法定相続人の数」の非課税枠、公益目的の寄附財産、心身障害者共済制度の給付金などがあります。一方で、名義預金や投資目的の高価な仏具のように、非課税と誤解しやすいものが課税対象になるケースもあります。
非課税財産の判定や非課税枠の計算は、相続放棄の有無や財産の性質によって結論が変わることがあります。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
参考文献
- 国税庁No.4108 相続税がかからない財産
- 国税庁No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
- 国税庁No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金
- 国税庁No.4126 相続財産から控除できる債務
- 国税庁No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき
- e-Gov法令検索 相続税法
相続税の非課税財産のよくある質問まとめ
Q.お墓や仏壇には相続税がかかりますか。
A.日常的に礼拝している墓地・墓石・仏壇・仏具などの祭祀財産は相続税がかかりません。ただし骨とう的価値があるものや投資・商品として所有している物は課税対象になります。
Q.生命保険金の非課税枠はいくらですか。
A.生命保険金のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までが非課税です。たとえば法定相続人が3人なら1,500万円までが非課税となります。
Q.死亡退職金にも非課税枠はありますか。
A.あります。死亡退職金にも500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの非課税枠があり、生命保険金とは別枠で適用されます。
Q.相続放棄をした人も非課税枠を使えますか。
A.相続を放棄した人は生命保険金や死亡退職金の非課税枠を使えません。受け取った金額は全額が課税対象になります。ただし非課税枠の計算に用いる法定相続人の数には放棄した人も含めます。
Q.子ども名義の預金は非課税ですか。
A.名義が子や孫でも、実際の資金の出どころや管理が亡くなった方であれば名義預金として相続財産に含まれ、相続税の課税対象になります。
Q.相続財産を寄附すると非課税になりますか。
A.相続税の申告期限までに国や地方公共団体、認定NPO法人などの特定の法人へ寄附した財産は、一定の要件を満たせば非課税になります。