税理士法人プライムパートナーズ

暗号資産の相続税評価|課税時期の取引価格と実務の注意点

2026-07-10
目次

ビットコインをはじめとする暗号資産を相続したとき、その財産をいくらで申告すればよいのか、判断に迷う方は少なくありません。株式や預金と違って値動きが激しく、そもそも残高の確認方法さえ分からない、というご相談を実務でもよくいただきます。この記事では、暗号資産の相続税評価の基本ルールから、秘密鍵が分からない場合や準確定申告といった実務でつまずきやすい点まで、税理士が順を追って解説します。

暗号資産の相続税評価の基本ルール

結論からお伝えすると、ビットコインなどの暗号資産の相続税評価は、活発な市場が存在する場合、課税時期(相続開始日)における取引価格を基準に評価します。上場株式や外貨預金と同じように、亡くなった日の時価を基礎に金額を確定させる考え方です。まずは、この基本の枠組みを押さえておきましょう。

課税時期の取引価格による評価方法

活発な市場が存在する暗号資産については、相続人等の納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者(取引所・販売所)が公表する、課税時期における取引価格によって評価します[国税庁 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)]。課税時期とは、原則として被相続人が亡くなった相続開始日を指します。ここでいう「活発な市場」とは、継続的に価格が公表され、その価格を基に十分な数量と頻度で取引が行われている状態のことです。

実務では、被相続人が利用していた取引所から、相続開始日時点の残高と価格が分かる残高証明書などを取り寄せ、その金額を評価額とします。円建てで取引価格が公表されている主要な暗号資産であれば、この方法で評価額を確定できます。時価で換算して評価する流れは、相続税申告での外貨預金の評価とも共通する考え方です。

活発な市場が存在しない場合の評価

一方、取引所に上場していないトークンなど、活発な市場が存在しない暗号資産の場合は、客観的な交換価値を示す相場が成立していません。この場合は、その暗号資産の内容や性質、取引実態等を勘案して個別に評価することになります[国税庁 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)]。取得価額や売買実例価額などを基に、合理的な方法で価額を見積もる必要があり、評価が難しくなるため、専門家への相談をおすすめします。

相続財産としての把握と評価額の確定

暗号資産は目に見えない財産のため、まずは「どこに」「どれだけ」あるのかを把握することが出発点になります。国内取引所に預けている場合と、自分で管理するウォレットに保有している場合とで、確認の難しさが大きく変わります。下の表で、評価にあたって押さえておきたい基本事項を整理します。

評価の基準日 課税時期(相続開始日)
評価額の基礎 相続人等が利用する暗号資産交換業者が公表する取引価格
譲渡益の所得区分 原則として雑所得
準確定申告の期限 相続開始を知った日の翌日から4か月以内

国内の取引所に預けている暗号資産は、取引所へ死亡の連絡を行い、残高証明書の発行を依頼するのが基本的な流れです。相続に必要な書類は種類が多いため、全体像は相続税申告の必要書類一覧もあわせてご確認ください。申告漏れがあると税務調査の対象になりやすい財産でもあるため、把握の段階から慎重に進めることが大切です相続税の税務調査で対象になりやすい人の特徴もご参考ください。

実務で問題になりやすい3つの注意点

暗号資産の相続には、他の財産にはない独特の難しさがあります。ここでは、実務で特にご相談の多い3つの論点を、正直にお伝えします。いずれも「知らなかった」では済まされない、税負担に直結する重要な点です。

秘密鍵やパスワードが不明で換金できない場合

もっとも深刻なのが、被相続人しか秘密鍵やパスワードを知らず、相続人がウォレットにアクセスできないケースです。この場合、実際には引き出しも換金もできません。しかし、暗号資産という財産が存在する以上、相続税の課税対象から当然に外れるわけではない点に注意が必要です。換金できないのに相続税だけがかかる、という理不尽にも感じる事態が起こりえます。

生前対策として、取引所やウォレットの情報、パスワードの保管場所を家族が分かる形で残しておくことが、こうしたリスクを避ける最も確実な方法です。実務では、被相続人のパソコンやスマートフォンの中身を丹念に確認して手がかりを探すこともありますが、確実ではありません。

被相続人の含み益と準確定申告

被相続人が生前に暗号資産を売却したり、他の暗号資産と交換したりして利益(含み益の実現)が出ていた場合、その利益は原則として雑所得となり、所得税の対象になります[国税庁No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係]。亡くなった年に売却益が出ていれば、相続人がその申告を引き継ぐ必要があります。これを準確定申告といいます。

準確定申告は、相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に、申告と納税を行わなければなりません[国税庁No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)]。相続税の申告期限(10か月以内)よりも短いため、見落とすと期限に間に合わなくなります。手続きの詳細は準確定申告の期限と必要書類で解説していますので、あわせてご覧ください。

相続税と所得税の二重課税的な負担

暗号資産の相続で見落とされがちなのが、相続税と所得税の両方がかかる負担です。相続時にはその評価額に相続税がかかります。さらに、相続した暗号資産を相続人が売却すると、その売却益に対して所得税(雑所得)がかかります。

このとき、相続人が引き継ぐ取得価額は被相続人の取得価額となるため、被相続人が保有していた期間の値上がり益(含み益)まで含めて所得税が課される点がポイントです。相続税評価額で税負担が完結するわけではありません。相続後に売却した場合の所得は、次のように計算します。

売却価額 − 被相続人から引き継いだ取得価額 = 雑所得(所得税の課税対象)

たとえば被相続人が10万円で取得した暗号資産が相続開始日に300万円になっていれば、300万円に相続税がかかります。相続人がその後400万円で売却すれば、取得価額10万円を差し引いた390万円が雑所得となり、所得税の対象です。相続税と所得税で負担が重なりやすい構造のため、売却のタイミングを含めた事前の検討が欠かせません。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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まとめ

暗号資産の相続税評価は、活発な市場が存在する場合、課税時期(相続開始日)における取引所・販売所の取引価格を基準に行います。一方で、秘密鍵が分からず換金できなくても課税されうること、被相続人の含み益に準確定申告が必要になりうること、相続税と所得税が重なりやすいことなど、実務では独特の注意点が伴います。値動きが大きく手続きも複雑な財産だからこそ、早めに保有状況を整理し、専門家と相談しながら進めることをおすすめします。ビットコイン等を財産債務調書へ記載する要件とあわせて把握しておくと安心です。

参考文献

暗号資産の相続税評価のよくある質問まとめ

Q.ビットコインの相続税評価はどの時点の価格を使いますか。

A.活発な市場が存在する暗号資産は、課税時期(相続開始日)に相続人等が取引を行う暗号資産交換業者が公表する取引価格で評価します。原則として被相続人が亡くなった日の時価が基準になります。

Q.取引所に上場していない暗号資産はどう評価しますか。

A.活発な市場が存在しない暗号資産は、客観的な相場が成立していないため、その内容や性質、取引実態等を勘案して個別に評価します。取得価額や売買実例価額を基に合理的な方法で見積もる必要があり、評価が難しいため専門家への相談をおすすめします。

Q.秘密鍵やパスワードが分からず換金できない暗号資産にも相続税はかかりますか。

A.換金できない場合でも、暗号資産という財産が存在する以上、相続税の課税対象から当然に外れるわけではありません。生前にパスワードや取引所情報の保管場所を家族に共有しておくことが有効な対策です。

Q.被相続人が亡くなった年に暗号資産の売却益がある場合はどうしますか。

A.売却や交換で生じた利益は原則として雑所得となり、相続人が準確定申告を行う必要があります。準確定申告は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をしなければなりません。

Q.相続した暗号資産を売却すると税金は二重にかかりますか。

A.相続時に評価額へ相続税がかかり、相続人が売却するとその売却益に所得税がかかります。取得価額は被相続人のものを引き継ぐため、被相続人の含み益まで所得税の対象となり、負担が重なりやすい構造です。

Q.暗号資産の相続税評価は自分で行えますか。

A.主要な取引所の残高証明書があれば評価自体は可能ですが、準確定申告や二重課税、活発な市場が存在しない場合の見積りなど判断が難しい論点が多い財産です。誤りを避けるため税理士への相談をおすすめします。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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