税理士法人プライムパートナーズ

企業年金の死亡一時金・遺族給付金に相続税はかかる?非課税枠を解説

2026-07-15
目次

ご家族が在職中に亡くなられたとき、勤務先から死亡退職金や企業年金の死亡一時金・遺族給付金が支払われることがあります。結論からお伝えすると、これらのお金は原則として相続税の課税対象(みなし相続財産)になりますが、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が使えるため、実際には税金がかからないケースも少なくありません国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金

ただし、同じ企業年金のお金でも「一時金か年金形式か」「死亡後いつ支給が確定したか」によって、相続税ではなく所得税(一時所得)になったり、そもそも税金がかからなかったりと、課税関係が大きく変わります。ここを誤解したまま申告すると、申告漏れや逆に税金の払いすぎにつながってしまいます。

この記事では、相続税を専門とする税理士法人プライムパートナーズが、確定給付企業年金・企業型DC・iDeCoなど制度別の死亡一時金の扱い、非課税枠の計算例、年金形式で受け取る場合の評価、未支給年金の取扱いまで、国税庁の公式情報に基づいてやさしくご説明しますね。

企業年金と相続税の関係|かかる場合・かからない場合の結論マップ

まず全体像を整理しましょう。亡くなった方に関連して遺族が受け取るお金は、種類ごとに課税関係が決まっています。次の表が本記事の結論マップです。

遺族が受け取るお金 課税関係
死亡退職金・企業年金の死亡一時金(死亡後3年以内に支給確定) 相続税(みなし相続財産。500万円×法定相続人の数の非課税枠あり)
死亡後3年を経過してから支給が確定した死亡退職金・死亡一時金 相続税はかからず、受け取った遺族の一時所得として所得税
企業年金の遺族給付金を年金形式で受け取る場合 年金受給権に相続税(毎年受け取る年金に所得税はかからない)
国民年金・厚生年金の遺族年金 所得税も相続税も非課税
公的年金の未支給年金 相続税はかからず、受け取った遺族の一時所得

このように「企業年金だから必ず相続税」というわけではありません。ご自身が受け取ったお金がどれに当たるか、支払通知書を手元に置きながら順にご確認くださいね。

死亡退職金・死亡一時金は「みなし相続財産」|非課税枠は500万円×法定相続人

被相続人(亡くなった方)に支給されるべきであった退職手当金や功労金などで、死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続または遺贈により取得したものとみなされて相続税の課税対象になりますe-Gov法令検索 相続税法第3条国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金。企業年金の死亡一時金も、後述のとおり政令でこの「退職手当金等」に含まれています。遺産分割の対象になる本来の相続財産とは異なる、税法独自の扱いですので、みなし相続財産の全体像を解説した記事もあわせてご覧ください。

関連コラムみなし相続財産とは|課税される財産一覧と非課税枠の計算

ただし、相続人が受け取った退職手当金等には次の非課税枠が用意されています。

項目 内容
非課税限度額 500万円 × 法定相続人の数
法定相続人3人の場合 500万円×3人=1,500万円まで非課税

具体例で見てみましょう。法定相続人が妻と子2人の計3人で、死亡退職金1,000万円と確定給付企業年金の死亡一時金800万円を相続人が受け取った場合を考えます国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金。まず非課税限度額を求め、受け取った合計額から差し引いて課税対象額を計算します。

500万円 × 法定相続人3人 = 非課税限度額1,500万円
死亡退職金1,000万円 + 死亡一時金800万円 = 受取合計1,800万円
受取合計1,800万円 − 非課税限度額1,500万円 = 課税対象300万円

このケースで課税対象になるのは300万円だけで、受け取った合計が非課税限度額の1,500万円以下であれば課税されません。

注意点が3つあります。第一に、この非課税枠が使えるのは相続人が取得した分だけで、相続人以外の方(例えば内縁の配偶者や孫)が受け取った退職手当金等には非課税の適用がありません。第二に、相続を放棄した人が受け取った場合もその人は非課税の適用を受けられませんが、非課税限度額を計算する際の「法定相続人の数」には放棄した人も含めます。第三に、弔慰金は通常相続税の対象になりませんが、業務上の死亡では普通給与の3年分、業務上の死亡でないときは普通給与の半年分を超える部分が退職手当金等として課税対象になります国税庁 No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い

確定給付企業年金・企業型DC・iDeCo|制度別の死亡一時金の課税関係

「うちの会社の企業年金も対象になるの?」という疑問にお答えします。相続税法施行令1条の3は、みなし相続財産となる退職手当金等に含まれる給付を具体的に列挙しており、主な企業年金制度はほぼカバーされていますe-Gov法令検索 相続税法施行令第1条の3

  • 確定給付企業年金(DB):規約に基づいて支給を受ける年金または一時金(遺族給付金・死亡一時金)
  • 企業型確定拠出年金(企業型DC):企業型年金規約に基づいて支給を受ける一時金(死亡一時金)
  • iDeCo(個人型確定拠出年金):個人型年金規約に基づいて支給を受ける一時金(死亡一時金)
  • 企業年金連合会:中途脱退者等に係る措置として支給を受ける一時金
  • 中小企業退職金共済(中退共)・特定退職金共済:退職金共済契約等に基づいて支給を受ける年金または一時金

一方で例外もあります。厚生年金基金から支給される死亡一時金は、厚生年金保険法に非課税規定が設けられているため、みなし相続財産にはならず相続税は課税されません国税庁 質疑応答事例 厚生年金基金が支給する死亡一時金に係る退職手当金等受給者別支払調書の提出義務。同じ「企業年金の死亡一時金」という名前でも、どの制度から支払われたかで結論が変わるのです。支払元の制度名は、支払通知書や勤務先の年金規約で必ず確認しましょう。

死亡後3年以内かどうかで税金が変わる「3年ルール」

死亡一時金の課税関係を分けるもう一つの軸が、支給が確定した時期です。相続税の対象になるのは「被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの」に限られます国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金。3年を経過した後に支給が確定したものは、相続税ではなく受け取った遺族の一時所得として所得税の対象になります国税庁 所得税基本通達 法第34条《一時所得》関係(34-2)

支給が確定した時期 課税関係
死亡後3年以内に支給が確定 相続税(みなし相続財産・非課税枠あり。所得税は課税されない)
死亡後3年を経過した後に支給が確定 受け取った遺族の一時所得として所得税

「支給が確定した」とは、死亡退職の場合は支給される金額が死亡後3年以内に確定したこと、生前に退職していた場合は支給金額が死亡後3年以内に確定したことを指します(前掲No.4117)。なお、みなし相続財産として相続税の課税価格に算入されたものには所得税はかかりません国税庁 所得税基本通達 法第9条《非課税所得》関係(9-17)。相続税と所得税が二重にかかることはないのでご安心ください。

実務では、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の死亡一時金は遺族からの請求を経て支給されるため、請求が遅れると課税関係が変わってしまう点に注意が必要です。受取人の範囲・順位や請求手続は確定拠出年金法と各規約の定めによりますので、勤務先や運営管理機関に早めに確認することをおすすめします。死亡一時金が非課税枠を超える場合や他の遺産と合わせて基礎控除を超える場合には、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告が必要です国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

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遺族給付金を年金形式で受け取る場合|相続税評価と毎年の所得税

確定給付企業年金では、遺族給付金を一時金ではなく年金形式で受け取れる規約もあります。在職中に亡くなり、会社の規約等に基づいて遺族に退職金として年金が支払われることになった場合、その年金受給権が死亡した方の退職手当金等として相続税の対象になります国税庁 No.4123 相続税等の課税対象になる年金受給権。将来分割で受け取るお金を、相続時点で「権利」としてまとめて評価するイメージですね。

年金受給権の価額は、定期金に関する権利の評価を定めたe-Gov法令検索 相続税法第24条に基づいて評価します。有期定期金の場合は、①解約返戻金相当額、②一時金で受け取れる場合はその一時金の金額、③1年当たりの平均額に残存期間に応じた予定利率の複利年金現価率を乗じた金額、のいずれか多い金額です。年金総額そのものではなく現在価値ベースで評価される一方、3つのうち最も多い金額を採用する点が特徴です。

それでは、毎年受け取る年金に所得税もかかるのでしょうか。確定給付企業年金の規約に基づいて遺族に支給される年金は、相続税の課税対象になる一方で、毎年受け取る年金には所得税が課税されません国税庁 No.1605 遺族の方に支給される公的年金等。本人が生前に老齢給付として受け取る確定給付企業年金が公的年金等として雑所得になるのとは扱いが異なります国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係

受け取り方 課税関係
死亡一時金で受け取る 一時金の額が退職手当金等として相続税の対象(非課税枠あり)
遺族給付金を年金形式で受け取る 年金受給権の評価額が相続税の対象(毎年の年金に所得税はかからない)

年金形式の場合も、その受給権は退職手当金等として「500万円×法定相続人の数」の非課税枠の対象になります国税庁 No.4123 相続税等の課税対象になる年金受給権。一時金と年金のどちらを選べるかは規約次第ですが、評価額や他の財産との兼ね合いで相続税額が変わるため、選択の余地がある場合は事前に試算しておくと安心です。

公的年金の遺族年金・未支給年金はどうなる?

企業年金と混同しやすいのが、国から支給される公的年金まわりのお金です。まず、国民年金法や厚生年金保険法などに基づいて遺族に支給される遺族年金・遺族恩給は、原則として所得税も相続税も課税されません(前掲No.1605)。遺族の生活保障のための給付ですから、税金の心配なく受け取っていただけます。

一方、亡くなった方に支給されるはずだった年金がまだ支払われていない場合、生計を同じくしていた遺族が「未支給年金」として自分の名前で請求できます。この未支給年金は相続財産には含まれず、相続税はかかりません。最高裁判決(平成7年11月7日)で未支給年金請求権の相続性が否定されており、遺族が自己の固有の権利として受け取るものだからです国税庁 質疑応答事例 未支給の国民年金に係る相続税の課税関係

その代わり、受け取った未支給年金は遺族の一時所得として所得税の対象になります。一時所得には最高50万円の特別控除があり、課税されるのはさらにその2分の1ですので、未支給年金だけで所得税が発生するケースは多くありません国税庁 No.1490 一時所得。なお、亡くなった方が生前に受け取った年金や給与に関する所得税の精算は、相続人が行う準確定申告の手続になります。準確定申告の期限(4か月以内)を解説した記事で詳しくご確認ください。

関連コラム準確定申告の期限と必要書類やり方を税理士が解説

生命保険の非課税枠とは別枠|申告漏れ・払いすぎを防ぐ実務ポイント

とても重要なのに見落とされがちなのが、退職手当金等の非課税枠と生命保険金の非課税枠が別枠だという点です。相続税法12条1項は、生命保険金の非課税(6号)と退職手当金等の非課税(7号)をそれぞれ独立に定めており、どちらも「500万円×法定相続人の数」まで非課税になります国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金(前掲No.4117)。

非課税枠の種類 対象と限度額
生命保険金の非課税枠 相続人が受け取った死亡保険金につき500万円×法定相続人の数
退職手当金等の非課税枠 相続人が受け取った死亡退職金・死亡一時金等につき500万円×法定相続人の数(生命保険とは別枠)

法定相続人3人なら、生命保険金と退職手当金等のそれぞれの非課税枠を合わせて、次のとおり合計3,000万円まで非課税にできる計算ですe-Gov法令検索 相続税法第12条

死亡保険金の非課税枠1,500万円 + 死亡退職金・死亡一時金の非課税枠1,500万円 = 合計3,000万円

実務でよくあるのが、この別枠を知らずに「保険の枠を使い切ったから退職金は全額課税」と思い込み税金を払いすぎてしまうケースや、逆に企業年金の死亡一時金をみなし相続財産と知らず申告書第10表「退職手当金などの明細書」への記載を漏らしてしまうケースです。どちらももったいない失敗ですので、受け取ったお金は種類ごとに漏れなく整理しましょう。生命保険金の非課税枠の詳しい使い方は生命保険の非課税枠500万円の解説記事をご覧ください。

関連コラム生命保険の相続税非課税枠500万円の仕組みと注意点

申告時に準備したい書類

企業年金の死亡一時金・遺族給付金を相続税申告に反映する際は、次の書類を集めておくとスムーズです。金額や支給日(支給確定日)の確認に使い、申告書第10表の記載根拠になります。

  • 勤務先や企業年金の実施機関から届く死亡退職金・死亡一時金の支払通知書(支給決定通知書)
  • 退職金規程や企業年金規約(弔慰金と退職手当金等の区分、年金と一時金の選択条件の確認用)
  • 年金形式で受け取る場合の年金証書・裁定通知書など受給内容が分かる書類
  • 振込先通帳など実際の入金額が確認できるもの

支給額の計算方法や遺族の範囲は勤務先の年金規約によって異なりますので、通知書の記載が分かりにくいときは勤務先の担当部署や運営管理機関に確認してください。

企業年金と相続税のよくある質問まとめ

Q. iDeCoの死亡一時金にも500万円の非課税枠は使えますか?

A. 使えます。iDeCo(個人型確定拠出年金)の死亡一時金は、個人型年金規約に基づいて支給を受ける一時金として退職手当金等に含まれ(相続税法施行令1条の3)、死亡後3年以内に支給が確定したものは500万円×法定相続人の数の非課税枠の対象です。

Q. 死亡退職金と企業年金の死亡一時金の両方を受け取ったら、非課税枠は2つ使えますか?

A. いいえ。どちらも「退職手当金等」として合算した上で、500万円×法定相続人の数という1つの枠を適用します。ただし生命保険金の非課税枠は別枠として併用できます。

Q. 遺族が年金形式で受け取る企業年金には、毎年所得税がかかりますか?

A. かかりません。確定給付企業年金の規約に基づいて遺族に支給される年金は、年金受給権が相続税の課税対象になる一方、毎年受け取る年金には所得税が課税されません(国税庁タックスアンサーNo.1605)。

Q. 未支給年金は相続税の申告に含めますか?

A. 含めません。公的年金の未支給年金は遺族固有の権利として受け取るもので相続財産にはならず、受け取った遺族の一時所得として所得税の対象になります。一時所得には最高50万円の特別控除があります。

まとめ|受け取り方と時期で課税が変わるからこそ早めの整理を

企業年金の死亡一時金や死亡退職金は、死亡後3年以内に支給が確定すればみなし相続財産として相続税の対象になり、500万円×法定相続人の数の非課税枠が使えます。年金形式の遺族給付金は年金受給権として相続税評価され、毎年の年金に所得税はかかりません。3年経過後に支給が確定した分や公的年金の未支給年金は、遺族の一時所得になります。

生命保険の非課税枠との別枠を活かせるかどうかで納税額が変わることもあり、企業年金が絡む相続税申告は整理すべき論点が多い分野です。支給確定日の判定や年金受給権の評価は個別性が高いため、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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