この記事は、生命保険の満期保険金・解約返戻金・死亡保険金を受け取った個人事業主・会社経営者・会社員の方に向けて、保険金の情報が税務署へどのように届くのか、申告しないと何が起きるのかを整理したものです。「保険金を受け取ったけれど、税務署に知られるのだろうか」「申告が必要かどうか分からない」と不安に感じている方も多いはずです。
結論から申し上げますと、1回の支払額が100万円を超える保険金は、保険会社から税務署へ支払調書が提出されます。そのうえで、保険料を誰が負担し、誰が受け取ったかによって、所得税(一時所得)・贈与税・相続税のどれがかかるかが決まります。申告が必要なのに申告しなかった場合は、本来の税金に加えて加算税と延滞税がかかります。判断に迷う場合は、まずは税理士にご相談ください。
保険金の支払と税務署への支払調書
税務署は、納税者が提出する申告書だけで課税の判断をしているわけではありません。所得税法・相続税法などの規定により、支払をした側が税務署へ提出を義務づけられている資料を法定調書といい、生命保険に関するものとして「生命保険契約等の一時金の支払調書」や「生命保険金・共済金受取人別支払調書」が定められています国税庁 No.7401 法定調書の種類。
つまり、保険金を受け取ったことを自分から届け出なくても、支払った保険会社の側から情報が税務署へ届く仕組みになっています。「税務署に通知が行くのか」という疑問への答えは、一定額を超える支払であれば行くということになります。
生命保険契約等の一時金の支払調書
所得税法に基づく調書で、保険金や給付金の支払をする者が、支払った年の翌年1月31日までに税務署へ提出します国税庁 F1-16 生命保険契約等の一時金の支払調書(同合計表)。支払事由は死亡・満期・解約などで、解約の場合は解約返戻金の額が記載されます。受取人が法人である場合も提出の対象に含まれます。
生命保険金・共済金受取人別支払調書
相続税法に基づく調書で、生命保険会社や共済事業を行う法人が、支払った日の属する月の翌月15日までに税務署へ提出します国税庁 F2-1 生命保険金・共済金受取人別支払調書(同合計表)。この調書には、受取人の氏名・住所・個人番号、支払った保険金の額、保険料の総額、契約者の情報に加えて、契約者の変更があった場合は変更前の契約者や変更の回数も記載することとされていますe-Gov法令検索 相続税法施行規則。
保険料を負担した人と受け取った人が異なるかどうかは、この記載から読み取れます。贈与税や相続税の対象になる保険金であっても、税務署は支払の事実と当事者の関係を把握できる状態にあるといえます。
提出の判定基準と100万円の考え方
生命保険契約等の一時金の支払調書は、1回に支払うべき金額が100万円以下であれば提出を要しないとされています。判定は契約者ではなく受取人を基礎として行い、同じ日に同じ保険事由で支払われたものは合計して判定します国税庁 生命保険契約等の一時金の支払調書の提出省略範囲。受取人別支払調書についても、提出を要しない保険金額の基準は100万円と定められています。
| 同じ保険会社の2契約から 同日に死亡保険金80万円と60万円 |
同一の保険事由のため合計140万円で判定し、支払調書の提出が必要 |
|---|---|
| 同じ保険会社から同日に 死亡保険金80万円と満期保険金60万円 |
保険事由が異なるため80万円と60万円で別々に判定し、支払調書の提出は不要 |
注意したいのは、支払調書が出ないことと、税金がかからないことは別の話だという点です。100万円以下の保険金でも、一時所得として申告が必要になる場合や贈与税の対象になる場合があります。支払調書の有無ではなく、課税関係そのもので判断することが大切です。
関連コラム銀行 税務署 報告義務|報告される取引と調査範囲を税理士が解説▸
保険金にかかる税金の区分
「保険金には所得税がかかるのか、それとも贈与税なのか」と迷われる方は少なくありません。保険金の税金は、受け取った金額ではなく、保険料を誰が負担し、誰が保険金を受け取ったかで決まります。契約者の名義ではなく、実際に保険料を負担した人で判断する点がポイントです。
満期保険金・解約返戻金の場合
生命保険契約の満期や解約により保険金を受け取った場合は、保険料の負担者と保険金受取人の関係により、所得税か贈与税のいずれかの対象になります国税庁 No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき。
| 保険料の負担者と受取人の関係 | 税金の種類 |
|---|---|
| 保険料の負担者と受取人が同じ人 | 所得税(一時金なら一時所得、年金なら雑所得) |
| 保険料の負担者と受取人が別の人 | 贈与税 |
たとえば、夫が保険料を払ってきた養老保険の満期保険金を妻が受け取ると、夫から妻への贈与として贈与税の対象になります。保険料を負担していない人が満期や解約で生命保険金を受け取った場合は、保険料を負担した人から贈与があったものとされます国税庁 No.4417 贈与税の対象になる生命保険金。
死亡保険金の場合
死亡保険金は、被保険者・保険料の負担者・保険金受取人の3者の関係で、所得税・相続税・贈与税のいずれかの対象になります国税庁 No.1750 死亡保険金を受け取ったとき。
| 契約関係 | 税金の種類 |
|---|---|
| 保険料の負担者と受取人が同じ人 | 所得税 |
| 被保険者と保険料の負担者が同じ人 | 相続税 |
| 被保険者・保険料の負担者・受取人が すべて異なる人 |
贈与税 |
経営者や個人事業主の方で多いのは、自分が保険料を払い、配偶者を被保険者として、自分が受取人になっている契約です。この場合に配偶者が亡くなって受け取る死亡保険金は相続税ではなく所得税の一時所得になり、翌年の確定申告に含める必要があります。
契約者を変更したあとに解約した場合
親が保険料を払ってきた契約の契約者を子に変更しただけであれば、その時点で贈与税は課されません。ただし、変更後の契約者が契約を解約して解約返戻金を受け取った場合は、その解約返戻金相当額を保険料負担者から贈与により取得したものとみなされ、贈与税の対象になります国税庁 生命保険契約について契約者変更があった場合。
名義だけ子に移して「子の保険」として解約し、子の一時所得として申告してしまう誤りが見られます。前述のとおり支払調書には契約者変更の情報も記載されるため、実際に保険料を誰が負担してきたかを確認したうえで税目を判断してください。
保険金の所得税(一時所得)の計算方法
保険料の負担者と受取人が同じで、保険金を一時金で受け取った場合は一時所得になります。一時所得には、生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます)や損害保険の満期返戻金等が含まれます国税庁 No.1490 一時所得。
課税の対象になるのは、一時所得の金額をさらに2分の1にした金額です。この金額を給与所得や事業所得などと合計して、所得税を計算します。
満期保険金を受け取ったときの計算例
自分で保険料を負担してきた養老保険の満期保険金600万円を一時金で受け取り、払い込んだ保険料の総額が450万円だったケースで計算します(その年にほかの一時所得はないものとします)。
この50万円が事業所得や給与所得に上乗せされ、その人の税率で所得税がかかります。受け取った600万円すべてに課税されるわけではありませんが、申告からは外せません。
一時所得が生じないケース
受け取った保険金の総額から払込保険料を差し引いた金額が50万円以下であれば、特別控除額で全額が差し引かれるため、一時所得は生じません。
解約返戻金が払込保険料を下回っている場合も同様に一時所得は生じません。ただし、特別控除の50万円はその年の一時所得の合計に対して1回だけ適用されます。同じ年に別の保険の満期金や懸賞の賞金など他の一時所得があれば、合算して判定する必要があります。
源泉分離課税となる一時払養老保険
一時払養老保険等で保険期間等が5年以下のもの、および保険期間等が5年超で5年以内に解約されたものの差益は、源泉分離課税が適用され、源泉徴収だけで課税関係が終了します。これらは20.315パーセント(所得税および復興特別所得税15.315パーセント、地方税5パーセント)の税率で源泉徴収され、確定申告を行うことはできません。
年金形式で受け取る場合
満期保険金や死亡保険金を年金で受け取る場合は、一時所得ではなく公的年金等以外の雑所得になります。雑所得の金額は、その年中に受け取った年金の額から、その金額に対応する払込保険料を差し引いた金額で、年金を受け取る際には原則として所得税が源泉徴収されます。
確定申告が必要となるケース
「源泉徴収されていないから、申告しなくてよいのでは」と考える方もいらっしゃいますが、一時金で受け取った保険金から所得税は差し引かれていないのが通常です。一時所得が生じる場合の申告の要否は、本業の所得の状況によって次のように分かれます。
個人事業主・会社経営者の場合
事業所得や不動産所得などで毎年確定申告をしている方は、その年に生じた一時所得も同じ確定申告書に含めて申告します。事業の決算で手一杯になり、私的に受け取った保険金を記載し忘れるケースは少なくありません。
会社員など給与所得者の場合
給与を1か所から受けていて年末調整を受けている方でも、給与所得と退職所得を除いた各種の所得金額を合計して20万円を超えるときは、確定申告が必要です国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人。先ほどの計算例(一時所得の金額100万円、他の所得と合計する金額50万円)は、いずれの金額で見ても20万円を上回ります。
関連コラム税務署から確定申告のハガキが来ない理由|申告要否の判断と手続き▸
申告しなかった場合の加算税と延滞税
支払調書によって税務署は保険金の支払を把握できるため、申告漏れは後から指摘される可能性があります。申告が必要だったのに申告していなかった場合や、申告した内容から保険金が漏れていた場合は、本来の税金のほかに加算税と延滞税がかかります。
無申告加算税
確定申告をしていなかった場合は期限後申告となり、無申告加算税がかかります。令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの(令和5年分以降)の割合は次のとおりです国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき。
| 期限後申告のタイミング | 無申告加算税の割合 |
|---|---|
| 調査の事前通知の前に 自主的に申告 |
納付すべき税金の5パーセント |
| 調査の事前通知の後、 調査による決定を予知する前に申告 |
50万円までの部分は10パーセント、50万円を超え300万円までの部分は15パーセント、300万円を超える部分は25パーセント |
| 調査を受けた後に申告、 または税務署から決定を受けた場合 |
50万円までの部分は15パーセント、50万円を超え300万円までの部分は20パーセント、300万円を超える部分は30パーセント |
なお、法定申告期限から1か月以内に自主的に行われた期限後申告で、期限内に申告する意思があったと認められる一定の場合には、無申告加算税はかかりません。
過少申告加算税
確定申告はしていたものの保険金の一時所得が漏れていた場合は、修正申告で訂正します。調査の事前通知の前に自主的に修正申告をした場合であれば、過少申告加算税はかかりません。調査の事前通知の後で調査による更正を予知する前の修正申告は、新たに納める税金の5パーセント、調査を受けた後の修正申告や更正の場合は10パーセントで、いずれも新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超える部分は割合が5パーセント上乗せされます国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき。
延滞税
期限後申告や修正申告で納める税金には、本来の納期限の翌日から納付の日までの延滞税がかかります。令和8年1月1日から12月31日までの期間の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8パーセント、それ以後が年9.1パーセントです国税庁 延滞税の割合。気付いた時点で早く申告・納付するほど、負担は小さく抑えられます。
また、事実を隠したり、偽ったりして申告しなかったと判断された場合は、加算税に代えてより重い重加算税の対象となります。「調書が出ないように受取人や時期を分けた」といった対応は、かえって説明の難しい状況を招きます。
関連コラム税務署は銀行口座をどこまで調べられる?調査の範囲と実務を税理士が解説▸
実務での取り扱い事例
実務でよく見かけるのは、個人事業主の方が自分で保険料を払ってきた貯蓄型の保険を、資金繰りのために解約したケースです。解約返戻金を事業口座に入れて運転資金に充てたものの、「事業の売上ではないから」と確定申告に含めず、数年後に税務署からの問い合わせで申告漏れに気付く、という流れです。
このようなケースでは、まず保険会社から届く支払の通知書や契約内容で、解約返戻金の額・払込保険料の総額・保険料の負担者を確認します。そのうえで一時所得の金額を計算し、期限後申告または修正申告を行います。解約返戻金が払込保険料をわずかに上回る程度で、特別控除の50万円以下に収まると分かれば、申告不要と整理できる場合もあります。逆に、配偶者名義の口座から保険料を払っていた場合には、保険料の負担者の認定から検討し直す必要があります。
税務署から連絡を受けてからでは、加算税の割合が上がるうえ、限られた時間で過去の資料を集めることになります。保険金を受け取った年のうちに課税関係を確認しておくことが、最も負担の少ない対応です。
保険金を受け取ったときの確認手順
保険金を受け取ったら、次の順番で確認すると判断の漏れを防げます。
- 支払事由の確認: 満期・解約・死亡のどれによる支払か、一時金か年金かを確認します。
- 保険料の負担者の確認: 契約者の名義ではなく、実際に保険料を払っていた人を口座の記録などで確認します。
- 税目の判定: 負担者と受取人が同じなら所得税、異なれば贈与税または相続税の対象として整理します。
- 一時所得の金額の計算: 保険金の総額から払込保険料と特別控除額を差し引き、同じ年の他の一時所得とも合算します。
- 申告の要否と期限の確認: 本業の所得や給与以外の所得の合計額をふまえて、確定申告が必要かを判断します。
保険料の負担者が途中で変わっている契約や、法人と個人の間で名義を移した契約は、判断が分かれやすいところです。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
まとめ
生命保険の満期保険金・解約返戻金・死亡保険金は、1回の支払額が100万円を超えると、保険会社から税務署へ支払調書が提出されます。支払調書には受取人だけでなく契約者や保険料の情報も記載されるため、税務署は支払の事実と当事者の関係を把握できます。
税金の種類は、保険料の負担者と受取人の関係で決まり、同じ人であれば所得税の一時所得、異なれば贈与税や相続税の対象になります。一時所得は、保険金の総額から払込保険料と特別控除額50万円を差し引き、さらに2分の1にした金額が課税の対象です。申告が必要なのにしなかった場合は、無申告加算税や過少申告加算税、延滞税がかかり、税務署の調査後になるほど負担は重くなります。保険金の課税関係や申告の要否に迷ったときは、まずは税理士にご相談ください。
この記事を読んだ方へ
Income Tax
所得税・確定申告のご相談
判断に迷ったら、まずは税理士にご相談ください。オンラインでも対応しています。
個人のお客様へ
Contact
税理士に無料で相談する
フォームは24時間受付。1営業日以内にご返信します。
無料相談フォームへ
参考文献
- 国税庁 No.7401 法定調書の種類
- 国税庁 F1-16 生命保険契約等の一時金の支払調書(同合計表)
- 国税庁 F2-1 生命保険金・共済金受取人別支払調書(同合計表)
- e-Gov法令検索 相続税法施行規則
- 国税庁 生命保険契約等の一時金の支払調書の提出省略範囲
- 国税庁 No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき
- 国税庁 No.4417 贈与税の対象になる生命保険金
- 国税庁 No.1750 死亡保険金を受け取ったとき
- 国税庁 生命保険契約について契約者変更があった場合
- 国税庁 No.1490 一時所得
- 国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
- 国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
- 国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき
- 国税庁 延滞税の割合
保険金と税務署への通知に関するよくある質問
Q. 保険金を受け取ると税務署に通知されますか。
A. 1回に支払う金額が100万円を超える保険金は、保険会社が支払調書を作成して税務署へ提出します。所得税法に基づく一時金の支払調書と、相続税法に基づく受取人別支払調書があり、受取人や契約者、保険料の情報が記載されます。
Q. 100万円以下の保険金なら申告しなくてよいのですか。
A. 100万円以下で支払調書が提出されない場合でも、税金がかからないとは限りません。一時所得が生じて申告が必要になる場合や、保険料の負担者と受取人が異なり贈与税の対象になる場合があります。支払調書の有無ではなく課税関係で判断してください。
Q. 満期保険金の所得税はどのように計算しますか。
A. 保険料を負担した本人が一時金で受け取った場合は一時所得です。受け取った保険金の総額から払込保険料と特別控除額最高50万円を差し引いた金額が一時所得の金額で、その2分の1を他の所得と合計して税額を計算します。
Q. 解約返戻金にも税金はかかりますか。
A. 解約返戻金も満期保険金と同じく、保険料の負担者と受取人が同じなら所得税、異なれば贈与税の対象です。解約返戻金が払込保険料を下回る場合や、差額が特別控除額50万円以下に収まる場合は、一時所得は生じません。
Q. 会社員でも保険金の確定申告は必要ですか。
A. 給与を1か所から受けて年末調整を受けている方でも、給与所得と退職所得を除いた所得金額を合計して20万円を超えるときは確定申告が必要です。保険金の一時所得がこれに当たるかどうかを計算して確認してください。
Q. 保険金の申告を忘れていた場合はどうすればよいですか。
A. 気付いた時点でできるだけ早く期限後申告または修正申告を行ってください。調査の事前通知の前に自主的に申告すれば、加算税の割合は低く抑えられます。延滞税は納付の日まで日数に応じてかかるため、早めの対応が負担の軽減につながります。


