会社員や個人事業主、経営者の方で「3月15日を過ぎてから還付申告を出したら、延滞税や加算税を取られるのでは」と気にされている方に向けて、還付申告と延滞税・加算税の関係を整理します。
結論から申し上げると、確定申告の義務がない方が納め過ぎの所得税を取り戻すための還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出でき、納める税金がないため延滞税も無申告加算税もかかりません。一方で、計算してみたら税金を納める結果になる方は申告義務があり、期限を過ぎれば通常の期限後申告として延滞税と無申告加算税の対象になります。
本記事では、延滞税がかからない理由、5年の期限と年分ごとの提出期限、申告義務がある方との違い、実務での設例、そして還付申告の後に誤りが見つかった場合の扱いまでを順に解説します。
還付申告に延滞税・加算税はかからない
還付申告とはどんな申告か
還付申告とは、確定申告書を提出する義務のない方が、給与等から源泉徴収された所得税額や予定納税をした所得税額が、年間の所得金額について計算した所得税額よりも多いときに、納め過ぎの所得税の還付を受けるために行う確定申告です。還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます国税庁 No.2030 還付申告。
代表的なのは、年の途中で退職して年末調整を受けていない場合、住宅借入金等特別控除の初年度、多額の医療費を支出して医療費控除を受ける場合、ふるさと納税などの寄附金控除を受ける場合などです。いずれも「すでに天引きされた税金を精算して返してもらう」手続である点が共通しています。
延滞税がかからない理由
延滞税は、税金が定められた期限までに納付されない場合に、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される、利息に相当する税金です。課されるのは、申告などで確定した税額を法定納期限までに完納しないときや、期限後申告書・修正申告書を提出して納付しなければならない税額があるときなどです国税庁 No.9205 延滞税について。
還付申告は、税金を納めるのではなく返してもらう申告です。納付しなければならない税額そのものが無いため、日数に応じて延滞税が積み上がる前提がありません。3月15日を過ぎてから提出しても、還付申告である限り延滞税の心配は不要です。
無申告加算税もかからない理由
無申告加算税は、期限後申告をした場合などに、納付すべき税金に一定の割合を乗じて課されるものです。たとえば税務署からの調査の事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合は、納付すべき税金の5パーセントとされています国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき。
計算の基礎が「納付すべき税金」ですので、還付申告のように納付すべき税金がない申告には無申告加算税が生じません。還付申告書は確定申告期間とは関係なく提出できるため、3月15日を過ぎたこと自体で不利益な加算税が生じるわけではありません。
還付申告は5年以内に提出する
年分ごとの提出期限
確定申告の必要がない方の還付申告は、還付申告をする年分の翌年1月1日から5年間行うことができます。国税庁は、これまで申告をしていなかった場合、令和3年分については令和8年12月31日まで申告できると案内しています国税庁 【所得税及び復興特別所得税の申告等】。この原則を各年分に当てはめると、次のとおりです。
| 令和3年分 | 令和4年1月1日から令和8年12月31日まで |
|---|---|
| 令和4年分 | 令和5年1月1日から令和9年12月31日まで |
| 令和5年分 | 令和6年1月1日から令和10年12月31日まで |
| 令和6年分 | 令和7年1月1日から令和11年12月31日まで |
| 令和7年分 | 令和8年1月1日から令和12年12月31日まで |
延滞税や加算税がかからない代わりに、この5年を過ぎると還付申告そのものができなくなります。令和8年中であれば、令和3年分の医療費控除や退職した年の精算が最後の機会になりますので、心当たりのある方は年内の提出をお勧めします。
期限内でなければ使えない特例がある
還付申告であっても、青色申告特別控除(55万円、65万円)を受けようとする場合など、法定申告期限(原則翌年3月15日)までの確定申告書の提出が要件となっている特例を適用するときは、法定申告期限までに提出する必要があります。延滞税がかからないからといって、どの特例も後から使えるわけではない点に注意が必要です。
個人事業主の方で「還付になる見込みだから急がなくてよい」と考えていると、この要件を満たせず、控除額が小さくなって還付額が減ることがあります。事業所得や不動産所得がある方は、還付・納付のどちらになりそうでも3月15日までの提出を基本にしてください。
源泉徴収税額がなければ還付はない
所得税の還付は、源泉徴収や予定納税によりすでに納付した所得税がある場合に発生します。源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄が「0」と記載されている方は、申告しても還付される所得税額はありません。還付申告を準備する前に、まず源泉徴収票の金額を確認するのが最初の一歩です。
申告義務がある人との違い
確定申告が必要な人の判定
確定申告が必要なのは、その年分の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超え、その超える額に対する税額が、配当控除額と年末調整の際に控除を受けた住宅借入金等特別控除額の合計額を超える人です。ただし、控除しきれなかった外国税額控除の額、源泉徴収税額または予定納税の額がある場合は除かれます。この取扱いは、提出期限が令和4年1月1日以後となる確定申告書に適用されます国税庁 No.2020 確定申告。
つまり現在は、源泉徴収された税金などが多く、精算すると還付になる方は、確定申告をする義務がない側に整理されています。逆に、精算しても税金が不足して納付が生じる方は申告義務があり、原則として翌年3月15日が申告と納付の期限です。
納付になる人が期限を過ぎた場合
申告義務がある方が期限を過ぎて申告すると、期限後申告として扱われ、無申告加算税が課されます。また、期限後申告によって納める税金は申告書を提出した日が納期限となり、納付の日までの延滞税を併せて納付する必要があります。「自分は還付だと思っていた」という事情があっても、結果が納付であればこの扱いになります。
実務でよく見るのは、医療費控除のつもりで準備を始めたところ、副業の所得や一時的な収入を加えると納付に転じていた、というケースです。還付か納付かは申告書を作り終えるまで確定しないため、期限後になりそうなときほど早めに計算を済ませることが大切です。
関連コラム期限後申告の延滞税はいつから|起算日と割合・加算税を税理士が解説▸
還付申告ではほかの所得もすべて申告する
給与所得者や公的年金等に係る雑所得がある方で確定申告の必要がない方が還付申告をする場合は、その他の各種の所得も申告が必要です。確定申告が不要とされる「給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下」の副業収入なども、還付申告をするときは含めて計算します。
この点を知らずに医療費控除だけを記載して提出すると、後から申告漏れとして修正を求められることがあります。還付額が減る、あるいは納付に転じる可能性も含めて、申告書を作る段階で所得を洗い出しておくのが安全です。
実務での取り扱い|設例で確認する
設例A|退職した年の還付申告を5年目に出す
会社員のAさんは令和3年6月に退職し、その年は再就職せず年末調整を受けていませんでした。源泉徴収票の源泉徴収税額は180,000円、年間の所得で計算し直した所得税額(復興特別所得税を含む)は60,000円だったとします。数字は説明用に単純化しています。
令和3年分の還付申告は令和8年12月31日まで提出できますので、令和8年10月に提出しても間に合います。納付すべき税金がないため、延滞税も無申告加算税もかかりません。ほかに所得がないことを確認したうえで、年内に提出すれば120,000円の還付を受けられます。
設例B|副業の所得を加えると納付に転じる場合
同じ年にAさんが業務委託の副業をしていて、その所得を加えて計算し直すと、年間の所得税額が380,000円になったとします。
この場合は還付申告ではなく、申告義務のある確定申告を期限後に出すことになります。税務署からの調査の事前通知の前に自主的に申告したとしても、次の無申告加算税が課されます。
さらに、令和3年分の法定納期限の翌日から納付する日までの延滞税も必要です。設例AとBの違いは「副業の所得を入れたかどうか」だけですが、結果は「延滞税・加算税なしで還付」と「延滞税・加算税付きの納付」に分かれます。還付申告だと思い込まず、所得を漏れなく集計してから判断するのが実務の基本です。
還付申告の後に誤りが見つかった場合
還付が少なかったときは更正の請求
すでに還付申告をした方が、その年分について還付を受けるべき税金を少なく申告してしまった場合は、更正の請求という手続により還付を受けることができます。更正の請求ができる期間は、原則として還付申告書を提出した日から5年以内です。
通常の確定申告では、更正の請求ができる期間は原則として法定申告期限から5年以内とされています国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき。還付申告は起点が「提出した日」になるため、5年目の年末に還付申告を出した方でも、その後に医療費の領収書が見つかれば更正の請求で直せる余地があります。
関連コラム所得税の更正の請求とは|5年の期限と手続きの流れを税理士が解説▸
還付が多すぎたときは修正申告
反対に、還付される税金が多過ぎた場合は修正申告で訂正します。修正申告で新たに納める税金は、修正申告書を提出する日が納期限となり、納付の日までの延滞税を併せて納付する必要があります。還付申告そのものには延滞税がかからなくても、過大に受け取った還付金を戻す段階では延滞税が生じ得る点に注意してください。
加算税については、還付申告書は過少申告加算税の規定上、期限内申告書に含まれるものとして扱われていますe-Gov法令検索 国税通則法第65条。そのため修正申告の時期によって過少申告加算税の扱いが変わり、税務署からの調査の事前通知の前に自主的に修正申告をすれば過少申告加算税はかかりませんが、事前通知の後や調査を受けた後では5パーセントまたは10パーセントなどの割合で課されます。
関連コラム所得税の修正申告 期限|いつまでに出すか・加算税を税理士が解説▸
判断のポイントと進め方
ここまでを踏まえると、還付申告を期限後に出すかどうかで迷ったときの確認事項は、次の順に整理できます。
- 源泉徴収票などで、源泉徴収税額や予定納税額があるかを確認する
- 給与以外の所得も含めてすべての所得を集計し、結果が還付か納付かを確定させる
- 還付であれば、その年分の翌年1月1日から5年以内かを確認し、期限が近い年分から提出する
- 納付であれば期限後申告として扱われるため、事前通知の前にできるだけ早く申告と納付を済ませる
- 青色申告特別控除など、法定申告期限までの提出が要件の特例を使いたいかを確認する
実務では、複数の年分をまとめて相談されることが少なくありません。還付になる年分と納付になる年分が混在していると、還付の年分は延滞税の心配がない一方、納付の年分は日数に応じて延滞税が増え続けるため、着手の順番そのものが負担額を左右します。
還付か納付かの判定、どの年分から提出するか、過去の申告に誤りがあった場合に更正の請求と修正申告のどちらが必要かは、所得の内容や申告の経緯によって判断が分かれます。ご自身の状況で最適な進め方を確認するため、まずは税理士にご相談ください。
まとめ
確定申告の義務がない方の還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出でき、納める税金がないため延滞税も無申告加算税もかかりません。令和3年分は令和8年12月31日が提出期限です。
ただし、青色申告特別控除のように法定申告期限までの提出が要件の特例は、還付申告でも期限内に出さなければ使えません。また、ほかの所得を加えると納付に転じる方は申告義務があり、期限を過ぎれば延滞税と無申告加算税の対象になります。
還付申告の後で誤りに気づいた場合は、還付が少なければ更正の請求、多すぎれば修正申告で直します。修正申告で税金を戻すときは延滞税が生じ得るため、気づいた時点で早めに対応することが負担を抑える近道です。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
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参考文献
- 国税庁 No.2030 還付申告
- 国税庁 No.9205 延滞税について
- 国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
- 国税庁 【所得税及び復興特別所得税の申告等】
- 国税庁 No.2020 確定申告
- 国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき
- e-Gov法令検索 国税通則法第65条
還付申告と延滞税のよくある質問まとめ
Q. 還付申告を3月15日より後に出すと延滞税はかかりますか。
A. かかりません。延滞税は納付すべき税金を期限までに納付しない場合に課されるもので、納め過ぎの税金を返してもらう還付申告には納付すべき税額がありません。還付申告書は確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。
Q. 還付申告を期限後に出すと無申告加算税はかかりますか。
A. かかりません。無申告加算税は納付すべき税金に一定の割合を乗じて計算するため、納付すべき税金がない還付申告では生じません。ただし、計算の結果が納付になる方は申告義務があり、期限後申告として無申告加算税と延滞税の対象になります。
Q. 還付申告は何年前の分までさかのぼれますか。
A. 還付申告をする年分の翌年1月1日から5年間です。令和3年分は令和8年12月31日まで、令和7年分は令和12年12月31日まで提出できます。この期間を過ぎると還付申告はできなくなります。
Q. 還付申告なら青色申告特別控除も後から受けられますか。
A. 受けられない場合があります。青色申告特別控除(55万円、65万円)のように法定申告期限までの確定申告書の提出が要件の特例は、還付申告であっても原則翌年3月15日までに提出する必要があります。
Q. 還付申告の後に還付額が多すぎたと気づいたらどうなりますか。
A. 修正申告で訂正し、新たに納める税金は修正申告書の提出日が納期限となり、納付の日までの延滞税も併せて納付します。税務署からの調査の事前通知の前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。
Q. 還付申告で還付額が少なかった場合、いつまで直せますか。
A. 更正の請求により還付を受けられます。還付申告の場合、更正の請求ができる期間は原則として還付申告書を提出した日から5年以内です。通常の確定申告のように法定申告期限から数えるわけではありません。


