申告期限を過ぎてしまった事業者・経理担当の方に向けて、期限後申告の延滞税が「いつから」発生するのかを整理します。結論から申し上げると、延滞税は法定納期限の翌日から、本税を完納する日までの日数に応じて課されます。申告書を出した日からでも、税務署から連絡が来た日からでもありません。
そのうえで、実際の負担額を左右するのは「割合が切り替わる2か月の起点」です。期限後申告の場合、この起点は法定納期限ではなく申告書を提出した日になります。ここを取り違えると、自分で試算した金額と税務署の計算が大きくずれます。
本記事では、延滞税の起算日と2段階の割合、令和8年分の実際の割合、無申告加算税との関係、具体的な計算例、そして今すぐ何をすべきかまでを順に解説します。
延滞税の起算日と負担が決まる仕組み
起算日は法定納期限の翌日
税金が定められた期限までに納付されない場合、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。期限後申告書を提出して納付すべき税額があるときも、この扱いは同じです国税庁 No.9205 延滞税について。
つまり、申告を忘れていた期間もそのまま延滞税の計算期間に含まれます。申告書を出した日から数えるわけではないため、放置していた期間が長いほど負担は比例して増えていきます。延滞税は本税だけを対象として課され、加算税に対しては課されません。
法定納期限は、原則として法定申告期限と同じ日です。所得税の場合、令和7年分の法定納期限は令和8年3月16日、令和6年分は令和7年3月17日とされています国税庁 延滞税の計算方法。
期限後申告の納期限は申告書を提出した日
延滞税には「起算日」とは別に「納期限」という概念があり、これが割合の切り替わりを決めます。期限後申告または修正申告の場合、納期限は申告書を提出した日です。期限内に申告された場合の納期限は法定納期限、更正・決定の場合は更正決定等通知書を発した日から1か月後の日となります。
この違いは実務上とても大きく働きます。たとえば2年前の所得税を今から期限後申告する場合、起算日は2年前の法定納期限の翌日ですが、割合が高くなる区分の起点は今回の提出日です。したがって、提出日に本税を納付できれば、2年分の滞納期間はすべて低い方の割合で計算されます。
延滞税の割合(令和8年中の期間)
2段階の割合
延滞税の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までと、それより後の期間で二段階に分かれます。前者は年7.3パーセントと「延滞税特例基準割合+1パーセント」のいずれか低い割合、後者は年14.6パーセントと「延滞税特例基準割合+7.3パーセント」のいずれか低い割合が適用されます。
令和8年1月1日から令和8年12月31日までの期間に対応する割合は、次のとおりです国税庁 延滞税の割合。令和4年から令和7年までは年2.4パーセントと年8.7パーセントでしたので、令和8年は両区分とも引き上げられています。
| 納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 年2.8パーセント |
|---|---|
| 納期限の翌日から2か月を経過した日以後 | 年9.1パーセント |
割合は年ごとに告示されるため、滞納期間が年をまたぐ場合は、期間ごとにその年の割合を当てはめて計算します。過去年分の期限後申告では、令和7年以前の期間に年2.4パーセント、令和8年の期間に年2.8パーセントというように分けて計算することになります。
割合が切り替わるタイミング
年9.1パーセントの区分に入るのは、申告書を提出した日の翌日から2か月を経過した日以後です。逆に言えば、申告書の提出から2か月以内に本税を完納すれば、高い方の割合は一切適用されません。
実務では、ここが延滞税を抑える最大の分岐点になります。資金繰りの都合で納付を先延ばしにすると、年2.8パーセントから年9.1パーセントへ一気に跳ね上がるため、申告書の提出日と納付日をできる限り揃える段取りを組みます。
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延滞税の計算方法と計算例
基本の計算式
延滞税の額は、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じ、期間ごとに次の式で計算した金額を合計したものです。本税の額に対して日割りで計算します。
以下では、令和7年分の所得税の本税が500,000円で、法定納期限が令和8年3月16日だったケースを想定します。起算日は翌日の令和8年3月17日です。
計算例1|提出と同時に納付した場合
令和8年7月31日に期限後申告書を提出し、同じ日に本税500,000円を納付したとします。納期限は提出日である7月31日なので、2か月を経過する前に完納しており、全期間が年2.8パーセントで計算されます。
起算日の令和8年3月17日から令和8年7月31日までは137日です。
計算例2|提出後に納付が遅れた場合
同じ条件で、令和8年7月31日に申告書を提出しながら、納付が令和8年11月30日までずれ込んだとします。納期限は7月31日、その翌日から2か月を経過する日は9月30日ですので、期間が二つに分かれます。
まず、令和8年3月17日から令和8年9月30日までの198日は年2.8パーセントで計算します。
次に、令和8年10月1日から完納日の令和8年11月30日までの61日は年9.1パーセントで計算します。
納付が4か月遅れただけで、延滞税は計算例1の約3倍になります。わずか61日分の②が、198日分の①を上回っている点が、2段階の割合の影響の大きさを表しています。なお、実際の確定額は本税や延滞税の端数処理を経て税務署が計算しますので、自社の試算はあくまで目安として扱ってください。
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期限後申告にかかる無申告加算税
自主的な期限後申告は5パーセント
期限後申告では、延滞税とは別に無申告加算税が課されます。税務署からの調査の事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合は、納付すべき税金に5パーセントの割合を乗じた金額となります国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき。
実務では、無申告に気づいた法人・個人事業主から相談を受けた際、まず「税務署からの接触がすでにあるか」を最初に確認します。事前通知が届く前であれば5パーセントで済むため、資料が完全に揃うのを待たず、確定できる範囲で速やかに申告書を作成し、後から差異が出れば修正申告で調整する方針を採ることが少なくありません。通知が届いた後では、この5パーセントの区分は使えなくなります。
通知後・調査後の割合
令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの、つまり令和5年分以降については、無申告加算税の区分が次のとおり整理されています。調査による決定を予知する前かどうかで割合が変わります。
| 期限後申告のタイミング | 無申告加算税の割合 |
|---|---|
| 調査の事前通知の前に自主的に申告 | 一律5パーセント |
| 事前通知の後、調査による決定を予知する前に申告 | 50万円までの部分は10パーセント、50万円を超え300万円までの部分は15パーセント、300万円を超える部分は25パーセント |
| 調査を受けた後に申告、または税務署から決定を受けた | 50万円までの部分は15パーセント、50万円を超え300万円までの部分は20パーセント、300万円を超える部分は30パーセント |
さらに、前年および前々年について無申告加算税または重加算税が課されたことがあるときなどは、納付すべき税金に10パーセントを乗じた金額が加算されます。調査で帳簿の提示等をしなかった場合や、帳簿への売上金額の記載が本来の金額の2分の1未満だった場合にも10パーセントが加算されます。無申告を繰り返すほど負担が重くなる設計です。
無申告加算税がかからない場合
期限後申告であっても、法定申告期限から1か月以内に自主的に行われ、かつ期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すれば、無申告加算税はかかりません。この「一定の場合」は、次の二つの要件をいずれも満たすことが必要です。
- 期限後申告に係る納付すべき税金の全額を法定納期限までに納付していること(口座振替納付の手続をした場合は期限後申告書を提出した日まで)
- 期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと
ここで注意が必要なのは、無申告加算税が不適用になっても、延滞税は別途発生する点です。納付が法定納期限を過ぎていれば、その翌日から完納日までの延滞税は課されます。うっかり申告を失念したケースでは、この1か月の期間内に申告と納付を終えられるかが最初の分かれ目になります。
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延滞税の計算期間の特例と重加算税の扱い
1年を超える期間を除く特例
偽りその他不正の行為により国税を免れた場合等を除き、一定の期間を延滞税の計算期間に含めない特例があります。期限内申告書が提出されていて法定申告期限後1年を経過してから修正申告または更正があったとき、および期限後申告書が提出されていてその申告書提出後1年を経過してから修正申告または更正があったときが対象です。
具体的には、期限後申告書の提出後1年以上経過して修正申告または更正があった場合、その申告書提出後1年を経過する日の翌日から、修正申告書を提出した日または更正通知書を発した日までが計算期間から控除されます。税務署側の調査に時間がかかった期間まで納税者に負担させない趣旨の取扱いです。
期限後申告そのものには適用されない
誤解が多いのは、この特例が「期限後申告そのもの」には働かないという点です。特例の対象は、申告書が提出された後に行われる修正申告または更正です。申告を何年も出していなかった期間については、法定納期限の翌日から期限後申告書を提出して納付する日まで、日数がそのまま積み上がります。
加えて、重加算税が課された場合にはこの特例は適用されません。仮装隠蔽があったと判断されると、計算期間が短縮されないまま延滞税が積み上がり、重加算税も別に課されます。無申告の期間が長期化しているほど、早期に着手する意味が大きくなります。
期限後申告のその他のデメリット
青色申告特別控除が使えなくなる
個人事業主の場合、55万円または65万円の青色申告特別控除は、貸借対照表等を添付した確定申告書をその年分の確定申告期限までに提出することが要件とされています。還付申告書等を提出する方であっても、この期限までの提出が必要です国税庁 No.2072 青色申告特別控除。
そのため、期限後申告になると控除額は10万円にとどまります。控除の差額に税率を乗じた分だけ本税が増え、その増えた本税に対して延滞税と無申告加算税が上乗せされるという二重の影響が生じます。所得規模によっては、延滞税本体より控除縮小の影響の方が大きくなることもあります。
督促と滞納処分への進行
本税を納付しないまま放置すると、税務署から督促状が送られ、その後は滞納処分の手続に進みます。売掛金や預金の差押えに至れば、取引先や金融機関との関係にも影響します。延滞税は完納する日まで日数に応じて増え続けるため、時間の経過そのものがコストになります。
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いつまでに何をするかの判断基準
優先順位は「通知前の提出」と「提出日の納付」
ここまでの制度を踏まえると、期限後申告で負担を抑える手順は二つに整理できます。第一に、税務署からの調査の事前通知が届く前に申告書を提出すること。第二に、その提出日に本税を完納し、年9.1パーセントの区分に入らせないことです。
- 法定申告期限から1か月以内であれば、無申告加算税の不適用要件を満たせるか確認する
- 税務署からの接触の有無を確認し、事前通知の前であれば5パーセントの区分で申告できる状態を優先する
- 本税の資金を先に確保し、申告書の提出日と納付日を合わせる
- 過年度分が複数あるときは、本税の大きい年分から着手して延滞税の増加を止める
実務では、資料が揃わないことを理由に提出が半年単位で遅れる例を多く見ます。その間も延滞税は日割りで増え続け、事前通知が届けば5パーセントの区分も失われます。完璧な申告書を待つより、確定できる範囲で先に提出し、後続の修正申告で精算する方が、結果として負担が軽くなる場面は少なくありません。
もっとも、どの年分から着手するか、重加算税のリスクがあるか、修正申告で精算する方針が妥当かは、帳簿の状況や無申告の経緯によって判断が分かれます。ご自身の状況でどの手順が最適かを見極めるため、まずは税理士にご相談ください。
まとめ
期限後申告の延滞税は、法定納期限の翌日から本税を完納する日までの日数に応じて課されます。申告書を提出した日や税務署から連絡があった日が起算日になるわけではなく、放置していた期間はそのまま計算対象です。
一方で、割合が年2.8パーセントから年9.1パーセントに切り替わる2か月の起点は、期限後申告では申告書を提出した日です。提出日に本税を完納できれば、滞納期間が長くても高い方の割合は適用されません。無申告加算税についても、調査の事前通知の前に自主的に申告すれば5パーセントで済みます。
いずれの軽減も「税務署が動く前に自分から動く」ことが条件です。期限を過ぎていることに気づいた時点が、負担を最小化できる最後のタイミングだとお考えください。
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参考文献
期限後申告の延滞税のよくある質問まとめ
Q. 期限後申告の延滞税はいつから発生しますか。
A. 法定納期限の翌日から発生します。申告書を提出した日や税務署から連絡があった日ではありません。所得税であれば、原則として法定申告期限と同じ日が法定納期限となり、その翌日から本税を完納する日までの日数に応じて延滞税が計算されます。
Q. 令和8年中の期間の延滞税の割合はいくつですか。
A. 令和8年1月1日から令和8年12月31日までの期間は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8パーセント、2か月を経過した日以後が年9.1パーセントです。令和4年から令和7年までは年2.4パーセントと年8.7パーセントでしたので、令和8年は引き上げられています。
Q. 期限後申告の場合、2か月の起点はいつになりますか。
A. 期限後申告または修正申告の場合、納期限は申告書を提出した日です。その翌日から2か月を経過する日までが低い方の割合、それより後が高い方の割合になります。提出日に本税を完納すれば、滞納期間が長くても高い方の割合は適用されません。
Q. 期限後申告でも無申告加算税がかからない場合はありますか。
A. 法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、納付すべき税金の全額を法定納期限までに納付していること、および提出日の前日から起算して5年前までの間に無申告加算税や重加算税を課されたことがないことなどの要件をすべて満たせば、無申告加算税はかかりません。ただし延滞税は別途発生します。
Q. 税務署から連絡が来る前に申告すると何が変わりますか。
A. 調査の事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合、無申告加算税は納付すべき税金の5パーセントです。事前通知の後や調査を受けた後では割合が段階的に重くなり、令和5年分以降は最大で30パーセントの区分が適用されます。
Q. 何年も申告していない場合、延滞税の計算期間は短縮されますか。
A. 短縮されません。計算期間の特例は、申告書が提出された後1年を経過してから修正申告または更正があった場合を対象としており、申告そのものを出していなかった期間には適用されません。また、重加算税が課された場合にはこの特例は適用されません。


