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代表取締役変更の税務署への届出|異動届出書の書き方と期限を税理士が解説

目次
  1. 代表取締役変更時に税務署へ提出する書類
  2. 異動届出書の位置づけ
  3. 提出期限と提出先
  4. 添付書類とe-Tax提出
  5. 手続の順序と役員変更登記との関係
  6. 役員変更登記の期限
  7. 登録免許税の区分
  8. 登記を先に行う理由
  9. 実務での進め方
  10. 異動届出書の書き方のポイント
  11. 異動事項等欄の記載
  12. 異動年月日の考え方
  13. よくある記載漏れ
  14. 税務署以外に必要になる手続
  15. 金融機関との関係と経営者保証
  16. 代表者変更と代表者住所変更の違い
  17. まとめ
  18. 参考文献
  19. 代表取締役変更と税務署への届出のよくある質問まとめ

代表取締役が交代したとき、税務署への届出は「異動届出書」を1枚提出するのが基本です。これは法人の経営者・経理担当の方はもちろん、登記や届出を任された総務担当の方に向けた記事です。先に結論をお伝えすると、順番は法務局で役員変更の登記を済ませてから、税務署へ異動届出書を出すという流れになります。

「登記と税務署、どちらを先に進めればよいのか分からない」「期限を過ぎてしまったらどうなるのだろう」と不安に感じる方も多いはずです。この記事では、代表取締役が変わったときに提出する書類と期限、書き方、登記との順序、税務署以外の届出先までを、公的機関の情報をもとに整理してご説明します。

代表取締役変更時に税務署へ提出する書類

まず、全体像を押さえておきましょう。代表取締役が変わった場合、税務署に対して行う手続きは異動届出書の提出だけです。法人税の申告書を出し直したり、特別な承認申請をしたりする必要はありません。

異動届出書の位置づけ

異動届出書は、法人が事業年度等の変更、納税地の異動、資本金の額等の異動、商号又は名称の変更、代表者の変更、事業目的の変更などをしたときに、所轄の税務署長へ届け出るための様式です。代表者の変更は、この届出書が想定している異動事項のひとつとして明記されています。国税庁 C1-8 異動事項に関する届出

つまり、代表取締役の交代専用の届出書があるわけではなく、さまざまな異動事項をまとめて届け出る共通様式のなかで、代表者の変更にチェックを入れて提出するという形になります。届出書全体の考え方や他のケースの書き方は、次の記事で詳しくまとめています。

関連コラム異動事項に関する届出はいつ?書き方をケース別に徹底解説!▸

提出期限と提出先

提出時期について、国税庁は「異動等後速やかに」と案内しています。登記のように「〇日以内」という日数が示されているわけではありませんが、後回しにしてよいという意味ではありません。提出先は異動前の納税地の所轄税務署長で、手数料はかかりません。

提出する書類 異動届出書(代表者の変更として記載)
提出時期 異動等後速やかに
提出先 異動前の納税地の
所轄税務署長
添付書類 なし(定款等の写しを確認される場合あり)
手数料 なし
手続根拠 法人税法第15条、第20条、法人税法施行令第18条

ここで押さえておきたいのが、根拠条文の中身です。異動届出書の手続根拠として示されている条文のうち、法人税法第20条は納税地に異動があった場合に異動前の納税地の所轄税務署長へ届け出る義務を定めたものです。e-Gov法令検索 法人税法第20条

代表者が変わっただけで会社の本店が動いていなければ、納税地そのものは変わりません。そのため、代表取締役の変更について「何日以内」という法律上の日数制限は置かれていない、というのが正確な理解になります。実務では、登記が終わって登記事項証明書を確認できた時点で速やかに提出する、という運用が一般的です。

添付書類とe-Tax提出

かつては届出書に登記事項証明書を添付する取扱いでしたが、平成29年4月1日以後、対象となる届出書等への登記事項証明書の添付は不要になりました。同じ改正で、異動前と異動後の双方の所轄税務署に提出が必要とされていた異動届出書等について、異動後の所轄税務署への提出も不要になっています。国税庁 法人設立届出書等について、手続が簡素化されました

提出方法は、e-Taxソフトで作成・提出するのが基本です。書面で作成する場合は、届出書を1部、提出先に持参または送付します。なお、異動事項の内容確認のため、定款等の写しを確認される場合があるとされていますので、手元に用意しておくと安心です。

見落としやすいのが、e-Tax側の利用者情報の更新です。e-Taxに登録している代表者名などの内容を変更する場合は、法人用の変更等届出を別途提出することになります。国税庁 H3-1 電子申告・納税等開始(変更等)の届出異動届出書を出しただけで安心していると、電子申告の名義が前の代表者のままになっていた、ということが起こります。

手続の順序と役員変更登記との関係

代表取締役の交代でつまずきやすいのが、法務局と税務署のどちらを先に進めるかという点です。結論としては法務局の役員変更登記が先で、税務署への異動届出書は後になります。

役員変更登記の期限

会社において登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に、その本店の所在地において変更の登記をしなければならないと定められています。e-Gov法令検索 会社法第915条

起算点は「登記の事由が発生したとき」です。取締役を新たに選任した場合、これは選任の株主総会決議の日ではなく、その取締役が就任を承諾した日とされています(就任を承諾している取締役が株主総会に出席している場合は、株主総会決議の日と同日になります)。また、登記期間を過ぎてから申請しても、そのことだけを理由に申請が却下されることはありませんが、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります。法務局 よくあるご質問等<商業・法人登記関係>

登録免許税の区分

登録免許税の課税標準および税率は、登記等の区分に応じて別表第一に掲げる金額によるとされています。e-Gov法令検索 登録免許税法第9条役員に関する事項の変更の登記は、一件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社は1万円という区分になります。法務局も、取締役の辞任に伴う登記について同じ金額を案内しています。

会社の資本金の額 役員変更登記の登録免許税
1億円を超える会社 一件につき3万円
1億円以下の会社 一件につき1万円

中小企業の多くは資本金の額が1億円以下ですので、実務で目にするのは1万円のほうが大半です。なお、登記の申請は1件1申請が原則ですが、申請人が同一人であり、管轄登記所も同一である場合に限り、同一の申請書で数個の申請を行うこともできるとされています。取締役の変更と代表取締役の変更が同時に生じたときは、いずれも「役員に関する事項の変更の登記」という同じ区分に含まれます。

取締役の変更 + 代表取締役の変更 = 役員に関する事項の変更の登記(資本金の額が1億円以下の会社は一件につき1万円)

ただし、本店移転や商号変更など別の区分の登記を同時に行う場合は、区分ごとに登録免許税が加算されます。金額の最終確認は、管轄の登記所にご確認ください。

登記を先に行う理由

登記を先に済ませるべき理由は、実務上とてもはっきりしています。異動届出書の記載要領では、異動年月日を記載する欄が「異動年月日(登記年月日)」とされており、登記の日を基準に記載する構成になっています。国税庁 異動届出書の記載要領等

加えて、登記申請から手続が完了するまでの間は、原則としてその会社の登記事項証明書・印鑑証明書は発行されません。再び発行できるようになるのは、登記所における登記手続が完了したときです。登記完了の目安となる登記完了予定日は、申請した登記所を管轄する法務局のホームページで確認できます。法務局 商業・法人登記の申請書様式

新代表者名義の登記事項証明書や印鑑証明書は、銀行口座の名義変更や許認可の手続きで求められることが多い書類です。登記を後回しにすると、こうした周辺の手続きがすべて止まってしまいます。

実務での進め方

3月決算の中小企業で、6月の定時株主総会をきっかけに社長が交代したケースを例にご説明します。実務では、次のような順序で進めるとつまずきにくくなります。

タイミング 行うこと
6月下旬(株主総会・取締役会の日) 新代表取締役の選定と就任承諾。議事録と就任承諾書を整える
就任承諾日から2週間以内 本店所在地を管轄する登記所へ役員変更登記を申請
7月上旬(登記完了後) 登記事項証明書を取得し、登記年月日と新代表者名を確認
登記内容の確認後 速やかに 税務署へ異動届出書を提出(e-Taxまたは書面)
同時期 e-Taxの利用者情報、金融機関、取引先への連絡を進める

登記の添付書面は、機関設計によって変わります。取締役会を設置していない会社か取締役会設置会社か、代表取締役を株主総会で選ぶか互選で選ぶかによって、必要になる議事録や印鑑証明書が異なります。法務局は代表取締役の就任による変更登記の添付書面一覧を公開していますので、自社の機関設計に合う欄を確認してから準備すると無駄がありません。

また、添付書面は原本を添付するのが原則ですが、原本を保管する必要があるものについては、コピーに「原本に相違ありません。」と記載して記名したものを原本とともに提出することで、原本の返却を請求できます。定款や議事録は社内保管が必要ですので、この原本還付の手続きを最初から前提に準備しておくと安心です。

異動届出書の書き方のポイント

様式そのものは1枚ですが、代表者変更の場合に迷いやすい欄がいくつかあります。

異動事項等欄の記載

異動事項等の欄には、異動前と異動後をそれぞれ書き分けるのが基本の作りです。記載要領でも、異動前の内容と異動後の内容を並べて記載する形式が示されています。代表者変更であれば、異動前に前任者の役職と氏名、異動後に新代表者の役職と氏名を記載します。

あわせて、届出書の上部にある法人名や納税地、代表者氏名・代表者住所の欄は、新しい代表者の情報で記載します。異動前の代表者名で出してしまうと、どちらが現在の代表者なのか税務署側で判断できません。

異動年月日の考え方

異動年月日の欄は、前述のとおり登記年月日を基準に記載する構成です。就任承諾日と登記年月日がずれることは珍しくありませんので、登記事項証明書で登記の日付を確認してから記載するのが確実です。

よくある記載漏れ

実務でよく見かけるのが、次の3点です。

消費税の欄の
記載漏れ
税目区分の消費税欄に該当の記載をして提出すれば、法人の消費税異動届出書や適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書を重ねて提出する必要はない
給与支払事務所等の
欄の判断
給与支払事務所等の移転の有無を記載する欄がある。移転がなく名称等に変更があった場合も所定の番号を記載する
税理士署名欄 届出書を税理士または税理士法人が作成した場合は、その税理士等が署名する

特に1つ目は、消費税の届出を二重に出してしまう手間を省けるところです。インボイス制度に登録している法人は、登載事項変更届出書との関係も含めて確認しておくとよいでしょう。

関連コラム支店の廃止届出は税務署に必要?異動届出書と給与支払事務所の手続▸

税務署以外に必要になる手続

ここまでご説明した異動届出書は、あくまで国税に関する手続です。国税庁の案内が対象としているのは税務署への提出であり、地方税や社会保険、許認可は別の窓口の管轄になります。代表取締役が変わったときは、次のような手続の要否を、それぞれの所管窓口に確認しておく必要があります。

確認する窓口 確認しておきたい内容
都道府県税事務所・市区町村 地方税に関する異動の届出の要否、様式、提出期限
年金事務所・労働基準監督署等 社会保険・労働保険の事業所に関する変更手続の要否
許認可の所管官庁 建設業・宅建業・運送業などで代表者変更が届出事由に当たるか
取引金融機関 口座名義・代表者印の変更、借入金の保証に関する取扱い

提出期限や様式は窓口ごとに異なりますので、「税務署に出したから他も大丈夫」と考えないことが大切です。とくに許認可は、届出を怠ると業務そのものに影響が出る場合があります。

金融機関との関係と経営者保証

代表者の交代で見落としやすいのが、金融機関との関係です。中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となることを経営者保証といいます。経営者保証には経営への規律付けや資金調達の円滑化に寄与する面がある一方で、円滑な事業承継を妨げる要因になっているという指摘もあります。中小企業庁 経営者保証

代表取締役が交代しても、前の代表者の保証債務が自動的に消えるわけではありません。登記と税務署の届出だけを済ませて保証の話を先送りにすると、前任者が個人保証を負ったまま経営から退く、という状態になりかねません。交代の話が出た段階で、取引金融機関に保証の取扱いを確認しておくことをおすすめします。

関連コラム税務署 印鑑証明|原則不要と例外となる手続きを税理士が解説▸

代表者変更と代表者住所変更の違い

混同されやすいのが、代表者その人が変わる場合と、代表者は変わらず住所だけが変わる場合です。どちらも登記事項に関わりますが、意味合いも準備する書類も異なります。

代表取締役の変更 代表取締役の住所変更
会社を代表する人そのものが交代する 代表者は同じで、登記されている住所が変わる
選定の手続と就任承諾が前提になる 引越し等の事実の発生が前提になる
機関設計に応じた議事録等の添付書面が必要 会社の意思決定の手続は伴わない
異動届出書では代表者の変更として記載 登記事項の変更として整理される

住所変更の場合の異動届出書の要否や登記の進め方については、次の記事で個別にまとめています。あわせてご確認ください。

関連コラム税務署 代表者住所変更|異動届出書の要否と登記手続を税理士が解説▸

なお、代表取締役の交代と同じタイミングで増資を行う会社も少なくありません。資本金の額の異動も異動届出書の対象ですので、同時に手続を進める場合は次の記事も参考になります。

関連コラム増資 税務署 届出|異動届出書の書き方と期限・提出先を税理士が解説▸

代表取締役の交代は、登記・税務・社会保険・金融機関と、関係する窓口が一度に広がる場面です。どこまでを自社で進め、どこから専門家に任せるかを早めに切り分けておくと、期限に追われずに済みます。判断に迷う点がある場合は、まずは税理士にご相談ください。

まとめ

代表取締役が変わったときの税務署への届出は、異動届出書を1枚提出するだけです。提出時期は異動等後速やかに、提出先は異動前の納税地の所轄税務署長、添付書類は原則なしで手数料もかかりません。平成29年4月1日以後は登記事項証明書の添付が不要になり、異動後の所轄税務署への提出も不要になっています。

一方で、法務局の役員変更登記には2週間以内という明確な期限があり、遅れると100万円以下の過料に処される可能性があります。登録免許税は一件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社は1万円です。登記が完了するまで登記事項証明書が発行されない点も踏まえると、登記を先に、税務署の届出を後にという順序が実務的です。

さらに、地方税・社会保険・許認可・金融機関など、税務署以外にも確認すべき窓口があります。とくに経営者保証は、代表者が交代しても自動的に解消されるものではありません。自社のケースでどの手続が必要になるか整理したい場合は、まずは税理士にご相談ください。

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参考文献

代表取締役変更と税務署への届出のよくある質問まとめ

Q.代表取締役が変わったら税務署に何を提出しますか?

A.異動届出書を提出します。代表者の変更は異動届出書が対象としている異動事項のひとつで、専用の様式は別にありません。

Q.税務署への異動届出書に提出期限はありますか?

A.国税庁は提出時期を異動等後速やかにと案内しています。登記のような日数の定めはありませんが、登記完了後すぐに提出するのが実務的です。

Q.異動届出書に登記事項証明書の添付は必要ですか?

A.平成29年4月1日以後、対象の届出書等への登記事項証明書の添付は不要です。ただし異動事項の確認のため定款等の写しを確認される場合があります。

Q.登記と税務署の届出はどちらが先ですか?

A.法務局の役員変更登記が先です。異動届出書の異動年月日は登記年月日を基準に記載する構成で、登記完了まで登記事項証明書も発行されません。

Q.役員変更登記の期限と登録免許税を教えてください。

A.登記の事由が発生したときから本店所在地において2週間以内です。登録免許税は一件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社は1万円です。

Q.登記が2週間を過ぎてしまった場合はどうなりますか?

A.期間を過ぎても、そのことだけを理由に申請が却下されることはありません。ただし裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります。

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