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増資 税務署 届出|異動届出書の書き方と期限・提出先を税理士が解説

目次
  1. 増資後に税務署へ提出する異動届出書の要否
  2. 届出の対象となる異動事項
  3. 提出期限と提出先
  4. 異動届出書の書き方と添付書類の実務
  5. 記載時の実務上のポイント
  6. 添付書類をめぐる誤解
  7. e-Taxによる提出手順
  8. 都道府県・市区町村への地方税の届出
  9. 増資に伴う税務上の影響
  10. 資本金1,000万円の基準と消費税
  11. 資本金1億円の基準と中小法人向け特例
  12. 増資登記の登録免許税
  13. まとめ
  14. 参考文献
  15. 増資の税務署への届出のよくある質問まとめ

この記事は、増資を実行した、あるいはこれから検討している中小企業の経営者・経理担当者に向けた内容です。増資をしたあと税務署へ何を出せばよいのか、期限はいつか、添付書類は要るのかを最短で確認できるようにまとめました。

結論から申し上げます。増資により資本金の額が変わった場合、税務署へは「異動届出書」を提出します。提出時期は異動等後速やかにとされ、提出先は異動前の納税地の所轄税務署長です。そして添付書類は、国税庁の手続案内上は「なし」とされています国税庁 C1-8 異動事項に関する届出。

ただし、届出を出して終わりではありません。増資は資本金の額そのものを動かすため、消費税の納税義務や法人税の中小法人向け特例といった税務上の取扱いが連動して変わることがあります。本記事では届出の実務と、増資後に効いてくる税務影響の両方を整理します。

増資後に税務署へ提出する異動届出書の要否

増資をすると、法務局で資本金の額の変更登記を行います。これに続いて税務署へ提出するのが異動届出書です。国税庁の手続案内では、異動事項に関する届出の対象として資本金の額等の異動が明示されており、増資はこれに該当します。

届出の対象となる異動事項

異動届出書は増資専用の様式ではなく、法人の基本情報が変わったときに幅広く使う届出書です。対象となる異動事項には、事業年度等の変更、納税地の異動、資本金の額等の異動、商号または名称の変更、代表者の変更、事業目的の変更、法人区分の変更などが含まれます。

実務では、増資と同時に商号変更や事業目的の追加を行う会社が少なくありません。この場合、異動事項ごとに別々の届出書を出す必要はなく、1通の異動届出書に該当する異動事項をまとめて記載して提出するのが通例です。株主総会で複数の定款変更を一度に決議したときほど、記載漏れが起きやすいため注意してください。

関連コラム異動事項に関する届出はいつ?書き方をケース別に徹底解説!▸

提出期限と提出先

提出時期は異動等後速やかにとされています。「増資から○日以内」という日数による期限は定められていませんが、期限がないという意味ではありません。実務では、資本金の額の変更登記が完了し登記事項証明書を取得できた時点で、速やかに提出するのが安全です。

提出先は異動前の納税地の所轄税務署長です。増資と同時に本店移転を行い納税地が変わる場合でも、提出先は異動前の所轄税務署である点を取り違えないようにしてください。

届出書の名称 異動届出書
提出時期 異動等後速やかに
提出先 異動前の納税地の所轄税務署長
提出方法 e-Taxソフトで作成・提出。書面の場合は1部を持参または送付
添付書類 なし(異動事項の内容確認のため定款等の写しを求められる場合あり)

異動届出書の書き方と添付書類の実務

異動届出書の様式と記載要領は国税庁ホームページで公開されています。書き方の要点は、異動事項の欄に「資本金の額」と記載し、異動前と異動後の金額、そして異動年月日を書くことに尽きます。

記載時の実務上のポイント

異動年月日には、増資の効力発生日を記載します。登記の申請日や登記完了日ではありません。募集株式の発行では、払込期日または払込期間の末日が効力発生日となるのが一般的で、この日付が登記事項証明書の記載とも整合するかを必ず確認してください。

もう一点、消費税の欄の取扱いが重要です。異動届出書には消費税に関するチェック欄があり、法人の消費税異動届出書に係る異動事項、または適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書に係る変更事項について、この欄にレ印を付して提出した場合には、重ねてこれらの届出書を提出する必要はありません。実務では、この欄を空欄のまま提出してしまい、後日インボイス登録情報の変更届を別途求められる例が見られます。

添付書類をめぐる誤解

増資の届出には株主総会議事録や登記事項証明書の添付が必須である、という説明を目にすることがあります。しかし国税庁の手続案内では、異動事項に関する届出の添付書類は「なし」と明記されており、あわせて「異動事項の内容確認のため、定款等の写しを確認させていただく場合があります」と補足されています。

つまり、添付は法令上の必須要件ではなく、内容確認のために求められることがある任意の資料という位置付けです。実務では、株主総会議事録と登記事項証明書の写しを手元に揃えたうえで届出書を提出し、税務署から確認の連絡があれば速やかに提示できる体制にしておく運用が現実的です。都道府県・市区町村側では登記事項証明書の写しの添付を求める自治体もあるため、いずれにせよ取得しておくことをおすすめします。

関連コラム定款変更後の届出は必要?法務局・税務署の手続きをケース別に解説▸

e-Taxによる提出手順

国税庁は異動届出書の提出方法として、e-Taxソフトで届出書を作成・提出することを案内しています。書面で作成する場合は、届出書を1部、提出先へ持参または送付します。

e-Taxを初めて利用する法人は、先に利用者識別番号を取得する必要があります。増資のタイミングで初めて電子提出を試みると、識別番号の取得から始めることになり時間を要します。設立時から電子申告を利用している法人であれば、既存の識別番号でそのまま提出できます。

なお、税務署の開庁時間は8時30分から17時までです。土日祝日等の閉庁日は受付を行っていませんが、送付または税務署の時間外収受箱への投函により提出することができます。

都道府県・市区町村への地方税の届出

税務署への異動届出書だけでは手続は完了しません。法人住民税・法人事業税を管轄する都道府県税事務所と、市区町村の法人住民税担当課にも、それぞれ異動の届出が必要です。東京23区内に本店がある法人は都税事務所への届出に一本化されます。

地方税の届出は各自治体の条例等に基づくため、様式の名称、提出期限の定め方、登記事項証明書の写しの要否が自治体ごとに異なります。提出先自治体のホームページで様式と必要書類を確認してから作成してください。

実務上とくに影響が大きいのが法人住民税の均等割です。均等割は資本金等の額と従業者数の区分に応じて税額が決まる仕組みのため、増資により区分が上のランクへ移ると、所得が赤字であっても毎期の負担が増えます。増資額を決める段階で、区分の境目をまたぐかどうかを試算しておくと判断を誤りません。

関連コラム無償減資と欠損塡補で均等割に影響?資本金等の額の調整まとめ▸

増資に伴う税務上の影響

増資は届出だけの手続ではなく、資本金の額を基準とする各種制度の適用可否を左右します。とくに1,000万円と1億円という2つの水準が実務上の分岐点になります。

資本金1,000万円の基準と消費税

基準期間がない法人のうち、その事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人は、その課税期間の消費税の納税義務が免除されません国税庁 No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例。

国税庁は増資の例を明示しています。資本金の額を1,000万円未満で設立した後、設立1期目の途中で増資したことにより資本金の額が1,000万円以上となった場合には、設立2期目は課税事業者となります。判定は期首時点の資本金の額で行うため、増資の実行日を1期目の期中に置くか2期目の期首以後に置くかで、2期目の納税義務が変わります。

実務では、資本金300万円で設立した会社が設立1期目の途中で700万円の増資を行い、資本金が1,000万円ちょうどとなった結果、設立2期目から消費税の申告が必要になった例があります。増資による払込金額のうち2分の1を超えない額を資本準備金に計上して資本金の増加額を350万円にとどめれば、資本金は650万円となり同じ資金を調達しながら1,000万円未満を維持できます。増資の実行前に設計しておくべき論点です。

資本金1億円の基準と中小法人向け特例

資本金の額または出資金の額が1億円を超えると、中小法人・中小企業者向けの複数の特例から外れます。代表的なものは次の3つです。

制度 資本金1億円以下の法人の取扱い
法人税の軽減税率 各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下である法人などは、年800万円以下の部分について15%の税率が適用されます国税庁 No.5759 法人税の税率
交際費等の定額控除 期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である等の法人は、年800万円の定額控除限度額を超える部分を損金不算入とする計算を選択できます国税庁 No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
少額減価償却資産の特例 取得価額30万円未満の減価償却資産について、年間合計300万円を限度に取得価額相当額を損金算入できます国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

いずれの制度も、資本金の額だけでなく大法人による完全支配関係の有無や従業員数などの追加要件が定められています。資本金1億円以下であっても、資本金5億円以上の法人による完全支配関係があるなど一定の場合には軽減税率の対象から除かれるため、資本構成をあわせて確認する必要があります。とくにベンチャーキャピタルや事業会社からの出資を受ける増資では、この点の検討を欠かせません。

増資登記の登録免許税

資本金の額の変更登記には登録免許税がかかります。株式会社または合同会社の資本金の増加の登記の税率は、増加した資本金の額の1,000分の7であり、この額が3万円に満たないときは申請件数1件につき3万円です国税庁 No.7191 登録免許税の税額表。

増加した資本金の額が2,000万円の場合、登録免許税は次のとおり計算します。

2,000万円 × 0.7% = 14万円

一方、増加した資本金の額が300万円であれば、計算上の税額は2万1,000円となり3万円に満たないため、登録免許税は3万円になります。増資を複数回に分けると、そのつど最低3万円が発生する点も判断材料になります。

300万円 × 0.7% = 2万1,000円

なお、払込金額の全額を資本金に計上せず、2分の1を超えない額を資本準備金として計上した場合、登録免許税の課税標準となるのは増加した資本金の額です。資本準備金部分には課税されないため、資本金の増加額を抑える設計は登録免許税の面でも効果があります。

このように、増資は届出書1通で完結する手続ではなく、実行日・増資額・資本金への計上割合の設計次第で、その後数期にわたる税負担が変わります。判断に迷う点があれば、増資を実行する前にまずは税理士にご相談ください。個別の資本構成や事業計画を踏まえた具体的なケースは、税理士へのご相談をおすすめします。

まとめ

増資後に税務署へ提出するのは異動届出書で、提出時期は異動等後速やかに、提出先は異動前の納税地の所轄税務署長です。添付書類は手続案内上「なし」とされていますが、内容確認のため定款等の写しを求められることがあります。

あわせて、都道府県税事務所と市区町村への地方税の届出も必要です。届出の先には、資本金1,000万円以上での消費税の納税義務、資本金1億円超での中小法人向け特例からの離脱、増加資本金の1,000分の7という登録免許税といった影響が控えています。

増資を検討する段階で、資本金の増加額と実行日を税務の観点から設計しておけば、避けられたはずの負担増を防げます。手続と税務影響の両面を一度に確認したい場合は、税理士へご相談ください。

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参考文献

増資の税務署への届出のよくある質問まとめ

Q. 増資をしたら税務署にどの届出書を出しますか。

A. 異動届出書を提出します。資本金の額等の異動は異動事項に関する届出の対象とされており、増資はこれに該当します。増資専用の様式ではなく、商号変更や代表者変更などと共通の様式です。

Q. 異動届出書の提出期限はいつまでですか。

A. 提出時期は異動等後速やかにとされています。日数による期限は定められていませんが、実務では資本金の額の変更登記が完了し登記事項証明書を取得できた時点で速やかに提出します。

Q. 異動届出書に株主総会議事録や登記事項証明書の添付は必要ですか。

A. 国税庁の手続案内では添付書類はなしとされています。ただし異動事項の内容確認のため定款等の写しを確認される場合があるため、議事録と登記事項証明書の写しは手元に揃えておくと安心です。

Q. 異動届出書はどこの税務署に提出しますか。

A. 異動前の納税地の所轄税務署長に提出します。増資と同時に本店を移転して納税地が変わる場合でも、提出先は異動前の所轄税務署です。

Q. 増資で資本金が1,000万円以上になると消費税はどうなりますか。

A. 基準期間がない法人で、事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円以上である場合は納税義務が免除されません。資本金1,000万円未満で設立し1期目の途中で増資して1,000万円以上となった場合、設立2期目は課税事業者となります。

Q. 増資の登録免許税はいくらかかりますか。

A. 株式会社または合同会社の資本金の増加の登記は、増加した資本金の額の1,000分の7です。計算した額が3万円に満たないときは、申請件数1件につき3万円となります。

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